蠅と鬼と人 2023-12-17T00:12:52+09:00 kajika0 Hatena::Blog hatenablog://blog/8454420450098065748 バトルタワーのライコウと、スカーレット・バイオレットDLC『藍の円盤』に寄せることについて hatenablog://entry/6801883189066579499 2023-12-17T00:12:52+09:00 2023-12-17T00:12:52+09:00 ポケットモンスタールビー・サファイアに登場する施設に、バトルタワーというものがある。 ポケモンというゲームは基本的に、レベルさえ上げれば割と力押しでエンディングまで行けてしまう。ただ、対戦におけるエンドコンテンツ的な要素が強いバトルタワーでは話が別で、技の構成やポケモン同士の相性・役割の補完など、かなりシビアに考えないと先に進むことができない(厳密には、対CPUでほぼ100%勝つための構成と、対人の構成もまた別だが)。 例えば、ストーリー本編で愛用し、無双してきたポケモンだとしても、タワーでは行程の30〜40%ぐらいで超えられない壁にぶつかって永遠に跳ね返されるつくりになっている。ここから攻略… <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC%A5%EB%A5%D3%A1%BC%A1%A6%A5%B5%A5%D5%A5%A1%A5%A4%A5%A2">ポケットモンスタールビー・サファイア</a>に登場する施設に、バトルタワーというものがある。</p> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>というゲームは基本的に、レベルさえ上げれば割と力押しでエンディングまで行けてしまう。ただ、対戦におけるエンドコンテンツ的な要素が強いバトルタワーでは話が別で、技の構成や<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>同士の相性・役割の補完など、かなりシビアに考えないと先に進むことができない(厳密には、対CPUでほぼ100%勝つための構成と、対人の構成もまた別だが)。</p> <p> 例えば、ストーリー本編で愛用し、無双してきた<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>だとしても、タワーでは行程の30〜40%ぐらいで超えられない壁にぶつかって永遠に跳ね返されるつくりになっている。ここから攻略を続ける場合、イチから何体も対戦専用の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>を育て直すことになり、大変に面倒だ…なのだが、一方で<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>というゲームは、ある意味で「ここから」でもあるのだった。</p> <p> </p> <p> 20年近く前、まだ高校生だった頃、このバトルタワーに関する印象的な記憶がある。</p> <p> タワー攻略は35連勝が最初の大きな区切りであり、配置されたボスキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターを倒すと、次は70連勝、それから100連勝の記念品、最後はどこまで連勝を伸ばせるか、という話になる。その間、CPUが敵として使う<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>はどんどん強く、えげつなくなっていき、中には<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%BF%A5%B2%A1%BC">運ゲー</a>上等ではじめからこちらとまともに勝負する気なんてないような、製作者の悪意が凝縮されたような<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>も登場する。それをかいくぐり、タワーを上に、上に登っていく。</p> <p> おそらく、連勝数が60~70を超えたあたりだったような気がするが、CPUが出してきた<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>を見て、思わず「えっ」と声が出た。相手が<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>を出してきたからである。</p> <p> 当時、自宅にインターネット環境がなかったため、紙の攻略本と手探りでここまでやってきた俺は、まさか<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>が出てくるとは思わず、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/GBA">GBA</a>を手に少し固まってしまった。</p> <p> </p> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>というのはルビー・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%D5%A5%A1%A5%A4%A5%A2">サファイア</a>のひと世代前、金銀に登場する伝説の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>である。ゲーム中には一匹しか出現しない=一匹しか捕まえられない、特殊な立ち位置の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>で、ゲーム内の敵キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターが使用することもない。</p> <p> 言い換えると、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>のゲーム世界において、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>のようなポジションの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>を使うのは、主人公であるプレイヤーだけである。その原則の外に出るには、自分以外のプレイヤーと通信する=文字通り世界の境界を超える必要がある。</p> <p> </p> <p> 「おお、タワーをここまで登ってくると、敵が<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>を出してくるのか…」</p> <p> 実際、制作側からすれば、単にステージの難易度を上げて敵のパターンにバリエーションを持たせるための方策に過ぎないだろう。ただ、妙な興奮があった。</p> <p> </p> <p> あれから長い年月が過ぎ、当時の高ぶりを考えてみると、どうやらいくつかの感情に分解できるように思える。</p> <p> </p> <p> 一つには、大げさに言えば、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>というゲーム世界を覆うテクスチャーを破って、はぎとってやった、という、どこかうす暗いものがあったと思う。</p> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>というゲームは、奇しくも初代の赤緑から、特定の手順でコマンドを入れることで、(絶妙にプレイ続行の余地を残しつつ、)バグを意図的に呼び込めるという、当時の子供にとって、自分の手で一つの世界を破壊する原体験になるような作品だった。</p> <p> もちろん、俺がタワーで出会った<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>は正規の仕様なわけで、本質的にバグとは違う。</p> <p> ただ、本来なら主人公=自分以外は連れていないはずの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>を、なぜか<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/NPC">NPC</a>がしれっと使役しているという風景に、整然としたゲーム世界の破れ目をのぞいた感覚が、赤緑のときと同じく一瞬よみがえった気がした。</p> <p> </p> <p> もう一つあったのは、上で書いた世界がほつれる感覚とは反対に、物語があたらしく再構成される感覚だったような気がする。</p> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>の本編における大きな目的の一つは、最終盤にある<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3%A5%EA%A1%BC%A5%B0">ポケモンリーグ</a>というボスラッシュで連勝し、最後にラスボスであるチャンピオンを倒して、自分が新しいチャンピオンになることである。</p> <p> この苦難と感動の行程は、しかし、そのあとに始まる対戦用<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>のレベル上げという段階に入ると急激に色あせてしまい、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3%A5%EA%A1%BC%A5%B0">ポケモンリーグ</a>のボスたちを含め、旅の中で出会ってきた強敵たちは、最終的には経験値とお金を供給するための作業の一部になってしまうのだった。</p> <p> ゲーム本編のクリア後、他のどの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/NPC">NPC</a>も持っていないような、強力で変態的な構成の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>を連れて、ボスキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターが発するセリフをAボタンでポチポチ処理しながらレベルを上げるというのは、当時はなかなか孤独な作業だった(いまなら、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/SNS">SNS</a>とか動画配信とか、いくらでも並行してできることがある…)。‘</p> <p> そういう無機質になったゲーム世界において、バトルタワーに唐突に現れた<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>は、例えるなら「<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3%A5%EA%A1%BC%A5%B0">ポケモンリーグ</a>をとっくに突破したキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターたちが実は世界に大勢いて、そいつらは下界には目もくれず、延々とこの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E6%A1%BC%A5%C8%A5%D4%A5%A2">ユートピア</a>で勝負に狂っている」的な、マンガの新章のような新しい物語を錯覚させた。もちろんそれも、いつかは色あせ、敵が繰り出す<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>も他の伝説の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>も、タワー攻略のために淡々と処理する記号になってしまうのだけども。</p> <p> </p> <p> 三つ目の興奮は、二つ目と似ていて、少し違う。</p> <p> 二つ目が物語の再構成なら、三つ目は物語からの解放だったような気がする。</p> <p> 伝説の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>を唯一連れて歩けるのは主人公の特権だが、同時に、大げさに言えば、主人公だけに負わされた宿命だった。強烈な才能であると同時に、世界を救う英雄の義務、さらに言えば呪いであり、どこかで主人公をさいなんでいた(かもしれない)。</p> <p> そのときに出会った、「あれ、こいつも<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>連れよるわ…」という体験。</p> <p> もう、自分だけがヒーローじゃなくてもいいんだな。</p> <p> なんというか、そういうことである(かもしれない)。</p> <p> </p> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>というゲームは、街と街を旅しながら合間でマフィアをしばくという<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A5%E5%A5%D6%A5%CA%A5%A4%A5%EB">ジュブナイル</a>から始まった。</p> <p> 当時は、ボスキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターにあたる各街のジムリーダーも、子どもの目から見る「大人」の印象を上手いこと再現しているというか、旅を続けるために街を去っていく主人公に対して、ジムリーダーは街に残り、以降は物語にそこまでからんでこないところに、成人や自分よりも成熟した青年たちの責任感みたいなものが漂っていた(当時はまだ、各キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターを深堀りする開発リソースや容量がなかったからと言えばそれまでである)。</p> <p> </p> <p> 以降も、シリーズ本編において、青春に入るよりもちょっと前ぐらいの子どもが冒険の旅に出る、というフォーマットは変わらないが、物語の規模は段々大きくなり、主人公が背負うものも重くなっていく。</p> <p> ルビー・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%D5%A5%A1%A5%A4%A5%A2">サファイア</a>は世界の地表や海が広がり、最後は移動できるマップまで変形してしまうような話だし、時空間がテーマになることもあれば、主人公の戦いに人類の存亡がかかることもあった。</p> <p> </p> <p> 実は俺は、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>というゲームが、もしも初代から連綿と<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A5%E5%A5%D6%A5%CA%A5%A4%A5%EB">ジュブナイル</a>を一つのテーマにしているなら、シリーズの物語が壮大になる一方なのは、そこまで食い合わせがよくないんじゃないか、と思っている。</p> <p> なぜかというと、もしも世界の命運を託される条件に、何か特殊な才能や物語上の幸運(or 不幸)なタイミングがあるとして、主人公が少年/少女である必要性は、相対的にどんどん小さくなってしまう気がするからである。</p> <p> 一番最初の、「子どもが旅に出て悪い大人を懲らしめつつ、最後はライバルの友だちと決着をつける話」に対して、「無二の才能を持つ誰かが偶然アクシデントに巻き込まれて、最後は世界の危機を救うことになる」、それが子どもの物語である必然性って、商品としてキャッチ―だから、以上の何かであるのか? とか考えてしまう。</p> <p> そして、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%B3%A5%A6">ライコウ</a>どころか、世界の摂理自体に干渉できるような神に近い<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>に好かれるというのは、他の誰にもない選ばれし才能以外の何物でもなく、これが俺の中では、子どもの冒険というくくりとはうまく接合できなかったし、どこかで乗りきれない、押し着せられた宿命に感じるようになったような気もする。</p> <p> ただ、これは俺が30半ばを過ぎたオジサンが物語の構造を斜めで見たときの感想で、ルビー・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%D5%A5%A1%A5%A4%A5%A2">サファイア</a>以降の作品にはじめての体験として接した子どもたちが、物語に自分を投影して夢中になった、としてもおかしいところはまるでない。</p> <p> </p> <p> その俺が、2022年に出た最新作のスカーレット・バイオレットの物語に完全にノックアウトされた。</p> <p> 自分でも意外だし、一方で、「このストーリーだからこそ」とも思う。</p> <p> 正直にいうと、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>のストーリーにはもうあまり期待していなかったのだが、本当に久しぶりに「いいな」と感じてしまった。</p> <p> というか、赤緑をプレイしていた子どもの頃の楽しみ方は、没入が強いが故にしみじみ感じ入る感じでもなかったので、「いい話だった…」という満足感は、むしろはじめての経験かもしれない。</p> <p> </p> <p> 先に書いておくと、スカーレット・バイオレットの主人公も、別の時間軸からやってきた、物語の進行とともに地形を攻略すべく自在に変身できるようになる、非常に<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DA%A5%B7%A5%E3">スペシャ</a>ルな<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>を連れるようになる。</p> <p> そういった、過去作と同じ無二のギフテッドでありながら、それほどギラついていないのは、スカーレット・バイオレットにおける主人公の物語が、仲間たちのストーリーと関わり合いながらできているから、ある意味、他者の物語の「余白」に成立しているからだと思う。特に、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3%A5%EA%A1%BC%A5%B0">ポケモンリーグ</a>のチャンピオンを目指すという過去から続いてきた主軸を、いくつかあるストーリーの一つとして相対化し、主人公を孤高のチャンピオンとしてではなく、その権化のような別のキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターに伴走させる役割に変えたのはすごいと思った)。</p> <p> 今回の主人公は、とにかくまあいいやつで、彼/彼女の活劇は本人の才能や幸運というより、仲間を助け、励ます中で生まれたものという印象がすごく強い。</p> <p> 最終章でさえ彼/彼女は仲間と一緒にいて、どうしてもエンディングは壮大になったけど、それは他の仲間がそれぞれの役目を負って果たしたように、主人公には伝説の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>と一緒に一つの仕事をするという役割があり、その結果として果たされた、という感じだった。</p> <p> あの四人で行って・帰ってきたことで、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>は主人公を英雄の宿命や孤独から解放したように、俺には見えた。だから、すごく感動したのだ。</p> <p> </p> <p> ここまでが長い導入で、何が書きたいかというと、今秋から配信されているスカーレット・バイオレットの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/DLC">DLC</a>のことである。</p> <p> なぜスカーレット・バイオレットの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/DLC">DLC</a>かというと、「一つの才能として伝説の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>に好かれる『持てる(モテる)者』」としての主人公と、「持たざる者」の悩みの対比が、ここにきて鮮明に描かれているからである。</p> <p> ゲームとしての<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>は、実はこの点について誤魔化さずに、過去作を通じてずっと描き続けている。つまり、「ストーリーにおいて伝説の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>を連れてチャンピオンになることが宿命づけられた主人公に対し、必然的にそれに敗れていくライバルたちは(実は、現実世界の俺たちの多くの分身たちは)、世の中のどこに自分を位置付けるのか」というテーマである。</p> <p> </p> <p> 才能が一つのテーマとしてどうしようもなくフォーカスされるなら、敗れた者についてもボカさない、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%C3%A5%C8%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC">ポケットモンスター</a>というゲームが、好きは好きではある。ただ、スカーレット・バイオレットは(勝手に)、今回はそういう物語からズレます、という話だと思っていたので、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/DLC">DLC</a>の展開は少し意外だった。</p> <p> そんな、才能にまつわる残酷な対比がうかがえる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/DLC">DLC</a>の後編となる『藍の円盤』は今月、14日に配信された。</p> <p> 持てる者/持たざる者云々という見方は勝手に俺がしているだけだが、仮にそこに<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/DLC">DLC</a>の重要なポイントがあるなら、「どこに着地させるのだろう? 」という興味は尽きない(プレイ前である)。</p> <p> 歳をとると、フィクションで親身に感じる対象も、自分の子どもだったら…という目線で見てしまうのも、どうしても主人公よりは<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%B0%A5%EA">スグリ</a>の方である。<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%B0%A5%EA">スグリ</a>君が、苦しい道でも、日が当たらなくても、充実した道を歩けるといいと思っている。</p> kajika0 今日、脳から捨てたものについて ⑰ hatenablog://entry/820878482970868981 2023-09-26T22:59:48+09:00 2023-09-26T23:01:49+09:00 ランキング参加中 雑談・日記を書きたい人のグループ はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの 家がない! 元ネタは『妖怪ハンター』。 異界に吸い込まれてしまった小さい女の子が、偶然、現世に戻ってくることができた。しかし、異界にいる間に現世では長い時間が経過しており、家はとっくになくなってしまっていた。その際、彼女が発したセリフ。 自宅がなくなって呆然とするとか混乱するとかでなく、ただひと言、「家がない!」と怒る。 作者である諸星大二郎の特異性については、その画風を評して手塚治虫が「真似できない」と語ったことが有名だが、俺はこういうヘンテコなセリフ回し… <div class="embed-group"><a href="https://blog.hatena.ne.jp/-/group/6653812171403971647/redirect?blog_id=8454420450098065748" class="embed-group-link js-embed-group-link"> <div class="embed-group-icon"><img src="https://cdn.image.st-hatena.com/image/square/2152845ee3b176277ecd6038363c58dd708851db/backend=imagemagick;height=80;version=1;width=80/https%3A%2F%2Fcdn.blog.st-hatena.com%2Fimages%2Fcircle%2Fcircle-icon.png" alt="" width="40" height="40" /></div> <div class="embed-group-content"><span class="embed-group-title-label">ランキング参加中</span> <div class="embed-group-title">雑談・日記を書きたい人のグループ</div> </div> </a></div> <p> </p> <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 主旨はこちら。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsanjou.hatenablog.jp%2Fentry%2F2022%2F05%2F30%2F210000" title="今日、脳から捨てたものについて ① - 蠅と鬼と人" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2022/05/30/210000">sanjou.hatenablog.jp</a></cite></p> <h4 id="以下捨てたもの">以下、捨てたもの</h4> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20230926/20230926220934.png" width="664" height="421" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <h4 id=""> </h4> <h4 id="家がない">家がない!</h4> <p> 元ネタは『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%C5%B2%F8%A5%CF%A5%F3%A5%BF%A1%BC">妖怪ハンター</a>』。</p> <p> 異界に吸い込まれてしまった小さい女の子が、偶然、現世に戻ってくることができた。しかし、異界にいる間に現世では長い時間が経過しており、家はとっくになくなってしまっていた。その際、彼女が発したセリフ。</p> <p> 自宅がなくなって呆然とするとか混乱するとかでなく、ただひと言、「家がない!」と怒る。</p> <p> 作者である<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%F4%C0%B1%C2%E7%C6%F3%CF%BA">諸星大二郎</a>の特異性については、その画風を評して<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%EA%C4%CD%BC%A3%C3%EE">手塚治虫</a>が<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AB%B8%E6%98%9F%E5%A4%A7%E4%BA%8C%E9%83%8E#%E3%82%A8%E3%83%94%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%89" target="_blank">「真似できない」と語ったこと</a>が有名だが、俺はこういうヘンテコなセリフ回しの方に個性を感じる(単に絵についてよく知らないだけだが)。</p> <p> </p> <h4 id="トマトに砂糖かけるのか">トマトに砂糖かけるのか?</h4> <p> 元ネタは『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%CA%A5%CA%A5%DE%A5%F3">バナナマン</a>のバナナムーン』。</p> <p> 番組中、日村が主にしゃべって設楽が横からくだらない茶々を延々と入れ続ける、というパターンがあって、このセリフもこうした流れの中で設楽が発したもの。</p> <p> 日村がまだ新人だった頃、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%F3%A5%C8%C0%D6%BF%AE%B9%E6">コント赤信号</a>の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%CF%CA%D5%C0%B5%B9%D4">渡辺正行</a>から、将来的にどうしていくつもりなのか尋ねられたことがあったという。</p> <p> 「お前ら、(これから)どうすんの?」と、そのときの渡辺の言葉を再現する日村。つまり、芸人としての今後のプランはあるのか、という意味なのだが、その後を勝手に設楽が継いで発したセリフが、「トマトに砂糖かけるのか?」である。</p> <p> </p> <h4 id="社長も喜んではるわ">社長も喜んではるわ</h4> <p> 元ネタは『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%AD%A4%CE%BB%C8%A4%A4">ガキの使い</a>』の「絶対においしい~」シリーズ、炊き込みご飯回。</p> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%CA%A4%F3%A4%C7%A4%F3%A4%AB%A4%F3%A4%C7%A4%F3">なんでんかんでん</a>のインスタント麺を白飯に混ぜ込むというア<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%C7%A5%A2">イデア</a>を出した<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B3%BA%EA%CB%AE%C0%B5">山崎邦正</a>が、尋ねられてもいないのに「僕、(<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%CA%A4%F3%A4%C7%A4%F3%A4%AB%A4%F3%A4%C7%A4%F3">なんでんかんでん</a>の)社長のことも好きで…」となぜか語り出した後、「美味そう」「美味そう」と周囲の期待が高まる中で発したセリフ。</p> <p> </p> <h4 id="あれはお化けですよ">あれはお化けですよ</h4> <p> 元ネタは落語の演目『牡丹灯籠』。</p> <p> あまり言う機会のないセリフだと思う(これに限ったことではないが)。</p> <p> </p> <h4 id="このパッドを貼ってなこのパッドを貼ってな電流を流すのじゃ">このパッドを貼ってな このパッドを貼ってな 電流を流すのじゃ</h4> <p> 元ネタは『スナックバス江』。</p> <p> 元ネタの元ネタは芥川の『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%E5%C0%B8%CC%E7">羅生門</a>』。</p> <p> この作品、基本的には奇想とか斬新という印象はなく、別にけなすわけでもなんでもなく(ファンなので)、優等生的なギャグ漫画だと思うのだが、このネタに関しては本当に狂ったようなすごい発想だと思った。</p> <p> </p> <h4 id="素晴らしきかな-初期衝動">素晴らしきかな 初期衝動</h4> <p> 元ネタはあるが、確実に誰にもわからない。だって20年近く前に、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AA%C3%E3%A4%CE%BF%E5">お茶の水</a>の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%F4%A5%A3%A5%EC%A5%C3%A5%B8%A5%F4%A5%A1%A5%F3%A5%AC%A1%BC%A5%C9">ヴィレッジヴァンガード</a>の店内POPに書かれていたコピーだからである。</p> <p> 浪人時代に、ほぼ毎日通っていた。あの独特な香りのする店内で、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%D6%A5%AB%A5%EB%A5%C1%A5%E3%A1%BC">サブカルチャー</a>な本棚の間を濁った目で歩きながら(tだ、目は今でも濁っている)、黄色いPOPの文字が並んだ空間にいることで救われた時期があった。</p> <p> </p> <h4 id="浮世根問">浮世根問</h4> <p> 落語の演目から。</p> <p> 知ったかぶりのご隠居を生意気なクソガキが延々と問い詰めていくという内容。ガキに「浄土というのはどこにあるのだ」と聞かれ、ご隠居が「西にある」と答え、「そこから先に西に行くとどうなるのだ」…というやり取りが続く。</p> <p> 途中、回答に窮したご隠居が苦しまぎれに「そこから先はもう、むやみに朦々(もうもう)としているのだ」と答えるターンがあり、その困り方を笑うところだろうけども、実際のところ、あらゆる物事のさらに先は、むやみに朦々としているとしか言いようがない領域があるんだろうな、という気もして印象に残っている。</p> <p> </p> <h4 id="まるまーる">まるまーる</h4> <p> 元ネタは『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%AD%A4%CE%BB%C8%A4%A4">ガキの使い</a>』の企画、ハイテンション・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B6%A1%A6%A5%D9%A5%B9%A5%C8%A5%C6%A5%F3">ザ・ベストテン</a>。サバンナ・八木の持ちネタ(?)。</p> <p> 自分の体を丸めて「まるまーる」、体を広げて「だいまーる」というだけのネタで、とてもベテランがやるような内容ではない。</p> <p> 最後のオチはネタを見せ終わったのち、司会役の松本から「(あなた)芸歴何年ですか?」と尋ねて「18年です」と答えるところ。</p> <p> </p> <p>以上</p> kajika0 写真について hatenablog://entry/820878482970547333 2023-09-25T23:43:07+09:00 2023-09-25T23:43:07+09:00 特別お題「わたしがブログを書く理由」 その日、その瞬間が来る前から「やるなよ」と前フリではなくクギを刺されていたことがある。危険というだけでなく、迷惑だからである。 それでもまあ、やるやつはいるだろうから制止するための人員が現場に待機していたんだけども、配置するにあたって当然時間と経費がかかっていることは考えなくていけない。 で、いざやるやつが現れれば、「ああ、よかった。配置しておいて無駄にならずに済んだ」というものでもないのだ。単に誰もやらなければ、その方がいいに決まっている。 それで、まあ案の定というか禁止されていることをやるやつが出てきて、そうしたら今度はその瞬間を写真に撮ったものがあっ… <p>特別お題「<a class="keyword" href="https://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/bunfree_tokyo37">わたしがブログを書く理由</a>」</p> <p> </p> <p>         <img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20230925/20230925194333.jpg" border="0" alt="f:id:kajika0:20230925194333j:image" title="f:id:kajika0:20230925194333j:image" width="315" height="420" loading="lazy" /></p> <p> </p> <p> </p> <p> その日、その瞬間が来る前から「やるなよ」と前フリではなくクギを刺されていたことがある。危険というだけでなく、迷惑だからである。</p> <p> それでもまあ、やるやつはいるだろうから制止するための人員が現場に待機していたんだけども、配置するにあたって当然時間と経費がかかっていることは考えなくていけない。</p> <p> で、いざやるやつが現れれば、「ああ、よかった。配置しておいて無駄にならずに済んだ」というものでもないのだ。単に誰もやらなければ、その方がいいに決まっている。</p> <p> </p> <p> それで、まあ案の定というか禁止されていることをやるやつが出てきて、そうしたら今度はその瞬間を写真に撮ったものがあって、それが印象的だというのですごく評判になって…もうあんまり書きたくないけども、「納得いかねえな」と思って一人でムカついている。</p> <p> </p> <p> だって、ダメって前から言われてたじゃん。</p> <p> 普通に、人に迷惑がかかってるじゃん。</p> <p> そこにも、誰かのお金が使われてるじゃん。</p> <p> ダメだろ、それ。</p> <p> </p> <p> で、どれだけインプレッシブな写真として仕上がっていようが、そして、そこにその瞬間の記録がどうとか空気感がどうとか、どんな理屈をつけようと、それが世に出回ったら、今度また同じような状況になったときに、同じようなやつを出す方向に拍車がかかるに決まっている。</p> <p> じゃあ、公開も拡散も、しない方がいいだろ。今。この時点で。</p> <p> それで将来、またそのときに、「言ってもどうせ守られねえだろうな」「警備しててもやるやつはいるだろうな」「だって、言ってもあいつらはやるし、面白ければ外野もOKなんだしな」って体制側の無力感の中で、次も同じことが起こって、そのときは誰かが死んだり病気になったりするかもしれないし、ならなかったらならなかったで、「やってはいけないことだけど、その場の感動と熱気をとらえた印象的な瞬間」と再びみんな言うのだろうか?</p> <p> そういう状況を、クソ、というのだ。</p> <p> </p> <p> 俺みたいな人間を俗に「ノリが悪い」という。</p> <p> 何がノリだこの野郎。知ったことじゃねえんだ。</p> <p> そう言い返してやるのは、「やっちゃいけないけど楽しいよな/便利だよな/一体感があるよな。だから、やっちゃったらやっちゃったで仕方ないし、そこで生まれたものをアレコレ言うのは野暮だよな」という声に対して「関係あるかボケ、やっちゃいけねえもんは、やっちゃダメで、仕方ないことなんて1mmもないし、そこで生まれたものも評価しちゃダメなんだ」と半ギレしつつ冷静に応えることが、人間を進歩させたと信じているからである(本当にちゃんと進歩しているとして)。</p> <p> ノリが悪かろうが、間違っているものは間違っているし、不快なものは不快だと言わなくてはならない。</p> <p> もし、それができていなかったら、人間はいまだに祭りで猫を焼いて、女性や外国人をいまよりも差別し、自分と同じ立場であるはずの誰かでさえ、いまよりももっと激しく阻害しようとしていると思っている。</p> <p> </p> <p> やっちゃいけないことを「やっちゃいかんのだ」と怒る大切さと一緒に、それが自己満足と暴走に揺らいでいく容易さを知っているつもりでいるから、この辺で距離を取っておく。</p> <p> 取っておきたい。</p> <p> だって、怒るのは楽しい。</p> <p> いずれにしても、俺はやってはいけないことをした人より、それを面白がっている周囲の方が嫌いである。だから、写真に写っている人よりも、あの写真そのものが大嫌いである。</p> <p> </p> <p> そういうムカつきが、このところ鬱積しているのか、何の関係もなく根本的に俺がぼんやりした人間なのか、近所の海にいって呆然とひたすら波を見ている。</p> <p> この浜は地形の関係で、西に突き出た岬が水平線よりも先に太陽を迎える。それで太陽は岬の陰に姿を消すのだけど、海に沈んではいないから残光を放っていて、それが夕闇が来る前に不思議な藍色をつくる。</p> <p> キレイだな、と思って見ていて、「あ」と思う。鑿を一つ打ったような白い三日月が、藍色の空にかかっている。</p> <p> 月、すげえな。と思う。その下は薄墨から朱色のグラデーションになっている。そして、波打ち際はいきなりねっとりと暗い。遊んでいた誰かがじゃれ合いながら海から出てくるところだ。</p> <p> 誰が何と言おうが、この写真の方がいい。</p> <p> やっちゃいけないことをやったその瞬間がどれだけ美しかろうと、俺の写真の方がずっといい。</p> <p> ざまあみろ、と言い放つのは俺の性格の悪さゆえで、要は俺は、「お前ら全員間違ってるぞ」と言うためにブログを書いている。</p> <p> 俺も間違ってるかもしれないが、お前らの方が間違ってるぞ、と言うために書いている。</p> <p> そして、反論が返ってくる前に俺は耳を閉じて、もう一度写真の美しさに戻る。</p> <p> だって本当にいい写真じゃないか?</p> kajika0 「物語を楽しむとは」第1夜、もしくは『君たちはどう生きるか』の感想について hatenablog://entry/820878482952291079 2023-08-14T12:00:00+09:00 2023-08-15T01:19:32+09:00 はじめに 映画のスタッフロールを観るたびに、「映画って、ほんとに色んな人が協力してできてるんだな」と思う。 「◯◯監督最新作」とくくられがちであるこの芸術が、実は監督の下の制作チームを含めて構成されていて、各チームにはリーダーがおり、それ以外にも広報、プロデューサーで成り立ってることが、スタッフロールを見るとよくわかる。 …ということを書いておきながら、俺は映画の制作体制にあまり興味がない。 そういう楽しみ方や興味があること自体はわかる。 単に、自分が何かの作品を好きになる過程で、そういう情報がなくても好きになれるので、あまり関心がないということである。だから、監督の周囲との人間関係とかも興味… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 映画のスタッフロールを観るたびに、「映画って、ほんとに色んな人が協力してできてるんだな」と思う。