惨状と説教

誰か山から降りてきてほたえてから山に帰っていく記事。ブログ

『恐怖箱 祟目百物語』について

はじめに

 評価は次のように行います。

 まず、総評。S~Dまでの5段階です。

 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース

 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。

 B…購入してもよい。もしくはkindle unlimitedにあれば勧める。

 C…図書館で借りる、もしくはkindle unlimitedなら読んでもよい。

 D…読むだけ時間のムダ。ゴミ。(少なくとも俺には)。

 

 続けて、本の中で印象に残った作品を評価します。

 ☆…それ一品で本全体の価格を担保できてしまうような作品のレベル。

 ◎…一冊の中に三品以上あると、その本を買ってよかったと思えるレベル。

 ◯…一冊に七〜八品あるとその本を買ってよかったと思える作品。

 

 最後に、あらためて本全体を総評します。

 

 こういう書き方をするのは、初見の人に本を勧めつつ、できるだけ先入観を持たない状態で触れてほしいからで、評価が下に進むほど、ネタバレしてしまう部分も増える、というわけです。よければ、こちらもどうぞ。

 実話怪談という「本」について - 惨状と説教

 

総評

 B。

 加藤一/神沼三平太/高田公太/ねこや堂作。2020年刊行。

 

 題名のとおり、全100話の怪談が収録されている。たいてい、実話怪談の本というのは一冊あたり40話前後なので、かなり多いことになる。

 話の数が多い分、一話あたりは短い。短い話でインパクトを出そうとすると、やたら変則的な文章を書いたり、無理やりのどんでん返しに頼りがちだが、この本では、これこれこういう怪異がありました、という体裁できれいにまとまっている印象。

 

 この本はkindle unlimitedで読めます。 

 

各作品評

 題名のあと、▲…高田公太、●…ねこや堂、◆…神沼三平太
 
 誰よりも高く跳べ! ▲…◯
 地下一階 ◆…◯
 ラビリンス ▲…◯
 カメラおじさん ◆…◯
 河原町 ◆…◯
 山小屋 ◆…◯
 水音 ◆…◯
 向かいの乗客 ●…◯
 親子連れ ◆…◯
 共同溝 ◆…◯
 虎柄 ◆…◯
 おみやげ ◆…◯
 ウッドデッキ ◆…◯
 お客さん ◆…◯
 

あらためて、総評

 よかった 。特に神沼三平太が良い話を持ってきている。
 

 総評でも書いたが、ページ数の少ない怪談で読者に強い印象を残すのはかなり難しくて、どうしても変化球的な表現に頼りがちになってしまう。

 俺はそういう作品の見せ方がすごく嫌いなので、もしもそんな話ばっかりだったらこっぴどく批判してやろうと思っていた、のだが。

 実際は、なんだかほとんど「割り切った」ような抑制の利いた作品が多く、それがかえって、うまく本の中にひたらせてくれた気がする。

 

 一点、批判というほどじゃないけど思ったことを書いておく。

 作品の傾向として主に二つある気がしていて、写実的・現実的に細部を書きこんでいく怪談と、表現をぼやかし、あえて現実性を薄くした怪談があった気がする。

 これは、どんな怪異が起きたか、ということでない。文章の書き方の話だ。

 例えば、主語を省略したり、風景描写をあえて削って書くと、どことなく現実感のぼけた、夢っぽい印象の作品になる。

 これ自体が良い、悪いということではない。ただ、読んでいてどうも、二つの怪談のタイプが調和していなかった気がする。きっちり細部を詰めた写実的な怪談のあとに、夢見心地のぼやっとした文の怪談がくると、少し戸惑う。

 うまいこと、双方が完全に引き立て合う編集方法はあるのかな。

 俺はかっちり現実的な怪談の方が好きだけど、色んな文体・作風があることはわかるし、そこの調和がとれれば、一冊の本としての可能性はもっと広がるだろう。けっこう重要な課題である気もする。

 

 第30回はこれでおわり。次回は、『現代怪談 地獄めぐり 業火』を紹介します。以上、よろしくお願いいたします。

 

