惨状と説教

誰か山から降りてきてほたえてから山に帰っていく記事。ブログ

レベル100の「あんたすごいの憑けてきたね…」にありがちなこと。『ぼぎわんが、来る』の感想について

はじめに

 妻一人子一人、平穏で幸せな家庭を築いた男性を襲う、正体不明の怪異「ぼぎわん」の恐怖を描くホラー小説。

 バカにしたようなタイトルを記事につけてしまったが、すごく面白かった。

 この小説は基本的にネット怪談でよく見るフォーマットに見事にのっとっている(地元の伝承である謎のオバケ、そのオバケに妙に詳しい実家の爺さん、ひょんなことでその怪異に魅入られる主人公、主人公からオバケを祓うために霊能者が執り行う儀式、など…)。

 しかし、文章がすごく上手くて、怪談パート以外の主人公の生活描写もリアリティがあって、チープな印象はまったくない。

 中でもすげーな、と嘆息したのは、「ぼぎわん」という一見すると由来がよくわからないオバケの名前に関する伝説が紹介されたときで、もちろんこの伝説は作者の創作によるデタラメなんだけど、これがすごく真に迫っていてマジっぽくて感心した。ここでもうこの作品にのめり込んでしまった。

 しかもこの小説、おっかないホラー作品というだけでなくミステリーの部分もあるのだな。

 読み進めるうちに、「怖がらせようとする部分」とは別のところで話が思わぬ方向に展開し、秘められていた出来事がどんどん明るみに出てきて、それがストーリーに厚みを持たせる。物語が骨太になると、ホラーとしての完成度も上がる。物語の構造としてすごくよくできているのである。

 まとめサイトで有名な怪談…というと思い当たるものがいくつかある人、俺は、ああいうのをけっこう熱心に読んだクチなんですが、同じような経験をお持ちの方は読んだらきっと満足すると思います。

 ネタバレつきの感想を下に書いています。でも、その前にまず読んじゃって、と言いたい。あらためて、とても面白かった。おすすめです。

ネタバレありの感想について

 ここからネタバレありです。未読の方は、できれば読了後に読んでください。

 

 面白いからネタバレを見る前に本作を読んじゃって…と書いておきながら、罠にかけたようで恐縮なんですが、第三章からの展開はちょっとガッカリであった。

 第二章までは本当にすごく面白かった。

 なにしろ、オバケ「ぼぎわん」がもたらす絶望感はマジすごかった。

 余裕こいてた歴戦の霊能者がクソびびらされた挙げ句あっさり血祭りにあげられるところ、展開としてありがちなのは間違いないけど、描写が優れているため、「ベタだなー」とか思うこともなく、しっかりちゃんと恐ろしかった。

 また、第一章、第二章の締め方には驚かされた。

 各章の終わりの衝撃に、あれ? この小説は単にネットの怪談に肉付けしてブラッシュアップしただけの作品じゃねえぞ、と思った。これはもう話がどこに転がっていくかわからんぞ、と。

 第二章が終わった時点では、この作品はよくある怪談のパターンをあくまで最初のフックにしつつ、それを飛び越えてまったく新しい物語を書こうとしているのではないかと、そういう可能性を感じていた。

 それだけに、第三章で霊能者 琴子が出てきてからのストーリーは少し残念だった。

 琴子、出たときからもう強キャラ感がハンパなかったもの。噛ませにするためにあえて立ててるとかでなくて、もう出たときから勝ち確なのがわかってしまったもの。

 この時点で「ぼぎわん」が、完全に正体不明なおそろしい異物ではなく、怖いけど最後に負けることがわかるただのオバケになってしまった。

 最終決戦も、第一章、第二章にあったような非力な人間が理不尽に蹂躙される不気味さを失い、よくあるバトルアクションになってしまった。

 もったいない、と思う。

 途中までは、よくある「あんたすごいの憑けてきたね…」ものにおさまらない、何かとんでもないことが起こっている、と思っていたのに、最後はありがちなパターンの中に結局回収されてしまった。

 それでもめっちゃ面白かったけども。だから、「あんたすごいの憑けてきたね…」レベル100。記事のタイトルはそういうことです。同じ作者の次の作品も読んでみようかな、と思いました。

 あと、映画化するんですね。中島さんは小松菜奈松たか子と妻夫木くん好きなんでしょうか。

 面白そうだけど実写で「ぼぎわん」観たらたぶんしょんべん漏らすので観るかどうかは検討します。以上、よろしくお願いいたします。

 

ぼぎわんが、来る (角川ホラー文庫)

ぼぎわんが、来る (角川ホラー文庫)