</p> <p> 「◯◯監督最新作」とくくられがちであるこの芸術が、実は監督の下の制作チームを含めて構成されていて、各チームにはリーダーがおり、それ以外にも広報、プロデューサーで成り立ってることが、スタッフロールを見るとよくわかる。</p> <p> </p> <p> …ということを書いておきながら、俺は映画の制作体制にあまり興味がない。</p> <p> そういう楽しみ方や興味があること自体はわかる。</p> <p>  単に、自分が何かの作品を好きになる過程で、そういう情報がなくても好きになれるので、あまり関心がないということである。だから、監督の周囲との人間関係とかも興味がない。</p> <p> </p> <p> そういう前提で感想を書く。</p> <p> </p> <p> あと、作品を観る前にこんな記事を読んだ。</p> <p> </p> <blockquote> <p><em>「おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳が分からないところがありました」。</em></p> </blockquote> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="「君たちはどう生きるか」宮崎駿監督が、新作映画について語っていたこと。そして吉野源三郎のこと|好書好日" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fbook.asahi.com%2Farticle%2F14953353" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://book.asahi.com/article/14953353">book.asahi.com</a></cite></p> <p> 別に、「訳がわからなく」てもいいらしい。公式がそう言っていると安心する。</p> <p> </p> <h4 id="ネタバレなしの感想">ネタバレなしの感想</h4> <p> 上映開始から1ヶ月近く経ってネタバレなしもクソもないものだけど、一応、先に詳細を伏せた感想を書いておく。</p> <p> </p> <p> 面白かった。</p> <p> </p> <p> 上でも紹介したが、訳がわからなくても別にいいらしく、実際のところ俺も、「よくわからんな」と思いながら観ていた。</p> <p> 同じ「訳がわからんな」という映画でも、最近観た中では『TENET』は相当苦痛だったのだが、何が違ったのだろうか? (もう、最近でもないか)</p> <p> たぶんだけど、『TENET』が作品ルールの理解を前提として視聴するように求めていたのに対して、『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>』は、はじめから、世界観の一貫した説明がつかない(つける必要がない)ものとして示されていたから、という気がする。</p> <p> 要するに、「訳がわからないまま観てればいいのね」という前提で観られたのがよかった。その上で、自分なりに理解できる説明を考えたり、それもできないところは、印象的なところを単に楽しめばいいらしいぞ、と。</p> <p> 少し先走るが、俺は『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>』という作品のテーマ自体が「訳のわからない中で自分なりに現実を整理して取捨すること」にあると思っている。</p> <p> そういう意味で、自分がいま映画を観ながらやっていることと、映画の伝えたいこととが、上手く重なったような気がする。</p> <p> </p> <p> いずれにしても、訳がわからなくていいらしいので、理解できるかどうかを観る前に不安に感じなくてもいいと思う。一方で、意味がわからなくてつまらなかった、という感想ももっともだ、とも思っている。</p> <p> </p> <h4 id="訳がわからなかったところの話-">「訳がわからなかった」ところの話 ①</h4> <p> 以下、詳細なネタバレを含む。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> 訳がわからんと言いながら、じゃあ、それはどこだったのか、ということを書く。</p> <p> </p> <p> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>』で俺が「訳がわからん」と感じたところは、おおまかに言うと二つに分かれる。</p> <p> 一つ目は、世界観の矛盾(というか、未整理の部分)。</p> <p> 二つ目は、キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターの行動やストーリーについて、「なぜそういう展開になる?」と混乱した部分である。</p> <p> </p> <p> まず、一つ目の「訳がわからん」である、世界観の矛盾から書く。</p> <p> 俺は、『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>』の世界観はいくつかの点で整理ができていない(あるいは、そもそもしようとしていない)と思う。</p> <p> </p> <p> 例えば、主人公・眞人が異界で出会ったワラワラという存在について考えてみる。</p> <p> ワラワラは、産まれる前の魂であり、異界を上に登って眞人たちの世界に移ることで人として産まれるという。「なるほど、そういう設定なのか」と観ていて思う。</p> <p> しかし、そのあとで、身重である主人公の継母(ナツコ)が異界で出産をひかえている描写が出てくるので、「おや?」と思う。</p> <p> ワラワラ=人間の魂が人として産まれるためには、眞人たちの世界にわたる必要がある。ということは、少なくとも異界は、人間を産んだり産まれたりするための世界ではない。</p> <p> しかし、ナツコは異界で出産を控えているようだ。これはおかしいぞ、と思う。</p> <p> </p> <p> 異界における「ばあやの人形」の扱いもよくわからない。</p> <p> 眞人と一緒に異界に入ってしまったキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターに、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C1%C2%B3%AB">疎開</a>先にいた大勢のばあやの一人・キリコがいる。</p> <p> しかし、異界の中でキリコ自身は描かれず、代わりに登場するのは「若いキリコ」、それからキリコの人形である。</p> <p> キリコの人形は眞人が持ったまま、異界から眞人たちの元の世界に持ち出される。それと同時に、人形はばあやのキリコになる(ばあやに戻る?)。</p> <p> つまり、人形=ばあやのキリコ、ということになる…はずなのだが、ややこしいことに、異界にはキリコ以外のばあやの人形も登場する。</p> <p> 眞人と一緒に異界に入ってしまった(人形になってしまった?)キリコとは違い、他のばあやたちは元の世界で普通に生活している。しかし、異界にはそこに迷い込んだキリコ以外のばあやの人形も出てくる。</p> <p> もしも眞人が、キリコ以外のばあやの人形を異界から元の世界に持ち出していたら、人形がばあやになって、何人かのばあやが二人になってしまうのか?</p> <p> まさか、そんなことにはならないはずだ。これも、なんだかおかしいな、と思う。</p> <p> </p> <p> もう一つ、矛盾とまではいかないが説明が不十分だな、と思う点がある。</p> <p> そもそも、観客は眞人がやって来た元の世界と異界とを、どういう構造で観たらいいんだろう、ということである。</p> <p> 眞人が異界から元の世界に戻ってくると、異界から一緒に出てきた人間インコたちは普通の鳥になる。上で書いたとおり、キリコの人形もばあやのキリコになる。</p> <p> ここだけ見ると、眞人の元の世界は魔法を解く世界=現実世界であり、『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>』は現実世界と魔術的異界の対比になっているように感じられる。</p> <p> しかし、実は元の世界にも魔術の一部は存在する。なにしろ、異界の存在であるはずの青鷺は元の世界を自由に飛び回っているし、青鷺の羽で作った矢は、元の世界でも超常的な力を持っているからだ。</p> <p> そう考えると、現実対魔術という対比ではなく、「ほぼ現実(でも、やや魔術的)」と「完全に魔術的」という方が正しいように見える。この場合、世界同士の対比というより、並列関係という構造の方がしっくりくる気もする。</p> <p> 対比か、もしくは並列か。</p> <p> どう理解するのが正しいのかはわからない。ちなみに俺は、眞人が異界に入る前に路上で登場した戦車がヘンテコに小さいのを見て、「ああ、ここも史実の世界ではなく架空のファンタ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>世界なんだな」と思っていた。</p> <p> </p> <p> こうしたことを受けて俺が感じた結論は、「この作品の世界観に整合性を求めてもあまり意味がない」というものだった。</p> <p> 実は本来、俺は物語の整合性にかなりこだわる。筋道が通っていない展開があったり、説明が不足している部分があると、強いストレスを覚える。</p> <p> そのため、「どうやらいい加減に観ていても問題ないらしいぞ」という結論に至ったあとも、楽しんで観られたのは我ながら意外だった。もしかすると、一つ一つの場面が面白くて見続けてしまったのかもしれない(大きな魚をバリブリと解体する場面とか、人間インコのかわいさとか)。</p> <p> </p> <p> 眞人が異界に落ちてきたばっかりのとき、孤島の上にある巨大な岩室のようなものと、「墓の主」という非常に意味深なワードが登場する。</p> <p> しかし、これらが何なのかは明かされない。最後まで観ていてもわからないんである。</p> <p> こういう存在が出てくる作品の中で、整合性を気にしてもしかたがないんだろうな、とあらためて思う。墓の主という存在自体が「細かいことを気にするな」という作者からのヒント…とまでは言わないが、俺にとっては「じゃあ、あんまり考えても意味ねえな」と思うきっかけになったのは確かだった。</p> <p> </p> <h4 id="訳がわからなかったところの話--1">「訳がわからなかった」ところの話 ②</h4> <p> 続けて、二つ目の「訳のわからなさ」、キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターの行動やストーリーについて、「なぜそういう展開になる?」と混乱した部分について書く。</p> <p> </p> <p> なぜ、あのキャラが、あんな行動を取ったのか。</p> <p> あるいは、なぜ、ああいうストーリーの進行をしたのか。</p> <p> 先に書いた世界観の矛盾が、あんまり深く考えても仕方ないんだな、と落ち着いて処理できたのに比べると、こっちの方が受け止めるのにエネルギーが必要だった。</p> <p> 逆に言えば、いちいちマジメに受け止めて、その謎を解こうとしたのである。</p> <p> これは、「なんでこうなったか、観ている方々はわかるかい?」と挑発されたと感じたからかもしれない。実際はどうにせよ、謎を感じれば解こうとせずにいられない、観客というのは傲慢だな、と思う。</p> <p> </p> <p> 「なぜこんな展開になる?」の一個めは、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C1%C2%B3%AB">疎開</a>先の子どもたちとケンカになった眞人が、ケンカの帰り道で、石で自分の頭を割る場面である。</p> <p> 眞人がいきなり、自分の頭に石を勢いよく打ち付ける。ごぽ、どぱぁ、という非常に特徴的な液体の質感で、鮮やかな血が流れるシーンだ。</p> <p> 一応、簡単な説明はできる。</p> <p> 眞人が石で負った大怪我を見て、眞人の父親は地元の子どもたちのせいだと誤解し、その責任をとらせようとする。眞人は加害者たちへの嫌がらせのためにわざと自分を傷つけた、という解釈だ。</p> <p> 眞人自身も、物語の終盤で自らの悪意と石の関係について触れているため、おそらくこれが正解なのだろう。</p> <p> それでも、俺はやや腑に落ちなかった。なぜかというと、眞人という少年が繰り返し、勇敢で誠実なキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターとして描かれるため、陰湿な悪意とはあまりかみ合わないと思ったからだ。</p> <p> </p> <p> うーん? と考えた結果、個人的に納得がいく解釈としては、あの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%BD%FD">自傷</a>は自分への制裁でもあったんじゃないか、と思う。</p> <p> 眞人は田舎に来る前に火事で母親を亡くしている。眞人は火傷覚悟で現場に向かったのだが、結局、母の命を救うことはできなかった。</p> <p> その後、地元の子どもたちにいじめられたとき、眞人はもしかすると、多人数である彼らにかなわないまでも、せめてズタボロになるまで抵抗して、あの火事から「生き残ってしまった」自分を納得させるところまで戦いたかったのではないか。</p> <p> しかし、結果としてはあっけなくやられたばかりか、負った傷といえば、ぱっと見ですり傷だけという、ある意味でもっとも情けないことになってしまった。</p> <p> そういう自分への不甲斐なさ、怒りが、石で自分の頭を割るというかたちになった、と俺は解釈した。</p> <p> </p> <p> 「なぜそういう展開になる?」の二個めは、物語の最後の最後、エンディングの扱いである。</p> <p> 眞人が異界から帰ってきたあと、ストーリーは急激な速さで閉じられてしまう。俺はここに大きな違和感を抱いた。</p> <p> 眞人が異界から元の世界に戻り、画面が暗転すると、次の場面ではナツコが出産を終えて家族が増えており、一家は<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C1%C2%B3%AB">疎開</a>先の家を発つ。</p> <p> ここまでわずか数分。そして、『君たちはなぜ生きるか』は、ここで唐突にスタッフロールを迎える。</p> <p> </p> <p> 不可解と言っていいぐらい、最後にここまで早く物語をたたんだのは何が理由なのか?</p> <p> なぜ、異界から帰ってきた後の眞人の生活は、ほぼ完全に省略されてしまったのか?</p> <p> </p> <p> 確かなのは、製作者側が「異界から戻ってきてからを描く必要はない」と判断したことだろう。言い換えれば、描くべきことは、ここまでで全部描かれた、ということになる。</p> <p> では、エンディングを迎える条件を満たす「描くべきもの」とは何だったのだろうか。</p> <p> </p> <p> うーん、と考えて、大事なのはこれかな、というものがいくつか思い浮かんだ。</p> <p> </p> <p> まず、眞人に深い悲しみを負わせることになる母親・ヒサコの死。</p> <p> そして、ヒサコの若い頃の姿と思われるヒミに異界で出会い、冒険を共にして、最後に「あなたのような子を産むなんて幸せ」という言葉をかけられたこと(これは、文字で起こすとなかなか……だ)。</p> <p> それから、異界への通路である塔の崩壊。</p> <p> 最後に、映画につけられた『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>』というタイトル。</p> <p> </p> <p> どうも、この辺りを整理すると、最後の急速なエンディングの理由がが理解できるような気がする。</p> <p> </p> <h4 id="君たちはどう生きるか">『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>』</h4> <p> ベタな言説だけれど、「過去の出来事を変えることはできないが、その意味を変えることはできる」という言い方がある。</p> <p> 自分の記憶にどういう意味合いや価値を与えるかは、ある意味で個人の人格そのものだから、簡単に変えられない。</p> <p> それでも、いくつかの方法で過去の意味を上書きすることはできる。強烈に印象的な物語に触れて、人生観をゆさぶられる体験は、そのうちの一つに含まれるだろう。</p> <p> たぶん、眞人の身に異界への冒険を通じて起こったのは、これと同じような変化だったのではないかと思う。元の世界とは違う幻想世界を通じて、永遠に喪われたはずの母親から、自分を強く肯定してもらうこと。そういう自身の人生の再解釈だったんだと思う。</p> <p> </p> <p> もちろん、眞人の母親であるヒサコ自身は、もう眞人に声をかけられない。言葉をかけられるのはヒサコの若い頃の姿・ヒミである。</p> <p> こうした間接的で遠回しなかたちで、アド<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D9%A5%F3%A5%C1%A5%E3%A1%BC">ベンチャー</a>という枠組みに込めることでようやく力を発揮する、しかし、もし願ったとおりに機能すれば現実さえ変えられるファンタ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>の力。それがあそこで描かれていたんだと思う。</p> <p> </p> <p> そのファンタ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>の大元である塔は、しかし、物語の最後に壊れてしまった。</p> <p> 肝心なこととして、塔とそこで生まれた物語は、眞人にとっては、第<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%BC%D4">三者</a>から与えられたものだ。</p> <p> その塔が壊れてしまったのだから、眞人はこれから自分の力で、この世界、不条理で残酷で、幻想的な異界とは違う意味で「訳がわからない」世界に対して、自分なりに筋の通った、もしくは筋は通らないけど自らを鼓舞できる物語を考えなくてはならない。</p> <p> 塔なしでどうやって生きていくか。</p> <p> この世界に筋を通すか。</p> <p> だから、『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>』、なのだと思う。</p> <p> </p> <p> ただし、実際のところ、眞人が「どう生きたか」は、塔から出て以降の展開が急速にたたまれたため、まったくわからない。</p> <p> そう、あまりに唐突なエンディングの謎が、まだ残っているのである。</p> <p> </p> <p> 俺は、この理由は、話の最後に作品の視点が、眞人から別のところにズレたからだと思っている。</p> <p> 塔の崩壊を体験し、「塔の消失以後」をどう生きるか問われるのは眞人だけではない。ある意味では観客である我々も同じである。</p> <p> 眞人のその後をあっけなく省略し、「どう生きるか」という大切な問いを不自然なくらい宙ぶらりんにさせる。これは、眞人の次に俺たちに向けて、「どう生きるか」という問いが移ったということなのではないかと思う。</p> <p> </p> <p> 塔を管理していた「大叔父」が、映画を観ている俺たちの世界における誰のことだったのか、あるいは、塔が何かの組織の暗喩なのか、俺はその答えは別にわからなくていい。</p> <p> ただ、とにかく、この映画には無数の幻想世界の巨大な中央ターミナルである塔が登場し、そして、ぶっ壊されてしまった。</p> <p> 塔を作り、そして壊した物語の作者が「じゃあ、これから『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>?』」と観客に質問する……、まあ、そういう権利がないこともないよな、とは思う。</p> <p> これが、俺の『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>?』の解釈であるので書いておく(実際のところ、「塔」が一つぶっ壊れたところで、同じようなものが俺たちの世界には他に無数にあるとしても)。</p> <p> </p> <h4 id="君たちはどう物語を楽しむか">君たちはどう物語を楽しむか</h4> <p> ここまで書いて、俺の中では色々と腑に落ちた。</p> <p> 書いていて楽しかった。</p> <p> 気になっていることを整理するのは楽しい。</p> <p> 整理しながらうまい説明が思いつくと、つい、「きれいに整理できること」と「良い作品だったこと」をイコールで結びつけたくなってしまう。</p> <p> </p> <p> 別に、「訳わからんけど楽しかったな(つまんなかったな)」というのだって立派な感想のはずだ。</p> <p> それでも、俺の観測範囲内で、『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%AF%A4%BF%A4%C1%A4%CF%A4%C9%A4%A6%C0%B8%A4%AD%A4%EB%A4%AB">君たちはどう生きるか</a>』は自分だけがたどり着いた真実を示す考察ゲームの中で語られている。俺だって、「俺はこう感じた」という言葉を、「俺は作者の思考を理解しきって真実にたどりついたぜ!」と言い切る傲慢さを抑えて、なんとか小声で発している。</p> <p> </p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fmangacross.jp%2Fcomics%2Futsugohan%2F94" title="鬱ごはん 【コミックス最新4巻発売中 !】 | 施川ユウキ |試し読み・無料マンガサイトはマンガクロス" class="embed-card embed-webcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://mangacross.jp/comics/utsugohan/94">mangacross.jp</a></cite></p> <p> 「私はこう読み解いた」というファッションが幅をきかせる世界において、「別に楽しけりゃ良いじゃん」という意見は、一見有効なアンチのように見えて、実は別のファッションとしてしか、意味を持ち得ないのかもしれない。</p> <p> それが製作者の望んだリアクションというか、望んだ世界だとは思えない。</p> <p> その点でも俺たち(のうちの一部)は、自分たちがこれからどうやって生きて(物語を楽しんで)いくかを考えるときが来ているのかもしれない、と思う。</p> <p> </p> <p> ※ この記事は、現代で「物語を楽しむとはどういうことか」を考えるために書いた、何回かのうちの第1回である。次があるかどうかは神の味噌汁。</p> kajika0 悪夢について8 hatenablog://entry/820878482950245656 2023-07-16T21:00:00+09:00 2023-07-16T21:00:03+09:00 ランキング参加中夢日記 逃げ込んだ先は、真っ暗な夜の校舎の中だった。 山の中で、猿に似た正体のわからない無数の獣に襲われて、命からがらこの建物にたどり着いた。自分以外にも十数名ぐらいの人たちが一緒に逃げている。 校舎の一階にある教室のうちの二つに、みんな恐慌に包まれながら、半分ずつに分かれてなだれ込んでいく。引き戸になっているドアを強く叩きつけるように閉めた。 唐突に静寂がやってくる。闇の中で、人間の荒い呼吸音しか聞こえない。隣の教室の様子も一切聞こえてこない。こちらの部屋の中にいる人たちの顔を見回した。誰の顔も知らなかった。 じゃり、じゃ 建物の外で小さく何かがきしむような音が聴こえてきた。… <p><div class="embed-group"><a href="https://blog.hatena.ne.jp/-/group/11696248318757168459/redirect" class="embed-group-link js-embed-group-link"><div class="embed-group-icon"><img src="https://cdn.image.st-hatena.com/image/square/7a50bf4fb5275d8ad7b202a7d7956146bcc13d16/backend=imagemagick;height=80;version=1;width=80/https%3A%2F%2Fcdn.user.blog.st-hatena.com%2Fcircle_image%2F443215%2F1514353003597883" alt="" width="40" height="40"></div><div class="embed-group-content"><span class="embed-group-title-label">ランキング参加中</span><div class="embed-group-title">夢日記</div></div></a></div></p> <p> 逃げ込んだ先は、真っ暗な夜の校舎の中だった。</p> <p> 山の中で、猿に似た正体のわからない無数の獣に襲われて、命からがらこの建物にたどり着いた。自分以外にも十数名ぐらいの人たちが一緒に逃げている。</p> <p> 校舎の一階にある教室のうちの二つに、みんな恐慌に包まれながら、半分ずつに分かれてなだれ込んでいく。引き戸になっているドアを強く叩きつけるように閉めた。</p> <p> 唐突に静寂がやってくる。闇の中で、人間の荒い呼吸音しか聞こえない。隣の教室の様子も一切聞こえてこない。こちらの部屋の中にいる人たちの顔を見回した。誰の顔も知らなかった。</p> <p> じゃり、じゃ</p> <p> 建物の外で小さく何かがきしむような音が聴こえてきた。あの獣たちがやってきた。敷き詰められた小石が踏まれて、音が鳴っているのだ。獣たちがこの校舎の周囲を回っている。</p> <p> じゃり、じゃり、という音は小さいが、あの動物たちは気配を殺そうとしているわけではない。あの獣はおそろしく頭がいいからだ。そのぐらいの音量を断続的に響かせることが、どれほど人間を疲弊させるかよく理解している。獣たちは賢く、同時に悪意に満ちている。</p> <p> 「開けてくださあい」</p> <p> カーテンを引いた窓ガラスの向こうから声がする。獣たちが人の声を真似ている。</p> <p> 「開けてくださあい」</p> <p> 「助けに来ましたあ」</p> <p> 嘘であると見抜かれていることを、獣たちははじめから理解している。理解して、いたぶるためだけに言っている。外から呼びかける声には、あざけるような笑いが含まれていた。</p> <p> それから少しの間、静寂が訪れた。いきなり、何か激しくぶつけるような音が教室の後方から聴こえた。</p> <p> 驚いて音のあった方を見る。教室が暗くていままでわからなかったが、教室の壁際に、そのまま開けて建物の外に出られるアルミ製のドアがあった。ロックはされているが、そのドアノブが外からつかまれて、めちゃくちゃに動かされている。</p> <p> ひときわ大きい、金属の機構がへし折れた音が鳴って、ドアが開きかけるのと、ドアに駆け寄ってドアノブをつかむのとは同時だった。</p> <p> すさまじい力でドアが向こう側にこじ開けられそうになるのを、全体重をかけて引き戻す。わずかに開いた隙間から、指先が異様に長い毛だらけの手が、木の枝が伸びるようにして入ってきた。</p> <p> 動物の指は音もなく、こちらの手にからみついてきた。</p> <p> くふ</p> <p> 外から声が聴こえる。ドアの向こうで笑っているのだ。獣の指が、ドアノブを握りしめるこちらの指をつまむ。冷や汗が出るような痛みがやってくる。</p> <p> その気であれば簡単に折ることも、ちぎり取ることもできるだろうに、そうしない。わざと負荷が限界を超えないところでとどめている。闇の奥で獣が笑いを押し殺しているのがわかる。</p> <p> もし教室に侵入してきたら、獣たちはこちらを食って殺すだろう。しかし、その前にさんざんこちらを痛めつけるだろう。ただの捕食では済まないだろう。</p> <p> 痛みと嫌な想像で汗が止まらない。やがて、わざともったいつけるように、今度も無音で指先はドアの隙間から向こうに消えていった。こじ開けようとしていた力もなくなり、ドアは大きな音を立てて閉まった。</p> <p> いったんは遠くに離れたようだが、また確実にやってくるだろう。そのときはもう、防ぎようがないような気がした。</p> <p> そのとき、ドアのこちら側の金属部分と何かがぶつかって、少し耳に障るような高い音を立てた。</p> <p> なぜか、外の暗がりで妙に慌てたような気配があった。</p> <p> その直後、再びドアを開けようとする力がかかり始めた。何か焦っているような雰囲気があったが、それだけに込められている力が大きく、もう抵抗しようがない。</p> <p> 無理だ、と思ったとき、教室内の誰かが、尖ったものでドアの金属部を削るほど強く引っかいた。大きな擦過音が闇の中に響いた。</p> <p> 外で、何頭もいる無数の獣たちが一斉に嫌な悲鳴を上げた。ドアにかかっていた力が急になくなる。それと同時に、遠くに走り去るような音が聴こえたのは、ドアノブを手放すだけでなく、慌てて逃げ出したものらしい。</p> <p> 金属音だ、と教室の中の誰かが言った。</p> <p> 確かに、はっきりとわかった。あの獣たちは金属音を著しく嫌うらしい。</p> <p> 少し希望が見えた気がした。まだ外は暗いが、夜明けも少しずつ近づいている。明確な根拠はないが、朝が来れば状況は少し好転する気がする。</p> <p> それから何度か、音を殺して校舎に接近してきた獣がドアや窓を強引にこじ開けようとすることがあったが、そのたびに擦過音を聞かせて撃退することを繰り返した。</p> <p> もう少しすれば、太陽が最初の顔を出すという時刻、何か大きな音が外から聴こえてきた。</p> <p> 文明的で、しかしどこか暴力的なそれは、原動機、というか車のエンジン音だと段々わかってきた。こちらに近づいてくる。わずかに薄くなった教室の闇の中で、お互いの見合わせる顔に不安の色が濃くなっていく。</p> <p> 誰かが、これまでのようにドアの金属部分をこすってみた。しかし、エンジン音にかき消されて何も聞こえない。</p> <p> 唐突に、獣たちに追いかけられて校舎に逃げ込んだときに、隣の教室に閉じこもったもう一つのグループのことを思い出した。そういえば、彼らはどうなったんだ?</p> <p> そのことを考え続けるより先に、裏切られた、と思った。彼らは獣と取引して、獣に食われない代わりに、こちらを売り渡したのだ。そして今、こちらの金属音から動物たちを守るために、建物の外をエンジン音で満たしている。</p> <p> 怒りと恐慌に襲われ、思わず窓に近づいてカーテンを開けた。</p> <p> 闇の中で、白く強烈な光が動いている。ヘッドライトを点けた車が、こちらを馬鹿にするようにだらだらと、大きなエンジン音を上げながら校舎に沿って周回している。ドライバー席には獣の黒い顔とは違う、人間の肌色の顔が見えた。</p> <p> ただ、その顔がなんだか偽物のようというか、得体の知れない違和感があった。そのとき、ドライバーが頭を動かしたわけでもないのに、顔だけがずるずるっとすべってこちらを向いた。</p> <p> それは顔の皮だった。一枚にはぎ取られた顔の皮が、何もない空っぽの二つの目の穴でこちらを見ていた。車を運転しているのは猿に似たあの獣だった。あの獣が人間の顔をかぶっていたのだ。</p> <p> 獣は正面を向いたまま、見られていることに気づいたのか、笑った気がした。それと同時に、ガラスが割れる激しい音がして、窓が割れた。教室の中に転がったものを見て、石が投げ込まれたのだとわかった。確かに、これなら校舎に近づかなくても窓を壊すことができる。</p> <p> じきに、窓から獣たちが飛び込んでくるに違いない。教室の中を見わたすと、みんな恐怖を感じつつ、それでも誰も絶望しきってはいないようだった。</p> <p> 空が白みつつある。もう少しで夜が明けるだろうと思った。</p> kajika0 『現代奇譚集 エニグマをひらいて』の感想について hatenablog://entry/820878482942197058 2023-07-04T21:00:00+09:00 2023-07-04T21:00:04+09:00 はじめに 評価は次のように行います。 まず、総評。S~Dまでの5段階です。 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース。 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。 B…購入してもよい。もしくはkindle unlimitedにあれば勧める。 C…図書館で借りる、もしくはkindle unlimitedなら読んでもよい。 D…読むだけ時間のムダ。ゴミです。 続けて、本の中で印象に残った作品を評価します。 ☆…それ一品で本全体の価格を担保できてしまうような作品のレベル。 ◎…一冊の中に三品以上あると、その本を買ってよかったと思えるレ… <p style="clear: both; margin: 1em 0px 0.5em; font-size: 16.8px; color: #3f3f3f; padding: 10px 15px; border-bottom: 3px solid #e07000; font-family: 'Trebuchet MS', Arial, Helvetica, 'ヒラギノ角ゴ Pro W3', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, 'MS Pゴシック', 'MS PGothic', sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: left; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">はじめに</p> <p> 評価は次のように行います。</p> <p> まず、総評。S~Dまでの5段階です。</p> <p> S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマ<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%BF%A1%BC%A5%D4%A1%BC%A5%B9">スターピース</a>。</p> <p> A…購入推奨。もしくは<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/kindle">kindle</a> unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。</p> <p> B…購入してもよい。もしくは<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/kindle">kindle</a> unlimitedにあれば勧める。</p> <p> C…図書館で借りる、もしくは<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/kindle">kindle</a> unlimitedなら読んでもよい。</p> <p> D…読むだけ時間のムダ。ゴミです。</p> <p> </p> <p> 続けて、本の中で印象に残った作品を評価します。</p> <p> ☆…それ一品で本全体の価格を担保できてしまうような作品のレベル。</p> <p> ◎…一冊の中に三品以上あると、その本を買ってよかったと思えるレベル。</p> <p> ◯…一冊に七〜八品あるとその本を買ってよかったと思える作品。</p> <p> </p> <p> 最後に、あらためて本全体を総評します。</p> <p> 実話怪談というジャンルほどネタバレがもったいないものはないので、レビューの途中でも内容が気になった方は、そこでぜひ読むのを止めて、本自体に触れてもらえれば、と思います。</p> <p> </p> <p> よければ、こちらもどうぞ。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsanjou.hatenablog.jp%2Fentry%2F2020%2F08%2F13%2F002242" title="実話怪談という「本」について - 惨状と説教" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2020/08/13/002242">sanjou.hatenablog.jp</a></cite></p> <p style="margin: 0.8em 0px; color: #454545; font-family: 'Trebuchet MS', Arial, Helvetica, 'ヒラギノ角ゴ Pro W3', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, 'MS Pゴシック', 'MS PGothic', sans-serif; font-size: 14px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: left; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;"> </p> <p style="clear: both; margin: 1em 0px 0.5em; font-size: 16.8px; color: #3f3f3f; padding: 10px 15px; border-bottom: 3px solid #e07000; font-family: 'Trebuchet MS', Arial, Helvetica, 'ヒラギノ角ゴ Pro W3', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, 'MS Pゴシック', 'MS PGothic', sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: left; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">総評</p> <p style="margin: 0.8em 0px; color: #454545; font-family: 'Trebuchet MS', Arial, Helvetica, 'ヒラギノ角ゴ Pro W3', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, 'MS Pゴシック', 'MS PGothic', sans-serif; font-size: 14px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: left; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;"> <span style="font-size: 21px;"><strong>S</strong></span><span style="font-size: 21px;"><strong>。</strong></span></p> <p> </p> <p> 待ち続けた続刊である。</p> <p> </p> <p> 2021年の10月に、鈴木捧は『実話怪談 蜃気楼』という本を出した。</p> <p> これは掛け値なしに鮮烈で、その作家の持っているいくつかの特徴がお互いに響き合いながら、一つのジャンルの上に、引き抜くことのできない鋭く美しい針を半永久的に打ち込むような作品だった。</p> <p> <a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2022/04/17/195917">ものすごく驚いたので俺はしばらく感想が書けなくて、半年間ぐらい経ってようやく書いたのを覚えている。</a></p> <p> </p> <p> さて、この作品を含め、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%DD%BD%F1%CB%BC">竹書房</a>では作家の単著を一年に一冊のペースで出すことが多い。</p> <p> ということは、2022年の秋~冬には、『蜃気楼』の次の作品が出てもおかしくない。しかし、続刊の知らせはなかなか出なかった。</p> <p> 俺は鈴木捧の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/twitter">twitter</a>をフォローしていて、執筆そのものは続けていることを知っていた。まったく他のジャンルにいくとか、ホラーでもフィクションの方にいくとか、そういうことかもしれないな、と思っていた。</p> <p> </p> <p> そうしたら、2023年の5月になって、ついに実話怪談の新作を出すというお知らせがあった。</p> <p> 今作は<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/kindle">kindle</a>での自主制作になったらしいが、読者としては別にかたちはなんでもよく、また鈴木捧の作品が読めるのは本当にありがたいことだと思う。</p> <p> それが『現代奇譚集 <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%CB%A5%B0%A5%DE">エニグマ</a>をひらいて』である。詳しい感想はあとに回すが、とてもいい本だ。</p> <p> 怪談が好きな人に薦めるのはもちろんだが、いわゆる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%EA%A5%C3%A5%D7%A5%B9%A5%C8%A5%EA%A1%BC%A5%E0">スリップストリーム</a>と呼ばれる文芸が好きな人も魅了されるのではないかと思っている。</p> <p> </p> <p> <a href="https://www.amazon.co.jp/%E6%80%AA%E8%AB%87%E5%9B%9B%E5%8D%81%E4%B9%9D%E5%A4%9C-%E6%96%AD%E6%9C%AB%E9%AD%94-%E7%AB%B9%E6%9B%B8%E6%88%BF%E6%80%AA%E8%AB%87%E6%96%87%E5%BA%AB-%E9%BB%92%E6%9C%A8%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%98-ebook/dp/B08L6D6S9T/ref=tmm_kin_swatch_0?_encoding=UTF8&amp;qid=1610015758&amp;sr=8-1">この本はkindle unlimitedで読めます。 </a></p> <p> </p> <p style="clear: both; margin: 1em 0px 0.5em; font-size: 16.8px; color: #3f3f3f; padding: 10px 15px; border-bottom: 3px solid #e07000; font-family: 'Trebuchet MS', Arial, Helvetica, 'ヒラギノ角ゴ Pro W3', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, 'MS Pゴシック', 'MS PGothic', sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: left; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">各作品評</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> ※ 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%CB%A5%B0%A5%DE">エニグマ</a>をひらいて』の特徴の一つとして、各話には番号だけが振られており、個々のタイトルがないという点がある。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 実話怪談というジャンルに慣れていない人はピンとこないかもしれないが、これはきわめて珍しい形式である。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 一応、本の最後に「仮題」が用意されており、以下の評ではそれを使った。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> ただ、これから読む人は、題名を意識しない方が先入観なく楽しめるかもしれないとは思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 1-4 背中…◯。とても美しい話。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> あとでもう少し書くが、鈴木捧という作家は、文章の意味というのとは少しだけ違う、文字自体の佇まいというか、言葉の視覚的な美しさにとても意識的な作家なのだと思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 1-5 <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%BE%B2%E8%BA%C2">名画座</a>の魚…◯。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 1-8 幽霊…◯。後述。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 2-4 溶解…◎。作者得意の、山で見つけた得体の知れないものの話。<a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2020/09/21/140520">前にも別の記事で言ったことだが、</a>俺はこういう怪談を読むと、「得した」と心の底から思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 2-5 死体忘れ…◯。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 2-6 鉄塔…◯。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 3-2 ケンカ…☆。後述。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 3-4 長い手…◯。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 3-5 誘拐…◯。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 4-2 開頭手術…◎。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 4-5 撮影…◯。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 4-7 <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%AC%A5%F3%A5%DC">ガガンボ</a>…☆。別に守る必要もないのだが、ホラーを生業にする人が、切り札として一回だけ使うことを許されているセリフがあるとしたら、「死にたくない」だと思う。俺が勝手に思うそんな基準において、文句のつけようのない札の切り方をした作品。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 4-8 うつる話…☆。後述。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 5-3 空き地の話…◯。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 5-4 ラーメ…◎。後述。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 5-5 イバテル…◎。<a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2020/10/05/223532">同じく実話怪談作家の我妻俊樹の作品に、『死ぬ地蔵』というすごい話があって、</a>それを思い出した。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 怪異を中心に据えたシステムというかゲームがあり、いわゆる「因習」みたいに恐れられているわけでもなければ、肝試しのようにうかれたテンションで楽しまれているわけでもなく、ただ、なんとなくそういうものとして存在している。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 異常さが日常に織り込まれた、そういうヘンテコな状態のものほど、何かのきっかけでゆらぐと強烈に暗い部分や不安なものが出てくるのかもな、と思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 5-7 真夏の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%EB%A4%CE%B2%BB">夜の音</a>楽…◎。後述。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 5-8 二人目の彼女…◯。後述。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <h4 id="あらためて総評" style="clear: both; margin: 1em 0px 0.5em; font-size: 16.8px; color: #3f3f3f; padding: 10px 15px; border-bottom: 3px solid #e07000; font-family: 'Trebuchet MS', Arial, Helvetica, 'ヒラギノ角ゴ Pro W3', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, 'MS Pゴシック', 'MS PGothic', sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: left; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">あらためて、総評</h4> <div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> ものすごく良い本である。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 上記の【各作品評】に◯から☆を並べたとおり、本当に素晴らしい作品。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 例えば、実話怪談の本を他に20冊、30冊買ったとして、こういうことは起きない。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 繰り返すが、絶対に起きない。断言してもいい。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> そういうレベルというか、要は鈴木捧というのはそういう作家だから、としか言えないことなのである。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> その一方で、とても重たい印象のある作品だな、とも思う。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 例えば音楽でいったら、シンプルで低音のビートに乗って語りかけるラップミュージックみたいな、すごく内省的で、同時に、聴く側にも耳を澄ませることを求めるような感触がある。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> それもあって、実は自分の中で、どう評価したらいいか難しかった。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 俺は実話怪談というのは基本的に、そういう重たさというか、ある種のシリアスさを押し殺した方が有利になる、アッパーなジャンルだと思う。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> それは早い話、実話怪談というのが、通常の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%C1%B3%CB%A1">自然法</a>則では起きないような出来事を10ページ未満の文章量で描いて、読者を怖がらせたり不安にさせたりする試みだからである。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> こういうものを書いたり読んだりするとき、論理性を大切にしたり、読んでいる側にも同様の冷静さを求めることは、「オバケ」という異常なものを演出する上で、一種の重しというか、制約になると思う。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 幽霊や怪異とは何かを深く考えたり、考えた結果を表に出したり……そういうことをやればやるほど、文章は理性的に、「重く」なって、実話怪談としてやりにくくなっていく。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> もう一つ「重たさ」を感じた理由に、鈴木捧という作家自身の文章が見せる特徴がある。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 鈴木捧の文章は、怪談の体験者が思ったことや、その情景を、ものすごく丁寧に描写する。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 怪異に遭った彼女/彼が何を感じ、それが起きたのはどういう場所のどんな状況で、ということを、とても緻密に書く。<a href="https://twitter.com/sus9_s/status/1667481098430074880">これはおそらく、作家自身の姿勢によるものだろうと思う。</a></div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 一つ指摘をするなら、起こった怪異の大小(というものが数値化できるとして)で小さいものは、怪異以外の情報が文中に増えていくと、なかなか話の中心に出てこれなくなる。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 例えば、比較対象としてわかりやすいものに、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%DD%BD%F1%CB%BC">竹書房</a>が実話怪談のシリーズとして出している『瞬殺怪談』がある。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 瞬殺、という名前のとおり、パッと読んですぐ「オバケ」が出てくる。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> そして、話が短い=情報量が少ないと、その中で一番存在感があるのは自然と「オバケ」ということになる。まるで手順を踏むように、「オバケ」が必ずその話の中心になるようにできているのである。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> それに対して、鈴木捧ぐらいの文章量がある場合、ささいな怪異は話の中心にならないことがある。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%CB%A5%B0%A5%DE">エニグマ</a>をひらいて』にも、怪談というにはストーリーの分類が難しく、怪異はその一角を占めるだけ、という話がいくつかある。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> これも、本全体の「重たい」という印象と関係があると思う。他の実話怪談の本とは違って、「これ、怪談です」「はい、怪談ですね」という作品と読者とのコミュニケーションを簡単に取らせない部分がある。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> あえて比べるなら、俺は前作の『蜃気楼』の方が好みではある。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> ただ、「重たさ」云々については、実はここから本題となる。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> まず、この「重たさ」が欠点かどうかというと、別にそうではない。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 理知的な考え。整然と並ぶ言葉。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> それと同時にある詩情。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> それが鈴木捧の作品である。これをひれ伏すように敬愛している。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> その特徴を突き詰めると、自然と「重く」なるだろうな、という気がする。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 実話怪談をやるには不利なほど論理を重視していて、まるで、怪異が漫然と主役を張れてしまうオーソドックスな構造を責めるかのように丁寧で。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%CB%A5%B0%A5%DE">エニグマ</a>をひらいて』は作家としていずれ書かれるべき内容だったと思う。そして何より、そういう作家性どうこうを抜きにして、強烈に良い作品である。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 「重たさ」についてもう一つ、戦略的な面から書いておく。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> きわめて単純なことで、本が理性を重んじる内容であるほど、その「理」を突き破って吹き出すことのできる怪談は凶悪であるということである。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%CB%A5%B0%A5%DE">エニグマ</a>をひらいて』の中にもそういう話がいくつかあって、特に『4-8 うつる話』が、俺は一番こわかった。背骨をなでられるような忌まわしさがあった。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 物理的に考えた幽霊の居場所、みたいなロジカルな文章のあとに、こういう話が出てくるのである。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> これは本当に幸せなことだ。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> もし化け物に襲われて、いっそ絶望を楽しむなら、何の構えもないときではなく、自分の身を守る強固で分厚い鉄板を軽々と突き破られて攻め滅ぼされたいと思っている。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 結局、良い実話怪談は、「重たさ」をある程度は持たなくてはならないと思う。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> どっちだよ、という感じだが、実際そうなのである。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 幽霊というものが、理知的に考えたらどんなにおかしいものなのか。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> それでも、もしも幽霊がいるとすれば、それはどこにいるのか。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 普遍的な<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%C1%B3%CB%A1">自然法</a>則で支配されたこの世界の、どこにそういう隙間が、もしくは誰も知らない広大な闇の領域があるのか。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 作家の中でも、そういうことばかり考えている作家が書き、そういうことばかり考えている読者が喜んで読む、それが俺の好きな実話怪談だ。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 「重たさ」は実話怪談のやりやすさという点ではベクトルがそろわないが、それは言わば二次元の平面的な考え方であって、作品に深みという三次元を与えるには欠かせない要素でもあるのだ。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> それが、作家として、この世や、怪談を語った体験者や、そして読者に対して、誠実であるということなんだと思う。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> だから俺は鈴木捧の本が好きなのである。</div> <div data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </div> </div> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 『1-8 幽霊』について。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 『1-4 背中』でも書いたのだが、鈴木捧は、文字そのものの佇まいみたいなものに、すごく意識的な人なのではないだろうか。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 「幽霊」という文字を目で見たときに、例えば、ひらがなの「ゆうれい」や英語の「ghost」を視界に入れたときとは違う、視覚から感じるその文字固有の息づかいみたいなものがあると思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 『1-8 幽霊』はそういう感覚が作家自身にもあって紹介された話のような気がする。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 個々の文字が持つ字面への愛情があって、それゆえに、それが破壊されたときの恐怖、倒錯した喜びみたいなものも同時にある気がする(『5-4 ラーメ』)。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> そして、言葉を文章としてつなげたときの、姿勢の美しさみたいなものに対する<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%A7%A5%C6%A5%A3%A5%B7%A5%BA%A5%E0">フェティシズム</a>っぽいところもあると思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 『1-4 背中』の夕焼けの描写からはすごくそれを感じる。風景を同じ意味で説明する言葉の選び方、並べ方はたくさんあるのだが、この言葉・この配置でないといけない、という美意識を感じる(実際、ここの文章は大変に美しい)。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 『3-2 ケンカ』について。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 作者がどの程度、そういう読者がいると予想しているかわからないが、俺は『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%CB%A5%B0%A5%DE">エニグマ</a>をひらいて』の中でこの話が一番好きである。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> デパートやスーパーで、例えば従業員用の通路へのドアが開いていて殺風景な奥の様子が見えたりすると、「なんだか、見ちゃいけないものを見ちゃったな」という気持ちになる。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 階段も同じく、はなやかな店舗エリアに比べると、ちょっとヒヤッとする空間だと思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> そこで起きた怪異というのが素晴らしいし、目にした後の母親の言葉が、なぜかものすごく好きである。本当にわけのわからないものの前では、大人であることなど実に無力なのだが、それでも取り繕うように何か口にするところに、親であることのいじましさと強さを感じる。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 『5-7 真夏の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%EB%A4%CE%B2%BB">夜の音</a>楽』について。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 鈴木捧の作品が好きな理由の一つは、怪談としてはもちろんのこと、俺たちが思い出やしがらみをひきずって、ちょっと疲れながら生きていくことを鮮やかに描く、もし文芸が人生にとってこうした役割を持つなら、つまり文学として優れているからである。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> その点で、いわゆる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%EA%A5%C3%A5%D7%A5%B9%A5%C8%A5%EA%A1%BC%A5%E0">スリップストリーム</a>の一つとしても読めると思っている。超常的な要素はあるが、そういう方法でしか描けない、生きることの何かのかたちとか、瞬間。それに成功している文芸。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%EA%A5%C3%A5%D7%A5%B9%A5%C8%A5%EA%A1%BC%A5%E0">スリップストリーム</a>云々を持ち出したのは、一応、鈴木捧作品未読の人に向けたPRのつもりでもあるのだが、悲しいかな、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%EA%A5%C3%A5%D7%A5%B9%A5%C8%A5%EA%A1%BC%A5%E0">スリップストリーム</a>自体がメジャーではないのだった。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> おそらく、このカテゴリーで誰もがピンとくる作家を一人だけ挙げるなら、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%BC%BE%E5%BD%D5%BC%F9">村上春樹</a>だろう。大大大…大メジャーと強引にくくったように思われるかもしれないが、個人的には、短編の印象は本当にけっこう似ていると思う(<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%BC%BE%E5%BD%D5%BC%F9">村上春樹</a>も、少し世の中とテンポのズレた人間、もしくは周囲と歩調がズレている時期に、音楽がふと、大きな存在感を持つことを描く作家だと思う)。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> あとは、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%C1%A5%E3%A1%BC%A5%C9%A1%A6%A5%D6%A5%ED%A1%BC%A5%C6%A5%A3%A5%AC%A5%F3">リチャード・ブローティガン</a>とか、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%F3%A5%CA%A1%A6%A5%AB%A5%F4%A5%A1%A5%F3">アンナ・カヴァン</a>とか。ビターで、はかなく、幻想的で美しい。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> ただ、もちろん<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%D1%CA%C6">英米</a>のこうした作家が、泊まった旅館のテレビで開頭手術の映像を観る短編を書くことはないとは思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 『5-8 二人目の彼女』について。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 話そのものも美しいが、その締め方について、実話怪談の作家としての決意を示すような話だと思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 「オバケ」の正体、これはもちろん重要である。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> ただ、怪異と体験者が出会い、それと作家が出会い、最後に読者がそこに加わる、こうした関係性というか縁というか、それを実話怪談と呼ぶとして、それを尊重するなら、あえてそれを暴かなくてもいい場面はあるとも思う。そういう話だと感じた。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 最後に、『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%CB%A5%B0%A5%DE">エニグマ</a>をひらいて』は、これまでの販路とは違うかたちでマーケットに出てきた本であるようである。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> それをふまえて思ったことと、実話怪談そのものについて感じていることをあわせて書いておく。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 実話怪談というのは、音楽でいうと<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A5%EB%A5%BF%A5%CA%A5%C6%A5%A3%A5%D6">オルタナティブ</a>的というか、要するに本屋の棚で目立つところに来ることはほとんどないカテゴリである。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> そういうジャンルにもかかわらず、もしくはだからこそなのか、俺には非常に保守的な業界に見えて、はっきり言うと、十年以上前から同じような作家が同じような話をいつまでも書いている印象がある。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 別に、トラディショナルであることをダメだと言っているわけではなく、例えば、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%A1%DF%B7%C5%B0%BB%B0">福澤徹三</a>・糸柳寿昭の『忌み地』とか、実話怪談のフォーマットとしてはベタだけど、新刊を読むたびに「すげえな」と思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 逆に言うと、他の作家のほとんどは、俺にとって、同じような、かつ、いまいちピンと来ない話ばかりずっと書いている人たちである。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> といって、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%F4%A5%A1%A5%F3%A5%AE%A5%E3%A5%EB%A5%C9">アヴァンギャルド</a>な作風であればいいわけでもない。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> ベタな怪談じゃない、というだけなら、これもいくつか作品は挙がる。ただ、そうすると今度は、「こんなの、ただの凝ったコケオドシじゃねえか」と思うことが多い。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 我ながら面倒くさい消費者である。それでも、「ああ、金を払った甲斐があった。いい『オバケ』の話を読んだ」と思える数少ない作家が、鈴木捧である。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> といって、鈴木捧の新しい企画を自社で立てられなかった企業を責めるつもりもない(ややこしいですね)。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 理由は二つある。一つ目は俺自身が企業人だからである。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 例えば、事業として達成するべき数字の優先順位をつけるときに、企画を通したり見直したりするシビアさをいくらかはわかるつもりでいる。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 理由のもう一つは、そもそも鈴木捧を評価して市場に持ってきた出版社を尊敬しているからである。本当に保守性にひたりきったような業界なら、とても見出せない作家だと思っている(というのが作家への誉め言葉なのか、よくわからないが)。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> </p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> あえて言うなら、何かを刷新したり、何か一枚の看板を負うことになる人というのは、どこかしら<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A5%EB%A5%BF%A5%CA%A5%C6%A5%A3%A5%D6">オルタナティブ</a>で、地力はもちろんあって、誠実な人物だと思っている。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> もし、そのジャンル自体が出版という世界での傍流であるなら、その中でなお妙なことをやっている<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%A6%A5%C8%A5%B5%A5%A4%A5%C0%A1%BC">アウトサイダー</a>が、良いものを真面目に作り続けた先に、何か重要なことを成すのだと思う。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> 一方で、当たり前だが、特定の作家に向けて、そうあれ、と強いる権利を俺は持っていない。作家の好きにしたらいいことである。</p> <p data-pm-slice="1 1 &lt;/span&gt;" data-en-clipboard="true"> ただ、その人のファンであるから、その人がやりたいことを続けられればいいとは思う。そういうことを考えたので書いた。この本が多くの人の手に取られることを祈っている。</p> <p> </p> <div class="freezed"> <div class="hatena-asin-detail"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0C6HXJS6Y?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="hatena-asin-detail-image-link" target="_blank" rel="noopener"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/51M5z0kqpWL._SL500_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="現代奇譚集 エニグマをひらいて" title="現代奇譚集 エニグマをひらいて" /></a> <div class="hatena-asin-detail-info"> <p class="hatena-asin-detail-title"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0C6HXJS6Y?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" target="_blank" rel="noopener">現代奇譚集 エニグマをひらいて</a></p> <ul class="hatena-asin-detail-meta"> <li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span><a href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%EB%CC%DA%CA%FB" class="keyword">鈴木捧</a></li> <li> </li> </ul> <a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0C6HXJS6Y?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="asin-detail-buy" target="_blank" rel="noopener">Amazon</a></div> </div> </div> <p> </p> kajika0 今日、脳から捨てたものについて ⑯ hatenablog://entry/820878482945183815 2023-07-02T21:00:00+09:00 2023-07-02T21:00:06+09:00 ランキング参加中 雑談・日記を書きたい人のグループ はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの 全部トんどんじゃ 『ガキの使い』の名物企画である七変化に挑んだ際に大悟が発したセリフ。 笑わせにかからないといけないはずの状況で一向に何もしかけてこず、妙な空気が漂い始めたときにポツリともらしたもの。 「(緊張のせいでネタが)全部トんでいる」の意と思われる。 僕は何をすればいい? 元ネタは『トリビアの泉』。 もうだいぶ前のことだが、「野生の一匹オオカミにバウリンガル(犬のいまの気持ちを言語化できるというデバイス)を使ったら、一体なんと言っているのか?」という… <div class="embed-group"><a href="https://blog.hatena.ne.jp/-/group/6653812171403971647/redirect?blog_id=8454420450098065748" class="embed-group-link js-embed-group-link"> <div class="embed-group-icon"><img src="https://cdn.image.st-hatena.com/image/square/2152845ee3b176277ecd6038363c58dd708851db/backend=imagemagick;height=80;version=1;width=80/https%3A%2F%2Fcdn.blog.st-hatena.com%2Fimages%2Fcircle%2Fcircle-icon.png" alt="" width="40" height="40" /></div> <div class="embed-group-content"><span class="embed-group-title-label">ランキング参加中</span> <div class="embed-group-title">雑談・日記を書きたい人のグループ</div> </div> </a></div> <p> </p> <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 主旨はこちら。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsanjou.hatenablog.jp%2Fentry%2F2022%2F05%2F30%2F210000" title="今日、脳から捨てたものについて ① - 蠅と鬼と人" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2022/05/30/210000">sanjou.hatenablog.jp</a></cite></p> <h4 id="以下捨てたもの">以下、捨てたもの</h4> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20230628/20230628002151.png" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" width="697" height="362" /></p> <p><br /><br /></p> <p> </p> <h4 id="あれなんだったんだろうね-気持ち悪いねあれ">全部トんどんじゃ</h4> <p> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%AD%A4%CE%BB%C8%A4%A4">ガキの使い</a>』の名物企画である七変化に挑んだ際に大悟が発したセリフ。</p> <p> 笑わせにかからないといけないはずの状況で一向に何もしかけてこず、妙な空気が漂い始めたときにポツリともらしたもの。</p> <p> 「(緊張のせいでネタが)全部トんでいる」の意と思われる。</p> <p> </p> <h4 id="ちんすこう美味すぎる">僕は何をすればいい?</h4> <p> 元ネタは『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%EA%A5%D3%A5%A2%A4%CE%C0%F4">トリビアの泉</a>』。</p> <p> もうだいぶ前のことだが、「野生の一匹オオカミに<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%A6%A5%EA%A5%F3%A5%AC%A5%EB">バウリンガル</a>(犬のいまの気持ちを<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%C0%B8%EC%B2%BD">言語化</a>できるというデ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%A4%A5%B9">バイス</a>)を使ったら、一体なんと言っているのか?」という企画にて、オオカミが言っていたセリフ。</p> <p> このセリフのすごさもなかなかだが、個人的には、荒涼とした雪原でガイドを依頼された外国人の専門家が、結果が出る直前に「なんて言ったんだ、なんて言ったんだ」と真剣に盛り上がっていたのが印象に残っている。</p> <p> </p> <h4 id="眼の周辺血流">金を盗るやつ。寝てる間に金を盗るやつ</h4> <p> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B6%CB%B3%DA%A4%C8%A4%F3%A4%DC">極楽とんぼ</a>の吠え魂』で山本が語っていた、過去の恋人との同居時代の思い出。</p> <p> そもそもは、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%E3%CD%F0Q">シャ乱Q</a>の『ズルい女』のメロディに乗せて改変した歌詞を山本が歌うという文字通り毒にも薬にもならないコーナーがあり、そこでいきなり、相方の加藤から、「今まで出会った一番ズルい女は誰ですか!?」と唐突にふられた山本がとっさに答えたもの。</p> <p> 同棲していた恋人が、山本が寝ている間に山本の財布から2万円を抜くのを見てしまった、というすさまじい話。なお、山本は恋人が眠ってから、そのうちの1万円を抜き返している。</p> <p> </p> <h4 id="ホットブラッド">カルダモン 中毒性</h4> <p> …あるのかは知らないが、カレーにはとりあえず正気を失ったようにかけて食っている。美味いから。</p> <p> </p> <h4 id="あっ遠藤だ"><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%BE%CC%EE%A5%AB%A5%CA">西野カナ</a>先生</h4> <p> 俺の学生時代の友人が<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%BE%CC%EE%A5%AB%A5%CA">西野カナ</a>に敬称をつけて呼んでいるもの。