惨状と説教

誰か山から降りてきてほたえてから山に帰っていく記事。ブログ

『呪術廻戦』をジャンプのHUNTER×HUNTER・BLEACH枠と呼んだ私が全裸で土下座してから腹を切ることについて

 大変失礼いたしました、と謝罪から入るんですが。
 1巻のときまで、表題のようなことを不遜にも考えていた。で、2巻を読んだ。
 枠とか代わりとかそういう次元じゃない傑作であると、このときになってようやくわかった。まことに申し訳ありませんでした。
 
 いや、1巻のときからず抜けて面白かったんですよ。衝撃だった。
 でもお化け出てくるし。能力者ものだし。
 モノの描き方冨樫に似てるし。でも冨樫は描かないし。BLEACHは作品が終わったし。
 ジャンプ的に、次のそういうのが欲しいのかな、と思った。
 冨樫のファンって冨樫の穴は誰にも埋められないって思ってるけど(思ってないか?  でも俺はそう)、違いますよ、ということなのかな、と。ちゃんとこういう作品がありますよ、と。そういう流れを受けて出てきた作品だと思っていた。
 
 違いました。
 
 HUNTER×HUNTERが毎週掲載されようがBLEACHがいまでも続いてようが『呪術廻戦』は載るよ。
 いや、雑誌内のジャンルの偏りとかあるかもしんないけど、でも載るよ。
 だって抜群に面白いもん。
 
 特にすげーな、と思うのは、作者の芥見さんは絶望感を出すのが本当に上手い。
 2巻まできて、主人公たちってものすごい格上と戦うことが多いんですね。え、作品始まったばっかりで、もうそういう相手とマッチアップするの?  という敵とやらされる。
 当然ボロ雑巾にされるんだけど、ただ肉体的に痛めつけられるだけじゃなくて、存在として圧倒される。精神的になぶられ、オモチャのようにもてあそばれる。
 で、作者のすごいところは、そういう絶望感を一コマにきゅっと圧縮してみせてしまう。
 よく戦闘マンガで、ページめくったら見開きで誰かいきなり死んでました、という演出がある。
 でも『呪術廻戦』では、普通に同じページ内の次のコマで状況が一変してたりする(ちなみに、他にこういうことができると個人的に俺が思ってるのが『ゴールデンカムイ』です)。
 敵と味方との圧倒的な差を描ける実力があると、「ページをめくらせることで読者の視界をいったん強制的に切る」という仕切りは別に必要ない。
 弱い側の意識に沿って流れていく、そのコマ運びの中に強い側はひょっと乱入する。なんとなく腕とかももいでみる。
 それだけで、十分格の違いが伝わる。芥見さんはそういうのが本当に上手いと思います。
 
 もう一つすげーなと思うこと。この漫画、とにかく展開が異常に早い。ものすごいスピードで物語が進行していく。
 なぜ早い、と感じられるかというと、物語のフレーム自体が割とよくあるものなので、ストーリーの進み具合を肌で感じやすいから。
 まず、基本的に悪いエネルギーだけど使い方次第で役に立つパワーを秘めた主人公が登場する。
 その周りに、同年代の仲間とか先輩とか師匠が登場する。敵が出てきて敵の幹部が出てくる。
 敵味方で戦闘が発生し、激化して、使用される火力が上がり攻撃手段も複雑化する。
 『呪術廻戦』もこのよくあるフォーマットに見事にのっとっている。しかし、このよくある流れに沿いながら、なんか2巻の時点で普通の長編漫画が中盤戦でやるような、強キャラ同士が満を持して繰り広げるような戦闘をしている。
 
 主人公の師匠のバトルがこの巻ではじめて描かれる。
 敵がまず強い。作中の火力の上限がこいつのせいでいきなり跳ね上がる。
 火力がすごすぎて、もう地形とかちょっと変えちゃう。あとすごい悪い。一般人も平気で大量に殺す。
 対する師匠。もっと強い。
 師匠の能力ははっきり言ってわかりにくい。
 でも間違いなく強い。というか強すぎる。こいつに勝てるやつっているのか?  というレベルで強い。
 バトルの内容自体については、クソ熱いけど珍しいものだとは思わない。重要なのは、「これは普通もっと後半でやる感じの勝負でないか?」…そういうバトルを2巻の時点でやってるということ、それが、俺はなんかマジですげえと思う。
 
 『ゴールデンゴールド 』の感想でも書いたけど、とても少ない、本当にごく一部の作品が、ある錯覚を感じさせることがある。
 それは、作品をエンタメであったり何かのメッセージを伝える目的でつくると同時に、作品というひとつのフレームを使って、何か実験のようなことをしているという錯覚である。
 例えば『ゴールデンゴールド 』を読んだとき、俺は、「これは超一級のストーリーであるとともに、物語が面白さを損なう臨界まで作中に情報量を詰め込む試み」だと感じた。
 で、『呪術廻戦』である。
 俺はこれは、よくある戦闘マンガのフォーマットを序盤から最高速度でぶん回したら何が起きるかって試みとしても読んでいる。
 作ってる側にそんなつもりはないかもしれない。というかたぶんない。でも、なんかそういう楽しませ方をさせる求道的な気配を勝手に感じてしまう。
 物語を進めるとき、その速度を速めたらどうなるか、普通に考えれば、フォーマットが高速で消化されるだけだろう。
 でも、『呪術廻戦』がこの速度で進んでいったとき、なんかまったく未知の何かが起きるんじゃないか? その何かを、物語上の起承転結とはまた別に楽しみにして読んでる。
 
 最後に、文句を一つだけ。おまけページで作者が説明なさっている、作中の特殊能力である反転術式と術式反転の解説について。
 すみません、何回か読んだけど、マジでわかりませんでした。
 そういうわけなんで、もう一回読み直そうと思います。
 次巻は年末?  かな? 楽しみです。以上、よろしくお願いいたします。

 

呪術廻戦 2 (ジャンプコミックス)

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