惨状と説教

誰か山から降りてきてほたえてから山に帰っていく記事。ブログ

『双亡亭壊すべし』1巻の感想について

 先日御茶ノ水に行ったら書泉ブックマートABCマートになっていた。閉店したのは去年の9月で、ニュースにもなっていたようだけど全然知らなかった。

 本の街で本屋が潰れる時代か。amazonの功罪、とか勝手に5分ぐらい考える。

 確かに、俺は本も漫画もほとんど本屋で買うけれど、たまにamazon使うと「こりゃあ便利だわい」と思うし、あえて書店に足を運ぶ理由なんて正直「書店という空間が好きだから」というふわふわしたことしか言えなかったりするただ、そのふわふわした理由こそが絶対に譲れないものであったりもするが)。

 浪人時代によく通った本屋だった。悲しくなる。

 また、こちらはまったくニュースにもなんにもならかったが、最近近所にあったエロ屋がひっそりと閉店した。

 エロ屋というのは俺の造語で、どこの街にも一つはある、一般向け書籍が商品全体の2割ぐらいで、店内入り口に配置されたこれらを抜けたその奥に残りの8割ぐらいを占めるエロアイテムがどわあっと展開されている、そんなラインナップで経営している店のことを指す。

 2回ぐらいしか入ったことはなかったが、店内に貼られたAV女優のポスターが通りからのぞいていて、歩いて通りがかるたび横目で盗み見していた場所であった。

 考えてみればエロ屋も厳しい。買う側として、宅配に頼りたい気持ちは書籍より強いかもしれない。

 書泉ブックマートABCマートになったが、エロ屋に新しいテナントは入らないままだ。しばらくAV女優のポスターだけが残っていたがそれも外されて、何もない空間がぽっかりと空いている。

 少しずつ何もかもなくなっていく。最後は俺の家と俺の大嫌いな職場とそれをつなぐJRの駅、あとはamazonの巨大物流センターだけが残るんだな、とかイメージする。

 

 …という変わっていく建物の話を経て、絶対破壊されない不変の建物の話である。

 『双亡亭壊すべし』は藤田和日郎による少年サンデー連載中の戦闘漫画。『双亡亭』とは作品に登場する謎のお化け屋敷のことであり、タイトル通りこの双亡亭をなんやかんやあってムカつくんでぶっ壊しますわ、というのがメインテーマである。

 物語の導入、双亡亭の中で、一緒に建物に入った少女を探す二人の少年が描かれる。彼らはようやく少女を探し出すが、その手を引いて双亡亭を出ようとした瞬間、少女は奇態な化け物に変貌する。思わず手を離した二人に彼女は言う。「ワタシヲオイテイカナイデ」と。

 年月は過ぎ、少年たちは、一人は日本国総理大臣、一人は防衛大臣の地位へと登りつめていた。おそらくはそのためにこれまでの日々を重ねた彼らは、自衛隊に一つの指令を下す。「通称『双亡亭』なる地上家屋を空爆せよ。『双亡亭』壊すべし」と。

 しかし、おおかたの読者の予想通り、双亡亭はノーダメージで爆炎の中に残存するのであった。

 この空爆と前後して、双亡亭をめぐり新たな因縁が動きだす。

 双亡亭の一画にあった使用人用の土地に引っ越してきたが、父親を屋敷の新たな犠牲者として「喰われて」しまった少年。

 少年の姉であり、呪いを払う天才を見込まれ山で修行していたが弟の危機を知って下山した巫女の少女。

 双亡亭の隣にたつボロアパートに住む貧乏絵描きと、絵描きと同じ姓を持ち、45年前に行方不明になった後突如空中に出現した旅客機の中から、45年前の容姿のまま発見された謎の少年。謎の少年は見つかったとき正体不明の怪物と戦っており、自身の体をドリル状に変形させてこの怪物を粉砕してしまう。

 こうして、ドリルの少年が戦闘中に発した「オマエラミンナコワシテヤル」という言葉と意志が代表するように、屋敷にうらみを持つ者と化け物退治の腕に覚えのある猛者が集合し、物語が動きだす。「双亡亭壊すべし」という、その標語のもとに。

 

 ここまでほんの第1話。飛ばすなあ。アクセルベタ踏み。

 大ボスが生き物ではなく建物というのが珍しい。気が早いけど、「壊すべし」とタイトルにうたう以上、屋敷を最後どうぶっ壊すのか期待している。

 ドラクエゾーマ攻略における闇の衣をはがす的なのが必要なんだろうか。空爆より強烈な物理攻撃で壊すとかでも面白いけど。

 相変わらず藤田和日郎の描く女の子がいい。戦闘巫女の紅(クレナイ)さん。おかっぱの造形とマジメだけど弟のことになるとネジが飛ぶところ。あと方言。かわいい。

 それと紅さんが戦闘前に詠唱する祝詞みたいなんとか霞が関登場とか(環境省っていうのが個人的には珍しかったけど)、厨二的にも美味しかったです。

 

 双亡亭への本格的な内部侵攻は次巻に持ち越しのようだけど、俺みたいな建もの探訪(異常なもの限定だけど)好きとしてはどんな変態構造とイベントが待ち受けるのかわくわくする。

 後はドリル少年の正体と双亡亭の存在はなんか関係があるのか、とか総理大臣と防衛大臣が双亡亭をぶっ壊したいのは本当に昔の事件を決着させることだけが目的なのか、とかが気になる。

 個人的にはあんまり話を広げすぎず、あくまでいち地方にある一つの変な建物をみんなで頑張ってぶっ壊します、という話を、ただし使用する火力は特盛りで、という絶妙なバランスで描いてくれると楽しいなあ、と思いました。面白いです。以上。

 

 3巻の感想はコチラ

 

双亡亭壊すべし 1 (少年サンデーコミックス)