</p> <p> 彼が付き合っている彼女の心情を、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%BE%CC%EE%A5%AB%A5%CA">西野カナ</a>の楽曲経由で理解できるから…というわけでもなく、普通に尊敬しているらしい。</p> <p> なんでだよ、と思わなくもないが、どちらかと言えば俺の方が間違っている。別に、好きなものを好きになったり尊敬したりすればいいのだ。</p> <p> </p> <h4 id="南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏ありがたいありがたい"><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B4%A5%EB%A5%C7%A5%A3%A5%ED%A5%C3%A5%AF%A5%B9">ゴルディロックス</a>ゾーン</h4> <p> 生物が生息・繁殖できる「快適な環境」。</p> <p> 広義では地球そのもの。狭義では個々の生命ごとに存在するとも言え、深海の熱水噴出孔だろうと、一部の生き物にとっては快適な場所である。</p> <p> </p> <h4 id="知れてるか">知れてるか</h4> <p> 二回目。『いろはに千鳥』でノブが発した言葉。</p> <p> ロケで訪れた先の定食屋のメニューにカレーを見つけた際のセリフであり、「(こういう店のカレーっていうのはどんなものだろう。たかが)<span class="highlight">知れてるか</span>」の意と思われる。</p> <p> </p> <h4 id="アラスカのヤーツ">どこかに行ってしまいました</h4> <p> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B6%CB%B3%DA%A4%C8%A4%F3%A4%DC">極楽とんぼ</a>の吠え魂』で加藤が発したセリフ。</p> <p> 元ネタは品がないので省くが、ある出来事にショックを受けた(と加藤が勝手に言っているだけで、おそらくは無関係)山本が生放送のスタジオに現れなかったことによる。</p> <p> </p> <p>以上</p> kajika0 雨脚について hatenablog://entry/820878482941127269 2023-06-12T22:02:42+09:00 2023-06-12T22:02:42+09:00 地形がそうなっているのかわからないが、俺の家は雨脚がよく聴こえる家だ。 雨脚がよく聴こえると言うのは、雨の音が単に目立つということではなく、降っている雨がいくらか急に強くなり、聴いている側が注意を向けて耳を澄ませてみると、また弱くなっていく、その様子がはっきりとわかるということである。 脚、とはよく言ったもので、どこからか近づいてくるように雨が音を強くしていき、やがて去っていくようにして弱くなる様子は、『もののけ姫』かなんかのジブリの映画に登場するような、脚がたくさんあって、それをざわざわ蠢かせながら歩きすぎていく、巨大で半透明な神の姿をイメージさせる。 そういう得体の知れない、地上にわずかな… <p> 地形がそうなっているのかわからないが、俺の家は雨脚がよく聴こえる家だ。</p> <p> 雨脚がよく聴こえると言うのは、雨の音が単に目立つということではなく、降っている雨がいくらか急に強くなり、聴いている側が注意を向けて耳を澄ませてみると、また弱くなっていく、その様子がはっきりとわかるということである。</p> <p> 脚、とはよく言ったもので、どこからか近づいてくるように雨が音を強くしていき、やがて去っていくようにして弱くなる様子は、『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%E2%A4%CE%A4%CE%A4%B1%C9%B1">もののけ姫</a>』かなんかの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A5%D6%A5%EA">ジブリ</a>の映画に登場するような、脚がたくさんあって、それをざわざわ蠢かせながら歩きすぎていく、巨大で半透明な神の姿をイメージさせる。</p> <p> そういう得体の知れない、地上にわずかな関心もない大きな存在が、遠くからやってきて辺りの家々の屋根を無数の触手でひたひた叩きながら歩き去っていく。そういう音に思えて、まさに雨「脚」だなあ、と考えながら聞いている。</p> kajika0 血の雨降れどもまだ降り足りぬ。『イクサガミ 地』の感想について hatenablog://entry/820878482934749839 2023-05-22T23:18:10+09:00 2023-05-22T23:18:10+09:00 はじめに 幕末の混沌を残しつつも、その残響は確実に消えていく明治初期が舞台となる、滅びゆく剣客たちの点取道中デスゲーム第二巻(前巻の感想はこちら)。 前巻に引き続き、めちゃくちゃ面白かった。 対決に次ぐ対決。一対一、一対多、多対多。 斬撃、銃声、血しぶき。 剣技と忍術、正統と邪道が入り混じり、すべての勝負が面白い。 直接の殺し合いだけではなく、道中で集まる点数をめぐる駆け引きもあり、それゆえに、打算抜きの覚悟や人情がさらにまぶしい。 デスゲームの盤外も緊張感を増し、参加者以外の強者も参戦、因縁も錯綜し、なかなか一本道では終わらない。 また、江戸〜明治特有や空気感や当時の風俗に関する描写も前巻以… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 幕末の混沌を残しつつも、その残響は確実に消えていく明治初期が舞台となる、滅びゆく剣客たちの点取道中デスゲーム第二巻(前巻の感想は<a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2023/02/20/215310">こちら</a>)。</p> <p> </p> <p> 前巻に引き続き、めちゃくちゃ面白かった。</p> <p> 対決に次ぐ対決。一対一、一対多、多対多。</p> <p> 斬撃、銃声、血しぶき。</p> <p> 剣技と忍術、正統と邪道が入り混じり、すべての勝負が面白い。</p> <p> </p> <p> 直接の殺し合いだけではなく、道中で集まる点数をめぐる駆け引きもあり、それゆえに、打算抜きの覚悟や人情がさらにまぶしい。</p> <p> デスゲームの盤外も緊張感を増し、参加者以外の強者も参戦、因縁も錯綜し、なかなか一本道では終わらない。</p> <p> また、江戸〜明治特有や空気感や当時の風俗に関する描写も前巻以上に丁寧に書かれており、没入感がハンパない。最高の第二巻だった。</p> <p> </p> <p> 以下、特によかったところを書く。ネタバレ注意。</p> <h4 id="仏生寺弥助登場"> <br />仏生寺弥助登場</h4> <p> 前巻『天』で衝撃の展開で引きになった『イクサガミ』は、なんだかわからんやつのエピソードから再開する。</p> <p> なんだかわからんのに面白いのは、これが「時代劇×ちょっとした異能」という、あんまり見かけないけど一緒に食べたらマジで美味しいですよ、という組み合わせだからで、俺は「(無理のない範囲で)いいぞ、もっとやれ」と思う。</p> <p> さて、この仏生寺弥助のエピソード、「こんなやべーやつもゲームに参加してますよ」という導入なのかと思ったら、読み進めても、本編になんの関係があるのかよくわからない。</p> <p> そして、なんと最後までなんだかわからないのである。まあ、結局つながりはよくわかんないけど、面白いからヨシ! とは思う。</p> <p> </p> <h4 id="義兄弟チーム-対-岡部幻刀斎">義兄弟チーム 対 岡部幻刀斎</h4> <p> 『イクサガミ』は点数を奪いあう勝負であると同時に、主人公の剣客・嵯峨愁二郎と義兄弟たちが秘奥義の継承をめぐって殺し合う勝負でもあり、実はデスゲームの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%FE%A4%EC%BB%D2">入れ子</a>構造になっている。</p> <p> かつて、仲の良かった兄弟同士の殺し合いを嫌って修行から脱走した愁二郎は、混乱を生んだとして、他の兄弟たちにかえって憎まれてしまっている。また、愁二郎がもたらしたものは他にもあり、それが、脱走者が出た場合に兄弟全員を始末するべく発動するキラー、謎の剣士・岡部幻刀斎である。</p> <p> 前巻の時点で、ゲームの参加者の中に別格に強いヤバ爺がいて猛威を振るっていたが、今巻でこのジイさんこそ幻刀斎であることが確定する。『地』では兄弟たちと幻刀斎がついに接敵する。</p> <p><br /> 義兄弟チーム 対 幻刀斎の対決は熱い展開の欲張りセットのようなもので、とてもよかった。</p> <p>・過去の脱走をめぐって遺恨のある兄弟の次男・愁二郎と四男・化野四蔵が、超強敵の幻刀斎を倒すために一時共闘。</p> <p>・…からの、ジジイ強すぎて兄弟二人相手に優勢。</p> <p>・ジジイ、ターゲットを別の兄弟に移す。今度は森の中で、忍術を得意とする三男・三助と幻刀斎が激突。そして…。</p> <p> とにかく、敵も味方もみんな素晴らしかった。</p> <p> </p> <h4 id="真双葉無双">真・双葉無双</h4> <p> 『イクサガミ』の特徴として、デスゲームものに珍しく、有力なプレイヤーのほとんどが話の通じるヤツだったり善人であることが挙げられる。</p> <p> だからこそ、幻刀斎や貫地谷無骨のような悪党の魅力も際立つのだが、とにかく、点数さえもらえれば相手を殺すまではしないとか、恩のあるプレイヤーとは点数を分け合うとか、けっこう「義」が目立つ場面が多い。</p> <p> そうなると独自の強さを発揮するのが主人公の保護する子ども・香月双葉で、無邪気で異様に高い善性を備えているため、これが強さと人情を兼ね備えるライバル、さらにはドライな合理性のみを是とするはずの運営サイドの一部まで魅了し、デスゲームに大きな波乱を起こしている。</p> <p> 『地』における双葉の最大の見せ場は、中盤にて、明らかに不合理な選択で別のプレイヤーを救う場面だと思う。そして、このプレイヤーによって愁二郎は終盤の危機を脱するため、双葉がいなければ愁二郎は退場していたかもしれない。</p> <p> </p> <h4 id="黒札">黒札</h4> <p> 殺し合いを加速させるために運営が仕かけたギミックであり、一枚で大量の得点が得られるメリットと、所持者の居場所が他のプレイヤーに通知されるという強烈なデメリットを持つ。</p> <p> 『地』でこの黒札を入手した(してしまった)のは誰かいうと…こう来たか、という感じ。</p> <p> なお、黒札が手渡された瞬間の運営側とプレイヤーとのやり取りも見どころ。開催者からの「なんか違和感はあるけど、いまいち意図がわからないメッセージ」に対して、頭脳派二人が即座に反応して警戒モードに入るところがいい。 </p> <p> ちなみに、もう少し先のチェックポイントまで進むと黒札の点数を配分できるらしい。そこからの展開も注目。</p> <p> </p> <h4 id="橡">橡</h4> <p> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%A4%A5%B8">カイジ</a>』の「優しいおじさん」といい、匿名のユニフォーム集団の誰かが一瞬個性を出す展開はいいものだ。</p> <p> </p> <h4 id="奥義">奥義</h4> <p> 剣技というより、身体能力にバフをかけるタイプの技術。愁二郎たちは一人に一つ与えられたそれぞれの奥義を兄弟同士で奪いあい、最後の一人が総取りすることになっていた。</p> <p> 愁二郎は、自分たち兄弟は、実はどの奥義もすでに使える状態なのではないか、と推測している。本当は修得済みであり、あとは継承の手続で暗示のロックを外すだけ、というのはけっこうすごい発想だと思う。</p> <p> 今巻でも奥義の継承は発生したが、その描写を見ると、必ずしも一方通行ではなく、互いの奥義を交換もできるのでは、という気がする。もしかすると、いま生き残っている兄弟同士で協力して、全員を一時的に奥義全部持ちにすることもできるのでは?</p> <p> </p> <h4 id="生き残り予想">生き残り予想</h4> <p> 現時点で生き残っている有力なプレイヤーは以下のとおり。</p> <p> </p> <p>・嵯峨愁二郎(主人公)</p> <p>・香月双葉(主人公その2)</p> <p>・柘植響陣(関西弁の相棒、と書くと、某ガンアクション漫画のファンとしては「じゃあ、死にますね…」と思ってしまう)</p> <p>・狭山進次郎(こういうキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターの見せ方に作家の技量が出る気がする)</p> <p>・化野四蔵(兄弟四男。個人的にはかなり太い<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%E0%CB%B4%A5%D5%A5%E9%A5%B0">死亡フラグ</a>…だと思っていたのだが)</p> <p>・蹴上甚六(兄弟六男)</p> <p>・衣笠彩八(兄弟長女)</p> <p>・カムイコチャ(弓使い)</p> <p>・秋津楓(<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%E5%C5%E1">薙刀</a>使い)</p> <p>・ギルバート・カペル・コールマン(イギリス軍人。短いけど泣けるエピソードの持ち主)</p> <p>・貫地谷無骨(悪役その1。フットワーク◎。しゃべりが立ち、やるときはやるヤツであり、窮地には奥の手を見せるという、善悪反転したら普通に主人公みたいな人)</p> <p>・岡部幻刀斎(悪役その2。強ジジイ好きという一部オタクの嗜好をくすぐるジジイ)</p> <p> </p> <p> この12人の中から9人が生き残る…ということなのだが、</p> <p> </p> <p> あれ?</p> <p> </p> <h4 id="もうイクサガミ-世界編全10巻しかないのでは">もう、『イクサガミ 世界編(全10巻)』しかないのでは?</h4> <p><span style="color: #ff0000; font-size: 200%;">※ ここから超ネタバレです。未読の方はバック推奨</span></p> <p> </p> <p> 『イクサガミ 天・地』まで来て、「…おお、こいつが脱落するか」というキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターは二人、『天』の菊臣右京と、『地』の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%C0%B1%E0">祇園</a>三助である。</p> <p> ところが、強力なプレイヤーはまだまだいるし、『地』では秋津楓とギルバートも登場した。つまり、残り1巻なのに、キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターはそこまで減っていない…というか、増えてしまっているくらいである。</p> <p> ゲームから生還できるのは最大9人と決められているため、上記の12人から少なくとも3人が脱落するわけだが、最終巻となる『イクサガミ 人(仮称)』がどれだけボリュームがあろうと、3人の退場を描くだけの余裕があるのだろうか?</p> <p> </p> <p> 本当にあと一冊で収まるのか、という勝手な心配をいったん脇に置いて、生還者を予想してみたいのだが、『地』の最後で波乱が起きたため、かなり難しくなった。兄弟一番の実力者である四蔵が(たぶん)生還を決めてしまったのである。</p> <p> これがなんで波乱かというと、兄弟の中で最も強い人物という位置づけは、オタク目線でメタ的に見れば強力な<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%E0%CB%B4%A5%D5%A5%E9%A5%B0">死亡フラグ</a>だからである。四蔵を除いて退場者を予想してください、というのはかなり悩ましいのである。</p> <p> </p> <p> で、個人的には ① 兄弟の誰かで甚六か彩八のどちらか ② 響陣 ③ 幻刀斎かなあ…と思っている。</p> <p> 無骨と幻刀斎の悪役二人と誰か、という組み合わせも考えたが、無骨はなんとなく生きてゴールに着くのではないか、という気もする。</p> <p> ただ、それは物語の最後まで無骨が生存するという意味ではなく、「9人ゴールしたあとのその先」というきわめて不穏な展開が示唆されているからである。無骨に罰が下るとしたら、そのときでは、と思う。</p> <p> </p> <p> というか、そうなんである。『イクサガミ 人(仮称)』で描く必要があるのは12人⇒9人の戦いだけではないのだ。</p> <p> そこから先のエクストラステージの全貌も明らかにした上でそれも決着させ、デスゲームと並行して起きている警視局クーデターにも終止符を打たなくてはならない。さらに、仏生寺弥助の遺した忌み子・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%B7%CC%C0">天明</a>刀弥(?)にいたっては本編に登場してさえいないため、このストーリーも回収しなくてはいけない。</p> <p> </p> <p> これが、あと一冊で終わるだろうか?</p> <p> 俺は無理だと思う。公式が三部作と言おうが、もう一冊では終わらんと思う。</p> <p> そして、終わらなくても別に構わない。あと二冊でも三冊でも、『イクサガミ 甲乙丙』でも世界編でもやってくれたらいい。</p> <p> とにかく、そのくらい面白いんだから構わない。作者の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/twitter">twitter</a>によれば、今年中には『人(仮称)』が出るそうだ。楽しみにしている。</p> <p> </p> <p> </p> <div class="freezed"> <div class="hatena-asin-detail"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0C3ZNY2J8?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="hatena-asin-detail-image-link" target="_blank" rel="noopener"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/41gc7SVQEkL._SL500_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="イクサガミ 地 (講談社文庫)" title="イクサガミ 地 (講談社文庫)" /></a> <div class="hatena-asin-detail-info"> <p class="hatena-asin-detail-title"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0C3ZNY2J8?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" target="_blank" rel="noopener">イクサガミ 地 (講談社文庫)</a></p> <ul class="hatena-asin-detail-meta"> <li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span><a href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BA%A3%C2%BC%E6%C6%B8%E3" class="keyword">今村翔吾</a></li> <li><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%D6%C3%CC%BC%D2">講談社</a></li> </ul> <a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0C3ZNY2J8?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="asin-detail-buy" target="_blank" rel="noopener">Amazon</a></div> </div> </div> <p> </p> kajika0 今日、脳から捨てたものについて ⑮ hatenablog://entry/4207575160649470518 2023-05-16T22:29:53+09:00 2023-05-16T22:29:53+09:00 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの あれなんだったんだろうね? 気持ち悪いねあれ 『バナナマンのバナナムーン』における日村の発言より。 番組における罰ゲーム企画にて、流れている楽曲のいいところで合いの手を入れるようにオナラをすべし、という「カラオ屁」に挑んだ際のもの。 日村だけでは心もとないため、マネージャーと構成作家の三人で挑戦したが、結局、誰もオナラを出すことはできなかった。 途中、マネージャーが「出た」と申告し、日村と構成作家にも何か聴こえたらしく「出た! 出た!」と騒いだものの、録音を確… <p><div class="embed-group"><a href="https://blog.hatena.ne.jp/-/group/6653812171403971647/redirect" class="embed-group-link js-embed-group-link"><div class="embed-group-icon"><img src="https://cdn.image.st-hatena.com/image/square/2152845ee3b176277ecd6038363c58dd708851db/backend=imagemagick;height=80;version=1;width=80/https%3A%2F%2Fcdn.blog.st-hatena.com%2Fimages%2Fcircle%2Fcircle-icon.png" alt="" width="40" height="40"></div><div class="embed-group-content"><span class="embed-group-title-label">ランキング参加中</span><div class="embed-group-title">雑談・日記を書きたい人のグループ</div></div></a></div></p> <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 主旨はこちら。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsanjou.hatenablog.jp%2Fentry%2F2022%2F05%2F30%2F210000" title="今日、脳から捨てたものについて ① - 蠅と鬼と人" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2022/05/30/210000">sanjou.hatenablog.jp</a></cite></p> <h4 id="以下捨てたもの">以下、捨てたもの</h4> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20230516/20230516215453.png" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" width="697" height="319" /></p> <p> </p> <h4 id="あれなんだったんだろうね-気持ち悪いねあれ">あれなんだったんだろうね? 気持ち悪いねあれ</h4> <p> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%CA%A5%CA%A5%DE%A5%F3">バナナマン</a>のバナナムーン』における日村の発言より。</p> <p> 番組における罰ゲーム企画にて、流れている楽曲のいいところで合いの手を入れるようにオナラをすべし、という「カラオ屁」に挑んだ際のもの。</p> <p> 日村だけでは心もとないため、マネージャーと<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%BD%C0%AE%BA%EE%B2%C8">構成作家</a>の三人で挑戦したが、結局、誰もオナラを出すことはできなかった。</p> <p> 途中、マネージャーが「出た」と申告し、日村と<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%BD%C0%AE%BA%EE%B2%C8">構成作家</a>にも何か聴こえたらしく「出た! 出た!」と騒いだものの、録音を確認したところ何の音も録れていなかった。では一体、自分たちが聞いたものは何だったのか? となって日村が発した言葉。</p> <p> </p> <h4 id="ちんすこう美味すぎる">ちんすこう 美味すぎる</h4> <p> 名物に旨い物なし、という都会人のエゴ丸出しの言葉があるが、ちんすこうに限っては当てはまらず、お土産でもらうたびに「美味いなあ」と思っている。</p> <p> </p> <h4 id="眼の周辺血流">眼の周辺 血流</h4> <p> ◯◯歳を過ぎると体の衰えが急に来る、という言説には30歳、32歳、35歳など様々なものがあるが、俺はというと、35を超えても何も起こらなかった。</p> <p> 「もしかすると自分はすさまじく恵まれているか、あるいはすでに死んでいるのでは?」と思っていたところ、先日、一切まったく何の前触れもなく目元がダルダルになってきた。潔く受け入れればいいものの、とりあえず揉んだりしてみている。</p> <p> </p> <h4 id="ホットブラッド">ホットブラッド</h4> <p> 「サウナで『整う』現象の正体は、温められて大量の酸素を含んだ血液(ホットブラッド)が脳や体をめぐるからで、これは大きな負荷がかかっており危険である」という旨のツイートを見た。</p> <p> へえ~と思って「ホットブラッド サウナ」でググったが、何も出てこない。</p> <p> そうなると、ホットブラッドという言葉、さらに連鎖して、整う現象への説明までなんだか怪しくなり(正しいのかもしれないけど)、整うとはなんなのか、結局いまだによくわからない。</p> <p> </p> <h4 id="あっ遠藤だ">あっ。遠藤だ。</h4> <p> 『相席食堂』における大悟の発言より。</p> <p> その日の企画は、遠藤さんという害獣ハンターとともにスギちゃんが山に鹿を撃ちにいくというものだった。</p> <p> 結局、発砲許可が下りている時間中には鹿を見つけることができなかったのだが、タ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%E0%A5%EA">イムリ</a>ミットを過ぎた直後に鹿が登場したため、「遠藤氏は鹿にバカにされているのでは?」という流れになり、大悟が鹿のセリフをアテレコして発した言葉。</p> <p> </p> <h4 id="南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏ありがたいありがたい"><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%EE%CC%B5%B0%A4%CC%EF%C2%CB%CA%A9">南無阿弥陀仏</a><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%EE%CC%B5%B0%A4%CC%EF%C2%CB%CA%A9">南無阿弥陀仏</a>。ありがたいありがたい。</h4> <p> ネタバレ。</p> <p> </p> <h4 id="アラスカのヤーツ">アラスカのヤーツ</h4> <p> 好きな芸人はたくさんいるが、この人の才能が欲しかった、という人の筆頭は岩井だ。</p> <p> </p> <p> 以上。</p> kajika0 花について ①(2023/5/15~) hatenablog://entry/4207575160649218634 2023-05-15T23:22:08+09:00 2023-05-16T07:59:24+09:00 はじめに 一番背が高くて葉が枯れかけているのが桜。 赤いのはガーベラ。 ガーベラの左隣の花の首が落ちているのがシャクヤク。 一番左はよくわからない。 なぜ花を 桜の枝を一本買ったのが3月ごろで、理由は机に向かうきっかけが欲しかったのである。 座って作業をしていて、集中が切れてきたら花を見て、また作業にもどる…。そういう光景を夢見ていた。 実際は、まあ、できたりできなかったりした。 桜はやがてピンク色に咲き、花が散って燃えるような緑の葉を茂らせた。しかし、いまは葉が茶色くなってくるくるに巻き、あまり良くない感じである。次の芽が出ている枝もあるが…。 養分を与えすぎることによる肥料焼けと呼ばれる症… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20230515/20230515224020.jpg" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" width="320" height="480" /></p> <p> </p> <p> 一番背が高くて葉が枯れかけているのが桜。</p> <p> 赤いのはガーベラ。</p> <p> ガーベラの左隣の花の首が落ちているのが<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%E3%A5%AF%A5%E4%A5%AF">シャクヤク</a>。</p> <p> 一番左はよくわからない。</p> <p> </p> <h4 id="なぜ花を">なぜ花を</h4> <p> 桜の枝を一本買ったのが3月ごろで、理由は机に向かうきっかけが欲しかったのである。</p> <p> 座って作業をしていて、集中が切れてきたら花を見て、また作業にもどる…。そういう光景を夢見ていた。</p> <p> 実際は、まあ、できたりできなかったりした。</p> <p> </p> <p> 桜はやがてピンク色に咲き、花が散って燃えるような緑の葉を茂らせた。しかし、いまは葉が茶色くなってくるくるに巻き、あまり良くない感じである。次の芽が出ている枝もあるが…。</p> <p> 養分を与えすぎることによる肥料焼けと呼ばれる症状があるらしい。特徴として、葉が先の方から茶色くしおれてくるらしく、それなのかもしれない。</p> <p> 俺は栄養の適量もわからないで、いい加減に栄養剤を水に溶いたものに花を挿している。今回は少し濃度を薄めてみた。これで葉の生気がもどるとよいのだが…。</p> <p> </p> <p> ガーベラをいったん飛ばして<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%E3%A5%AF%A5%E4%A5%AF">シャクヤク</a>である。なぜ花の首が落ちているかというと、花が咲かなかったからである。</p> <p> これも栄養の与えすぎが悪影響した可能性がある。</p> <p> 買うときに花屋の方から、「養分が豊富すぎると蜜が出て、花弁が固まって咲かないことがあるから気をつけてください」と言われていた。そんなことがあるもんかな、と思っていた。</p> <p> そしたら、本当に咲かなかった。どうも、書いているうちに自分がロクにものを知らない、命に触れる資格のない人間に思えてきたが、確かに、いくらかそうなのだろう。</p> <p> とりあえず、栄養の与え方は見直すつもりでいる。</p> <p> </p> <p> 一番左の花は正体がよくわからない。得体が知れないのは珍しいからでもなんでもなく、単に俺が花をよく知らないだけだろう。</p> <p> これは、他の花を買ったときに一緒に入ってきた緑色ばっかりの植物で、なんだろうな? と思っているうちに白い小さな花が群れて固まって咲いた。</p> <p> 買ったときに添えられていた意味は、もっと鮮やかな他の花のにぎやかしなのだと思う。別に、いまでもすごく目を引くとは思わない。</p> <p> ただ、真っ赤っ赤なガーベラを見ていて、ずっと眺めているとその鮮烈さに気疲れし、気づくと白いぽわぽわしたしょうもない花の方を見ている、ということがある。</p> <p> </p> <p> 最後に赤いガーベラである。大きさの異なる花弁が、中央から同心円状に重なっていて、「馬鹿馬鹿しい手が込んでるな」と見ていて思う。</p> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%F6%B2%BF%B3%D8">幾何学</a>模様みたいで、自然物にはどうも見えない。工芸品のようだが、そう思って見ると、今度は「人間にこんなものが作れるわけないな」と感じる。</p> <p> ずっと眺め続けていると、自分が何を見ているのかわからなくなる。ただ、とにかく赤い。複雑で、強烈に赤いものを見ている。</p> <p> </p> <h4 id="花は">花は</h4> <p> すでにどこかで、おそらく言われていると思うが、花をいくつかまとめるのは<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>の構成を考えたり、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/RPG">RPG</a>のパーティを組むのに似ている。</p> <p> どうしても、個々の役割のようなものを与えたくなるし、できるだけ偏重を避けたくなる。どれだけ豪華になっても、一つの花瓶の中にガーベラが2輪あったらやりすぎだと思う。</p> <p> …と同時に、この中に真っ青なガーベラを加えてみたいな、とも思う。どうなるかな、という気持ちになる。みんな、そんなことが楽しいんだろうな、となんとなく思っている。</p> kajika0 少年マンガ × 『タ◯◯◯◯◯◯』。『オオカミ狩り』の感想について hatenablog://entry/4207112889979381674 2023-04-11T22:22:22+09:00 2023-04-11T22:35:11+09:00 ランキング参加中はてなブログ映画部 はじめに 「監獄船内バトルロイヤル」という触れ込みで本作の前評判を耳にし、アジアの暴力映画が好きなのもあって、観に行った。 とても面白かったので、あらすじからオチまで感想を書く。 ただ、紹介にけっこう気をつかう作品である。だから、ネタバレは後半に回す。 とりあえず言えること。 映画を観ていて「こうなるとは全然思ってなかったけど、それはそれで面白い」という経験をしたことがある人は、きっと、『オオカミ狩り』は色々調べない方が楽しめると思う。 公式のティザー映像でも情報が多いぐらいである。気になったら何も考えずに行った方がいいと思う。 簡単なあらすじ(ここはネタバ… <p><div class="embed-group"><a href="https://blog.hatena.ne.jp/-/group/6653812171396055562/redirect" class="embed-group-link js-embed-group-link"><div class="embed-group-icon"><img src="https://cdn.image.st-hatena.com/image/square/c935e2f6189aab48d36091638bd84a909937eb56/backend=imagemagick;height=80;version=1;width=80/https%3A%2F%2Fcdn.user.blog.st-hatena.com%2Fcircle_image%2F98983321%2F151435308053150" alt="" width="40" height="40"></div><div class="embed-group-content"><span class="embed-group-title-label">ランキング参加中</span><div class="embed-group-title">はてなブログ映画部</div></div></a></div></p> <p> </p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20230411/20230411205843.png" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" width="429" height="608" /></p> <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 「監獄船内バトルロイヤル」という触れ込みで本作の前評判を耳にし、アジアの暴力映画が好きなのもあって、観に行った。</p> <p> とても面白かったので、あらすじからオチまで感想を書く。</p> <p> ただ、紹介にけっこう気をつかう作品である。だから、ネタバレは後半に回す。</p> <p> </p> <p> とりあえず言えること。</p> <p> 映画を観ていて「こうなるとは全然思ってなかったけど、それはそれで面白い」という経験をしたことがある人は、きっと、『オオカミ狩り』は色々調べない方が楽しめると思う。</p> <p> 公式のティザー映像でも情報が多いぐらいである。気になったら何も考えずに行った方がいいと思う。</p> <p> </p> <h4 id="簡単なあらすじここはネタバレなし">簡単なあらすじ(ここはネタバレなし)</h4> <p> フィリピンで逮捕された韓国の凶悪犯数十名が、船で本国に送還されることになる。</p> <p> 監視する刑事たちが拳銃で装備しているのに対し、囚人たちは手錠で壁につながれ、食事を摂るのも不自由する状態。しかし、船内には実は、ギャング側の人物が潜んでおり、仲間たちを解放するための工作を始めていた。</p> <p> 内通者は船のセキュリティを破壊し、密かに持ち込んだ重火器の封を切る。同時に、囚人たちの中でも別格の存在感と危険性を示す男(役名はパク・ジョンドゥ)が、口の中に仕込んでいた針金で自分の手錠を外す。</p> <p> </p> <h4 id="観るべき人気をつけた方がいいところ">観るべき人、気をつけた方がいいところ</h4> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B3%A4%BE%E5">海上</a>の密室と化した船に<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>れた悪党が捕まっているなら、その手錠は物語的には当然外れるのであって、囚人組対刑事組の船内戦争が始まる。</p> <p> </p> <p> まず、暴力描写が苦手な人は絶対NGだと思う。</p> <p> 人を刃物で刺す、銃で撃つ、鈍器でぶん殴る…が延々と最後まで続くし、血もビュービュー、バシャバシャ出る。</p> <p> あと、直接ではないが性暴力が匂わされる場面があるし、キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターがそういう発言をすること自体、不快な人もいると思うので、その場合も止めた方がいいと思う。</p> <p> </p> <p> めちゃくちゃ苛烈なバイオレンスが荒れ狂う一方で、「それなりに耐性のある観客でも、これ以上はキツい」となる一線は超えていない印象もある。製作側も、そこは気をつけて描写しているような気がする。</p> <p> 暴力描写で観ていてつらいケースとして、傷ついた側が痛みで長く苦しみ、それに感情移入してしまう場合がある。</p> <p> 『オオカミ狩り』はその点で言うと、攻撃を食らった側は基本的に即死することが多く、苦痛でのたうち回ることもなく死ぬので、被害者の苦しみとか悲しみはそれほど感じない(例外は、パク・ジョンドゥがナイフを相手にゆっくり突き刺していく、すごく印象的な一場面ぐらい)。</p> <p> また、仮にじわじわ殺される場合でも、「あ、次の瞬間には、映ってるこのキャラ死んでるな」というタイミングでカメラが巧みにずらされることが多い(キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ター本人は死んでいるが)。</p> <p> その他、すごく生々しい話で申し訳ないが、攻撃された肉体が嫌な感じに変形したり、体の断面が見えたり、内臓が出たり、みたいなこともない。だから、生理的な不快感ではギリギリのところにとどまっていると思う。</p> <p> </p> <p> ただ、逆に言えば、「暴力慣れしてる観客でもキツい、ギリギリのところまでは描かれる。</p> <p> 最近観た中で、バイオレンスの水準やノリとして近いのは『哭悲』。攻撃の容赦のなさではいい勝負。グロ描写では『哭悲』の方がキツかった。</p> <p> しかし、例えば血液の質感について、『哭悲』がただの赤い色水とかゼリーのように見えたのに対し、『オオカミ狩り』の方は実際の血に相当近く作られており、生々しい(あんなに大量に見たことないから知らないが)。そういう理由で、結局、「暴力・グロ苦手でも楽しめるよ!」というわけではまったくない。</p> <p> 全然関係ないが、<a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2022/06/23/212057">俺は映画でバイオレンスを見ると笑ってしまうことがあって、</a>『オオカミ狩り』は観ながらずっと笑っていた。席で隣にいた人は非常に気味悪かったと思う。</p> <p> </p> <p> そして、「おお、そう来るか…」という映画である。</p> <p> 楽しくなくなるため、あまり詳しく書かないが、エンディングの予想がほぼ不可能なタイプの作品である。</p> <p> だから、途中で訪れる大きな変調に、「まあ、これからもハラハラさせてくれたらなんでもいいよ!」と付き合えるかが大事。そういう楽しみ方ができれば、あとはエンジョイするだけだと思う。</p> <p> </p> <h4 id="ネタバレ兼キャラクター紹介">ネタバレ兼キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ター紹介</h4> <p> 超ネタバレ注意。</p> <p> 未見の方は、映画のあとで再びお会いしましょう。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <h4 id="パクジョンドゥ演ソイングク">パク・ジョンドゥ(演:<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BD%A1%A6%A5%A4%A5%F3%A5%B0%A5%AF">ソ・イングク</a>)</h4> <p> 主人公…と見せかけて違うけど、間違いなく今作のMVP。