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惨状と説教

誰か山から降りてきてほたえてから山に帰っていく記事。ブログ

予告編に偽りなし(良くも悪くも)。映画『ドクター・ストレンジ』の感想について

■目次

        1. はじめに
        2. あらすじ
        3. 感想~映像がすげーというそれ以上でもそれ以下でもない話~
        4. その他雑多な感想~モルドdisとヒロインを褒めたりとか~
        5. おわりに

はじめに

 ビルや地面という本来動かないはずのものが、複雑に交差してうねり倒れかかる。鮮やかな炎が空中を走り、美しい紋章を描いて燃え盛る。「え、何これ、すげえ。なんて映画?」

 どこかで目にした予告編で少しでもこんな興味を持った方。観ましょう。

 

 アメリカのヒーロー映画に整合性とか期待しねえ、ヒーローがカッコよくてド派手で敵味方で全力でドつきあってて変に湿っぽくなければそれでいい、という方。ぜひ観ましょう。

 

 そういう映画です。

 

あらすじ

 優秀だが傲慢な性格の外科医であるベネディクト・カンバーバッチは、ある日不注意で起こした自動車事故により生命線である両手の機能を失う。

 躍起になって治療法を探すも功を奏さず、看病してくれた同僚の女性にも八つ当たりして愛想を尽かされたカンバーバッチは、失意の中で、カトマンズにある「カマー・タージ」という場所を訪れれば、とても治る見込みのない大ケガであっても治癒するという噂を耳にする。

 一縷の望みを託し雑踏うごめくカトマンズに飛んだカンバーバッチ。たどり着いた「カマー・タージ」でエンシェント・ワンと名乗る高僧から彼が見せられたのは、これまでの世界の見方を一変させるような強烈なビジョンを伴う神秘体験だった。

 これを機に、カンバーバッチは精神世界に生きる魔術師の道を歩むことになる。優秀な理解力と記憶力を武器に急速に魔術師として成長していく彼は、やがて闇の魔術をめぐる巨大な戦いへと巻き込まれていく。

 

感想

 上に書いたとおり、予告編を観て気になった方は観に行きましょう。すげえです。

 人間、予告編を観ると無意識のうちに何かしらの期待を抱くもんで、この作品の場合ハンパねえ超現実的なビジュアルと派手なアクションってとこだと思いますが、約束しましょう。その期待は完全に満たされる、と。(他のことは期待すべきでないとも言える)。

 できれば、なるべくでかいスクリーンで観たいところです。俺は日本橋のTOHOシネマズで見ていて、予告編でも使われていた天地がひっくり返ってビル群がぐわあーっとうねっている場面と、カンバーバッチが師匠にトリップさせられて曼荼羅のような幻想世界にぶっ込まれた場面で口をぽかんとあけて完全にバカと化しましたが、やっぱり巨大スクリーンの迫力がひと役買ってたところはあると思う。大きくなくても間違いなく楽しめるけど、なるべく大きい方がいいです。

 トリップの場面はマジですごくて、本当に薬物体験者に取材したのかも、とか思った。

 極彩色の映像が美しさと禍々しさをめまぐるしく反転させながら延々流れて、観ていて脳内がぐにゃぐにゃになりながら「うぉーっ」という感じ。これだけのためでも1,800円…はさすがに言い過ぎだけど、一見の価値ありなのは確かだと思う。

 

 ビジュアル以外に褒めるところというと、変なこと言うようだけど、ラブロマンスがあまりないのが俺はよかった。すごく。

 俺はヒーロー作品におけるロマンスの扱いには一家言あって、ヒーローってのは悪と戦って悪から人々を守るんだけども、この守るべき人々の中で順位付けができない、死ぬほど大切なあの娘も知らないその辺のおっさんも守るべきものとして等価、大切な誰かが守るべき無名の群衆の中に回収されてしまうというのがヒーローの苦しみ、悲哀であって、これで人は守る、ラブも成就させる、となるとこれは虫が良すぎる。二兎を追うなバカ、と思う。

 その点、『ドクター・ストレンジ』にはそういう甘ったるさがあんまりない。けっこうドライである。良いと思う。余計なことしないでひたすら魔術でドつきあってるだけとも言う。まあ、良いと思う。

