惨状と説教

誰か山から降りてきてほたえてから山に帰っていく記事。ブログ

京極夏彦作品に感じる違和感とフィクションにおけるイカレポンチの扱いについて

はじめに 2~3月にかけて狂ったように京極夏彦の『巷説百物語』シリーズを読んでいた。 面白い。ファンといってよいかもしれない。 しかしその一方で、実は、読みながら違和感を感じる瞬間があった。 それもたまにではない。多々あった。 俺はこの違和感につ…

『ゴールデンゴールド』4巻の感想と、「物語」の臨界を探ることについて

はじめに 『ゴールデンゴールド 』という異次元のように面白い漫画があって、3巻が出たときにこういう記事を書いた。 で、これを書いたとき、この3巻で作品としてのタメの時期は終わりかな、と思っていた。ここまでに十分に伏線が蓄積された感があったので、…

夢について2

俺はいま小学生で、友人が携帯電話を買うというのでそれについてきていた。 店は郊外のショッピングモールの一画にあった。俺は待合スペースの椅子に座りながら彼が契約を終えるのを待っていて、彼がこっちにやってくるのを見て立ち上がり一緒にモールを出た…

悪夢について4

俺は政府の要職で、他の高官たちと一緒にある国との会議に参加していた。 その国の会議室で、俺たちは相手から敵意のないことを示せと求められた。何があっても抵抗できない姿勢で地べたに体を預け、こちらを完全に信頼していることを表せ、という。 不思議…

芸術は本当の本当にゴミなのかもしれないことについて。その1

はじめに いきなりで恐縮ですが、これまで31年生きてきて、けっこう小説とか戯曲とかを読んできました。ここで、俺の好きな作品の上位10作を紹介してみたいと思います(順不同)。 ・『告白』 町田康 ・『行人』 夏目漱石 ・『淵の王』 舞城王太郎 ・『ねじ…

異界とはどこにあるもののことか。『全滅領域(サザーン・リーチ1)』の感想について

はじめに 最初にことわっておかないといけないことがあって、実はこの記事、作品を強くおすすめする記事ではないのである。 もちろん面白い本ではあって、良かった点もちゃんと紹介する。 しかし、一方で、最後までぬぐえない違和感もあって、興味を持ってい…

レベル100の「あんたすごいの憑けてきたね…」にありがちなこと。『ぼぎわんが、来る』の感想について

はじめに 妻一人子一人、平穏で幸せな家庭を築いた男性を襲う、正体不明の怪異「ぼぎわん」の恐怖を描くホラー小説。 バカにしたようなタイトルを記事につけてしまったが、すごく面白かった。 この小説は基本的にネット怪談でよく見るフォーマットに見事にの…

シャチの挨拶と菩薩の拳、あるいは0.9でもいいじゃないかと思うことについて

はじめに www.cnn.co.jp シャチがハローと言ったようである。 本人は自分が何を言ったのかわかっていないらしい。しかし、人間にハローと言うと人間もハローと返してくること、人間が遠くにいるときにハローと言うと人間がこっちにやってくることがわかった…

加入したまま忘れていたAmazonプライムの年会費を返してくれた件について

はじめに 今日クレジットカードの請求書を見ていたらAmazonプライム年会費3,900円という項目があって、「ありゃ?」と思う。 記憶を懸命にほじくり返した結果思い出したのは、以前Amazonで買い物をしたときに、プライム会員のひと月無料キャンペーン中で加入…

乙でした。『へうげもの』最終巻、25巻の感想について

はじめに 第1話で、松永久秀という武将が平蜘蛛という家宝の平たい釜を抱えて自爆して、城ごと釜が爆散。主人公・古田織部は飛散した破片を鎧を着たままダッシュで追いかけて空中キャッチしていた。 なんだこれは…。すげえと思うしかなかった。 その後、信長…

夢について

自殺した有名なミュージシャンが作ったある曲がリバイバルされて、最近いたるところでかかっている。 曲はCMや映画のタイアップに使われたり、今のアーティストにカバーされたりして、耳にしない日がない。 俺は死んだミュージシャンのこともその曲のことも…

『池の水ぜんぶ抜く』第5弾の感想と、炎天の下、稲穂の海を行けるところまで行くことについて

はじめに 高校生の夏休みに、帰省先の山梨で、突き抜けたような青空の下をひたすらチャリンコで行けるところまで行ったことがある。 そういうイベントは小学生の頃か、せいぜい中学生までにすませておくべきだと思うけども、ともかくそういうことがあったの…

貴志祐介作『ダークゾーン』の感想と、デスゲームを面白く描くことの難しさについて

はじめに。『ダークゾーン』の感想。 なかなか良かったのではないでしょうか。 と言っても、前半が最高に面白くて、途中相当中だるみして、最後盛り返す、というアップダウンがあったので、「平均すると」なかなか良かった、という感想が正確なところです。 …

欲望、決壊前夜。『ゴールデンゴールド』3巻までの感想について

はじめに 「登場人物が全員全力で頑張ってるモノ」というジャンルがある。それは俺の中で。 意味はそのままで、出てくるキャラクターが敵も味方も、強いやつも弱いやつも、全員現況の打開のために知恵を絞って全力で頑張っていて、その苦闘が伝わってくる作…

セカイ系よ、30年後のディストピアで凱歌をあげろ。『ブレードランナー2049』の感想について(後編)

はじめに ハリソンが溺れる話をしていたら長くなりすぎた。ここから後編。 セカイ系のひとつの勝利としての『ブレードランナー2049』について なんか怒られそうなことから書き始めるんだけど、俺は『ブレードランナー2049』ってセカイ系作品の一種だと思う。…