</p> <p> 囚人組でもっともヤバい男であり、その鮮烈な印象をひたすら、ひたすらに観客に焼き付けたのち、その死によって『オオカミ狩り』の本当の開戦のゴングを鳴らすキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ター。</p> <p> 色白で線の細い俳優さんに、首筋と下半身までタトゥーを入れて筋肉をつけさせたら、同じことを強面がやるよりもずっと不穏な人物になった、という素晴らしいキャラ設計。</p> <p> </p> <p> 『オオカミ狩り』には作品における開戦のゴングが3回あると思う。</p> <p> 序盤、壁につながれていたジョンドゥが隠し持った針金で手錠を外すときの「カキン」という音。</p> <p> 中盤、船底から復活した怪人(後述)がジョンドゥの銃撃を歯牙にもかけず、彼を完膚なきまでに圧倒し、絶望に染まったジョンドゥが発する怒号。</p> <p> 終盤手前、船への突入を命じられたオ・デウン(後述)が怒りで金属板を破壊したときの音。</p> <p> うち二つが、ジョンドゥに関係する。いいキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターは、そいつが物語のスイッチを入れたときと退場するときの2回、ストーリーを大きく動かす。</p> <p> </p> <h4 id="イダヨン演チョンソミン">イ・ダヨン(演:チョン・ソミン)</h4> <p> 刑事組。</p> <p> 責任感◎。機動力◎。</p> <p> </p> <p> 『オオカミ狩り』のいいところの一つは、暴力の色々なパターンを各陣営に代表させている点だと思う。</p> <p> 容赦がなく、脈絡がなくて先が読めない<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%A6%A5%C8%A5%ED%A1%BC">アウトロー</a>たちの暴力。</p> <p> 法治という制限を受けるが、一度発動すると<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%A6%A5%C8%A5%ED%A1%BC">アウトロー</a>たちより洗練され統率されている警察の暴力。</p> <p> そして、完全に制御<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%C7%BD">不能</a>で対処不可能なモンスターの暴力。</p> <p> ダヨンには、基礎的な身体能力や武器の扱いではギャングたちを上回る警察の特徴がうまく表れていた。</p> <p> ちなみに、『オオカミ狩り』がもう必要なくなったキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターには1mmも手加減がないことを表す人物でもある。というか、重要人物を消すことで次のフェーズに進んだ合図にしている、と言うべきか。</p> <p> </p> <h4 id="イソグ演パクホサン">イ・ソグ(演:パク・ホサン)</h4> <p> 刑事組<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%C9%C4%B9">班長</a>。</p> <p> </p> <p> 「この船は三日間海の上だ!(逃げ場のない密室だ)」</p> <p> 「相手の人権など知ったことではない!」</p> <p> …という序盤の発言が、見事に返し矢(そのまんま自分たちに返ってくることの意)になっていて笑ってしまう。</p> <p> 警戒が甘かったせいで船内に地獄を招いた無能上司…と思いきや、責任感と人情にあふれた人物。</p> <p> 歯が異常に強い。</p> <p> </p> <h4 id="医師と初老の犯罪者">医師と初老の犯罪者</h4> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%E1%A5%C7%A5%A3%A5%EA%A5%EA%A1%BC%A5%D5">コメディリリーフ</a>でありつつ、怪人の正体はなんなんだよ、というヒントを示す役割もあり、設定として無駄がない。</p> <p> 無駄がないと言えば、「ここからはシリアス一辺倒でエンディングだから、もうコメディ担当は要らないね」となれば処理されるのが『オオカミ狩り』クォリティ(古いな)。</p> <p> </p> <h4 id="怪人アルファ演チェグィファ">怪人・アルファ(演:チェ・グィファ)</h4> <p> 中盤以降の主役。脳外科手術であれこれして、オオカミの遺伝子をなんかしたので常人の5倍強い(どう考えても5倍では済まない気がする…)。</p> <p> </p> <p> 怪人・アルファの素晴らしいところは、最初に出てから本格的に始動するまでの存在感の残し方だと思う。</p> <p> 物語の序盤、休眠状態で出てきたとき、「なんか変なやつが船底に積まれてるぞ?」というのが観客に向けて描かれる。</p> <p> ただ、この時点では、正体がいい具合によくわからない。そのため、こいつが中盤〜終盤にかけてのメインキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターであり、この怪人の登場によって物語中の攻撃力がインフレするので「重火器で装備してようが普通に死にます。『オオカミ狩り』はギャング対刑事の抗争じゃなくて、人間対怪物のモンスターパニックムービーです」になるとは想像しにくい。</p> <p> ただ、予告編を観ていたら推測がつく人もいるかも。俺が、ティザー映像も公式サイトも観ない方がいいと思うのはこれが理由である。何も知らずに観た方が面白いと思う。</p> <p> </p> <p> 怪人・アルファがジョンドゥに上げさせる絶望の声が『オオカミ狩り』2回目のゴングである。しかし、その直前、上のフロアから明らかに異様な着地音とともに、ギャングたちと刑事たちがにらみ合っているところに乱入する場面<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>て、すごく良い。</p> <p> 「…え? 何こいつ?」</p> <p> ギャングも刑事たちも(そして観客も)、誰も状況を理解できないでいたら、怪人の近くにいた人間が殴られて、「あれ、なんか、軽く殴られただけなのにメチャクチャぶっ飛んで即死したんですけど…」という衝撃がすごくいい。</p> <p> 観客は映画の序盤からここまで、解放された犯罪者たちが装備の性能と不意打ちで刑事たちを圧倒するからこそ、ドキドキしたのだ。刑事チームがそこから体制を立て直すのはいいが、戦況が完全に拮抗してしまっては、面白くもなんともない。</p> <p> どうせ新しい波乱が起こるなら、秒で起こった方がいい。だから即起きる。『オオカミ狩り』は無駄がない。</p> <p> </p> <p> というわけで、『オオカミ狩り』における<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BF%A1%BC%A5%DF%A5%CD%A1%BC%A5%BF%A1%BC">ターミネーター</a>、もしくは<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/T-REX">T-REX</a>が怪人・アルファである。</p> <p> ちなみに、映画におけるモンスターの多くは、ある宿命を背負う。それは、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BF%A1%BC%A5%DF%A5%CD%A1%BC%A5%BF%A1%BC">ターミネーター</a>に対するT-1000、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/T-REX">T-REX</a>に対するス<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D4%A5%CE">ピノ</a>サウルスのように、続編にはもっと強力な同種が登場し、対決を迫られることである。</p> <p> そういうわけなので、怪人・アルファにも同族のライバルが現れるが、『オオカミ狩り』はそれを一作品の中でやってしまうのだった。</p> <p> </p> <h4 id="オデウン演ソンドンイル">オ・デウン(演:ソン・ドンイル)</h4> <p> 監獄船運航管理 ⇒ 海洋特殊救助団チーム長。</p> <p> 陸上から監獄船を見ている管制室にて、職員全員パリッとした服装なのに、この人だけいい加減な格好で登場するいい加減な上司。</p> <p> 緊急事態となって意見を奏上した部下に「お前の見解など聞いてない!」と言ったあと、「どうにかしろ!」と続けて言うなど、お前は指揮をしたいのかしたくないのかどっちなんだよ、という人。</p> <p> 無能上司と思いきや、実は有能…ということもなく、不要な人死にをたくさん出しているし、あの勤務態度なので(おそらく)部下にも嫌われているため、ホンモノの無能上司。</p> <p> しかし、『オオカミ狩り』の良いところは、この<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%F3%A5%B3%A5%C4">ポンコツ</a>がこのあと乗船し、直接の戦闘描写がある中ではたぶん、一番強いのが判明するところである。イ・ドイル(後述)に余計な舐めプをしたために逆転されてしまったが、それさえなければ勝っていたと思う。</p> <p> </p> <p> 船上への突入を命じられたデウンが近くにあった金属を怒りでぶん殴り、穴を空けたとき、「おいおい、コイツもアルファと同じ怪物なのか」となって、『オオカミ狩り』の最後のゴングが鳴る。</p> <p> この展開は、ジャンプのような<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BE%AF%C7%AF%A5%DE%A5%F3%A5%AC">少年マンガ</a>をイメージさせる。<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A1%BC%A5%D1%A1%BC%A5%B5%A5%A4%A5%E4%BF%CD">スーパーサイヤ人</a>も念能力も<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%D2%C4%B2%F2">卍解</a>も、誰かが身に着けた特殊な能力は、次の章ではどれも、すべてのキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターの標準装備になる。</p> <p> そういうわけなので、怪人・アルファが最初に示した超人能力は、デウンをはじめ、他のキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターにも展開されることになる。そして、『オオカミ狩り』のすごいところは、それを一作品の中でやってしまうところである。</p> <p> </p> <h4 id="超人部隊">超人部隊</h4> <p> 怪人・アルファ、デウンと同じ超人技術を搭載した大勢の戦闘員たち。</p> <p> 登場時の彼らのたたずまいが良い。軍人特有の(と言っても実物はしらないが)、これまでの経験や注意点が一般人とあまりに違うため、得体の知れない余裕があるというか、なんか話が通じない雰囲気が漂う、その感じがすごくよかった。</p> <p> それだけに、アルファとドイルにほぼ全滅させられてしまったのは残念である。</p> <p> 上で書いたとおり、『オオカミ狩り』では「ギャング」「刑事」「モンスター」と色んな種類のバイオレンスが見られる。ここで超人部隊が、統率された怪物たちという新しい暴力を見せてくれるとよかったんだけど、そうはならなかった。</p> <p> </p> <h4 id="イドイル演チャンドンユン">イ・ドイル(演:チャン・ドンユン)</h4> <p> 主人公(たぶん)。おそらく唯一の生存者であり、超人技術のイレギュラー。</p> <p> 彼については最初からうまく伏線が張られており、観客にも少しずつ違和感が増してきたところで正体が明かされるのが上手い。</p> <p> 登場人物がひと通り退場したのち、その背景が明らかになり、『オオカミ狩り』の最後を自身の復讐劇として締めくくる…んだけど、ジョンドゥや怪人・アルファによる大暴れの影響を受け、メインキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターとしての持ち時間が短くなり、存在感が足りない印象はある。</p> <p> 超人技術のための人体実験で拒絶反応が出たときの演技はすごくよくて、いい役者さんだと思う。続編に期待。</p> <p> </p> <h4 id="続編あんの">続編あんの?</h4> <p> 適当に書いた。実際は、できないような気もする。</p> <p> 諸悪の根源? が無傷で生きているし、ドイルにとっても因縁が残っているので、やろうと思えばできるだろう。</p> <p> ただ、最初は「ギャング対刑事の密室抗争」として始まった作品が、「実は人間対モンスターのパニックアクション」 ⇒ 「いやいや、本当は家族を奪われた男の復讐劇」という二転三転が『オオカミ狩り』の面白さだったわけで、その続編となると普通のアクションや<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CE%A5%EF%A1%BC%A5%EB">ノワール</a>では認められないだろうし、ちょっと予想ができない。</p> <p> </p> <p> まあ、でもあったら観に行くと思う。それぐらい面白かったので。</p> <p> </p> <p> 以上。</p> kajika0 あまりにも扇情的な傑作。映画版『BLUE GIANT』の感想について hatenablog://entry/4207112889973943210 2023-03-25T23:17:56+09:00 2023-03-25T23:59:56+09:00 ランキング参加中はてなブログ映画部 扇情的 良いのと悪いのと二つの意味を含めて「扇情的」と言いたい。 一つは、音響によって観客の心と体をゆすぶる、とても官能的な作品であるということ。 原作のストーリーの良さをまったく損なわない、素晴らしく編集された映画版だが、それでも、主役は物語ではなく圧倒的に音楽だった。そのくらい、言葉にならないぐらい良かった。本当に凄い楽曲群だった。 もう一つは、過剰に観客の感動を誘おうとしていて、はっきり言ってポルノすれすれであるということ。 映画版『BLUE GIANT』は、観ている側の感情のツマミに遠慮なく手を伸ばして、スイッチをオンオフするような作品だと思う。強烈… <p><div class="embed-group"><a href="https://blog.hatena.ne.jp/-/group/6653812171396055562/redirect" class="embed-group-link js-embed-group-link"><div class="embed-group-icon"><img src="https://cdn.image.st-hatena.com/image/square/c935e2f6189aab48d36091638bd84a909937eb56/backend=imagemagick;height=80;version=1;width=80/https%3A%2F%2Fcdn.user.blog.st-hatena.com%2Fcircle_image%2F98983321%2F151435308053150" alt="" width="40" height="40"></div><div class="embed-group-content"><span class="embed-group-title-label">ランキング参加中</span><div class="embed-group-title">はてなブログ映画部</div></div></a></div></p> <p> </p> <p><img src="https://bluegiant-movie.jp/images/visual/03.jpg" alt="" /></p> <p><br /><br /></p> <h4 id="扇情的">扇情的</h4> <p> 良いのと悪いのと二つの意味を含めて「扇情的」と言いたい。</p> <p> 一つは、音響によって観客の心と体をゆすぶる、とても官能的な作品であるということ。</p> <p> 原作のストーリーの良さをまったく損なわない、素晴らしく編集された映画版だが、それでも、主役は物語ではなく圧倒的に音楽だった。そのくらい、言葉にならないぐらい良かった。本当に凄い楽曲群だった。</p> <p> もう一つは、過剰に観客の感動を誘おうとしていて、はっきり言ってポルノすれすれであるということ。</p> <p> 映画版『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/BLUE%20GIANT">BLUE GIANT</a>』は、観ている側の感情のツマミに遠慮なく手を伸ばして、スイッチをオンオフするような作品だと思う。強烈に気持ちが動かされる一方、どこか観客を操作しようとしているというか、「創作工学」みたいな言葉も浮かぶ。</p> <p> 念のため言っておくと、創作物は例外なく、触れた者を操ろうしている。俺が主張したいのは、そのやり方にも品性というか、つつましさみたいなものがあるべき、という話である。</p> <p> あと、とにかく、登場人物がよく泣く。</p> <p> 映画作品のうちで何度もキャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターに涙を流させるのは、法律で固く禁じられている。これは俺が定めた法律である。理由は、歳を取ると、スクリーンで誰かが泣いていたら自分も泣くからである。</p> <p> 俺はこんなに常に誰か泣いている映画を以前に観たことがない。冗談抜きで、5分に1回以上のペースで誰か泣いている。</p> <p> 何か達成したときであったり、挫折したときであったり、とにかく感極まってしまったときであったり…。ほとんどみんな泣いている。</p> <p> そして、俺も観ていて泣く。これは反則である。一応言っておくが、本来の悪い意味で反則である。</p> <p> </p> <p> そういうことで、映画版『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/BLUE%20GIANT">BLUE GIANT</a>』はポルノまがいの怪作と<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%E6%B0%EC%BD%C5">紙一重</a>である。誰に何と言われようとはっきりそう思っている。</p> <p> そして、文句のつけようもなく、ものすごい傑作である。原作ファンでまだ観ていない人は、絶対に観た方がいいし、そうでない人にもおすすめする。本当に素晴らしい体験ができた。</p> <p> </p> <h4 id="あらすじ">あらすじ</h4> <p> 物語は、世界一のサックスプレイヤーになることを目指す18歳、宮本大が東京に上京したところから始まる。そして、大が組んだトリオによる、日本ジャズ界の聖地・So Blueでの演奏で終わる。</p> <p> 明確な起承転結あり、原作から漏らしたところのほとんどない、素晴らしいストーリー展開。原作ファンはみんな、「あ、このエピソードをちゃんと描くのか」と思ったんじゃないだろうか。</p> <p> 『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/BLUE%20GIANT">BLUE GIANT</a>』という作品のすごいところは、大という圧倒的な輝きを放つ青色巨星が主人公として存在する一方で、周囲の人物たちの葛藤や人生をものすごく丁寧に描く群像劇でもあるところである。そういうわけで、雪祈と<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%A6%C9%E5%B2%B0">豆腐屋</a>とか、玉田とそのファンになった男性とか、大切な挿話も細かいセリフもちゃんと拾われている。</p> <p> 2時間にこれらをまとめたのは、ものすごい編集の力だと思う。こうして構成された「大とその周囲の人々」という世界観が、エンディングの感動(嫌な言葉ですね)に大きな役割を果たす。</p> <p> あえて、原作にあったアレも映画で観たかったな~というものを挙げると、玉田が大と雪祈の前でソロを練習した成果を見せる場面だろうか。玉田の演奏を聴く二人の表情が少しずつ変わっていくのが好きなシーンだった(っていうか、玉田に関わるエピソード全般が好き)。</p> <p> </p> <p> ちなみに映画の冒頭は、まだ何者でもない大が、雪の中でサックスを練習していて、一匹の猫と遭遇するシーンで始まる。俺は原作でもあの場面が本当に好きで、大のすごさ、孤独と共感が両立する最高のエピソードだと思うので、大事なオープニングに選ばれたのはうれしかった。</p> <p> </p> <h4 id="具体的な感想">具体的な感想</h4> <p> 以下、もう少しストーリーに触れながら感想を書く。</p> <p> 二重の意味でネタバレになる。原作を知らない人だけでなく、原作ファンにとってもネタバレである。なんでかというと、最終盤の展開が原作と違っていて、そのことを書くからである(こう書くこと自体がもうネタバレだが)。</p> <p> あのエンディングには賛否があると思うけど、俺は良いと思った。</p> <p> そういうわけで、詳しく書いていくが、その前にある点でも話題になっている作品でもあるため、先にそっちに触れておく。</p> <p> </p> <h4 id="CG">CG</h4> <p> 演奏シーンのCGがだいぶひどい、という理由で世間をにぎわせており、「どんなもんだろう」と思っていたら、確かにひどかった。</p> <p> これは擁護のしようがなく、サックスを吹く大の動きは捕まってあばれるエビみたいだったし、雪祈はキャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターのディテールがつぶれてマネキンのようだった(玉田が一番マシに見えたな、俺は)。</p> <p> ただ、CGでないアニメーションで描かれる部分も多かったし、幻想的なビジュアルで演出している部分も多く(こっちはすごくカッコいい)、CGの出来は作品の印象にまったく影響ない。</p> <p> 要するに、絵づらで多少失点しようと、そんなもの意に介さず吹き飛ばすくらいの魅力がある内容になっている。たぶん、多くの人もそう感じたと思う。</p> <p> </p> <h4 id="具体的な感想雪祈について注ネタバレしかない">具体的な感想。雪祈について(注:ネタバレしかない)</h4> <p> 超絶技術の持ち主で、ハンサムで傲慢で繊細な、大と同じ18歳のピアニスト。</p> <p> 『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/BLUE%20GIANT">BLUE GIANT</a>』映画版は、ある意味で雪祈の作品である。主人公の大も他のキャラも、みんな良かったけど、それでも、雪祈に注目することを求める構成だったと思う。</p> <p> </p> <p> 原作ファンとして、「あ、雪祈ってこういうやつだったのか」とあらためて思ったのは、雪祈がはじめて大のプレイングを聴いたときの場面である。</p> <p> 初登場時から合理性と傲慢さ(そして、そういう姿勢を認めさせる才能)を鮮やかに印象づけた雪祈。その雪祈が、サックスを始めてまだ3年だという大の演奏をはじめて聴いて、涙を流す。</p> <p> 雪祈の計算高さや冷たさはその後、何度も描かれるんだけど、それでも彼は相手の努力に敬意を払い、そこに込められた情熱と、費やされた膨大な時間を敬える人間なのだ。</p> <p> </p> <p> クラブ・So Blueの平から、技術を誇るような自分のプレイングをコテンパンに評されたとき、多くの読者にとって印象的だったのは、一人になった雪祈がつぶやいた「あの人、いい人だな」という言葉だったと思う。</p> <p> これは、なかなか言えない。特に、雪祈ほど優秀なら、なおさら言えない。傲慢さと謙虚さ、他人への冷たさと優しさ、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%B8%CA%C8%E3%C8%BD">自己批判</a>が入り混じったのが雪祈なのだ。</p> <p> ちなみに、この傲慢さと〜云々は、別のもう一人の人物にも当てはまる。主人公・大である。雪祈と大は、多くの面を、しかしまったく違ったかたちで共有していると思う。</p> <p> </p> <p> はじめて大のプレイングを見たとき、もしかすると雪祈は、感動と同時に恐怖を覚えたかもしれない。</p> <p> 恐怖が言い過ぎなら、「敵わない」という圧倒的な格のようなものを、かすかに意識したような気する。この点はこのあとで書く。</p> <p> </p> <p> トラックの事故は、映画版でもやりすぎだったかなあ…と思う。<a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2017/03/12/154050">俺は原作のときも、ストーリー上の展開という点で批判したけど、</a>映画版については「あまりに扇状的」という点で、やっぱり批判したい。</p> <p> 事故の描写が良くも悪くもリアルすぎる。たぶん、実際の事故もああいう感じで、ちょっと目を離した隙にすさまじい暴力が無音でやってきて、最後の一瞬だけ写真を投げ込むように時間が止まって、即座にすべてを無機質に押し潰していくのだろう。</p> <p> ああいうものを見せられたら(それも、これまでの熱いドラマのあとに)、観客の感情はぐちゃぐちゃになってしまう。これは人の心の中に手を入れてかき回すようなもので、映画ってそれでいいのか? と思う。</p> <p> 思うけど、でも、いいのか。何しろ、そこから先はもう、感動するしかないのだから。よくわからない。</p> <p> </p> <h4 id="最後の演奏">最後の演奏</h4> <p> 原作では、So Blueでの演奏は大と玉田二人だけのものになった。</p> <p> 映画版は違う。大と玉田が演奏を終えて裏にはけたところで、雪祈が片手の使えない状態で合流し、アンコールでカムバックするからである。</p> <p> これによって、So BlueのステージにJASSの三人がそろう。ただし、アンコールは自分も演奏する、と告げた雪祈は、これを最後にバンドを解散することも同時に伝える。解散ライブなのだ。</p> <p> </p> <p> この展開について、批判から書く。</p> <p> まず単純に、「さすがにその体じゃ無茶だろう」と思う。止めろよ普通に、と。</p> <p> ただ、『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/BLUE%20GIANT">BLUE GIANT</a>』というのは、ある種のブッチギレてしまっている人たちの物語でもあるので、許されるかもな、とも思う。</p> <p> 大は雪の降る中で延々とサックスを吹き続けるような人物だし、雪祈も青春のすべてをピアノにかけてきた。玉田だって人生の大事な一年をすべてドラムに捧げると決めた。言い換えれば、みんな「これに狂う」ことにしたのだ。</p> <p> ポーズで情熱を装っているわけではなく、三人とも根本的にどこかネジを飛ばしている。そして、観客もたぶん、それを観に来ている。どうかしているプレイヤーたちが、ステージでさらにどうかしていくところを観に来るのだ。きっと、そうやって「狂っているやつがさらに狂う」ことの中にしか表れない、生きている価値を観るために。</p> <p> でもまあ、「いや、ステージで倒れたらその後の営業どうすんの…」と冷静に思う俺もいましたよ。</p> <p> </p> <p> もう一つの批判は、雪祈がステージに参加することで、So Blueでのライブが今後の物語に与える影響が完全に変わるからだ。</p> <p> <a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2017/03/12/154050">上で書いたとおり、俺は原作での展開を批判したことがあるけど、</a>それは、「何もここまであからさまに、今後の展開のためにキャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターを壊さなくてもいいだろう」ということだった。「日本国内では大を成功させない」という作者の意図が見えすぎている、と思った。</p> <p> 難しいのは、作者の目的そのものは理解できることだ。やりたいことはわかる(気がする)。日本では十分なキャリアを積めず(トリオでのSo Blue演奏を飾れず)、裸のチャレンジャーとして次の世界に挑む大、俺も見たい。でも、他の方法はなかったか、ということなのだ。</p> <p> しかし、映画版では雪祈が合流することになった。</p> <p> 原作が「盟友のピアニストを欠いた状態で、非常に印象的ではあるものの未完全のライブを行い、次の地に向かう」のに対して、映画の「重傷から奇跡的に復活したピアニストと一緒に、完全なトリオで解散ライブを行ってから出発する」のでは、意味がかなり違う。そういう批判を書いておく。</p> <p> </p> <p> それでも。</p> <p> それでもですね。</p> <p> あの最後の三人でのライブシーンは本当に素晴らしかったよ。本当に。</p> <p> </p> <p> 俺はジャズをまったく聴かないし、他の音楽の精神性なんかもわからない。</p> <p> だから、◯◯と比べてジャズは…ということはわからないけど、考えたことがある。</p> <p> 劇中で雪祈が言った言葉に、「他の音楽と違い、ジャズバンドはずっと同じメンバーでは続かない」というものがある。</p> <p> この不安定なあり方と関係があるのかもしれないが、JASSの三人は強い絆で結ばれていながらも、各人が視野に入れているものは、まるでバラバラである。</p> <p> 大は世界一のプレイヤーになるのが目的で、So Blueでの演奏はいわば、一つのステップに過ぎない。</p> <p> 一方、雪祈は10代でSo Blueのステージに立つのが夢で、とにかく今は、そこにすべての照準が合っている。</p> <p> 玉田はSo Blueとか未来とかではなく、「いま、この三人」でプレイするためにバンドを組んでいる。</p> <p> つまり、彼らは目的と技術と友情でまとまっているけど、一方で、何かのきっかけで分解する可能性を常に秘めている。こうした不安定さゆえに常に崩れてかけているものを、劇的にまとめ、一時的とはいえかたちにするのが、ステージでのライブだったのだ。</p> <p> だからこそ、雪祈の加わった最後の演奏は、すさまじい緊張感でもう、ちぎれそうになってる。</p> <p> 夢のために一日も立ち止まれない大は、これ以上バンドにとどまれない。</p> <p> 雪祈はこの舞台で人生最大の目的を達してしまった。</p> <p> そして、この二人と演奏できないなら、玉田にはジャズそのものを続ける理由がない。</p> <p> 三人は、どうしたって今日で解散するしかない状況でプレイしているのだ。そういう分解の運命が、ステージでは反転し、一つのバンドの音となって鳴らされているわけで、この矛盾、このドラマなのだ。</p> <p> </p> <p> 演奏中に、雪祈が大を見つめる場面が何度か挿入される。一方、大は雪祈をあまり見ていないように感じる。</p> <p> この先も、何度か描かれることになる、大が持つある種の残酷さ。周囲との関係性やあらゆる感情を燃焼させ、この場の演奏に変換する狂気。</p> <p> 4歳の頃からピアノを弾き、音楽のキャリアではるかに先を行く自分をノックアウトした大の姿を、雪祈はまぶしそうに見つめ、もしかしたら恐れ、あこがれているのかもしれない。</p> <p> だからこそ、エンディングで大が雪祈に放ったひと言は、きわめて強い意味を持っている。</p> <p> 「俺がお前のピアノの一番のファンだ」</p> <p> 心底あこがれ、恐れて、でもその感情は秘めてきた相手から、こんなことを言われたら…一体どうしたらいいのでしょうか?(大は本当に罪作りだ)</p> <p> </p> <p> あらためて、ものすごい映画だと思う。</p> <p> 批判も気になったことも、上で全部書いた。色々言いたいことは言ったうえで、それは、この映画がくれる感動をまったく傷つけない。</p> <p> 原作ファンはもちろん、ちょっとでも興味がある人は、ぜひ行ってほしいと思う。</p> kajika0 今日、脳から捨てたものについて ⑭ hatenablog://entry/4207112889973563052 2023-03-21T20:02:09+09:00 2023-03-21T20:36:31+09:00 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの あぱぱの肉揉み 元ネタは町田康の短編『権現の踊り子』。 物語というのは、作者が考えていることや感情を伝えるツールになる。しかし、場合によっては、感情を食って別のものに変身してしまうことがあるというか、「最初は、そーいうつもりで書いてたんじゃなかったんだよな~」ということが結構ありそうだ。 怒りとか嘲笑とかは特に難しく、なるたけ毒を抜かないと商品にならない。そういうバランスが難しいんだろうと思う。 『権現の踊り子』は、あんまり大っぴらにするものでもないタイプの感… <p><div class="embed-group"><a href="https://blog.hatena.ne.jp/-/group/6653812171403971647/redirect" class="embed-group-link js-embed-group-link"><div class="embed-group-icon"><img src="https://cdn.image.st-hatena.com/image/square/2152845ee3b176277ecd6038363c58dd708851db/backend=imagemagick;height=80;version=1;width=80/https%3A%2F%2Fcdn.blog.st-hatena.com%2Fimages%2Fcircle%2Fcircle-icon.png" alt="" width="40" height="40"></div><div class="embed-group-content"><span class="embed-group-title-label">ランキング参加中</span><div class="embed-group-title">雑談・日記を書きたい人のグループ</div></div></a></div></p> <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 主旨はこちら。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsanjou.hatenablog.jp%2Fentry%2F2022%2F05%2F30%2F210000" title="今日、脳から捨てたものについて ① - 蠅と鬼と人" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2022/05/30/210000">sanjou.hatenablog.jp</a></cite></p> <h4 id="以下捨てたもの">以下、捨てたもの</h4> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20230321/20230321193450.png" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" width="697" height="362" /></p> <p> </p> <h4 id="あぱぱの肉揉み">あぱぱの肉揉み</h4> <p> 元ネタは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%AE%C5%C4%B9%AF">町田康</a>の短編『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%A2%B8%BD%A4%CE%CD%D9%A4%EA%BB%D2">権現の踊り子</a>』。</p> <p> 物語というのは、作者が考えていることや感情を伝えるツールになる。しかし、場合によっては、感情を食って別のものに変身してしまうことがあるというか、「最初は、そーいうつもりで書いてたんじゃなかったんだよな~」ということが結構ありそうだ。</p> <p> 怒りとか嘲笑とかは特に難しく、なるたけ毒を抜かないと商品にならない。そういうバランスが難しいんだろうと思う。</p> <p> 『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%A2%B8%BD%A4%CE%CD%D9%A4%EA%BB%D2">権現の踊り子</a>』は、あんまり大っぴらにするものでもないタイプの感情が、割りと原液の名残を濃く残している気がして良い。</p> <p> </p> <h4 id="マッド感">マッド感</h4> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%AD%A4%CE%BB%C8%A4%A4">ガキの使い</a>、「これってエコじゃね?灼熱の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C1%C7%BC%EA">素手</a>地獄!箸なき戦い!!」より。</p> <p> 煮立ったような飯に向かって、指を箸やレンゲに見立てて食うという企画。熱さをものともしない狂気を表した言葉。</p> <p> </p> <h4 id="dengue-dengue-dengue">dengue dengue dengue</h4> <p><iframe src="https://www.youtube.com/embed/L0MPZgfu93c?feature=oembed" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture; web-share" allowfullscreen="" title="Dengue Dengue Dengue – Semillero (2018 - Album)" id="widget2" width="420" height="315" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.youtube.com/watch?v=L0MPZgfu93c">www.youtube.com</a></cite></p> <p> 仕事中はずっと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%B1%C2%B2%B2%BB%B3%DA">民族音楽</a>を流していたい。</p> <p> </p> <h4 id="エシュロン"><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%B7%A5%E5%A5%ED%A5%F3">エシュロン</a></h4> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fja.wikipedia.org%2Fwiki%2F%25E3%2582%25A8%25E3%2582%25B7%25E3%2583%25A5%25E3%2583%25AD%25E3%2583%25B3" title="エシュロン - Wikipedia" class="embed-card embed-webcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%AD%E3%83%B3">ja.wikipedia.org</a></cite></p> <p> 「そんなものないです」「いや、あるし」</p> <p> …というのは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%A2%CB%C5%CF%C0">陰謀論</a>の構造なのだが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%B7%A5%E5%A5%ED%A5%F3">エシュロン</a>はどうも本当にあるらしい。そして、もちろん、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%A2%CB%C5%CF%C0">陰謀論</a>者はみんな、「これだけは本当にある」と言っているのである。</p> <p> ちなみに俺は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%E2%CC%EE%CF%C2%CC%C0">高野和明</a>の『ジェノサイド』で知った。</p> <p> </p> <h4 id="だらだら食い">だらだら食い</h4> <p> 実家の猫が飯を一度に食べきらず、食べてはどこかに行き、また来ては食べ、を繰り返す様子を叔母が表したもの。</p> <p> </p> <h4 id="よく似ておる">よく似ておる</h4> <p> 元ネタは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E2%A5%F3%A5%B9%A5%BF%A1%BC%A5%A8%A5%F3%A5%B8%A5%F3">モンスターエンジン</a>のコント「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%CB%A4%F2%BB%FD%A4%C6%CD%BE%A4%B7%A4%BF%BF%C0%A1%B9%A4%CE%CD%B7%A4%D3">暇を持て余した神々の遊び</a>」。</p> <p> 発想がものすごく優れたコントだと思っていて、実際にヒットもした。それでも、あれ一本で天下が取れるわけではないところに、厳しさを(勝手に)感じている。</p> <p> </p> <h4 id="三界に家なし">三界に家なし</h4> <p> どこにも身を落ち着ける場所がない、という意味。子どもの頃は「ふーん」と思っていたが、齢を重ねて、うっすらほんのりと俺もそうなりつつある。</p> <p> </p> <h4 id="プロテイン原料"><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%C6%A5%A4%A5%F3">プロテイン</a> 原料</h4> <p> 筋トレの後、「一体、何からできているのだろう…」と思いながら毎回飲んでいる。気になるが調べるほどでもない、絶妙のラインにある。</p> <p> </p> <p> 以上。</p> kajika0 カレーについて hatenablog://entry/4207112889973261198 2023-03-20T21:29:14+09:00 2023-03-21T20:37:26+09:00 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ はじめに セブンイレブンがカレーフェスを始めてから、SNSで食い物の話題の中心がカレーになった。 