惨状と説教

誰か山から降りてきてほたえてから山に帰っていく記事。ブログ

『レイリ』完結に寄せる言葉について

完結しました。お疲れさまでした。 実を言うと、たかがいち読者の身で勝手ながら、この6巻を読み始める前は不安がありました。 以前、記事でも書いたことなのですが、物語の開始当初からどうにもストーリーのエンジンがかかるのが遅すぎると感じていたところ…

クマバチ、犬、知的生命体、あるいは愛の辺境の美しさについて

ムダなことがこぼれそうでも 交尾のための生じゃなく スピッツの『ハイファイ・ローファイ』という曲の一節で、はじめて耳にしたときの年齢が10代半ばということもあって、こころの芯を突き刺されたような衝撃を受けた。 16~17の頃といえば基本的にエロいこ…

2019年4月29日について

天気がいいので野川公園に遊びに行った。 短い橋をわたり、川べりからわずかにあがったところで腰をおろした。ファストフードをかじっていたら、散歩中らしい色素のうすい日本犬が近づいてきて、俺の靴の匂いを嗅ぎ、それから肛門を見せながら去っていった。…

同じくする者、違える者。『オオカミライズ』1巻の感想について

伊藤悠の漫画は好きなところがいっぱいあって、そのうちの一つに、本来立場が違う者同士の共感や、反対に元々は近しい者同士の精神的な離別がある。 『皇国の守護者』の新城とバルクホルンとの友軍敵軍の壁を超えた友情のようなものだとか。 『シュトヘル』…

明滅する蛍光灯の鋭いほどの闇。怪談作家・我妻俊樹を読もうぜ、ということについて

怪談やオカルトの類が好きだ。しかし、性格的に難儀なところがあって、怪現象でもUMAでもできるだけ科学的検証に耐えうるものであって欲しいという願望から、かえって批判的な態度で接してしまうことがある。 例えば、「実話」というテイで書かれた話を読ん…

2019年4月23日について

ゾウムシはゆっくり歩いていた。 俺はそれを眺めている。場所は電車の中で、ゾウムシが歩いているのは目の前に立っている女性の後頭部だった。 声をかけた方がいいのかな? 俺は少し考えてから、それはないなと思い直す。 まったく自慢にならないが、風体か…

コンビニで働いていた外国の人に思ったことについて

夜食を買いに行ったコンビニで店に入ったときにかけられた「いらっしゃいませ」という言葉のイントネーションが、一回目に言われたやつもその後に続けて言われたやつもなんとなく耳に残る感じで、レジに行ったら果たして店員さんが二人とも外国の人だった。 …

主人公がズタボロになるのが好きなやつら、ヴェルーヴェン3部作を読もうぜ、ということについて

何かを失って傷ついてズタボロになっていくことへの憧れ、ナルシシズムみたいなものがあると思っていて、『カウボーイ・ビバップ』のスパイクとか『告白』の熊次郎とか目を奪われてしまい、彼らが迎えた結末は、まるで大きな石を水の中に投げ込んだように心…

2019年4月6日について

田舎に帰っている。天気がいいので、読んでいる本の続きは庭で読むことにした。 乾いた芝と、まばらというには繁って生えすぎた青々した雑草が日の光を浴びている。庭というより、どこかの山野の風景に見えた。 人家の一画のように見えないのは、思い出の中…

ヘドの底にいる人について

人間は自分より幸せな者が嫌いなので、上を見上げたときに自分より幸せな者がいることに気がつくとムカついてヘドを吐く。吐かれたヘドは重力にならって下に向かって流れ落ちていく。 他人のどこに幸せを感じて憎悪を抱くかは人によって違っていて、俺の場合…

できるわけがないこと、もしくはできるわけがないと思わされることについて

はじめに www.bbc.com 何年か前、ドナルド・トランプがまだ大統領候補でしかなかった頃。自分が大統領になったらメキシコとの間に壁を作るつもりであるとこの人が言っているのを聞いたときのこと。 俺は、このおっさんは何を言ってるんだと思っていた。 異国…

嫌な情報について

はじめに 自分にとって何が嫌な情報かというと、人を傷つけるものより無駄なものより、読み手のことを明らかにナメているものが嫌いである。 ただ、読み手のことを明らかにナメている情報のたいていは人を傷つけるか無駄かのどちらか、もしくは両方なので、…

外道とあなたは言うけれど。『外道クライマー』の感想について

はじめに ロックでもアートでもなんでもいいが、「反体制的」な成り立ち、あるいは要素を持つものにはものすごく重大な弱点がある。 それはこれらが、自分たちが反発している体制なくしては存在することさえできないということだ。 反体制芸術は、体制が間違…

豚コレラと日記について

www.asahi.com きわめて極私的なうえに混乱した話。 豚コレラの被害が広がっていて、感染した豚の殺処分が始まったらしい。 一般的な反応はわからないが、俺の場合報道に触れながら胃が絞られるように苦しい。農家を営んでいるわけでも食品を仕事で扱ってい…

明石市長の暴言をめぐる意見について思うことと「火をつけてこい」と口にした時点でアウトだということについて

はじめに また俺の中の逆張りクソ野郎が暴れ出してしまった。 先日、明石市市長が道路の拡幅工事をめぐって担当者を叱責した際、「火をつけて捕まってこい」と口に出して発言していたことが報道された。 この暴言に対し、はじめは批判の方が大きかった(と思…

そこの君、ヤンジャンをコンビニの棚に戻したら『バトゥーキ』を買おうぜ、ということについて

はじめに 基本的に題名の通りなんですが、そのままだとあんまりなので俺がこのマンガについてものすごく手のひらをかえしたところから話を始めます。 例えばですね、タイムマシンを使って昨日の俺を今日に連れてきて今日の俺と二人で並んで立ったとしますよ…