2020年9月のブックマーク ④について

 員限定の記事なので途中までしか読めていないが、インフラに…もはや生活家電になりつつあるじゃないか…switchは…。
 今日では、スマートフォンタブレットなどハードとしてのライバルも多いし、ソフトの多様さも、以前とは比較にならない。
 俺らの暇な時間の奪い合いはますます苛烈に熱を帯びているな、と思いつつ、やっぱりハンパねえ数字だと思う、2,500万台の追いswitch。
 
 命体が排出してる物質(ホスフィン)が金星で見つかったぜ、金星ではホスフィンはすぐ壊れるはずなのに残存しているんだから、生命体が見つかる期待があるぜ、という話(注:意訳)。
 引き続き注視。地球外惑星で生命が見つかったら、世の一神教は教義をどう修正するのだろう、と思う。
 
 ートはいつも、俺たちのハートをガッチリつかまえる。
 俺たちはマジメにプレイしてるのに許さねえ、って処罰感情に加え、当然無視できないのはうらやましさ。
 単に普通はお目にかかれないめちゃくちゃなプレイも魅力的だ。常識とされた風景が壊れるのが見えるところ。
 二次元も現実世界も、俺たちの気持ちを逆撫でし、惹きつけるものの本質は一緒だ。そして、そんなズルッコに対抗する試行錯誤も、同じくみんなを熱くさせる、ということでブクマした。
 

  宿に、行きたい。

 最高のコピー。
 この広告が打たれた時点ではまだ可能性に過ぎなかったものの、大坂なおみには近い将来にグランドスラム優勝を実現する未来があり得たし、それは確かに現実となった。
 偉業への期待、あるいは希望を考えると、あまりにも状況と噛み合ってない惹句と言えるが、じゃあどんなシチュエーションならぴったりハマるかというと、正直思い浮かばない。
 原宿に、行きたい。
 この言葉で表すべき状況などこの世にはない。
 この世界線には早すぎたコピーだと言えるだろう。素晴らしい。
 
 そらく彼が死刑回避することはないだろう。彼はほぼ確実に、日本国の死刑制度によって殺されるだろう。
 死が決まっているから、こうもあからさまなのだろうか。まったく違うルールに従って、我々とは別の基準で言葉を口にしているように見える。
 あるいは、はじめから「ルール」が違うのだろうか。それが犯罪の根本にあるのだろうか。
 言葉の忌まわしさよりも、その薄っぺらさの方が俺は怖い。彼が、自分の思考の貧相さを蔑まれることをまったく恐れていないことが、俺には怖い。
 これまで何度か書いたように俺は死刑反対論の立場で、そのことはいつか詳しく述べるかもしれないし、しないかもしれないが、何にせよ、こういう人間のことを置いては何も考えられないだろうと思う。
 
 りあえずやってみてから考える、というチャイナスピリットあふれる話。九龍城砦等のとんでも建築愛好家の一人として心が躍った。
 

note.com

 人の体験ということで冷静に俯瞰できたのだろうな(ひどい)、自身の病状の記録をできるだけとっておくのは大事だな、と勉強になった。

 医者は合理性の職業だということがこのレポートを読むとよくわかる。

 つまり、愁訴の内容から可能性の高いところを優先して当てはめていくということだ。それが一番疑わしければ、容赦なく「心因性=身体には異常なし」と断じてしまう。

 冷徹、というわけではなく、それが、トータルでは患者のためでもあるのだろう。効率的に診断をさばいていく必要性もあるんだろうが。

 今回はそういう合理性重視の診断ではキャッチしにくかったレアケースだったらしい。結局、謎に包まれていた部分を突き崩したのは尿量の記録と、一通り調べたけどまだつらいんじゃ → 普通の視点からじゃ見つからない、というこれまでの蓄積だった。

 原因を探す過程で担当医も複数変わっており、ここでもしデータの共有がされていなかったら、解決はもっと手間取っただろう。治療は記録と共有、それを支えるのは患者の主体性、ということがわかった。

 

anond.hatelabo.jp

 ュージーランドを架空の国名にしたらそのままなんかの寓話になりそうな話。世界は広い(元増田はブログを開設されたようです)。

 