なくさなければ何も残らない。『ブレードランナー2049』の感想について(前篇)

はじめに 100点満点で1,200点あげます。それぐらいよかった。すごかった。 以下、ネタバレ全開で感想を書きます。すでに観た方の意見のすり合わせにつかっていただければ幸いです。 もしまだご覧になってない方がいたら、先に劇場で観てきては、と勧めます。…

悪夢について3

友人と一緒にいて、そいつが「俺の叔父さんがさあ、」と親戚の話を始める。 あたりが妙に暗い。誰もいない工場のような、地下室のような、知らない機械がたくさんあって室内を無数の配管が走っている。 「別の叔父さんがさあ、」と友人はまだしゃべっている…

『悪魔を憐れむ歌』1巻の感想と、創作におけるボーイズラブ要素に関して思うことについて

はじめに 作品の内容と直接関係のない、断りの言葉からはじめさせてもらいます。 この文章は男女の性別について問題のある考えを含んでいたり、それによって誰かを傷つける可能性があります。 また、本来明確に区別されるべきそれぞれ別々の感情を、混同して…

Go レイリ Go! 『レイリ』4巻の感想について

はじめに 豚カツが好きで、カレーも言わずもがな好きで、果たしてこの二つを一緒に食ったらどれだけ美味くなるのかしらん、なってしまうのかしらん、と思ってカツカレーを頼んで食うと意外とそうでもない。 せいぜいが、まあカレーとカツ一緒に食ったらそれ…

よいこのみんな、映画館で綾野剛のガンアクションと半ケツを観よう! 実写版映画『亜人』の感想について

はじめに 100点。 まあ、どこを採点の基準に据えるか、観に行った動機は何か、というのももちろん関係あると思う。 だから言いなおす。「ほーん、『亜人』実写化すんのか。綾野剛が肉体改造して佐藤役で、『るろ剣』で評判良かった佐藤健が永井圭でドンパチ…

『ジョジョリオン』の悪口を言うコーナーについて

ジャンルに限らず、とかく世間で名作とされているものの悪口を言うのはなかなか勇気のいることで、作品によっては信仰の域にまで高まった愛情を捧げる熱狂的なファンもいるくらいであるから、これはもう下手をすれば身に危険が及ぶ可能性さえあると言っても…

深い緑と青い春。『猿神のロスト・シティ―地上最後の秘境に眠る謎の文明を探せ』の感想について

はじめに 青春小説のフォーマットの一つに「探して、見つけて、そして失う」というものがあって、村上春樹とかポール・オースターとかよくこういう構成を使うのだが、逆に言うとこのフォーマットにならっているとその作品はぐっと青春小説らしくなるのである…

ソニックマニア2017の感想について~Kasabian編~

2017ソニックマニア、邦楽テクノUKロック行脚。後半はKasabian編(前篇はこちらソニックマニア2017の感想について~Perfume、Liam Gallagher編~ - 惨状と説教)。 Kasabian…『異次元』。 リアムのステージが終わってフロアの観客が動き、次のKasabianのた…

ソニックマニア2017の感想について~Perfume、Liam Gallagher編~

はじめに 音楽イベント観に行くのを「参戦」とか言いだしたら人間もう終わりである、というのは以前書いたとおりである。 なんかわざわざ人に言って聞かせてる感じがするじゃないか。うるっせーつぅんだよ、というのも以前書いたとおりである。 というわけで…

『ジョン・ウィック2』の感想と『サマーウォーズ』と物語の作り方について

はじめに 『ジョン・ウィック2』を観る人間はだいたい2種類に大別される。ジョン・ウィックが劇中で最初に銃を撃ったとき、「お前銃撃つのかよ!」とツッコむ人間とツッコまない人間である。 と言っても観ていない人にはなんのこっちゃわからないと思うので…

幸運を超えて従えて。『BLUE GIANT SUPREME』2巻の感想について

はじめに 『ライフ・イズ・ビューティフル』の前半部分が好きで、なんでかというと人と幸運というものとの交錯が、好もしく描かれているからだと思う。 観た方ならわかるとおり、この映画では主人公の恋に様々な偶然やラッキーが味方する。重要なのは、彼が…

収束へ。終息へ。『へうげもの』24巻の感想について

もう織部と家康以外の武将の話はしないって約束したじゃないですか。したじゃないですか。してませんでしたっけ? してない。 してないが、ともかく俺が『へうげもの』であまりピンときていない部分である多くのキャラクターの取り扱いが中心の巻になった。 …

嗜好品2種。『紅茶スパイ―英国人プラントハンター中国をゆく』と『胡椒 暴虐の世界史』を読んで思ったことについて

どちらも1600年~1900年ごろのヨーロッパとアジア間の貿易をテーマに扱った作品である。 最初探していたのは前者だったのだが、図書館でおさめられていた棚をあらためて見ると後者も面白そうだな、ということで手にとった。こういう、本来ターゲットにしてい…

悪夢について2

知人から犬を預かった。むくむくしたぬいぐるみのような小型犬で、よく知りもしない俺のことを嬉しそうに嗅ぎまわって後をついてくる。俺も楽しくなって、よせばいいのに友達と路上でサッカーをするのにその犬を連れていった。 犬は跳ね回るようにして俺と…

植物すごいぜと思うことについて

昨年末に植物の鉢を一つ買った。 きっかけは、BRUTUSで植物の特集をやっていて、アホのようにそれに影響されたからである。ちなみに、この特集自体はしゃれおつな写真とわかりづらい専門用語ばかりの解説とあたりさわりのない紀行文とが寄せ集められた、いか…