惨状と説教

誰か山から降りてきてほたえてから山に帰っていく記事。ブログ

『ジョジョリオン』の悪口を言うコーナーについて

ジャンルに限らず、とかく世間で名作とされているものの悪口を言うのはなかなか勇気のいることで、作品によっては信仰の域にまで高まった愛情を捧げる熱狂的なファンもいるくらいであるから、これはもう下手をすれば身に危険が及ぶ可能性さえあると言っても…

深い緑と青い春。『猿神のロスト・シティ―地上最後の秘境に眠る謎の文明を探せ』の感想について

はじめに 青春小説のフォーマットの一つに「探して、見つけて、そして失う」というものがあって、村上春樹とかポール・オースターとかよくこういう構成を使うのだが、逆に言うとこのフォーマットにならっているとその作品はぐっと青春小説らしくなるのである…

ソニックマニア2017の感想について~Kasabian編~

2017ソニックマニア、邦楽テクノUKロック行脚。後半はKasabian編(前篇はこちらソニックマニア2017の感想について~Perfume、Liam Gallagher編~ - 惨状と説教)。 Kasabian…『異次元』。 リアムのステージが終わってフロアの観客が動き、次のKasabianのた…

ソニックマニア2017の感想について~Perfume、Liam Gallagher編~

はじめに 音楽イベント観に行くのを「参戦」とか言いだしたら人間もう終わりである、というのは以前書いたとおりである。 なんかわざわざ人に言って聞かせてる感じがするじゃないか。うるっせーつぅんだよ、というのも以前書いたとおりである。 というわけで…

『ジョン・ウィック2』の感想と『サマーウォーズ』と物語の作り方について

はじめに 『ジョン・ウィック2』を観る人間はだいたい2種類に大別される。ジョン・ウィックが劇中で最初に銃を撃ったとき、「お前銃撃つのかよ!」とツッコむ人間とツッコまない人間である。 と言っても観ていない人にはなんのこっちゃわからないと思うので…

幸運を超えて従えて。『BLUE GIANT SUPREME』2巻の感想について

はじめに 『ライフ・イズ・ビューティフル』の前半部分が好きで、なんでかというと人と幸運というものとの交錯が、好もしく描かれているからだと思う。 観た方ならわかるとおり、この映画では主人公の恋に様々な偶然やラッキーが味方する。重要なのは、彼が…

収束へ。終息へ。『へうげもの』24巻の感想について

もう織部と家康以外の武将の話はしないって約束したじゃないですか。したじゃないですか。してませんでしたっけ? してない。 してないが、ともかく俺が『へうげもの』であまりピンときていない部分である多くのキャラクターの取り扱いが中心の巻になった。 …

嗜好品2種。『紅茶スパイ―英国人プラントハンター中国をゆく』と『胡椒 暴虐の世界史』を読んで思ったことについて

どちらも1600年~1900年ごろのヨーロッパとアジア間の貿易をテーマに扱った作品である。 最初探していたのは前者だったのだが、図書館でおさめられていた棚をあらためて見ると後者も面白そうだな、ということで手にとった。こういう、本来ターゲットにしてい…

悪夢について2

知人から犬を預かった。むくむくしたぬいぐるみのような小型犬で、よく知りもしない俺のことを嬉しそうに嗅ぎまわって後をついてくる。俺も楽しくなって、よせばいいのに友達と路上でサッカーをするのにその犬を連れていった。 犬は跳ね回るようにして俺と…

植物すごいぜと思うことについて

昨年末に植物の鉢を一つ買った。 きっかけは、BRUTUSで植物の特集をやっていて、アホのようにそれに影響されたからである。ちなみに、この特集自体はしゃれおつな写真とわかりづらい専門用語ばかりの解説とあたりさわりのない紀行文とが寄せ集められた、いか…

カブトなし。クワガタほぼなし。それでよし。『きらめく甲虫』の感想について

昆虫が好きなのだが子供の頃はもう今の比ではなくて、狂ったように山野を網を振って走り、即席のヒシャクのような道具をこしらえて水中をかき回したりしていた。 昆虫にも色んな種類がいるわけだが、そんな当時、甲虫の特別さときたらすごかった。花の中に全…

友人同士のお笑いコンビについて

友人同士で結成されたお笑いコンビが好きで、コンビ仲など良いと大変ほほえましい。ダウンタウンとか。さまぁ~ずとか。 実際のところはそうずっと仲良くもしていられないと思うのである(さまぁ~ずは本当に仲よさそうだけど)。 ファンの人に具体的な仲良…

映画版『無限の住人』の感想について

はじめに 正直、わりと良かったんじゃないでしょうか。 俺は15年前に原作を読み始めて完結まで追ったファンですが、作品の内容をかなり忠実にふまえ(この忠実さには思うところもありますが、後述します)、出演者の演技も殺陣も素晴らしかったと思う。漫画…

悪夢について

何をしていたのかわからないが職場にいたら、隣で役員と話をしていた会計課の課長が突然、「はい! はい! 少々お待ちください!」と叫ぶと、命令された、というより社会人としての義務感、といったような切迫さをあふれさせながらこちらに飛んできて、俺の…

アレクサンドロス、この圧倒的捕食者。『ヒストリエ』10巻の感想について

※以下、作品の内容について激しくネタバレしています。注意。 はじめに 表紙をめくって現れた絵を見て、思わずそのまま見入ってしまった。 顔と体に敵兵の血を浴びたアレクサンドロス。その表情が、もうなんか凄い。こいつとはもう話が通じないというか、こ…