 以上、よろしくお願いいたします。

『S霊園 怪談実話集』について

はじめに

 評価は次のように行います。

 まず、総評。S~Dまでの5段階です。

 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース

 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。

 B…購入してもよい。もしくはkindle unlimitedにあれば勧める。

 C…図書館で借りる、もしくはkindle unlimitedなら読んでもよい。

 D…読むだけ時間のムダ。ゴミ。(少なくとも俺には)。

 

 続けて、本の中で印象に残った作品を評価します。

 ☆…それ一品で本全体の価格を担保できてしまうような作品のレベル。

 ◎…一冊の中に三品以上あると、その本を買ってよかったと思えるレベル。

 ◯…一冊に七〜八品あるとその本を買ってよかったと思える作品。

 

 最後に、あらためて本全体を総評します。

 

 こういう書き方をするのは、初見の人に本を勧めつつ、できるだけ先入観を持たない状態で触れてほしいからで、評価が下に進むほど、ネタバレしてしまう部分も増える、というわけです。よければ、こちらもどうぞ。

 実話怪談という「本」について - 惨状と説教

 

総評

 A。

 福澤徹三作。2019年刊行。

 

 日常で出くわしたささいな怪異が集まった全40編。奇をてらった話、大げさな話はほとんどないと言ってよく、体験者が語る不気味な体験を、ただ淡々と書き起こす、といったかたちで進行していく。

 文章は上手い。たぶん、超上手い。

 なんというのか、自分の書いている怪談に劇的なところがないことを理解しつつ、そのことをまったく恐れていないというか、それでいて、話の終わりに少しだけ身をのり出してきて刺してくるような、そういう文を書く人だと思う。

各作品評

 どの話もよかったが、特に印象に残ったものを挙げる。
 
 失踪…◯
 先生踏切…◯
 五のつく日…◯
 一時間半の記憶…◯
 傘をさす女…◯。後述。
 辺鄙なコンビニ…◯
 たき…◯
 事故があいつぐ場所…◯
 ストーカーの写真…◯
 お斎のあと…◯
 押入れの音…◯
 ブランド品の指輪…◯
 ベランダの写真…◯
 

あらためて、総評

 
 

 「気のせい」。この本の怪談の多く、いやほとんどが、この言葉で片付けられてしまうだろう。

 ちょっとした感覚の迷い。偶然をあまりにネガティブにとらえすぎている。…そう考えながら読んでみれば、大半の話に説明がつく。

 それがクセモノだと思う。

 科学的、というと大げさだが、現実的な理由で説明がついてしまうがゆえに、実際にそういう話がこの社会のどこかで起きていたことを、誰も否定できないのだ。

 「気のせいだよ」、「考えすぎだよ」。そう口にしたとたんに、実は、話自体は作り物ではなく、実在するということを認めてしまっている。

 読み続けているうちに、頭の中に嫌なものがどんどん溜まっていく。ゆらゆらと澱が沈んで濃くなっていくように不安な気持ちになっていく。

 実話を謳う怪談で、オバケがどれだけ暴れて大勢の人間を呪い殺そうと、「あんた(作者)、なんでそんなウソつくの?」と鼻で笑ってやればすべて終わりだ。

 そんなに人が死んだってんなら、証拠の一つでも持ってこいよ、と。俺は実話怪談のファンだが、そうやって冷たく言い放ってやりたい話をたくさん見てきた。

 しかし、「気のせいじゃない?」と言うしかない怪談に、その手は通用しない。

 ただ、じわじわと不安になっていくだけだ。こういう本の作り方もあるんだな、と感嘆している。

 

 『傘をさす女』について。この話に限らないが、展開としてはベタな作品が多いのだ。それがなんで、こんなに嫌な感じがするのか…(褒めてる)。

 なんというか、この人の怪談って、話の重点が恐怖以外のところに少しだけズレてる感じがするんだよな。

 怖さを表現するっていうより、実際に起きたことをあまさず描写しようっていう、静かな鬼気みたいなもの。それが秘訣っぽいというか、かえって恐怖を生んでいる…気がする。

 

 第29回はこれでおわり。次回は、『恐怖箱 祟目百物語』を紹介します。以上、よろしくお願いいたします。

 

S霊園 怪談実話集 (角川ホラー文庫)