普段、特別に食道楽ではないにしても、色々な食べ物について投稿している人たちが、カレーの一色に染まっているのだ。 みんなそんなにカレーが好きだったのか。いや、好きなのは知っていたが、いま目にしているとおり、みんな本当に好きだったのだ。 他の食い物の話題も、まずカレーありきだったのだ。「(カレーが好きだけど、それはそれとして)今日はこういうものを食べた。作った。美味しかった」ということであって、この( )の中が今回のフェスによって白日にさらされ、俺の知… <p><div class="embed-group"><a href="https://blog.hatena.ne.jp/-/group/6653812171403971647/redirect" class="embed-group-link js-embed-group-link"><div class="embed-group-icon"><img src="https://cdn.image.st-hatena.com/image/square/2152845ee3b176277ecd6038363c58dd708851db/backend=imagemagick;height=80;version=1;width=80/https%3A%2F%2Fcdn.blog.st-hatena.com%2Fimages%2Fcircle%2Fcircle-icon.png" alt="" width="40" height="40"></div><div class="embed-group-content"><span class="embed-group-title-label">ランキング参加中</span><div class="embed-group-title">雑談・日記を書きたい人のグループ</div></div></a></div></p> <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BB%A5%D6%A5%F3%A5%A4%A5%EC%A5%D6%A5%F3">セブンイレブン</a>がカレーフェスを始めてから、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/SNS">SNS</a>で食い物の話題の中心がカレーになった。</p> <p> 普段、特別に食道楽ではないにしても、色々な食べ物について投稿している人たちが、カレーの一色に染まっているのだ。</p> <p> みんなそんなにカレーが好きだったのか。いや、好きなのは知っていたが、いま目にしているとおり、みんな本当に好きだったのだ。</p> <p> 他の食い物の話題も、まずカレーありきだったのだ。「(カレーが好きだけど、それはそれとして)今日はこういうものを食べた。作った。美味しかった」ということであって、この( )の中が今回のフェスによって白日にさらされ、俺の知らないところで、実はみんな一体だったのか…という気持ちになり、安心感と不安感が入り混じった変な気持ちなる。</p> <p> </p> <p> 似たような気持ちに、一度だけに襲われたことがある。三十年近く前、小学校低学年の頃のことだ。</p> <p> あれから長い年月が経つけども、それ以来、同じ感覚を抱いたことはなかった。</p> <p> 例えば、「みんながこういうことで一つになるのに驚いた」というケースとして、国際的なスポーツのイベントとか大きな災害の時が挙げられるが、俺個人は、成長する過程で出会ったどれ一つとして、「知らんかったけど、みんな本当は同じものを共有していたんだ」と驚いたことはなかった。今回のカレーフェスで抱いた、安心感と不安感が溶けあった奇妙な感覚は、本当に、三十年前のあるとき以来だ。</p> <p> </p> <h4 id="怪奇大東京妖怪ゾーン">『怪奇!大東京妖怪ゾーン』</h4> <p> それは、『怪奇!大東京妖怪ゾーン』というホラーを読んだときのことだった。物語の主人公は俺と同じ小学生で、級友たちと一緒に、日常にひそむ妖怪や宇宙人を追うという内容だった。</p> <p> 当時の子供向けホラーの多くは、テンションの高い作品だった記憶がある(意外と、文庫の『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B3%D8%B9%BB%A4%CE%B2%F8%C3%CC">学校の怪談</a>』みたいなドメジャーがダウナーな作風だったが)。</p> <p>そうした中で、『怪奇!大東京妖怪ゾーン』というタイトルも、他作品と同様の明るい印象を受けるが、実際の印象はまったく違っていた。陰惨で、超常的なオカルトとはまた別の、世の中の暗部みたいなものも描かれていて、過剰なほどグロテスクでもあり、とにかく気分の高揚とは切り離されたヘンテコな作風だった。</p> <p> 以下はネタバレ。古い作品で、もう目を通す機会もあまりないと思うけど、一応、改行しておく。</p> <p>↓</p> <p>↓</p> <p>↓</p> <p> 物語の最後で、自分の周りにいる友人たちが、これまで追ってきた妖怪や宇宙人によって、すでに成り代わられていたことが判明する。実は、人間なのは主人公だけなのだった。</p> <p> 侵略ものとしてはメジャーな展開かもしれないが、当時の俺はものすごい衝撃を受けた。ところが、『怪奇!大東京妖怪ゾーン』が本当にすごいのはここからで、なんと主人公自身も相手側の計画によって、化け物に変態させられてしまう。強制的に、というのではなく、ひそかに以前から「種」のようなものを埋められていて、それが物語の最終盤になって唐突に、抵抗しようもなく体を支配し、変質させるのだ。</p> <p> 自分の身に何が起こっているのか、古い肉体を脱ぎ捨てて変わっていく主人公自身も気づいていない。ものすごく怖い。</p> <p> </p> <p> でも、同時に「ん? じゃあいいのか…?」という気持ちにもなる。</p> <p>なぜかというと、友人たちの正体がわかったときに感じた恐怖や不安感というのは、 主人公以外の存在がみんな、彼とは別の異質な存在に統一されていることから来ていた。</p> <p> そうした、最後に残された孤独感とか、抗いようのない無力感が怖かったのだ。しかし、主人公もそこに合流していくわけだから、孤立していたのは結局、一瞬のことだった。だからそこには、まあ明らかにハッピーエンドではないけれど、同時に妙な安心感もあったのだ。</p> <p> </p> <h4 id="話はカレーに戻る">話はカレーに戻る</h4> <p> 今回のカレーフェスで感じた不安感と安心感は、『怪奇!大東京妖怪ゾーン』を読んだときの気持ちとすごく似ている。</p> <p> あのときと同じように、みんな俺の知らないうちにカレーでとっくに一体化しており、そして、俺自身も結局はその一部なのだった。</p> <p>だから俺もいま、フェスのカレーを食ってる。宣伝するつもりはないので商品名は言わないけど、マジで、店で出されるようなちょっと珍しい香辛料を使っているやつがあって、結構感動する。</p> <p>惜しいのは、このブームに参加するのが遅れてしまったことだ。こういうとき、まずは「どうやら、このカレーフェスはかなりクォリティが高いらしい」から始まるわけだが、</p> <p> </p> <p>① ま、だからって本当にカレー食いたきゃ店に行けばいいわけだし…</p> <p>② あれ、周囲の熱がまだ冷めないな?</p> <p>③ …俺も、食ってみようかな</p> <p> という具合に、しばらく様子を見ているうちに時間が経ち、③に至る頃には、もう終盤になっている。こういうことが多いのだ。もったいないことだ。</p> <p> </p> <h4 id="そして怪奇大東京妖怪ゾーンに戻る">そして、『怪奇!大東京妖怪ゾーン』に戻る</h4> <p> 最後に、『怪奇!大東京妖怪ゾーン』が今回のフェスと唯一違っているところについて書いておく。</p> <p> 妖怪と宇宙人に取り囲まれた主人公の孤立と不安から、彼もそこに取り込まれていく妙な安心感へと移っていく中で、最後に一人だけ、取り残された者がいる。物語を読んでいた、当時の幼い俺のことだ。</p> <p> 周りが得体の知れない化け物だらけになったとき、ある意味で、主人公は完全に一人ではなかった。なぜなら、読者である俺が彼を見届けていたからだ。</p> <p> 俺は、子どもが持つ強い感情移入と想像力を動員し尽くして、主人公のそばに立っているもりだった。しかし、応援していた主人公は、最後は向こう側に連れていかれてしまう。</p> <p> 主人公にとって、それは完全なバッドエンドではないかもしれない。しかし、俺は一人だけ、あとに取り残されてしまった(ここで、化け物になるのがある種の隠喩だとすれば、現実の読者たちもとっくに「化け物」かもしれない、という批評が思いつかないあたりは、まだ子どもだ)。</p> <p> いま、「みんな、本当にカレーが好きだったんだな…」と言いながら自分もカレーを食っている俺は、人々の正体を知った驚きを感じつつ、それと一体化している。俺は、最後に自分も化け物になった『怪奇!大東京妖怪ゾーン』の主人公である。</p> <p> ということは、どこかに当時の俺と同じように、カレー大好き人間たちに取り囲まれながらも自分では口にしなかった、独りぼっちの誰かがいるんじゃないだろうか?</p> <p> きっといるはずだ。</p> <p> 当たり前の話だが、飯というのは別に、誰かが食っているからといって同じように食わないといけないわけではない。俺だって、タピオカもマリトッツォも食ったことない。</p> <p> しかし、今回のカレーフェスは、こいつはちょっと、食わないのはもったいなかったかもしれない。そのぐらいには美味い。</p> <p> 今度はいつあるか知らないけど、次回はあなたもどうですか? と言いつつ、「『怪奇!大東京妖怪ゾーン』のラスト、宇宙人になった主人公がこっちに(読者の方に)振り返ってみせるような描写があったら、本当に嫌だっただろうなあ」としみじみ思ったので、以上、書いておく。</p> kajika0 今日、脳から捨てたものについて ⑬ hatenablog://entry/4207112889972932683 2023-03-19T20:13:10+09:00 2023-03-19T20:13:10+09:00 はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの MARVELコラボ 何年か前までパズルアンドドラゴンズをプレイしていて、「おお、この漫画のコラボが来るのか!」と楽しむという、とても健全な盛り上がり方をしていた。 映画作品ともよくコラボしていたので、ふと、「しばらく遊んでないけど、MARVEL作品ともコラボしたことあるのかな?」と思ったのだった。 していた。 ただ、キャラクター一覧を見ると、『X-MEN』の登場人物も入っているようだ。『X-MEN』はMARVELなのである。 一方、映画作品として展開される、いわゆる◯◯シネマティック・ユニバースでは、多くのM… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 主旨はこちら。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsanjou.hatenablog.jp%2Fentry%2F2022%2F05%2F30%2F210000" title="今日、脳から捨てたものについて ① - 蠅と鬼と人" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2022/05/30/210000">sanjou.hatenablog.jp</a></cite></p> <h4 id="以下捨てたもの">以下、捨てたもの</h4> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20230319/20230319192745.png" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" width="697" height="362" /></p> <p> </p> <h4 id="MARVELコラボ">MARVELコラボ</h4> <p> 何年か前までパズルアンドドラゴンズをプレイしていて、「おお、この漫画のコラボが来るのか!」と楽しむという、とても健全な盛り上がり方をしていた。</p> <p> 映画作品ともよくコラボしていたので、ふと、「しばらく遊んでないけど、MARVEL作品ともコラボしたことあるのかな?」と思ったのだった。</p> <p> <a href="https://pad.gungho.jp/member/collabo/marvel/220810/index.html">していた</a>。</p> <p> ただ、キャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ター一覧を見ると、『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/X-MEN">X-MEN</a>』の登場人物も入っているようだ。『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/X-MEN">X-MEN</a>』はMARVELなのである。</p> <p> 一方、映画作品として展開される、いわゆる◯◯シネマティック・ユニバースでは、多くのMARVELキャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/X-MEN">X-MEN</a>とは完全に切り離されている。その辺に業界の複雑さを感じる。</p> <p> ただ、資本主義、もしくは、よく言えばファンの期待に応えようという熱意は、こういう「大人の事情だ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>ょーがないね…」という世間のあきらめも、いつか来るプロモーションの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%AF%C7%FA%BA%DE">起爆剤</a>にしてしまうというか、何年後かに世界観がスクリーンで交わって(そして、版権に関する契約書も交わされて)、ファンたちが無邪気に「すっげー!」という未来がきても、まあ驚かない。いや、やっぱり驚くかな。</p> <p> </p> <h4 id="ポケモンコラボ"><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>コラボ</h4> <p> さすがに、こことはコラボしていない。</p> <p> 全然関係ないが、俺はいつか、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>の本編が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A1%BC%A5%C8%A5%D5%A5%A9%A5%F3">スマートフォン</a>で遊べたらいいな~と思っている。</p> <p> 交換も対戦も指先のタップ一つ。なんらかのかたちで、膨大な数のプレーヤーがフィールドに同時に接続していて、そこで起こすアクションのすべては、常に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/SNS">SNS</a>で共有され続ける。</p> <p> そういう未来が俺の願望であると同時に、実は、自分のゲーム史において本当に大切なタイトルに対する暗い<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%C7%A5%A3%A5%BA%A5%E0">サディズム</a>でもあって、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B1%A5%E2%A5%F3">ポケモン</a>本編が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A1%BC%A5%C8%A5%D5%A5%A9%A5%F3">スマートフォン</a>に来たら、それは何かの歴史の一つの終わりになるだろうな、と勝手に思っている。</p> <p> </p> <h4 id="エッジランク"><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%C3%A5%B8%A5%E9%A5%F3%A5%AF">エッジランク</a></h4> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%A7%A5%A4%A5%B9%A5%D6%A5%C3%A5%AF">フェイスブック</a>において、自分のニュースフィードの表示を決めている<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%EB%A5%B4%A5%EA%A5%BA%A5%E0">アルゴリズム</a>をこう呼ぶらしい。</p> <p> よく、利用者ごとにカスタマイズされる<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/SNS">SNS</a>の表示については、いわゆるフィルターバブルに閉じ込められる負の面が強調される。ただ、はっきり言って現代の情報の大半は無価値、もしくは気が滅入るものばかりなので、こういうフィルタリングがなけりゃやってらんねえだろ、とも思う。</p> <p> 一方で、そもそも、こういう取捨の仕組みがなければ確実に溺れてしまうような、今の世界の情報量自体が不健全で、もう根本的にどっかおかしいだろ、という考えもある。</p> <p> </p> <h4 id="なんていうやり方だぁ">なんていうやり方だぁ</h4> <p> 昨年のオリンピックのとき、TBSアナウンサーの安住氏が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/NHK">NHK</a>の方針を批判して発した言葉。</p> <p> </p> <h4 id="なまねこなまねこ">なまねこなまねこ</h4> <p> 元ネタは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%DC%C2%F4%B8%AD%BC%A3">宮沢賢治</a>の<a href="https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/4602_11979.html">『蜘蛛となめくじと狸』</a>。</p> <p> 邪悪さにも色々種類があって、異常な怪物のように、コミュニケーションが不可能な邪悪さもあれば、表面的に言葉をとりつくろって、一見すると意思疎通ができそうな邪悪さもある。</p> <p> 個人的には、暴力性や悪意を隠さない人間よりも、何かの言葉を発して危険性をカモフラージュしてくる相手の方が嫌いである。それは、騙される危険性があるからではなく、そういう作戦を取るところに相手の罪悪感みたいなものを感じて、生理的に不快だからである。</p> <p> ちなみに、それは自己嫌悪の話でもある。</p> <p> </p> <h4 id="ワイマラナー">ワイマラナー</h4> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fja.wikipedia.org%2Fwiki%2F%25E3%2583%25AF%25E3%2582%25A4%25E3%2583%259E%25E3%2583%25A9%25E3%2583%258A%25E3%2583%25BC" title="ワイマラナー - Wikipedia" class="embed-card embed-webcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%A9%E3%83%8A%E3%83%BC">ja.wikipedia.org</a></cite></p> <p> 美しい生き物がいるものだ。</p> <p> </p> <h4 id="クエビコ">クエビコ </h4> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fja.wikipedia.org%2Fwiki%2F%25E4%25B9%2585%25E5%25BB%25B6%25E6%25AF%2598%25E5%258F%25A4" title="久延毘古 - Wikipedia" class="embed-card embed-webcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%85%E5%BB%B6%E6%AF%98%E5%8F%A4">ja.wikipedia.org</a></cite></p> <p> </p> <p> 日本神話の神々の名前というのは、とても「日本」を感じる響きがある。</p> <p> ちなみに、俺は日本の文化にも寺社仏閣にも、ほとんど愛着はない。</p> <p> </p> <h4 id="様々なる意匠">様々なる意匠</h4> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BE%AE%CE%D3%BD%A8%CD%BA">小林秀雄</a>の文章。学生時代に読んでいたせいか、題名をいきなり思い出した。題名以外は何一つ思い出せない。</p> <p> </p> <p>以上</p> kajika0 今日、脳から捨てたものについて ⑫ hatenablog://entry/4207112889971445490 2023-03-14T22:23:54+09:00 2023-03-14T22:23:54+09:00 はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの 酒池肉林区 卑猥町 元ネタは『ナニワ金融道』。 町中の看板も小切手の名義も、この漫画ではすべてがこういうカラーで占められている。作中の人たちも何も言わないので、「もしかすると、こちらと向こうでは言葉の意味が違うのだろうか?」などと考え始めると、とても不思議な気持ちになる。 猿のリハーサル ものすごいピリピリムード、と続く。 元ネタはさまぁ~ずがやっていたラジオ番組『さまぁ~ずの逆にアレだろ』のコーナー、「悲しいダジャレ+1」より。 阿葉山 もち 元ネタは『無限の住人』。 阿葉山は作中に登場する老剣客。最終盤の… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 主旨はこちら。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsanjou.hatenablog.jp%2Fentry%2F2022%2F05%2F30%2F210000" title="今日、脳から捨てたものについて ① - 蠅と鬼と人" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2022/05/30/210000">sanjou.hatenablog.jp</a></cite></p> <h4 id="以下捨てたもの">以下、捨てたもの</h4> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20230314/20230314215640.png" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" width="697" height="319" /></p> <h4 id="酒池肉林区-卑猥町">酒池肉林区 卑猥町</h4> <p> 元ネタは『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CA%A5%CB%A5%EF%B6%E2%CD%BB%C6%BB">ナニワ金融道</a>』。</p> <p> 町中の看板も小切手の名義も、この漫画ではすべてがこういうカラーで占められている。作中の人たちも何も言わないので、「もしかすると、こちらと向こうでは言葉の意味が違うのだろうか?」などと考え始めると、とても不思議な気持ちになる。</p> <p> </p> <h4 id="猿のリハーサル">猿のリハーサル</h4> <p> ものすごいピリピリムード、と続く。</p> <p> 元ネタはさまぁ~ずがやっていたラジオ番組『さまぁ~ずの逆にアレだろ』のコーナー、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%E1%A4%B7%A4%A4%A5%C0%A5%B8%A5%E3%A5%EC">悲しいダジャレ</a>+1」より。</p> <p> </p> <h4 id="阿葉山もち">阿葉山 もち</h4> <p> 元ネタは『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%B5%B8%C2%A4%CE%BD%BB%BF%CD">無限の住人</a>』。</p> <p> 阿葉山は作中に登場する老剣客。最終盤の戦いで敗れ、死亡したかと思われていた。その後、後日談にて、呆けて「もち」と言いながら、親族の世話になっている姿が描かれている。</p> <p> それまで、阿葉山の戦闘シーンはあまり描かれてこなかったが、この漫画における準最強候補の一人である偽一と互角に戦ったため、間違いなく強キャラであった。</p> <p> ところで、俺は30半ばであり、もう老いを語れるような、まだ語れないような微妙な感じだが、何か明確な夢や大志がある限り、年数に関係なくある程度は遠ざけることができ、それらを失った瞬間に深く染み入ってくるものをそう呼ぶのかな、ということを思う。</p> <p> ちなみに、上で「準最強」という表現をしたが、『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%B5%B8%C2%A4%CE%BD%BB%BF%CD">無限の住人</a>』における最強は議論の余地なく決まっている。そういう漫画である。</p> <p> </p> <h4 id="麺がもちもちになる">麺がもちもちになる!</h4> <p> 元ネタは『寿エンパイア』に登場する寿司職人である児島さんのセリフ。</p> <p> 児島さんはオールバックに眼鏡の強面で非常に口が悪く、勝負した相手の寿司をボロカスにこき下ろすことをルーティンとしているが、「どうすれば改良されるか」を忘れずに言い添える上、それが毎回的を射ているため、読者から変な人気が出た人である。</p> <p> </p> <h4 id="欲望に正直じいさん">欲望に正直じいさん</h4> <p> 元ネタは『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%E6%B4%CB%CC%A1%B6%CC%C6%FC%B5%AD">御緩漫玉日記</a>』。</p> <p> 俺は脳から物を捨てるときに一度口に出していることが多く、そのときは発する言葉が社会的にどうとかのフィルターが基本的に機能していないため、職場でけっこう危険である。</p> <p> </p> <h4 id="ほら貝">ほら貝</h4> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fja.wikipedia.org%2Fwiki%2F%25E3%2583%259B%25E3%2583%25A9%25E3%2582%25AC%25E3%2582%25A4" title="ホラガイ - Wikipedia" class="embed-card embed-webcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%A9%E3%82%AC%E3%82%A4">ja.wikipedia.org</a></cite></p> <p> </p> <p> ほら貝というと楽器として加工済みの、道具としての姿が思い浮かぶ。しかし、ほら貝はまだ生きているうちからほら貝という名前である。「ホラにするための貝」ということである。</p> <p> ということは、死んでからそれに加工する予定の道具の名前をあらかじめ付けられているということであり、なんというか、うまく言えないが、すさまじいことだと思う。</p> <p> </p> <h4 id="タタミイワシ">タタミ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%EF%A5%B7">イワシ</a></h4> <p> 食ったことがない。食わずに死ぬ可能性がそこそこあり、どうもそういう、「あれ、このまま一生食わんかもな」という食品が見えてきたような気がする。</p> <p> </p> <p> 以上。</p> kajika0 今日、脳から捨てたものについて ⑪ hatenablog://entry/4207112889967090922 2023-02-27T23:39:39+09:00 2023-02-27T23:39:39+09:00 はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの ・もちろん新品で買ったわ 漫画家 花沢健吾の旧HPに登場するフレーズ。要するに、中古ではなく新品で買ってくれということだと思われる。 俺は当時金がなかったので、マンガを新品で買うことはあまりなく、やや居心地が悪かった。 ・アジアからアメリヤカから… 『ガキの使い』「マジかる浜田で浜田が激怒」。 浜田の今後の海外進出計画(というテイ)について語る吉本 旧社長である岡本氏のセリフである。「アジアからアメリ『カ』から」を噛んでしまったものと思われる。 ・何度でも美味しい朝ごはん 『世界ネコ歩き』。 一匹の地域猫があ… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 主旨はこちら。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsanjou.hatenablog.jp%2Fentry%2F2022%2F05%2F30%2F210000" title="今日、脳から捨てたものについて ① - 蠅と鬼と人" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2022/05/30/210000">sanjou.hatenablog.jp</a></cite></p> <h4 id="以下捨てたもの">以下、捨てたもの</h4> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20230227/20230227232024.png" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" width="697" height="275" /></p> <p> </p> <p>・もちろん新品で買ったわ</p> <p> 漫画家 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%D6%C2%F4%B7%F2%B8%E3">花沢健吾</a>の旧HPに登場するフレーズ。要するに、中古ではなく新品で買ってくれということだと思われる。</p> <p> 俺は当時金がなかったので、マンガを新品で買うことはあまりなく、やや居心地が悪かった。</p> <p> </p> <p>・アジアから<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA">アメリ</a>ヤカから…</p> <p> 『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%AD%A4%CE%BB%C8%A4%A4">ガキの使い</a>』「マジかる浜田で浜田が激怒」。</p> <p> 浜田の今後の海外進出計画(というテイ)について語る吉本 旧社長である岡本氏のセリフである。「アジアから<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA">アメリ</a>『カ』から」を噛んでしまったものと思われる。</p> <p> </p> <p>・何度でも美味しい朝ごはん</p> <p> 『世界ネコ歩き』。</p> <p> 一匹の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%CF%B0%E8%C7%AD">地域猫</a>があるお宅で朝ごはんをもらい、そのまま何食わぬ顔で別のお宅に向かって、そこで再び朝飯をもらう様子を評したもの。</p> <p> </p> <p>・そりゃおめえはそうだろうよ</p> <p> 元ネタなし。</p> <p> 他人に対して、俺がよく毒づく際に心の中で思っている言葉。</p> <p> 俺より才能や魅力に恵まれた人間が、「できるでしょう」的な感じで気楽にムチャを言ってきたとき、もしくは、俺よりいい加減な人間(というのはこの世にあまりいないようでいて、意外といるのである)が適当な提案を口走ったときなどに、よく思っている。</p> <p> 早い話、俺は偏狭なのであった。</p> <p> </p> <p>・ユナ・ボマー</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fja.wikipedia.org%2Fwiki%2F%25E3%2582%25BB%25E3%2582%25AA%25E3%2583%2589%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25BB%25E3%2582%25AB%25E3%2582%25B8%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25B9%25E3%2582%25AD%25E3%2583%25BC" title="セオドア・カジンスキー - Wikipedia" class="embed-card embed-webcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%AA%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC">ja.wikipedia.org </a></cite></p> <p> </p> <p> 天才で犯罪者、というのがみんな好きなのだが(俺も好き)、なんかこう、屈折した<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EB%A5%B5%A5%F3%A5%C1%A5%DE%A5%F3">ルサンチマン</a>が根っこにあるんだろうか、と思う。  </p> <p> </p> <p>・儲かりましたわ</p> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/M-1%A5%B0%A5%E9%A5%F3%A5%D7%A5%EA">M-1グランプリ</a>2022でラストイヤーに臨みながら準決勝で敗退した、金属バット 友保の言葉。</p> <p> 細かい背景は言わないが、また、実際に発した言葉なので、小説でも創作でもなんでもないのだが、「これこそ文学」だと思っている。本当に、本当に本当にカッコいいと思う。</p> <p> </p> <p> 以上。</p> kajika0 人類、このデスゲーム製造機。『イクサガミ 天』の感想について hatenablog://entry/4207112889964946957 2023-02-20T21:53:10+09:00 2023-05-18T00:40:44+09:00 はじめに デスゲームとはなんであろうか。 その主な二つの要素は、 ①殺し合うこと ②殺し合いの誘発と離脱防止が、システマチックに管理されていること …だと思っている。 人類は有史以来、①をずーっとやってきた。あとは②でシチュエーションを整えるだけで、いついかなる時代・場所でもデスゲームはつくれる理屈である。 つまり、人類はデスゲーム製造機である。そういうわけで、本作の舞台は明治時代である。 いきなり余談だが、未来では人間は殺し合いを完全にやめているだろうか? それは、人類の知性の発達とお互いの信頼にかかっているだろう。 最近はAIが怖いぐらい発達してきているので、もう人間そのものには期待せずに… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> デスゲームとはなんであろうか。</p> <p> その主な二つの要素は、</p> <p> ①殺し合うこと</p> <p> ②殺し合いの誘発と離脱防止が、シ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A5%DE">ステマ</a>チックに管理されていること</p> <p> …だと思っている。</p> <p> 人類は有史以来、①をずーっとやってきた。あとは②でシチュエーションを整えるだけで、いついかなる時代・場所でもデスゲームはつくれる理屈である。</p> <p> つまり、人類はデスゲーム製造機である。そういうわけで、本作の舞台は明治時代である。</p> <p> </p> <p> いきなり余談だが、未来では人間は殺し合いを完全にやめているだろうか?</p> <p> それは、人類の知性の発達とお互いの信頼にかかっているだろう。</p> <p> 最近はAIが怖いぐらい発達してきているので、もう人間そのものには期待せずに、そっちに任せたほうがいいかもな、と思わなくもないのだが、AIにすべてを委ねた果てにある戦争と破滅は、『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%D0%A4%CE%C4%BB">火の鳥</a>』ですでに描かれてもいるのだった。</p> <p> </p> <h4 id="本題">本題</h4> <p> そういうわけで、デスゲームはいつの時代だろうと描ける。</p> <p> ただ、現代でやるのとそれより前の時代でやるのとでは、違うところがある。『イクサガミ』の場合、殺人という行為の意味合いがいまと根本的に違う。</p> <p> </p> <p> 現代において、殺人は悪行であり犯罪である。</p> <p> 「お前、さっき『人間はどんな時代でも殺し合ってる』って書いてたじゃねえか」と言われると苦しいが、とにかく今の時代、人は人を殺してはいけないことになっている。</p> <p> だから、現代を舞台にしてデスゲームを描く場合、仮にルールに強制されていようが、人を殺めてもいいのか、という葛藤が最初の焦点になる(ただ、このあたりは大量の作品によってコスられ続けているので、もはやチープになりつつある)。こうした殺人の葛藤は、都合のいい戦闘狂的なキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターが登場し、作中における殺人を大っぴらに解禁するまで続く。</p> <p> </p> <p> 一方、『イクサガミ』では殺人は悪ではない。</p> <p> なんでかというと、江戸〜明治のどさくさで普通に人を殺していたような連中ばかり、基本的に集められているからである。</p> <p> 彼らは人を殺すことが何かの表現であったり、思想を示す手段であったり、というか普通に飯の種であったような魑魅魍魎だらけなので、殺人の葛藤とかゼロである。むしろ、「いつまでもあんまり、人とか好き勝手に斬るんじゃねーぞ」みたいな、時代がそんな雰囲気になりつつあって、じゃあ俺たちの意義って…みたいなやつさえいる。</p> <p> </p> <p> 人殺したちの最後の残光というか、滅びゆくさだめ。デスゲームとしての緊張感だけでなく、こうした時代の流れみたいなものも、今作のテーマかもしれない。</p> <p> 他にも、当時の雰囲気とか時勢を上手く描写している作品である。けっして、「ちょっと奇をてらったデスゲームものとして、舞台を明治にしよう。<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%FE%C2%E5%B9%CD%BE%DA">時代考証</a>とかはどうでもいいぜ」みたいなノリではない。ちゃんとした時代劇である。</p> <p> </p> <p> ただ、作品の大筋はというと、ほぼベタなデスゲームものである。</p> <p> 特にキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターの設定。新奇さはない。逆に言えばみんなの好物が多いとも言える。</p> <p> 例えば、主人公。人殺しに苦悩はあり、弱者を見捨てられない甘さを抱えるが、いざというとき腕は抜群に立つ。</p> <p> 関西弁で得体の知れない、同じく強いライバル。</p> <p> 正体不明で不気味な強ジジイ(みんな強ジジイ好きだよな。俺もだけど)。</p> <p> 主人公と同じ修行を積んだ、因縁のある同門の徒。</p> <p> 混沌とした時代の中にあってさえネジが飛んでる、異質のヤバい殺人鬼。</p> <p> </p> <p> この手のジャンルではありがちで、といっても目が離せない者たちが入り乱れて、殺し合いながら、点数(となる札)を奪い合い、目的地である東京を目指す、そういう物語である。</p> <p> ちなみに、「点」と「移動」が物語の核になっているあたり、本作の枠組みは『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A5%A3%A1%BC%A5%EB%A1%A6%A5%DC%A1%BC%A5%EB%A1%A6%A5%E9%A5%F3">スティール・ボール・ラン</a>』にも近い。デスゲームというよりは、「<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/SBR">SBR</a>っぽい作品だよ」という方が雰囲気がうまく伝わるような気もする。</p> <p> </p> <p> 以下は、気になった点や今後の予想を書いておく。</p> <p>・覆面男は何者か?</p> <p> 物語で顔を隠しているキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターには、何か隠す理由がある、と思っている(メタ的に)。</p> <p> 上記のとおり、『イクサガミ』には「こいつは別格でヤバい」という人物が何人か登場する。</p> <p> そのほとんどはゲームの参加者だが、覆面男だけは異なり、彼は主催者を守る護衛である。参加者たちの中から「お前ら運営の好きにはさせないぜ」とタンカを切って出てきた実力者を、開始早々圧倒的に叩き斬ってデスゲームを本格始動させるという、まあいかにもというか、物語において大変無駄のない仕事をしたキャラである。</p> <p> 俺は、戦乱を生き延びた<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%B7%C0%F1%C1%C8">新撰組</a>の有名人が正体では、と思っている。<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BA%D8%C6%A3%B0%EC">斎藤一</a>とか、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%CA%C1%D2%BF%B7%C8%AC">永倉新八</a>とか。</p> <p> 覆面をめくって、「いや、どちらさんですか?」