 

その他、雑多な感想

 ・燃え要素を足しあわせたらなぜかパッとしないおっさんになった話

 モルド(キウェテル・イジョフォー)のことです。

 ①主人公の先輩弟子で高い実力を持つ 

 ②主人公とは性格的に足りないところをお互いに補完し合っている

 ③やがて師の教えに疑いを抱き、主人公とたもとを分かつ

 ④しかし悪に染まったわけではなく、客観的に見れば彼には彼の正義がある

 

 もうね、これは個人的には燃え要素のカタマリなわけです。うにいくら丼にぼたん海老乗っけたようなもんで(発想が貧困)、これでキャラクターが立たないわけがない。

 にもかかわらず、なんなんでしょうか。モルドのこの圧倒的な雑魚キャラ感、ぬぐい去れない三下臭は。

 特に批判しているわけではないんです。なんか、ここまでパッとしねえと逆にすげえな、という話。エンディングにも登場して次回作に含みを残してるけど、お前ごときがはしゃいだからなんなんだ、今のカンバーバッチだったらお前なんかワンパンだぞ、と思ってしまう…が、なんかパワーアップとかするんでしょうかね。

 

・ヒロイン(レイチェル・マクアダムス)超かわいい

 ロマンスあんまりないと書いたばっかりですが、あることはあって、カンバーバッチの医者時代の同僚がヒロイン。超かわいい。

 このかわいさはなんだ?と考えると、たぶん普通の人として描かれているからだと思う。話の中盤戦で自然にフェードアウトしてストーリーが超常化して以降は妙にからんでこなくて、それでいてかすかにカンバーバッチの中に存在感を残す。こういうのでいいんだよ、と思う。

 女優さんのことはウィキペディアではじめて知りました。38歳ですって。

 へえ。38歳。

 

 38歳?

 

 軽い衝撃でした(失礼)。

 

・意外と笑える

 標題どおりで、けっこうクスッとくる場面が多かったです。ラスボス戦に至っては「あれ、俺が観てんのはコメディだったのか?」と思ったぐらい。

 特に主役のカンバーバッチがよかった。俺はひねくれ者なので、海外映画でネアカなマッチョがところどころではさんでくる小粋なジョークに毎回眉根を寄せている。で、今作のカンバーバッチも、実際中身的にはそういうキャラクターと大差ないとは思う。

 ただ、この人の場合、見た目は神経質そうな細おもて、というのがたぶん大きくて、その彼がキメるべき場面でうまくはまらなかったり、理不尽な暴力でズタボロになるのはけっこう面白かった。

 一番笑ったのは、カンバーバッチが修行という名の嫌がらせでエベレストに置き去りにされ、氷まみれになって気合いで帰ってきた場面でした(ここは笑うところではなかったかもしれないが)。

 

おわりに

 細かいことを言うと、どうにも設定で詰め切れていないところがいくつかある気もする。

 「ミラー次元でのダメージは現実にフィードバックされるの?」とか(されなかったらあんなに頑張って走り回ってバカみたいだけど)。

 「アストラル体の現実への干渉の法則がよくわからん」とか。

 エンシェント・ワンの未来視能力、医者だったにも関わらず人を殺めたカンバーバッチの苦悩など、もうちょっと深掘りしてもよかったんじゃ?という部分も散見される。

 ただ、幸か不幸か結局その点の要素にあんまり注目する時間は割かれず、そのせいで集中をさまたげるノイズにもならなかったため、結果としてこの作品は徹底的に圧巻の大迫力光景の中で起こる魔術師肉弾戦映画として完成した。

 これが製作の意図であったかどうかはわからないけど…結果オーライ、な気もする。

 

 上で書いたとおり、次回作を匂わせる終わり方をしている。その中心となるであろうウニいくら丼ぼたん海老乗せことモルドが前述の体たらくなので、ストーリー自体にはあんまり関心が持てないんですが、あの薬物体験をジャンキー以外にも見せつけてくれるような強烈なビジュアルがまた見られるなら、俺アメコミ全然知らないけどまた観に行きたい、そう思う作品でした。…しかし、モルドはすげえよな ←まだ言ってる。(おわり)