S霊園 怪談実話集 (角川ホラー文庫)

 

2020年9月のブックマーク ③について

diamond.jp

 何を当たり前のことを、という感じだが、まず記事のタイトルが秀逸で、加えて、読み始めてすぐに「なるほど」と読み手に思わせるのが大事だな、とあらためて感じたので書いておく。

 自分でも時間を費やしすぎててまずいなあ、と感じている趣味、俺の場合はTVゲームと動画サイトだが、そういう実感を客観視する機会となる、良い記事だと思う。

 少し主旨とはズレるが、パチンコの敷居の低さ自体は絶対的な悪ではなくて、そもそも娯楽というのはたいてい、そういう気軽さを目指している。目指すべき、とさえ言ってもいい気がする。

 そこに金銭が要素としてからんでくるのがトラブルの元…ではあるのだが(でも、金賭けないとつまんないだろうしな。打たないからわからんけど)、プレイヤーとしての参入の容易さについて、安直に批判することはできないだろうな、とは思う。

 

jbpress.ismedia.jp

 アメリカ、泥からファーウェイハブるってよ。じゃあ独自にOS作ったるわい。おおそうか、頑張れよ(注:意訳)、つって見守ってたら早々とこんな記事が出てきてしまった。

 知識のベースがまったくないので理解ははなはだ怪しいが、OSの開発についてではなく、半導体の調達の方でミソがつき、市場から締め出される想定、ということのようだ。

 ただ、経営トップが敗北宣言、というのは読んでみれば「俺らアメリカにめっちゃ嫌われてるわ」ってのが主意っぽいし、他のファーウェイやべえぞ説についても、車内幹部の発言については伝聞、もう一つはアナリスト(要は社外の人物)なので、これらを総じて「敗北宣言」として見なしていいのかはよくわからない。

 俺は別にファーウェイユーザーではなく、なんとなく寡兵(っていう規模か知らないが)が巨人に挑む構図が興味深くて面白がってるだけだが、今後も注視していきたい。


dailyportalz.jp

 行きてえ。なんか今回中国推しになっている。特に政治的意図はない。

 

www.asahi.com

 会員記事なので全文読めないが、イスラエルがやべえらしい。一日の新規感染者4,000人だそうだ(国内人口約900万人)。

 ここ数日、日本でも感染者下落の勢いにかげりが見えているとして警戒が呼びかけられているが、緊張感という意味ではまったく違う。

 国によって全然異なるんだなー、とか当然のことを思ったのに加え、コロナウィルスにも型があって云々、みたいなことを考えると、人類は世界中で共同でこの厄災と戦っている、そういうイメージで挑んでるけど、果たして俺たちが世界の各地で戦ってるのは本当に同じ敵なのかな? 俺たち自身、どこまで、同じ巨悪に立ち向かう一体感を信じられてるのかな? という気がする。

 

www.afpbb.com

 縛り、尾を引き、ときには捧げ物として装飾し、硬質的なタイルの上、あるいは石畳の上でその血を流す。並べられた同類たちの体が血を波のように流すところに引き立ててきて、刃で首を切るのか、あるいは数人がかりで頸骨を折るのだろうか。

 文明が変容し、進歩しても、たぶん千年以上も続けられてきたことで、軽々に残酷とも暴力とも形容できない。

 

wiseloan-cash.com

 色んな感想があるだろうけど、経済政策や外交はどうしても採点が割れるので、その中にネガティブに評価しようのないものが混じっていれば、それが上位になるに決まっている。

 世論が前政権をどう評価していたか、この調査をもとに判断することはできないし、「元号発表しか評価されてないでやんの」というリアクションは完全に自身の悪意に足元をすくわれている。

 

引かれる小泉今日子と守られるユーミン、女性芸能人の政界進出はヌードより恥ずかしい(BEST TIMES) - Yahoo!ニュース

 こういう記事っていつかこの世界から滅ぼされる日が来るのだろうか。

 あまりにも記事としてクソ過ぎたのか、yahoo!ニュースでも早々に見ることができなくなった。

 誰かが書いていたが、被選挙権の行使に恥ずかしいも何もあるわけがない。

 ヌードの消費だって、これは本筋とはズレるのかもしれないが、好色的に消費される場合ばかりではない。別に教養人ぶりたいわけじゃないが、この人、美術館とか行かねえの? 