よりは、その方が美味しい。あと、主人公は<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%B7%C0%F1%C1%C8">新撰組</a>と因縁があるようなので、そういう点でも美味いと思う。</p> <p> </p> <p>・強ジジイは何者か?</p> <p> ゲームの開始直後に別格の強さと危険さを見せたジジイがいる。</p> <p> 主人公が使う剣術の傍流に一人、ヤバいジジイがいる、というエピソードが挟まれているので、もしかしたら強ジジイはそいつかもしれない。</p> <p> </p> <p>・黒札のゆくえ</p> <p> 今作の特殊なギミックに、「黒札」がある。</p> <p> 物語の基本的なルールとして、主人公たちは京都から東京を目指すことを命じられる。旅程の途中、それから最後の東京に関所があって、他のプレイヤーが身につけている木の札(一人一点)を一定数集めないと通過できない。殺し合いは、この札をめぐって発生する。</p> <p> ただ、札を失うのが殺された場合だけとは限らず、路上で力尽きたり、勝手に捨てるやつが出てくるかもしれない(捨ててはいかん、とは言われている)。そうすると、その分の点数が盤上から消滅してしまうことになる。</p> <p> 黒札はそれを埋めるもので、第三ステージを最後に通過したプレイヤーに、「それまでに消滅した全ての点数分」として、(強制的に)運営から渡される、一枚で大量の得点を意味する札になる。</p> <p> 一気にたくさんの点がもらえるのはラッキーだが、同時に強烈なデメリットがあり、黒札の保持者は他のプレイヤーに通知されてしまう。こうして、黒札を巡って戦闘が加速する、という運営側のモ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%ED%A5%DF">クロミ</a>である。</p> <p> </p> <p> 黒札を争って起きそうな展開をいくつか予想してみる。</p> <p>① 主人公がうっかり持ってしまう</p> <p> 冒頭から、他人にかけた情けのせいで周囲から目立ったターゲットになってしまう主人公なのだが、それがさらに悪化する、という展開。</p> <p> ただ、今のままでも十分標的になっているし、黒札持ってもあんまり変わらないか?</p> <p> </p> <p>② 強敵にわたる</p> <p> ヤバすぎて絶対に戦ってはいけない、もしくは心情的に戦いたくない相手に黒札がわたる。上で書いたとおり、関所を通過するには一定の点数が必要になるため、なんらかの理由で大量の点数が必要になった主人公が、黒札の持ち主と戦わざるを得なくなるという展開。</p> <p> </p> <p>③ 故意に押しつける/押しつけられる</p> <p> 黒札については、一つ疑問がある。</p> <p> 黒札は誰かに奪われたあとも黒札なのか、それとも、奪われた後は同じ点数分の普通の札に換えられるのか?</p> <p> もし、相手に奪われたあとも黒札のままなら、一種のババとして、故意に押しつけることもできそうだ。ここからの黒札の行方に注目したい。</p> <p> </p> <p>・みんな、人の顔よく覚えてんな</p> <p> 敵プレイヤーを認識するのに、「スタート会場で見た顔」という根拠でみんな山林や街道でいきなり戦い始める。俺なら覚えてられないが…。</p> <p> </p> <p>・あいつは生きてる</p> <p> 主人公の仲間になる…という罠を見破られ、重傷を負って姿を消したキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターがいるが、死んだとは描かれてないので、生きていると信じている。俺は詳しいんだ。</p> <p> </p> <p>・続編いつ出んの?</p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">沢山聞かれるので……連載の隙間で、すでに書き始めております。<br />頑張ります。はい、頑張ります。 <a href="https://t.co/lxvF94wRhn">pic.twitter.com/lxvF94wRhn</a></p> — 今村翔吾 (@zusyu_kki) <a href="https://twitter.com/zusyu_kki/status/1589954118785073153?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年11月8日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p> 昨年11月の時点で書き始めている、なので(2023年2月現在)、それなりのところまでは進んでいる。</p> <p> …かもしれないし、いないかもしれない。</p> <p> 気長に待ちたいと思う(追記:2023年5月16日、続刊となる『イクサガミ 地』が発売されました)。</p> <p> </p> <p> 以上、よろしくお願いいたします。</p> <p> </p> <div class="freezed"> <div class="hatena-asin-detail"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B09R9Q8K1C?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="hatena-asin-detail-image-link" target="_blank" rel="noopener"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/4112QkQgV5L._SL500_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="イクサガミ 天 (講談社文庫)" title="イクサガミ 天 (講談社文庫)" /></a> <div class="hatena-asin-detail-info"> <p class="hatena-asin-detail-title"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B09R9Q8K1C?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" target="_blank" rel="noopener">イクサガミ 天 (講談社文庫)</a></p> <ul class="hatena-asin-detail-meta"> <li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span><a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BA%A3%C2%BC%E6%C6%B8%E3" class="keyword">今村翔吾</a></li> <li><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%D6%C3%CC%BC%D2">講談社</a></li> </ul> <a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B09R9Q8K1C?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="asin-detail-buy" target="_blank" rel="noopener">Amazon</a></div> </div> </div> kajika0 求めれば与えられる時代について hatenablog://entry/4207112889957548323 2023-01-25T23:47:03+09:00 2023-01-25T23:47:03+09:00 よく行っている作業に、読んでいる本の気に入った部分をOCRで読み取って文字化し、そのデータを整理・分類する、というものがある。 整理にはnotionを使っており、作ったページにOCRのデータをコピペする。それから、文章のテーマごとにタグ付けをする。【生物学 遺伝子】とか、【歴史 古代中国史】とか。 まあ、内向きで陰気で、でも愉楽にあふれた作業なのだ。 ところで、OCRを使うと本の体裁そのままにデータ化される。だから、紙面で行が変わって次の行に移るところは、データにすると一つの文章としてつながらない。改行が挿入されて文章が途中でぶつぎれるので、この改行を消す必要がある。 俺はこの改行を一つ一つ、… <p> よく行っている作業に、読んでいる本の気に入った部分を<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/OCR">OCR</a>で読み取って文字化し、そのデータを整理・分類する、というものがある。</p> <p> 整理にはnotionを使っており、作ったページに<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/OCR">OCR</a>のデータをコピペする。それから、文章のテーマごとにタグ付けをする。【生物学 遺伝子】とか、【歴史 古代中<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%F1%BB%CB">国史</a>】とか。</p> <p> まあ、内向きで陰気で、でも愉楽にあふれた作業なのだ。</p> <p> </p> <p> ところで、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/OCR">OCR</a>を使うと本の体裁そのままにデータ化される。だから、紙面で行が変わって次の行に移るところは、データにすると一つの文章としてつながらない。改行が挿入されて文章が途中でぶつぎれるので、この改行を消す必要がある。</p> <p> 俺はこの改行を一つ一つ、つぶつぶと消しながら文章をつなげる。これまでずっと、そうしてきたのだ。つぶつぶ、つぶつぶ。</p> <p> </p> <p> 今日もそういう作業をしていたのだが、唐突に思った。</p> <p> 「もしかして、インターネット上には、ウィンドウの中に文字データを放り込むだけで、改行やスペースを自動で消去して文章をひとつなぎにしてくれるサービスがあるんじゃないのか?」</p> <p> </p> <p> あるだろうか。</p> <p> </p> <p> あった。</p> <p> </p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fhtml-css-javascript.com%2Fn-space-tab%2F" title="改行・空白・タブ削除ツール|ちょっと便利なツール・ジェネレーター置き場" class="embed-card embed-webcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://html-css-javascript.com/n-space-tab/">html-css-javascript.com</a></cite></p> <p> </p> <p> つぶつぶ終了である。</p> <p> それと同時に思ったのだが、なんというか単純に、探せばあるものだな、ということだ。そんな便利なもんはねえだろう、という、言葉で自覚さえしない無意識のストッパーのようなものが脳に仕込まれているのだが、実際はあるのである。</p> <p> 求めれば与えられる時代なのだなあ、と思う。強い欲望を持ち、それを<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%C0%B8%EC%B2%BD">言語化</a>する能力に長けた人の生きやすい時代なのだ。</p> <p> </p> <p> 俺はどうだろう? まあ、中の上ぐらいでしょうか。</p> <p> なんか損してるなあ、とか、「俺は知っているが、あいつらはこんなことも知らねえんでやんの」とか、そういう変なところに落ち着かなければいい。そう思っている。</p> kajika0 2022年M-1グランプリでのウエストランドの漫才について hatenablog://entry/4207112889946291889 2022-12-19T01:44:35+09:00 2022-12-19T01:44:35+09:00 はじめに ロングコートダディの1stラウンドが一番面白かった。 よく、「感心が優先してしまって笑えなかった」という表現があるが、感心した上に猛烈に面白かった。あと、ほぼ、誰も傷つけない笑いだったと思う(以下の話を書く上で関係する)。 ウエストランドの漫才は「みんな思っていたけど言わなかった」ことなのか(もしくは井口さんは何者としてあそこに立っているのか、という話) 公式がリアルタイムで動画を上げているので掲載する。 ・1st ラウンド www.youtube.com ・決勝ラウンド www.youtube.com 公式が上げなければ誰かが非公式にやってしまう時代とはいえ、すごい世の中になったと… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%ED%A5%F3%A5%B0%A5%B3%A1%BC%A5%C8%A5%C0%A5%C7%A5%A3">ロングコートダディ</a>の1stラウンドが一番面白かった。</p> <p> よく、「感心が優先してしまって笑えなかった」という表現があるが、感心した上に猛烈に面白かった。あと、ほぼ、誰も傷つけない笑いだったと思う(以下の話を書く上で関係する)。</p> <p> </p> <h4 id="ウエストランドの漫才はみんな思っていたけど言わなかったことなのかもしくは井口さんは何者としてあそこに立っているのかという話"><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A8%A5%B9%A5%C8%A5%E9%A5%F3%A5%C9">ウエストランド</a>の漫才は「みんな思っていたけど言わなかった」ことなのか(もしくは井口さんは何者としてあそこに立っているのか、という話)</h4> <p> 公式がリアルタイムで動画を上げているので掲載する。</p> <p> </p> <p>・1st ラウンド</p> <p><iframe src="https://www.youtube.com/embed/D1Z-ugKXVcc?feature=oembed" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen="" title="ウエストランド【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順10〉M-1グランプリ2022" width="560" height="315" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.youtube.com/watch?v=D1Z-ugKXVcc">www.youtube.com</a></cite></p> <p>・決勝ラウンド</p> <p><iframe src="https://www.youtube.com/embed/anC1McMAycw?start=33&amp;feature=oembed" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen="" title="ウエストランド【決勝ネタ】最終決戦〈ネタ順1〉M-1グランプリ2022" width="560" height="315" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.youtube.com/watch?v=anC1McMAycw&amp;t=33s">www.youtube.com</a></cite></p> <p> 公式が上げなければ誰かが非公式にやってしまう時代とはいえ、すごい世の中になったと思う。</p> <p> 俺は、てっきり1stまではアップロードして、あとは決勝が気になるならテレビを点けてね、ということかと勝手に思っていたけど。丸々上がっている。</p> <p> CMなしだけど、いいのか? と思ってしまうが、審査員の評が気になる視聴者は観るからいいんだろう。</p> <p> </p> <p> で、観ればわかる通り、向かって左のツッコミ(井口さん)が「あるなしクイズ」という形式にかこつけて、世の中の色々な人や職業に対して悪口を延々と言うのをボケ? の河本さんが聞いている、というかたちになっている。</p> <p> 少し脱線するけど、観ていて井口さんがボケ、河本さんがツッコミだと思っていたのだが、立ち位置としては逆らしい。そうなんだ。</p> <p> なんか、もうボケとかツッコミとかいう時代でもなくなってるのかもな~、と思った(俺がいい加減なだけですか? すいません)。</p> <p> </p> <p> で、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Youtube">Youtube</a>のコメント欄でこういうものが多い。</p> <p> 「みんな思っていたけど言わなかったことを言った」</p> <p> 「人を傷つけない笑いの時代を経て、人を傷つける笑いが帰ってきた」。</p> <p> あれ、そうですか? と思う。これ、みんな思っていたこと? で、これは人を傷つける笑いなの?</p> <p> </p> <p> なぜ、俺はそう感じるのだろう? だって、まあ、いかにもなテーマで、特定の人や職業をボロクソに言っているじゃないですか。</p> <p> </p> <p> これはけっこうややこしい話になる。</p> <p> まず、あのネタが「みんなが思っていたこと」かどうかから考える。</p> <p> </p> <p> 俺は、井口さんが言っていたことは、別に「みんな思っていたこと」ではないと思う。なんでかというと、俺は井口さんは一種の狂人とかピエロという役どころであそこに立っていると思っているからだ。</p> <p> あんなめちゃくちゃで、暴論で、薄っぺらくて、なんなら本人さえ信じていていなさそうな、世間でありがちな偏見や雑な先入観を、口は災いの門的に先走ってしまう、それを井口さんはしゃべってるんだな、と思って観ていた。</p> <p> 俺としては、「もう古くなって、最近では相当ピントがボケている<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A5%EC%A5%AA%A5%BF%A5%A4%A5%D7">ステレオタイプ</a>」を、テンション上がった勢いでむちゃくちゃ言っている井口さんが面白いんであって、別に世間を代弁しているわけではなく、あくまで井口さんのあらわす異常さが面白いんだと思っていた。</p> <p> その証拠というか、相方の河本さんは井口さんに一度も賛同していない(はずです。違ってたらすいません)。</p> <p> 攻撃的な要素を含む<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%A2%A4%EB%A4%A2%A4%EB%A5%CD%A5%BF">あるあるネタ</a>で、たまに相方が「まあ、そういうこと、あるけども」と一瞬同調する場面がときどきあるけど、河本さんはそれをしないで、「違います」とかしか言わない。</p> <p> だから、この漫才は別に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%A2%A4%EB%A4%A2%A4%EB%A5%CD%A5%BF">あるあるネタ</a>ではないし、みんなが思っていたことを言ってしまうところが面白いのでもない。あくまで、井口さん一人が狂っているところが面白いんだと思う。</p> <p> </p> <p> で、それが「人を傷つける笑い」かどうか、ということだ。</p> <p> 例えば、井口さんが言っているのが、本当に「誰もが真実だと知っているけど言わなかったこと」だったら、その批判や嘲りの対象になった人は傷つくと思う。</p> <p> でも、舞台上で井口さんは狂人を演じているのであって、その発言は「そういう見方をされることもあるかもしれないけど、一方で、時代遅れだったり歪んでいるところも多量に含んだ、世迷いごと」なのだ。</p> <p> 観ている側がそれを真に受けないのだったら、何を言ってもいいんじゃないか? =「人を傷つける笑い」ではないんじゃないか?(と、俺は観ていた。でも、そう観ない人もいるし、その方がたぶん正しい。これは後半で書く)。</p> <p> </p> <h4 id="閑話休題1-俺は人を傷つけない笑いという言い方が好きではない"><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%D7%CF%C3%B5%D9%C2%EA">閑話休題</a>1 俺は「人を傷つけない笑い」という言い方が好きではない</h4> <p> 半分ウソです。</p> <p> 正確には、2019年末の話題をさらったぺこぱの漫才を「人を傷つけない笑い」と表現することが好きじゃない。</p> <p> 前に誰かが言っていたが、あれは「人を傷つけない笑い」じゃない。なんでかというか、あの漫才の中で、ツッコミの松陰寺さんは必ず傷ついているからだ。</p> <p> 松陰寺さんはボケに翻弄され、戸惑っても、自分が傷ついていることを二の次に置いている。これはけっこう悲惨なことで、はっきりと被害者だ。</p> <p> そりゃあ芸で構成された架空の世界の中のことではある。でも、芸事の中なら誰を傷つけてもいいわけではなく(だからこそ、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A8%A5%B9%A5%C8%A5%E9%A5%F3%A5%C9">ウエストランド</a>は批判されてもいる)、やっぱり、あれも「人を傷つける笑い」なんだと思う。</p> <p> </p> <h4 id="閑話休題2-でも人を傷つけない笑いはある"><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%D7%CF%C3%B5%D9%C2%EA">閑話休題</a>2 でも、「人を傷つけない笑い」はある</h4> <p> じゃあ、すべての笑いは誰かを傷つけるのだろうか?</p> <p> それも違うと思う。</p> <p> 一本のネタ全体、落語の一席をとおして、とかだと厳しいかもしれないが、少なくとも、部分を抜き出せば「誰も傷つけない笑い」は存在する。</p> <p> それこそ、今回の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%ED%A5%F3%A5%B0%A5%B3%A1%BC%A5%C8%A5%C0%A5%C7%A5%A3">ロングコートダディ</a>の1stラウンドでのネタが誰かを傷つけるとは思えない。あと、最近だと『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%F7%A4%CE%B1%E0">女の園</a>の星』のトイレ掃除の話とか(なんか、具体名出すと巻き込んだみたいで申し訳ないですね)。</p> <p> だから、「誰も傷つけない笑い」は、たぶんある。</p> <p> 俺は、誰かがちゃんと(?)傷ついているのに、それを「傷つけていない」というのは変だし、といって、笑いというのは必ず誰かを傷つけるんだ、と断言するのも変だよな、と思う。</p> <p> </p> <h4 id="閑話休題3-みんな思っていたけど言わなかったことなんて存在しないと思う"><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%D7%CF%C3%B5%D9%C2%EA">閑話休題</a>3 「みんな思っていたけど言わなかったこと」なんて存在しないと思う</h4> <p> そもそも、「みんな思っていたけど言わなかったこと」なんてこの世界にあるんだろうか? 俺は、ないと思う。</p> <p> 「一定数の人が、それが事実かは別として、事実だと信じたいこと」はあると思う。たくさんあると思う。</p> <p> </p> <p> 例えば、「何かに失敗したり<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%CB%DC%B0%D5">不本意</a>な人生を送る人は、日々の心がけや努力が足りなかったんだ」とか。</p> <p> 反対に、「自分が上手くいかないのは自身の責任ではなく、周囲や社会が悪いんだ」とか(俺です)。</p> <p> もっと規模がデカくて、「いまの社会は過剰な権力を持った組織や個人によって思うがままに操作されているんだ」とか(完全に否定はしないけど、これまでに見かけたどの説にも、俺は同意できない)。</p> <p> </p> <p> それは、単に俺たちが事実だと信じたいだけだったり、すでに「そう感じた時期もあったけど、どうやら違うっぽいな~」と思って捨てた…つもりで、頭の隅に残っていることだったりする。</p> <p> いずれにしても、事実ではない。</p> <p> ただ、俺たちは自分以外の誰かの頭の中を一つ一つのぞいて回って、「お、こいつは俺と考えが違うんだな」とかできないし、いちいち議論したり多数決を取ったりできない。</p> <p> 時間をかけて、何が本当か学んだり、他人の立場に思いをはせるのも大変だ。だから、誰かが発した乱暴な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A5%EC%A5%AA%A5%BF%A5%A4%A5%D7">ステレオタイプ</a>にうっかり同調したり、昔の自分を追憶した感覚について、「みんな思っていたけど言わなかったこと」と表現してしまう。</p> <p> 実際のところ、それは「俺たち自身がそうであって欲しいと望んでいる(望んでいた)こと」でしかないと思うんだよな。</p> <p> </p> <h4 id="さいごにウエストランドの漫才は人を傷つけるか">さいごに。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A8%A5%B9%A5%C8%A5%E9%A5%F3%A5%C9">ウエストランド</a>の漫才は人を傷つけるか</h4> <p> まとめとして、本題に戻る。</p> <p> 上に書いたとおり、俺は井口さんは一種の狂人とかピエロとして舞台に立っていると思っていた。その発言を、むちゃくちゃな世迷いごととして聞いていた。</p> <p> では、その言葉が根拠のない、もしくは古臭い暴論だとして、言われた側は傷つくだろうか?</p> <p> </p> <p> 正直に言うと、俺は最初は、「傷つかねえんじゃねえか?」と思っていた。</p> <p> だって、明らかにトンチキな暴論なわけだし。観客だって、それが事実だとは思ってないし。</p> <p> </p> <p> でも、仮に時代遅れのズレた妄言でも、好き勝手に言われたらやっぱりムカつくし、傷つくよな~とは思う。当然だ。</p> <p> しんどいのは、ムカついたので「不愉快なんじゃ、ボケ。漫才だからって適当なこと言いやがって。クソ野郎が」と言おうにも、その相手がいまや、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/M-1">M-1</a>王者として権威付けされてしまっているところかもしれない。</p> <p> 上で書いたとおり、そもそもあれを、一種の言いにくい真実として聞いていた人もいるわけだ。攻撃された側がそれが傷つくのはもちろんだが、仮に嘘だろうと、日本中で大笑いを取ってしまったことが、傷ついた側の反撃する気持ちを大きく失わせると思う。</p> <p> 少なくとも俺なら、日本中が彼らに賛辞を送っている中で、「何が面白いんですか? 全然事実と違うし、不愉快です」と言う気力はない。それは、ちょっとまずいよな、と思う。</p> <p> </p> <p> 俺は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A8%A5%B9%A5%C8%A5%E9%A5%F3%A5%C9">ウエストランド</a>の漫才で笑った。二度とも大笑いした。</p> <p> そこに罪悪感はあるけど、こういっては何だが、許される範囲の暴言だったし、漫才にはそういうネタを舞台にかける権利があると思っている(じゃあ、OK/NGの線はどう引くんですか? というのはある)。</p> <p> でも、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A8%A5%B9%A5%C8%A5%E9%A5%F3%A5%C9">ウエストランド</a>にああいう漫才をする権利があるように、それに対して「面白くないんだわ。クソボケが。あることないこと言うな。お前らも、それで笑ってる他の連中も全員、勘違いした加害者どもが。くたばれゴミども」という声が封殺されない、発する権利を損なわれてはいけないな、と思う。</p> <p> </p> <p> なんというか、振り返ってみれば、「俺はありだと思うけど傷つく人もいるだろうし、そのダメージや感想が世間から見えなくなるのはダメだよね」という当たり前の話だった。</p> <p> なんか、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A8%A5%B9%A5%C8%A5%E9%A5%F3%A5%C9">ウエストランド</a>に対して、「言いにくかったことを言った」とか「傷つけない笑いの時代を経て傷つける笑いが帰ってきた」みたいな感想をよく見たのだ。</p> <p> それについて、「いやいや、あれは狂人の妄言をみんなで笑ってんだし、仮に漫才の台本がどれだけ無害になったって、少なくとも漫才師本人が自分を押し殺したり混乱するのをみんなで笑うのをずーっと続けてきてるんであって、『傷つけない笑い』が時代を制してなんかいねえだろ」、と思っているうちに、回り道してしまった。以上です。</p> kajika0 『呪術廻戦』21巻の感想について。もしくはギャンブルとフィクション偏愛の話 hatenablog://entry/4207112889942304596 2022-12-04T20:44:08+09:00 2022-12-04T20:44:08+09:00 はじめに 猛烈に面白かったので感想書きます。 石流生存! うれしい。良いキャラだったんで。 ただ、なんつーか、「死にそうなところで生き残ったのが、むしろ将来の死亡フラグ」みたいな漫画なんで、そこがつらいところです。 シャルルVS秤 私の脳にゴミのような情報を流すんじゃなぁい!!! めちゃくちゃ笑ってしまった。 ゴミのような情報を流す秤の能力はかなり複雑なんだけど、敵側にルールが共有されるって特徴もあって、これがマンガ的によくできてる。 仮に内容がややこしい上に正体自体が不明、となると読んでる側もしんどい。例えば、綺羅羅の能力はマジできつかった。 この点、坐殺博徒の場合は、ある意味で敵の方が能力… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 猛烈に面白かったので感想書きます。</p> <p> </p> <h4 id="石流生存">石流生存!</h4> <p> うれしい。良いキャラだったんで。</p> <p> ただ、なんつーか、「死にそうなところで生き残ったのが、むしろ将来の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%E0%CB%B4%A5%D5%A5%E9%A5%B0">死亡フラグ</a>」みたいな漫画なんで、そこがつらいところです。</p> <p> </p> <h4 id="シャルルVS秤">シャルルVS秤</h4> <blockquote> <p><em>私の脳にゴミのような情報を流すんじゃなぁい!!!</em></p> </blockquote> <p> めちゃくちゃ笑ってしまった。</p> <p> </p> <p> ゴミのような情報を流す秤の能力はかなり複雑なんだけど、敵側にルールが共有されるって特徴もあって、これがマンガ的によくできてる。</p> <p> 仮に内容がややこしい上に正体自体が不明、となると読んでる側もしんどい。例えば、綺羅羅の能力はマジできつかった。</p> <p> この点、坐殺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C7%EE%C5%CC">博徒</a>の場合は、ある意味で敵の方が能力の解説役になってくれる。便利。</p> <p> </p> <p> さて、なんだかんだ、パチンコへの順応性高いシャルル。すぐにルールが理解できる。</p> <p> 呪術師はみんな頭いいもんな~、からの「帰ってくれ夢!!」は素晴らしかったです。思いっきりハマっている。</p> <p>   </p> <p> 関係ないが、『呪術廻戦』とよく比較される漫画に『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/HUNTER%A1%DFHUNTER">HUNTER×HUNTER</a>』があるけど、ハンタの方は意外と、ガチの戦闘真っ最中にはギャグはさまないよな、と思った。もちろん、どっちが優れてるということでもないけど、この辺はやっぱり、呪術の方が最近の漫画っぽいなあ、と思う。</p> <p> </p> <h4 id="鹿紫雲VSパンダ">鹿紫雲VSパンダ</h4> <p> 「お姉ちゃん」、前から存在が匂わされてて切り札っぽかったけど不発。</p> <p> </p> <h4 id="第185話バイバイ">第185話「バイバイ」</h4> <p> よかった。わかりにくいって感想があったのは、現実のパンダと三男坊の小さいパンダの性格が違いすぎて、読んでる側でそこがちゃんとリンクしなかったんだと思う。あと、キツネとかタヌキとか、どっから出てきてん、という。</p> <p> 芥見さんは、人外のキャラの表情を描くのがクソ上手い。</p> <p> </p> <h4 id="鹿紫雲VS秤">鹿紫雲VS秤</h4> <p> シャルルと同じくパチンコへの順応性が妙に高い鹿紫雲。「うっかり特快リーチ!!」。</p> <p> 乙骨対石流もそうだけど、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%F5%C6%F9">受肉</a>した過去の呪術師はみんな付き合いがいいよな。勝ち負けよりも、相手の全力を受けきってから自分の全力で上回る美学というか。それが結果として強さになってるからタチが悪いんだけど。</p> <p> </p> <h4 id="鹿紫雲仲間になる">鹿紫雲、仲間になる</h4> <p> 対宿儺用の一回きりの術式があるそうで。</p> <p> 俺は性格がゆがんでるので、「じゃあ、そのうち宿儺とバトって、そこで術式披露するけど宿儺には通じなくて、そこで死ぬのね」とか思ったけど、さて、どうなるでしょう。</p> <p> </p> <h4 id="ギャンブルとフィクション偏愛">ギャンブルとフィクション偏愛</h4> <p> おそらくパチンコ未経験のシャルルが、戦闘の過程で完全にギャンブラーになってしまう描写が素晴らしかった21巻。</p> <p> それを爆笑しながら読んでいた俺はパチンコ未経験。たぶん、今後も打たないで死ぬと思う。</p> <p> それは賭け事が嫌いだからじゃなく、始めたらたぶん、浸かってしまうから。</p> <p> 「帰ってくれ夢!!」というシャルルと同じような叫びは、パチンコ店や賭博場だけじゃなく、きっとあらゆるところで発されている。俺たちはみんな、それぞれの場所で叫んでいる。</p> <p> それは、家で漫画を読みながら。シアターで映画を観ながら。つまり俺たちは、物語というものと接するとき、「こうあってくれ」「こうあるべき」という感情を無意識のうちに引きずり出されている。</p> <p> ギャンブルはきっと、俺たちの脳みそを人類のはじめから焼き続けてきた「虚構」という神の一種だと思う。そして俺は、自分がこの「虚構」に強烈に魅入られている自覚があるので、バクチを始めたらきっと、この新しい神に人生を丸まる持っていかれてしまうだろう。</p> <p> だからやらない。他人(シャルル)が打っているのを見ながらへらへら笑っていられるぐらいがちょうどいいんだと思っている。以上。</p> <p> </p> <div class="freezed"> <div class="hatena-asin-detail"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0BKSK32N3?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="hatena-asin-detail-image-link" target="_blank" rel="noopener"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/51DvZyZdARL._SL500_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="呪術廻戦 21 (ジャンプコミックスDIGITAL)" title="呪術廻戦 21 (ジャンプコミックスDIGITAL)" /></a> <div class="hatena-asin-detail-info"> <p class="hatena-asin-detail-title"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0BKSK32N3?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" target="_blank" rel="noopener">呪術廻戦 21 (ジャンプコミックスDIGITAL)</a></p> <ul class="hatena-asin-detail-meta"> <li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span><a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B3%A9%B8%AB%B2%BC%A1%B9" class="keyword">芥見下々</a></li> <li><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%B8%B1%D1%BC%D2">集英社</a></li> </ul> <a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0BKSK32N3?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="asin-detail-buy" target="_blank" rel="noopener">Amazon</a></div> </div> </div> kajika0 八虎の誠実さ。そして、不二 桐緒は何者か? 『ブルーピリオド』13巻の感想について hatenablog://entry/4207112889940037853 2022-11-26T22:52:41+09:00 2022-11-26T22:52:41+09:00 はじめにーここまでのあらすじー 主人公・矢口八虎、美大2年目。東京藝大への現役合格を、合理的な目標意識と猛烈な努力で果たした八虎だが、日々の中で少しずつ、自分の方向性に迷いを持ち始める。 授業の課題である「罪悪感」がテーマの作品作りにも着手できないまま、八虎が出会ったのは、美術界におけるヒエラルキーの外部に位置する反権威的アート集団「ノーマークス」。そして、その代表者である美人で純粋で不穏な芸術家・不二 桐緒。 不二の思想と人柄に次第に惹かれていく八虎だが、一方で、不二の周囲にある不気味な気配も徐々に見え始めてくるのだった。 感想 ノーマークス/「罪悪感」編決着。 ドラマティックな結末ではなか… <h4 id="はじめにーここまでのあらすじー">はじめにーここまでのあらすじー</h4> <p> 主人公・矢口八虎、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%FE%C2%E7">美大</a>2年目。東京藝大への現役合格を、合理的な目標意識と猛烈な努力で果たした八虎だが、日々の中で少しずつ、自分の方向性に迷いを持ち始める。</p> <p> 授業の課題である「罪悪感」がテーマの作品作りにも着手できないまま、八虎が出会ったのは、美術界における<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%A8%A5%E9%A5%EB%A5%AD%A1%BC">ヒエラルキー</a>の外部に位置する反権威的アート集団「ノーマークス」。そして、その代表者である美人で純粋で不穏な芸術家・不二 桐緒。</p> <p> 不二の思想と人柄に次第に惹かれていく八虎だが、一方で、不二の周囲にある不気味な気配も徐々に見え始めてくるのだった。</p> <p> </p> <h4 id="感想">感想</h4> <p> ノーマークス/「罪悪感」編決着。</p> <p> ドラマティックな結末ではなかったけど、とてもよかったと思う。</p> <p> </p> <p> 不二との出会いを経て八虎が得た結論、その経験を生かした「罪悪感」についての説明は、別に、すごく新鮮なものではない。言ってしまえば、まあ一般論だ。</p> <p> でも、八虎は自分の実体験を通じて答えを見つけた。それは、どんなぶっ飛んだ悟りを開くよりも大事なことで、普通な答えだからこそ誠実だと思う。</p> <p> </p> <p> 犬飼教授の寸評を聞いたあとの八虎の反応も良い。これまで、何を考えているかよくわからなかった、独善的で残酷にも見えた教授から手放しで称賛されても、八虎は特に喜ばない。</p> <p> それでいいんだと思う。ここで大喜びしてしまうなら、八虎は「権威」側に完全に取り込まれてしまうからだ。</p> <p> ノーマークスという、あやしくて実際にいびつだけど、確かにある種の魅力を持つ世界にも理解を示した八虎なんだから、ここでそんなに喜ばなくていい。このバランス感は、八虎が良い意味で大人になった表れだと思う。</p> <p> </p> <p> 物語の終盤で、不二 桐緒は八虎の前から去る(きわめて穏やかなかたちで。念のため)。少し話はズレるが、この不二という人物について、犬飼教授の発言もふまえて、もうちょっと考えてみたい。</p> <p> 犬飼教授は不二が嫌いなようだが、彼は不二について次のように語る。</p> <p> 「反<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%A2%B0%D2%BC%E7%B5%C1">権威主義</a>集団・ノーマークスが解体されても、不二がいる限りは、ファンや<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D1%A5%C8%A5%ED%A5%F3">パトロン</a>によって何度でも復活する」</p> <p> 「しかし、権威の正当性を証明するためには、反<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%A2%B0%D2%BC%E7%B5%C1">権威主義</a>にいてもらわなくてはならない」</p> <p> この発言を深読みすると、「権威」と「反権威」とはある種の共犯関係にあるのかもしれないな、と思える。