『BLUE GIANT』10巻の感想と、破壊されるために生まれてくる者たちについて

※以下、作品の内容について激しくネタバレしています。注意。 はじめに いきなり『BLUE GIANT』と関係ない話から入って恐縮なんですが、以前、鬼頭莫宏の作品の感想を読んでいてこんな意見を見かけたことがある。「鬼頭作品に登場するキャラクターは、作者に…

『極楽とんぼの吠え魂』復活に寄せることについて~放送当日編~

目の前の相手を「こいつ人として終わってんな」といつ思うかというと、ギャンブルで借金があることを知ったときでも家族や恋人に暴力を振るってることを知ったときでもなくて、そいつが自分の笑いのルーツを語り始めたときに思う。 「俺が面白さを感じるもの…

京都の室生口大野駅から室生寺まで徒歩でいくと何分かかるかについて(別手段との比較あり)

はじめに~いいから歩きでいったらどんだけかかるのか教えろよ、という方に~ まず前提として、室生口大野駅から室生寺まで行くのには、車道を行くルートと東海自然歩道という未舗装のルートがあります。 以下を読んでいただくとわかるのですが、この記事を…

予告編に偽りなし(良くも悪くも)。映画『ドクター・ストレンジ』の感想について

■目次 はじめに あらすじ 感想~映像がすげーというそれ以上でもそれ以下でもない話~ その他雑多な感想~モルドdisとヒロインを褒めたりとか~ おわりに はじめに ビルや地面という本来動かないはずのものが、複雑に交差してうねり倒れかかる。鮮やかな炎が…

あの道の続きに。『伊豆漫玉日記』の感想

■目次 はじめに~桜玉吉と出会う今から11年前の話~ 『伊豆漫玉日記』の感想 おわりに~桜玉吉と出会ってから11年後の話~ はじめに~桜玉吉と出会う今から11年前の話~ 俺は現役での大学受験に失敗した。1年間の浪人生活を送ることになった。 家と予備校を…

『双亡亭壊すべし』3巻の感想について(?)

■目次 (太ももの)はじめに まとめ(太ももの) はじめに~3巻のあらすじ…?~ お化け屋敷破壊漫画『双亡亭壊すべし』第3巻。 建物に潜入した霊能力者に絵描き、役人の破壊者チームも館の魔の手によって順調に(?)無力化されていく。しかし、悪化し続ける…

死線に挑む、『LIMBO THE KING』の感想について

はじめに~俺が思う田中相について~ 田中相さんは「越境」を描く漫画家さんだと思っている。勝手に。 自分と他人。 人間と動物。 人と神。 自分の知らないどこか、自分とは違う何者かに向かって一歩踏み出すことを描く作家さんだと思う。 新作、『LIMBO THE…

「最強」の定義、映画『オアシス:スーパーソニック』の感想について

はじめに 自分を変えることのできる特別な人たちが、いったいどれだけいるのだろう? 変わった生き方を許される人生が、いったいどれだけあるというのだろう?…『Champagne Supernova』 どうすれば生きている実感が手に入るのか、見当もつかない いったいど…

貴重な「野蛮」漫画、『トリコ』43巻の感想と完結に寄せることについて

はじめに 少年ジャンプでやっていた『トリコ』が、先日最終巻となる43巻を発売し完結を迎えた。まあ週刊連載では数ヶ月前に終わっていたけど、単行本派なので、「あ、終わった」という気持ちを抱いたのは本屋で43巻の表紙を見たときだった。 『トリコ』には…

バカですみません、『へうげもの』23巻の感想について

(はじめに。非常に不遜な記事です。『へうげもの』ファンの方は、どうかご勘弁願います…) 「最近の『へうげもの』、まあ面白いんだけどさ…」 「登場人物が前より増えすぎたというか…」 「誰に注目していいかわからないというか…」 「なんつーか、昔はもっ…

『鬱ごはん』1巻の感想、もしくは自意識とかいう煮ても焼いても食えないものについて

「2m?」 旅行先の青森で入った寿司屋で、勘定に出てきた店のおばさんが言う。一瞬意味がわからなかったが、 俺の身長のことを言われたのだと気がつく。 「そんなにないですよ。そのー、雪道でも平気なように底が高い靴を履いてるんで」 「あ、それがプラス…

『海流のなかの島々』の感想、もしくは自分に「殺される」ことについて

人生で自分のことしか考えてこなかった。 いまも自分のことしか考えていない。 さすがにそれを表に出してはいないけれど、俺のそういう自意識が放っている、一種悪臭のようなものに、周りの人は気がつくものなのだろうか。 少なくとも、家族や親しい友人や勘…

心地よい場所を目指してゴー。『動物たち』の感想について

幻想紀行、とでも言ったらいいんだろうか、不可思議な世界を旅することをテーマとするジャンルが俺の中にある。 それフツウのファンタジーじゃん…というと違くて、このジャンルの特徴は、作中で描かれる異界の理屈、常識を、こちらの常識と近づけようとする…

不時着…「航空機が故障・燃料不足・悪天候などのため運航不能となり、目的地以外の場所に着陸すること」について

今日こちらに来ると言っていた知り合いから電話があったので出てみると、来る途中で乗っていた飛行機が不時着してしまったのだという。 「え?マジですか。大丈夫すか」 「うん、大丈夫大丈夫。でさ、見に来る?飛行機」 「え、不時着したやつですか?」 「…

クズの地平から見えることについて

twitterを見ていたら、最近の社会人に仕事でありがちなことについて意見が交わされていて面白かった。 簡単に言うと、 社会人A「最近の社会人(部下、もしくは取引先など業務上接点のある人)は、仕事を頼んでも言われたことしかやらず、自分でその先を考え…