 あまりにクソなので言及しない方がいいのか、とも考えたが、結局、「害悪だぞ」とちゃんと一声あげた方がいいと思ったので書いておいた。

 

nazology.net

 女王アリが、交尾した際の精子を体内で保管しているという事例は聞いたことがあるが、十年以上も生かしておけるものなのだろうか。だったらすげえな、と。ブコメを見ると、単性生殖を指摘する意見が強い模様。

 

 以上、よろしくお願いいたします。

『蝦夷忌譚 北怪導』について

はじめに

 評価は次のように行います。

 まず、総評。S~Dまでの5段階です。

 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース

 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。

 B…購入してもよい。もしくはkindle unlimitedにあれば勧める。

 C…図書館で借りる、もしくはkindle unlimitedなら読んでもよい。

 D…読むだけ時間のムダ。ゴミ。(少なくとも俺には)。

 

 続けて、本の中で印象に残った作品を評価します。

 ☆…それ一品で本全体の価格を担保できてしまうような作品のレベル。

 ◎…一冊の中に三品以上あると、その本を買ってよかったと思えるレベル。

 〇…一冊に七〜八品あるとその本を買ってよかったと思える作品。

 

 最後に、あらためて本全体を総評します。

 

 こういう書き方をするのは、初見の人に本を勧めつつ、できるだけ先入観を持たない状態で触れてほしいからで、評価が下に進むほど、ネタバレしてしまう部分も増える、というわけです。よければ、こちらもどうぞ。

 実話怪談という「本」について - 惨状と説教

 

総評

 C。

 服部義史作。2020年刊行。

 

 タイトルどおり、北海道を舞台にした怪談が集められている。各作品が道内のどこで発生したかわかるマップ付き。これ自体は面白い演出だと思う。

 

 この本はkindle unlimitedで読めます。

各作品評

 便箋…◯。怪談×淫猥さ(エロチシズムではない、下品なやつ)っていうのが俺のツボらしい。
 

あらためて、総評

 オバケがパッと出て、体験者もびっくり、もしくは気絶、みたいなあっさりした怪談が多い本。そういうわけなので、いくらかワンパターンな印象は否めない。
 また、タイトルで北海道をもじっておきながら、まさに北海道ならでは、といった感の作品があまりないところは、正直肩透かしではある。
 せっかく道内マップがついているのに、それを余さず網羅、という感じでもないし。試みとしては面白かったのに、ほぼ生かせていない感じ。
 
 ところで、あっさりした怪談にはそれはそれで美徳がある。なにしろ、リアリティが損なわれにくいところだ。
 「?」と思っているうちに終わっていて、すぐに次の話が始まる。批判的な読み手も茶々を入れにくいし、積み重ねるうちに、怪異を受け入れる下地が、読者にも自然と出来上がってくる。
 これは実話怪談にとって、異様な惨劇を扱おうとして作家の手に負えなくなっていく、一度ボロが出たら止まらない、となるよりも比較にならないぐらい大切なことで、そういう評価では悪くない本。
 
 ただ、ところどころ幽霊との直接の対話があって、これが個人的に悪目立ちしている。
 オバケとの意思疎通は、怪異を、あるいは本全体を現実的に表現するにはあまりにリスキーだ。
 この手の会話は、なぜか基本的に、善良なオバケとしか成立しない。悪霊は問答無用で襲ってくるわけだが、別に理性はちゃんと残ってても根っからの怨霊、ってやつがいたっていいじゃん、おかしくねえか? 
 そういう体験が実際になかった、とは言わない。微妙な区別だが、俺には信じられない、ということだ。
 
 少し悩んだけどC評価にした。すみません。
 路線を整理したらもっと良い本になるんじゃないだろうか。
 あっさりした怪談だけ収録しても良い本はたぶんできるし、そういう話を基調としつつ飛び道具も投げたいなら、その手法については選んだ方がいいと思った。
 

 第28回はこれでおわり。次回は、『S霊園 怪談実話集』を紹介します。以上、よろしくお願いいたします。

 

蝦夷忌譚 北怪導 (竹書房怪談文庫)