先に左右を倒さないと蘇生させてくるパターン。『ゴールデンゴールド』5巻の感想について

あいかわらずべらぼうに面白かったですが、今巻はあまり大きな波乱がなかったので(終盤のぞく)簡潔に。 まず印象に残ったところ。ばあちゃんの変貌とフクノカミの扱いをめぐって、琉花がお母さんともめました。琉花は母親が持ち出す世間の常識や社会人とし…

偉そうなのに間違っている奴の言うことはすべて無視していいかということについて

はじめに あまりオチのない話。 『スプラトゥーン2』が好きで、一昨年の秋に買って以降いまだにこればっかりやっている。 で、今日こんな記事を読んだ。 「スプラトゥーン」の中毒性が極端に高い理由 | ゲーム・エンタメ | 東洋経済オンライン | 経済ニュース…

海は深くて暗い。『サカナとヤクザ』の感想について

はじめに いま話題の、海産物がアンダーグラウンドで暴力団の資金源となっている実態を追ったルポルタージュ。 とても面白く読んだのだが、一方で物足りない部分もあった。 俺が興味があったのは、要するに俺たちはこのまま魚を食い続けていていいのか、とい…

NHKスペシャル「“冒険の共有” 栗城史多の見果てぬ夢」を観た感想について

はじめに 先日、引退を表明した吉田沙保里の昔のエピソードで小さい頃から父親にレスリングの教育をされていたと知って、「うわーっ」と思った。 今日、市川海老蔵(現 團十郎)の息子が父親のかつての跡を襲名したと聞いて、やっぱり「うわーっ」と思ってい…

週刊SPA!の『ヤレる女子大学生ランキング』の抗議運動に関して、汚い大人の男の立場から思うことについて

はじめに 週刊SPA!で「ヤレる女子大学生ランキング」という記事が掲載され、批判を浴びている。 批判の原動力になったのはNGOの代表も務める学生の方が発起人となった抗議署名活動で、俺はこの抗議運動とセットにして、記事の存在についても知ったかたちで…

ポジティブな虚無に立ち向かう大傑作。『トロフィーワイフ』の感想について

はじめに 新年あけましておめでとうございます。 本年一発目、まったく年明けと関係のない記事で恐縮なんですが、舞城王太郎の『トロフィーワイフ』の感想をまとめます。 『トロフィーワイフ』、すげーよかったです。帰省中の列車の中で前のめりで読み込んで…

腐ってるやつら、ライブで踊っててもどこか冷めてるやつら、『エバタのロック』を読もうぜということについて

はじめに 学生の頃からものを腐らさせることが得意だった。 惣菜とか弁当とか野菜とか、どこかに暗くて狭いところにしまい込んで忘れてしまう。 腐らせるのがものだけかと思ったら、自分のことも腐らせてしまった。 ものは動くための手足がないからなすすべ…

『デビルマン Crybaby』の感想、あるいは幼い飛鳥了はなぜ泣いていたのかについて

はじめに 遅ればせながら『デビルマン Crybaby』を観まして。 率直に言う。泣きました。 素晴らしかった。 というわけで感想を書きたいのですが、もちろんすでにたくさんの方が感想を書かれているので、あんまり言及されていないように見えるところにしぼっ…

歯を食いしばる90分間。『クワイエット・プレイス』の感想について

主演:釘 その他大勢(人とかモンスターとか) はじめに 『クワイエット・プレイス』を観てきました。90分間、観ている間ずっと歯を食いしばっていました。 緊張がすごかった。最初から最後まで恐ろしく、そして、面白かった。 突如襲来した怪物によって人類が…

『呪術廻戦』をジャンプのHUNTER×HUNTER・BLEACH枠と呼んだ私が全裸で土下座してから腹を切ることについて

大変失礼いたしました、と謝罪から入るんですが。 1巻のときまで、表題のようなことを不遜にも考えていた。で、2巻を読んだ。 枠とか代わりとかそういう次元じゃない傑作であると、このときになってようやくわかった。まことに申し訳ありませんでした。 いや…

The bizarre is still here. 『岸辺露伴は動かない』2巻の感想について

はじめに 1年弱前のことなんですが、わたくし信者の方に刺される覚悟でジョジョシリーズの最新作『ジョジョリオン』をクソミソにけなす記事を書きまして。 要は戦闘が全然面白くないのも含めて読者が置いてきぼりになってないか、って内容だったんですけども…

京極夏彦作品に感じる違和感とフィクションにおけるイカレポンチの扱いについて

はじめに 2~3月にかけて狂ったように京極夏彦の『巷説百物語』シリーズを読んでいた。 面白い。ファンといってよいかもしれない。 しかしその一方で、実は、読みながら違和感を感じる瞬間があった。 それもたまにではない。多々あった。 俺はこの違和感につ…

『ゴールデンゴールド』4巻の感想と、「物語」の臨界を探ることについて

はじめに 『ゴールデンゴールド 』という異次元のように面白い漫画があって、3巻が出たときにこういう記事を書いた。 で、これを書いたとき、この3巻で作品としてのタメの時期は終わりかな、と思っていた。ここまでに十分に伏線が蓄積された感があったので、…

夢について2

俺はいま小学生で、友人が携帯電話を買うというのでそれについてきていた。 店は郊外のショッピングモールの一画にあった。俺は待合スペースの椅子に座りながら彼が契約を終えるのを待っていて、彼がこっちにやってくるのを見て立ち上がり一緒にモールを出た…