蝦夷忌譚 北怪導 (竹書房怪談文庫)

 

 

『実話怪談 毒気草』について

はじめに

 評価は次のように行います。

 まず、総評。S~Dまでの5段階です。

 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース

 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。

 B…購入してもよい。もしくはkindle unlimitedにあれば勧める。

 C…図書館で借りる、もしくはkindle unlimitedなら読んでもよい。

 D…読むだけ時間のムダ。ゴミ。(少なくとも俺には)。

 

 続けて、本の中で印象に残った作品を評価します。

 ☆…それ一品で本全体の価格を担保できてしまうような作品のレベル。

 ◎…一冊の中に三品以上あると、その本を買ってよかったと思えるレベル。

 〇…一冊に七〜八品あるとその本を買ってよかったと思える作品。

 

 最後に、あらためて本全体を総評します。

 

 こういう書き方をするのは、初見の人に本を勧めつつ、できるだけ先入観を持たない状態で触れてほしいからで、評価が下に進むほど、ネタバレしてしまう部分も増える、というわけです。よければ、こちらもどうぞ。

 実話怪談という「本」について - 惨状と説教

 

総評

 B 

 神沼三平太作。2020年刊行。

 

 現代の話あり、昔話あり。業界っぽい裏話、少し変わった人情ものまで、さまざまな怪談が並ぶ。全26話、ということで、実話怪談の本としては一作一作が比較的長い。

 

 この本はkindle unlimitedで読めます。

 

各作品評

 
 三千坪の土地…◯
 家具屋の鴉…◯
 

あらためて、総評

 BかCかで悩んだ。Bを選んだのは、Cをつけたら個人的な好き嫌いの優先になるな、と思ったため。
 どの作品も描写は丁寧だし、一部の書き手にあるような、「とにかく人を死なせて不幸にさせれば現実感なんてどうでもいいんだろ」みたいなところもない。誠実な作家だと思う。
 ただ、全体的にいくらか冗長な気はする。感覚的に、10%強ぐらいは文章量を削っても話として成立すると思う。
 
 以下は、個人的に相性が悪かった点について話す。
 まず、『高いところに置け』『人形屋敷』『蛇わずらい』など、会話文の比重が高いうえに、オバケも派手に動くような作品は俺の嫌いな類の怪談なので、読んでいてつらかった。
 これらは実話怪談というより、「ホラー映像の書き起こし」として紹介した方がしっくりくるような怪談であって、俺はそういうのを基本的に嫌っている。実話として真に迫るものを感じたかといわれれば、否定せざるを得ない。
 もしも会話部分を丸ごと削り、怪異についても描写を抑えていたら、だいぶ(俺的には)良い方に印象が変わったと思う。
 それでも安っぽい印象がなかったのは、上記したように描写を丁寧に詰めてくれる作家だからだろう。その一点で、ギリギリ実話怪談として「残っている」。
 
  もう一点。これも趣味の話になるが、かなりベタな怪談が多いというか、読んでいて攻めている感じがしないというか、驚かせてくれるところがあんまりない。
 何も、めちゃくちゃ災いを起こしてくれ、というわけではない。怖い怪談は誰も死ななくても狂わなくても怖い。
 「ああ、そういう怖さがあるのか」という斬新さだったり、「なんだかわからないけど異様に気味が悪い」という不安感だったり、そういうのが欲しいと思った。あるいは、逃げ場を徹底的につぶされた絶望感か。
 もっとこっぴどく手玉にとられたかったな。せっかくかっちりした文章書けるんだし、という感想。
   

 第27回はこれでおわり。次回は、『蝦夷忌譚 北怪導』を紹介します。以上、よろしくお願いいたします。

 

実話怪談 毒気草 (竹書房怪談文庫)

実話怪談 毒気草 (竹書房怪談文庫)

 

『怪談実話 顳顬草紙 串刺し』について

はじめに

 評価は次のように行います。

 まず、総評。S~Dまでの5段階です。

 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース

 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。

 B…購入してもよい。もしくはkindle unlimitedにあれば勧める。

 C…図書館で借りる、もしくはkindle unlimitedなら読んでもよい。

 D…読むだけ時間のムダ。ゴミ。(少なくとも俺には)。

 

 続けて、本の中で印象に残った作品を評価します。

 ☆…それ一品で本全体の価格を担保できてしまうような作品のレベル。

 ◎…一冊の中に三品以上あると、その本を買ってよかったと思えるレベル。

 〇…一冊に七〜八品あるとその本を買ってよかったと思える作品。

 

 最後に、あらためて本全体を総評します。

 

 こういう書き方をするのは、初見の人に本を勧めつつ、できるだけ先入観を持たない状態で触れてほしいからで、評価が下に進むほど、ネタバレしてしまう部分も増える、というわけです。よければ、こちらもどうぞ。

 実話怪談という「本」について - 惨状と説教

 

総評

 A。 

 平山夢明作。2014年刊行(角川文庫版として)。

 

 奇天烈なタイトルは、「顳顬(こめかみ)と顳顬の間が作り上げたような、なんだかよくわからない話」ということらしい。

 平山夢明の手がける怪談のシリーズというと、「超」怖い話と東京伝説があるが、この二つのくくりで拾いきれない話を、この顳顬草紙で扱おう、というコンセプトだという。つまり、オバケとも言い切れないし、実在する人間の狂気とも違う、つかみどころのないヘンテコな話、ということである。

 ヘンテコ怪談好きとしてはとても歓迎するところだ。我妻俊樹や朱雀門出、鳴崎朝寝、三雲央、小田イ輔など、奇妙な話の書き手にも多くのタレントがそろっており、各自のキャラクターがある中で、平山夢明のヘンテコ怪談がどのような特色を示すのか見ていきたい。

 

各作品評

 
 雛と抽斗…◯
 泥酔…◯
 ノックの子…◯
 ガスパン…◯
 孕み…◯
 予言猿…◯。後述。
 憑が出る…◯
 はっきりそれといった風でもなく……◯
 おふれ布袋…◯
 猫の木…◯
 せせらぎ…◎。後述。
 指ぬき…◯
 

あらためて、総評

 

  オバケでもないし、人間の狂気でもない、といううたい文句のとおり、まさに「なんだかよくわからない話」がそろっている。

 語り手の背景や小物の描写など、話のディテールを詰めていく技術がやはりすごい。そういうこと、あるかもな、という感覚にすんなり没入できる。

 

 他のヘンテコ怪談と比較すると、読んでいてとてもドライな印象を受ける。

 心理描写がない、という意味ではない。

 なんというか、恐怖や不安感をあおって読者の顔色をうかがうようなところがないのだ。怪談の語り手が感じたことも体験したことも、事実だけをただ記している、という感じがする。

 読者の共感を誘って、そこを起点にして話を引っ張ろうというつもりがあまりないのだろう。突き放したようなこの感覚は、怪談というより、今昔物語集だとか江戸時代の奇談集とか、そういうものに近い。

 

 『予言猿』について。平山夢明作品を読むときの醍醐味に、心理が限界に達した人間がどういう行動に出るか観察したい、という暗い願望がある。

 この話は悲劇だし、たぶん、猿が悪いわけじゃないだろうから気の毒なのだが、「洗い殺す」という壮絶なワードには爆笑してしまった。

 

 『せせらぎ』について。本当に、数百年前の民話集からぽっと抜け出てきたような不思議な話。

 山の中で出会った、正体不明の生物。淡々とした筆致は、「こういうことがありました」という以上のものではなく、まったく押しつけがましくない。こういう話を読むと、得した、と心の底から思う。

 

 一つ批判しておくと、「超」怖い話シリーズではすくいとれない領域の怪談、というコンセプトなのに、ところどころ普通の心霊ものが収録されているところ。

 『怖いから』『叫び』『パグ』『隣の家』なんかはがっつりオバケ出てるし、他の本に収録してくれた方が統一感としてはよかった…と、率直に言って思う。

 

 第26回はこれでおわり。次回は、『実話怪談 毒気草』を紹介します。以上、よろしくお願いいたします。

 

こめかみ草紙 串刺し (角川ホラー文庫)

こめかみ草紙 串刺し (角川ホラー文庫)

  • 作者:平山 夢明
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 文庫