そして、次のように考えてみる。</p> <p> </p> <p> 不二はおそらく、根っからの反<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%A2%B0%D2%BC%E7%B5%C1">権威主義</a>者なのだろう。でも、実は最初は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CB%A5%E5%A1%BC%A5%C8%A5%E9">ニュートラ</a>ルで体制側でも反権威でもない、単に優れた一人のアーティストだったのかもしれない。</p> <p> 同じ時代に存在する傑出した者たちの中で、ある個人がたまたま、「反権威」という役目を負うのではないだろうか。それが不二だったのかもしれない。</p> <p> 犬飼教授の「不二 桐緒がいる限りノーマークスは復活する」という言葉は、もう少し広い意味で考えてもいいかもしれない。つまり、仮に今の不二が芸術界から去っても、別の誰かに同じ役目が移るだけだということ、「不二 桐緒」というのは一人のキャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターであるともに、ある種のアイコンなんだろう。</p> <p> </p> <p> とにかく、不二は物語を去った。彼女は再度登場するだろうか?</p> <p> 以前、どこかで読んだ感想に俺も賛成するのだが、俺は『ブルーピリオド』は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BE%AF%C7%AF%A5%DE%A5%F3%A5%AC">少年マンガ</a>だと思っている。つまり、最終章の世界大会編(?)で不二が再び登場してもいいんじゃないでしょうか。どうでしょうか。</p> <p> </p> <p> そう、八虎が大人になったと言えばもう一つ。八虎は課題の制作を未経験の方法で行うにあたって、桑名さんをはじめ、他の人に助けてもらうことを学んだ。これも大事なことだと思う。</p> <p> </p> <p> 13巻の後半からは八雲と鉢呂、桃代がメインキャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターとなる新章。なかなか重い雰囲気。とりあえず、田舎の建物の空気感がすげー上手すぎる。</p> <p> あと、八雲23歳で思ったより歳いってた。俺は八雲、せいぜい20くらいだと思ってた。</p> <p> だから、18-19歳の八虎が八雲を「さん」付けするの、ちょっとでも上だったらそうするのってマジメって言うか、ヤンキーっぽいな、と思ってたけど、23歳ならそれはそうだな、と。以上です。</p> <p> </p> <p> </p> <div class="freezed"> <div class="hatena-asin-detail"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0BLYMBPXB?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="hatena-asin-detail-image-link" target="_blank" rel="noopener"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/51Z0v2yi+mL._SL500_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="ブルーピリオド(13) (アフタヌーンコミックス)" title="ブルーピリオド(13) (アフタヌーンコミックス)" /></a> <div class="hatena-asin-detail-info"> <p class="hatena-asin-detail-title"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0BLYMBPXB?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" target="_blank" rel="noopener">ブルーピリオド(13) (アフタヌーンコミックス)</a></p> <ul class="hatena-asin-detail-meta"> <li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span><a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B3%B8%FD%A4%C4%A4%D0%A4%B5" class="keyword">山口つばさ</a></li> <li><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%D6%C3%CC%BC%D2">講談社</a></li> </ul> <a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0BLYMBPXB?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="asin-detail-buy" target="_blank" rel="noopener">Amazon</a></div> </div> </div> kajika0 『HUNTER×HUNTER』37巻の感想について。2026年に再び会いましょう hatenablog://entry/4207112889934435476 2022-11-07T22:08:20+09:00 2022-11-07T22:08:20+09:00 はじめに 内容の考察は俺よりずっと頭のいい人たちが色々書いているだろうから、あくまでいち読者として「やっぱすごいねぇ」と感心したところを紹介していく。 表紙 ホイ・コーロ国王の婚外子にして二線者、モレナ=プルード。 37巻で一番ノックアウトされたのが、話の展開でも台詞回しでもなく、この絵だった。絶対に話しかけたくない顔をしている。この人が夜に自宅の前に立ってたら100パー泣く。 劇中のモレナは、虚無的で無軌道であっても割りと明るい描かれ方をしていた印象があるけど、写実に寄せて描くと、この表紙のようなビジュアルになるのかもしれない。ただ、悪意のネテロ会長のようにベーシックな絵柄を壊し、違った雰囲… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> 内容の考察は俺よりずっと頭のいい人たちが色々書いているだろうから、あくまでいち読者として「やっぱすごいねぇ」と感心したところを紹介していく。</p> <p> </p> <h4 id="表紙">表紙</h4> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20221107/20221107201930.png" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" width="298" height="472" /></p> <p> ホイ・コーロ国王の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BA%A7%B3%B0%BB%D2">婚外子</a>にして二線者、モレナ=プルード。</p> <p> 37巻で一番ノックアウトされたのが、話の展開でも台詞回しでもなく、この絵だった。絶対に話しかけたくない顔をしている。この人が夜に自宅の前に立ってたら100パー泣く。</p> <p> 劇中のモレナは、虚無的で無軌道であっても割りと明るい描かれ方をしていた印象があるけど、写実に寄せて描くと、この表紙のようなビジュアルになるのかもしれない。ただ、悪意のネテロ会長のようにベーシックな絵柄を壊し、違った雰囲気でキャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターを描き直せるのも『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/HUNTER%A1%DFHUNTER">HUNTER×HUNTER</a>』という漫画の特徴なので、別に、本編でモレナがこんな具合に、リアルに描かれてもいいんである(ちなみに37巻にモレナは出てこない)。</p> <p> </p> <h4 id="リハンのかわいさに感じる無駄のなさ">リハンのかわいさに感じる無駄のなさ</h4> <p> 攻撃対象の情報を自分で推理することで攻撃力が上がる念「異邦人(<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EC%A5%C7%A5%BF%A1%BC">プレデター</a>)」を持つリハン。</p> <p> 37巻でターゲットを攻撃した後に交わした仲間との会話で、別のターゲットに関する情報を聞かされてしまい、「そこまで他人から教わると『異邦人』が使えないんだけど…」とぼやく場面があってかわいい。</p> <p> それと同時に、無駄がないな〜と思う。このシーンで、「① リハンという冷徹な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%A6%B6%C8%B7%B3%BF%CD">職業軍人</a>に対して愛着を持たせる」「② リハンの能力を再確認する & 次のターゲット暗殺でリハンは主な任務を負えないというアナウンス」が済まされているからだ。</p> <p> 作劇において合理性を突き詰めると、キャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターが人形劇のようになって没入感がなくなってしまうのでは、と思うことが多いが、これは上手くやっててすげーよなー、と思う。もし今後、リハンが継承戦の中で死亡したら(大いにあり得る)、俺は冨樫の思い通り、ショックを受けるだろう。</p> <p> </p> <h4 id="HUNTERHUNTERにおける魂の扱い">『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/HUNTER%A1%DFHUNTER">HUNTER×HUNTER</a>』における魂の扱い</h4> <p> 魂というか人格というか、が他人に乗り移る能力がしれっと出てきて、この辺の適当さも良い意味でずるいよな〜と思う。</p> <p> 基本的に、この漫画を読むときは、死んだら終わりの一回きりの命のやりとりを読んでいるつもりでいる。だから物語の緊張感がすごいし、キャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターが死んで脱落すれば悲しいし、「カミーラの能力ずりぃだろ」とか思う。</p> <p> でも、魂という生物学的な死では破壊されない概念が出てきて、「あ、死んでも完全に終わりではないらしい」と思う。</p> <p> ただ、この「魂」がうまい具合に存在感がないというか、37巻でも何人かキャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターが死んで、さらには、わざと死んではじめて機能する自爆部隊みたいな連中が出てきても、ちゃんと悲しいし、こいつらヤベェな、という感じが残っている。</p> <p> そういえば、蟻編の最終盤でも魂という概念に触れてはいた。それでもやっぱり、キャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターが死んだらショックなわけで、死と魂の扱いについて、その辺の重なり方が上手いというかずるいというか。</p> <p> </p> <h4 id="バショウのフリースタイルバトル">バショウのフリースタイルバトル</h4> <p> 確かに、得意そうだけど。</p> <p> これも作劇の合理性と関係あるのかも。物語の情報量をうまくどんどん圧縮していくと、どこかにこういうシーンを詰めこめる余白ができて、それが結果として、キャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターへの愛着につながっていく。</p> <p> </p> <h4 id="キーニの自害">キーニの自害</h4> <p> 優秀なキャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターは、窮地におちいった味方を救える一方で、「こいつがいたら、この窮地を『解決してしまう』んだよな」という邪魔な存在でもあって、それを上手く間引いたなあと思う俺はドライだろうか。</p> <p> </p> <h4 id="ね-危険でしょ">「ね 危険でしょ?」</h4> <p> 大人になってわかることの一つに、仕事の現場においては問題を魔法のように解決できる能力やツールが求められる一方で、解決が行ったり来たりしながら少しずつ進むことを前提として培われた技術や、単に「あんまり早く進むとついてないんですけど」みたいな時間感覚が存在する、というのがある。</p> <p> もしも本当に、現場の問題を一瞬で解消してしまう存在が現れると、これまで蓄積されたものがいきなり無価値になったり、それが逆にデカい摩擦を生んでみんな疲れたりする(不効率なだけなんだから、黙って消えろ!というのが、正しいは正しい)。いまの継承戦で旅団がやってるのはそういうことだと思う。</p> <p> そういうのを<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BE%AF%C7%AF%A5%DE%A5%F3%A5%AC">少年マンガ</a>で描くのはすごいね〜と思った…けど、これって要はなろう系?</p> <p> </p> <h4 id="ツェリードニヒもさいいやつだよな">ツェリードニヒもさ、「いいやつ」だよな</h4> <p> 自分勝手で暴力的な殺人鬼として登場し、それはまあ、いまでもそうなんだけど。ただ、念の世界におけるビギナーとしてテータに教わる態度は優秀な生徒そのものだし、人間味だって持っていて、裏切られれば動揺する。</p> <p> 物語というものが、現実の誇張ではあっても、そこから乖離してはならないとするなら、俺はやっぱりこういうのがいいと思うんだよな。クソ野郎でも、まともな部分をさしはさんでいくいくべきだと思う。</p> <p> 第一王子のベンジャミンにも同じことが言えて、ただの冷徹な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C7%BE%B6%DA">脳筋</a>と見せかけて、部下の言うことはちゃんと聞くし、人望もあるという。そういう新しい部分を見せてくれる物語が好きだし、そういうのが「いいキャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ター」だと思っている。</p> <p> </p> <h4 id="センリツの3分間はツェリードニヒのアキレス腱になるか">センリツの3分間はツェリードニヒのアキレス腱になるか?</h4> <p> これはもう、大勢の人が考察していると思うが書いておく。</p> <p> ツェリードニヒが10秒間の予知夢に目覚めたのと偶然同じタイミングで、センリツが王子脱出計画のため、「音楽によって聴いたものを3分間忘我させる能力」を使う。</p> <p> 気になったのは、この場面で描かれている時間の流れと、描写されている置時計の時刻だ。</p> <p> ツェリが予知夢に入ったのが置時計で8時58分ごろ。ツェリはそこで、自分がテータに銃撃されるのを予知する(10秒間の予知)。</p> <p> ツェリはテータの裏切りに驚きつつ、撃たれるところから離れる。テータはこれに気づかないままツェリ(がいた場所)を撃つ。</p> <p> そこでセンリツの3分間の演奏が始まる。ツェリもテータも演奏の影響を受け、9時3分ごろに曲が終わり、同時に我に返る。センリツの演奏を差し引くと、テータがツェリを撃ったのは9時ちょうどあたりになる。</p> <p> </p> <p> あれ? と思う。</p> <p> ツェリが予知夢に入る(8時58分)⇒10秒間の予知⇒テータの銃撃(9時ちょうど)で2分間も経っている。予知通りにテータが動いた10秒間をいくらかふくらませても、それで2分もかかるだろうか?</p> <p> </p> <p> 予想なのだが、ツェリの予知夢にはツェリ自身も把握していない空白の時間帯があるのではないだろうか?</p> <p> 2分も経ってないだろう、というだけでなく、(絶必須という条件はあっても)ツェリの能力が強力すぎるため、どこかに制約が必要では、と俺は考えた。この辺が、センリツの介入によって、その辺がツェリと読者から迷彩されているのでは、という推測をしている。</p> <p> </p> <h4 id="サラヘル">サラヘル</h4> <p> 死の覚悟が決まってるのと同時に、日常の延長で軽口をたたく余裕もあるという、彼女が「ボケ」と表現した、まさに軍人だと思う。俺は、任務遂行の直前で人情が目覚めてしまうオチだと思うな。</p> <p> </p> <p> 以上。面白かったです。では、2026年に再び会いましょう。</p> <p> </p> <div class="freezed"> <div class="hatena-asin-detail"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0BGLPGGFJ?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="hatena-asin-detail-image-link" target="_blank" rel="noopener"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/514t152TgaL._SL500_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="HUNTER×HUNTER モノクロ版 37 (ジャンプコミックスDIGITAL)" title="HUNTER×HUNTER モノクロ版 37 (ジャンプコミックスDIGITAL)" /></a> <div class="hatena-asin-detail-info"> <p class="hatena-asin-detail-title"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0BGLPGGFJ?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" target="_blank" rel="noopener">HUNTER×HUNTER モノクロ版 37 (ジャンプコミックスDIGITAL)</a></p> <ul class="hatena-asin-detail-meta"> <li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span><a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%DA%B3%DF%B5%C1%C7%EE" class="keyword">冨樫義博</a></li> <li><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%B8%B1%D1%BC%D2">集英社</a></li> </ul> <a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0BGLPGGFJ?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="asin-detail-buy" target="_blank" rel="noopener">Amazon</a></div> </div> </div> kajika0 労働について hatenablog://entry/4207112889928452801 2022-10-17T23:29:01+09:00 2022-10-17T23:29:01+09:00 『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』という本の中で、現代では教養を身につける目的がすべて、ビジネスにひもづけられるようになってしまっている、ということが書いてあった。 本来の教養というものがあるとすれば、はじめからビジネスに役立てることを目指してはいけない。お金儲けを目指して修養を積み、物事を吸収したり学んだりするのはおかしいぜ、ということだ。 基本的には同意するんだけども、一方で俺の感覚と少しだけズレてるな、というのは、今の俺たちの生活って、おおよそ大体ビジネスと化しているというか、一日のすべてが労働になっていて、何もかもビジネスのため、って当たり前っちゃ当たり前なんだよな、と思う。… <p> 『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』という本の中で、現代では教養を身につける目的がすべて、ビジネスにひもづけられるようになってしまっている、ということが書いてあった。</p> <p> 本来の教養というものがあるとすれば、はじめからビジネスに役立てることを目指してはいけない。お金儲けを目指して修養を積み、物事を吸収したり学んだりするのはおかしいぜ、ということだ。</p> <p> 基本的には同意するんだけども、一方で俺の感覚と少しだけズレてるな、というのは、今の俺たちの生活って、おおよそ大体ビジネスと化しているというか、一日のすべてが労働になっていて、何もかもビジネスのため、って当たり前っちゃ当たり前なんだよな、と思う。</p> <p> 本の中で言われていることのイメージは、一日8時間労働、週40時間の仕事に生かすために俺たちは音楽を聴いたり映画を観たりしているぞ、という感じだと思う。</p> <p> それに対して俺のイメージは、俺たちは働くために飯を食い、働くために眠っていて、働く以外の時間が全部労働のために最適化されることを目指しており、これははっきり仕事をしている時間帯以外も準仕事中、みたいな感じで、一日8時間どころか10数時間も仕事しているようなものであり、そうなるとまあ、あらゆるものがビジネスで活用されるためにある、というのも当然と言えば当然なんじゃないの、と思う。良い悪いは別として。</p> <p> 俺たちはそのうち、働くために金を稼ぐようになるかもしれない(おいおい…)。</p> <p> </p> <p> 要するに、労働という言葉が示すイメージは俺の中でかなり範囲が広い。</p> <p> 基本的な定義としては、時間や体力を使って何か対価を得ることを、俺の中で労働と呼ぶ。そこから広がって、直接働く時間や体力を確保するための休息や工夫も、目的としては働くためにあるんですよね、という感じで半分労働と化しているということなのだ。</p> <p> ところで、ここまでの話では俺が異様な仕事人間のようだが、別にそういうことではない。単に、働くのが嫌いだけど他の生き方もあまりよくわからん、と思っているうちに仕事とそれ以外の部分が上手に仕切れなくなっているだけだ。</p> <p> </p> <p> それで、時間や体力を消費して対価を得ることを労働と呼ぶように、感情を消費して何かを得ることも労働と呼ぶ。これを俗に、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%B6%BE%F0%CF%AB%C6%AF">感情労働</a>という。</p> <p> ここで必ずしも現金化が起きるわけではなく、ここでの対価は収入とは限らず、漠然としたやりがいや情報だったり、費やしたのとは別の新たな感情だったりする。でも、いずれにしても労働である。「仕事」なのだ。</p> <p> 暴論かもしれないが、感情や時間を消費して情報を得たり別の気持ちになるのは「仕事」なんである。</p> <p> 俺たちは映画を観たりゲームをしたりして、そこには時間を費やすと同時に集中力や緊張が伴い、その対価として達成感や興奮を得る。これは労働なんである。</p> <p> そんなバカな、だって映画を観るときはむしろお金を払うぐらいだし、ゲームだって好き好んでやってるのに、と思うが、やっぱり労働なんである。</p> <p> </p> <p> 言うまでもなく、俺は間違っている。「労働」「仕事」という言葉を拡大解釈し広げ続けた結果、おかしなことになっている。</p> <p> 俺は最近、何もしないで海辺で太陽をじっと見ているのが一番好きだが、ここまで書いた立場で考えれば、これだって時間を代償に感情を緊張からリラックスに置き換えているのだから労働になってしまう。</p> <p> だから、間違っているのだが、間違っていなんだよ、いくらかは。と、どこかで思ってしまうのはやっぱり、俺もみんなも働きすぎなんだと思う。</p> <p> そんなに働かないで、もっとみんな休んだ方がいい。さらに言うなら、「もっと休め」という言説も含めて、お互いのことをもう、ネットとかであんまりごちゃごちゃ言うんじゃねえ、ということを思っている。</p> kajika0 ひまわりについて hatenablog://entry/4207112889924542084 2022-10-04T21:19:50+09:00 2022-10-04T21:19:50+09:00 仕事中に業務がかったるくなったので、気分転換がてら、職場近くのスーパーにハード系のグミを買いに行くことにした。 職場がある建物の敷地を出ようとして通りを見ると、一方から老人の腰かけた介助用の車椅子が、その反対側から乳児の収まった乳母車がそれぞれ押されてやってきて、すれ違うところだった。 これまで生きてきて、意外と見そうで見なかった風景だな、と思う。行く道・来た道、という言い回しを思い出した。あとは、スフィンクスのナゾナゾとか。 色々連想しながら、俺も通りに出た。 俺の行く方向は車椅子と同じになった。乗っているのは高齢の女性。押している男性がハンドルを少し切って、車椅子を道の端に寄せていった。 … <p> 仕事中に業務がかったるくなったので、気分転換がてら、職場近くのスーパーにハード系のグミを買いに行くことにした。</p> <p> 職場がある建物の敷地を出ようとして通りを見ると、一方から老人の腰かけた介助用の車椅子が、その反対側から乳児の収まった乳母車がそれぞれ押されてやってきて、すれ違うところだった。</p> <p> これまで生きてきて、意外と見そうで見なかった風景だな、と思う。行く道・来た道、という言い回しを思い出した。あとは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%D5%A5%A3%A5%F3%A5%AF%A5%B9">スフィンクス</a>のナゾナゾとか。</p> <p> 色々連想しながら、俺も通りに出た。</p> <p> 俺の行く方向は車椅子と同じになった。乗っているのは高齢の女性。押している男性がハンドルを少し切って、車椅子を道の端に寄せていった。</p> <p> その先を目で追うと、ひまわりが一輪植わっていた。こんなところにひまわりが生えているのをはじめて知った。季節のためか、くしゃっと萎れかかったようなひまわりだったが、それでも、まだ力強い黄色をしていた。</p> <p> 今日のような曇り空ではなく、晴れている日ならそれなりに見映えもしたろうな、と思ったが、よく考えれば快晴のときにこの道を通ったことだってあったはずで、結局そのときは気づいていないのだ。</p> <p> 男性はひまわりの前で車椅子を止めて、女性に何か話しかけていた。女性は花に目をやって、特に感動したようには見えなかったが、こういう時間の過ごし方全体を漠然と楽しんでいるようではあった。</p> <p> </p> <p> グミを買った帰り道に先ほどのひまわりの前を通りがかったら、何というか、できすぎというか、母親らしい女性が小さい子どもを抱いて、子どもにひまわりを見せていた。</p> <p> 子どもは、ひまわりにはそれほど関心がないようだった。この子の中で今の時間は、親が花を見せようとしてくるのからわざと目を背けて遊ぶ時間になってしまっているようで、母親の腕の中でぐにゃぐにゃしてふざけていた。</p> <p> 確かに、どうってことないひまわりだもんな、子どもにはつまんないよな、と俺は思う。と同時に、考えるのだが、俺たちは一体いつから、(そして、あるいは、いつまで)ただ 花が道端に咲いているだけで、それを美しいと思うことができるのだろうか?</p> <p> いや、というか俺だって、こんなところにひまわりが咲いていることに今日まで気づかなかったわけで、もしかすると、こういう花の美しさというのは、誰かに見せてあげようと思ってはじめて、気づける類のものなのかもしれない。</p> <p> 「せっかく見せてもらってるんだから、ちゃんと見ておいた方がいいぞー」と思って、俺は親子連れを通り過ぎた後、振り返って子どもの方を見た。子どもはまだ、ぐにゃぐにゃしていたが、不審な中年と目が合って恥ずかしかったのか、いーっ、という感じで歯を出して笑った。</p> kajika0 世界について hatenablog://entry/4207112889919934954 2022-09-20T22:36:09+09:00 2022-09-20T22:36:09+09:00 先日、新宿に買い物に行って駅構内を歩いていると、目の前にそれぞれのスカーフをかぶった頭が二つ。お、ヒジャブだなと思う。 そのカラフルな布をなんとなく見ていて、彼女らの後頭部が円形に、紐かゴムのようなものでくくられているのを知った。「こういう構造になっていたのか」と思う。 ただ、もしかすると、他の人もこれと同じ巻き方ではないかもしれない。色んな方法があるらしいのだ。 Wikipediaによると、日本国内における宗教別の信者の統計はないという。そういうわけで感覚に過ぎないが、最近見かけるようになったなあ、という気がする。 別にイスラムが増えようとどうとも思っていなくて、歓迎もしなければ反感もない。… <p> 先日、新宿に買い物に行って駅構内を歩いていると、目の前にそれぞれのスカーフをかぶった頭が二つ。お、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%B8%A5%E3%A5%D6">ヒジャブ</a>だなと思う。</p> <p> そのカラフルな布をなんとなく見ていて、彼女らの後頭部が円形に、紐かゴムのようなものでくくられているのを知った。「こういう構造になっていたのか」と思う。</p> <p> ただ、もしかすると、他の人もこれと同じ巻き方ではないかもしれない。色んな方法があるらしいのだ。</p> <p> </p> <p> <a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E7%A4%BE%E4%BC%9A">Wikipediaによると、日本国内における宗教別の信者の統計はないという。</a>そういうわけで感覚に過ぎないが、最近見かけるようになったなあ、という気がする。</p> <p> 別に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%B9%A5%E9%A5%E0">イスラム</a>が増えようとどうとも思っていなくて、歓迎もしなければ反感もない。</p> <p>  俺は別に、多様性や寛容さを大切にしてもいないし、「他宗教でも人種でも、積極的に受け入れないと日本は立ちいかないですよ」という経済的な主張もない。</p> <p> といって、一緒に暮らしていて嫌だとも思わない。単にあんまり関心がないんだろう。新宿の雑踏の中でも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%B8%A5%E3%A5%D6">ヒジャブ</a>の彩りはよく目立つので、「まあ、風景として面白いな」ぐらいは感じる。</p> <p> 二人で、楽しそうによく笑って話しながら駅の中を歩いていた。</p> <p> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="en">At Mahsa Amini's funeral in her hometown of Saqqez, Kurdistan province, women take their headscarves off in protest against Iran's forced hijab law amid "death to the dictator" chants. <br /><br />Mahsa, 22, died in custody after being arrested by morality police.<a href="https://t.co/MaqyberjNO">pic.twitter.com/MaqyberjNO</a></p> — Shayan Sardarizadeh (@Shayan86) <a href="https://twitter.com/Shayan86/status/1571148937788293129?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年9月17日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p> </p> <p> 家に帰ってきて<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/twitter">twitter</a>を見ていたら、イランのニュースで<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%B8%A5%E3%A5%D6">ヒジャブ</a>に関する事件を紹介していた。</p> <p> マフサ・アミニという<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%E3%A4%A4%BD%F7">若い女</a>性が、スカーフの着用に関する決まりに従わなかったために拘束され、その後不審な亡くなり方をしたこと、イラン国内の女性たちが警察や政府に向けた抗議のために集まり、そこでは主張のために<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%B8%A5%E3%A5%D6">ヒジャブ</a>を脱いでいる人も大勢いたことが報道されていた。</p> <p> </p> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%B8%A5%E3%A5%D6">ヒジャブ</a>というものに関する認識が日本の三十代男子(俺)の中でどのように変わっていったかというと、最初は「砂漠らへんに住んでいる女の人が巻いている布」というところから始まって、それが父権社会による抑圧のシンボルらしいぞ、となり、それから「いや、あれを<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%A4%A5%C7%A5%F3%A5%C6%A5%A3%A5%C6%A5%A3">アイデンティティ</a>にしていたり、ファッションとして楽しんだりしている女性もいるみたいだぞ」ということになり、なんだかよくわからなくなって現在に至る。</p> <p> そして、そのまま今もよくわかっていない。</p> <p> 同じ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%B8%A5%E3%A5%D6">ヒジャブ</a>を巻いた女性同士でも、「みんなはこれを支配の象徴だって言うけど、私は可愛くて好きなんだけどな」とこっそり思っている人がいるのかもしれないし、反対に、「みんな『そんなに深刻に考える必要のない、ただのファッションでしょ』って言うけど、私は束縛されてるようで好きじゃないな」という人もいるのかもしれない。</p> <p> そのお互いは別の国に暮らしていて、「彼女は彼女、私は私」でいいのかもしれないし、もしかすると同じ国、場合によっては同じ家庭で生活していて、相当緊迫しているのかもしれない。</p> <p> </p> <p> なんだかよくわかんねえな、と思うのだが、そういう意見でいいのかもよくわからず、「だって俺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%B9%A5%E9%A5%E0">イスラム</a>教徒でも女でもねえし」と思う一方で、じゃあ自分と属性が違う人の悩みはどうでもいいですか? というと、そんなわけはないので、わかんねえと思いながら気になっている。</p> <p> </p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsanjou.hatenablog.jp%2Fentry%2F2020%2F02%2F28%2F234238" title="俺と#KuTooについて - 蠅と鬼と人" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sanjou.hatenablog.jp/entry/2020/02/28/234238">sanjou.hatenablog.jp</a></cite></p> <p> こんなことを書いたこともあった。</p> kajika0 『正反対な君と僕』第14話の感想について hatenablog://entry/4207112889919454346 2022-09-19T17:10:16+09:00 2022-09-19T17:10:16+09:00 shonenjumpplus.com はじめにー「奇蹟の残り香」「エレナの聖釘」ー 久しぶりに『HELLSING』を読んでいたらアーカードとアンデルセンの最終決戦で、切り札・「エレナの聖釘」で怪物の力を得て宿敵に対抗しようとするアンデルセンに、アーカードがこう言う。 「やめろ!! アンデルセン!! 化け物になる気か!! 神の化け物に!!」 「やめろ人間!! 化け物にはなるな 俺のような」 アーカードは自然の摂理を外れて人間から吸血鬼という化け物になり、基本的にそれでずっと楽しそうに戦い続けているので本人も満足している…と思いきや、すべてがすべてそうでもなく、こころのどこかで、外法によって力を得… <p><iframe src="https://shonenjumpplus.com/episode/316112896848656097/embed" scrolling="no" allowfullscreen="allowfullscreen" style="max-width: 100%;" width="560" height="400" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://shonenjumpplus.com/episode/316112896848656097">shonenjumpplus.com</a></cite></p> <h4 id="はじめにー奇蹟の残り香エレナの聖釘ー">はじめにー「奇蹟の残り香」「<strong>エレナの聖釘</strong>」ー</h4> <p> 久しぶりに『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/HELLSING">HELLSING</a>』を読んでいたら<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A1%BC%A5%AB%A1%BC%A5%C9">アーカード</a>と<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%F3%A5%C7%A5%EB%A5%BB%A5%F3">アンデルセン</a>の最終決戦で、切り札・「エレナの聖釘」で怪物の力を得て宿敵に対抗しようとする<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%F3%A5%C7%A5%EB%A5%BB%A5%F3">アンデルセン</a>に、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A1%BC%A5%AB%A1%BC%A5%C9">アーカード</a>がこう言う。</p> <p> 「やめろ!! <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%F3%A5%C7%A5%EB%A5%BB%A5%F3">アンデルセン</a>!! 化け物になる気か!! 神の化け物<strong>に</strong>!!」</p> <p> 「やめろ人間!! 化け物にはなるな 俺のような」</p> <p> </p> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A1%BC%A5%AB%A1%BC%A5%C9">アーカード</a>は自然の摂理を外れて人間から吸血鬼という化け物になり、基本的にそれでずっと楽しそうに戦い続けているので本人も満足している…と思いきや、すべてがすべてそうでもなく、こころのどこかで、外法によって力を得た自分を誰かが真っ当な方法で倒すことを望んでいる。</p> <p> その願望は世の中に対する願いというか、仮に自分が滅んでも、正しい者が誤った者を乗り越え、世の中がちゃんとしていることがわかって滅びるなら別にいいという、そういう願いなのだ。</p> <p> </p> <p> 俺はなんの話をしているのだろうか?</p> <p> 人というのは長く生きていると濁ったりゆがんだりしてきて、そのせいか、場合によっては自分以外の誰かまで道徳的に非があったり間違ったりすると嬉しくなることがある。</p> <p> しかし、「じゃあ自分も含めてみんながみんな、悪いことをするようになるといいよねえ」というとそうでもなく、結果として自分の弱さが際立つことになっても、誰かの正しさや誠実さを見届けたくなることもある。</p> <p> 『正反対な君と僕』という漫画はどこかにそういう魅力があって、全員が全員まじめで他人のことを思いやっているので、それを見にいくために読んでいる。</p> <p> 俺はまじめではないので、読むとダメージを食らうこともある。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/RPG">RPG</a>で言ったら回復アイテムを投げられたら逆に致命傷を負うアンデッドがすすんで薬草を浴びるようなものなのだが、それでいいと思っている。</p> <p> …というとなんかすごくおかしな楽しみ方のように聞こえると思うので付け足しておくと、読んでいると普通にへらへら笑えるぐらい会話が楽しいので好きなのだ。</p> <p> </p> <h4 id="第14話">第14話</h4> <p> 鈴木の元カレということで以前から名前が出ていた岡理人が登場し、文化祭で鈴木と理人が遭遇する。</p> <p> 余談だけど、男子の名前はみんな地形(?)なんですね。谷、山田、平、岡…。</p> <p> </p> <p> 14話はずっと演出が素晴らしい。一方、それとは別にすごく良い構成だと思ったのは、過去の鈴木が理人と手をつないだときに「なんか違う」と理屈抜きに瞬間で感じた場面と、それから年月が経った現在、「純愛とは?」ということを鈴木が言葉で考える場面が同じ回に収録されていることだと思う。</p> <p> </p> <p> 相手に触れた・触れられたときに「違う」と感じるのは、言葉や理性ではどうにもならない領域の話だ。なにしろ、当時の鈴木は理人のことが、好きか嫌いかで言えば好きだったわけで、それでも違うと感じたものは、どれだけ言葉で考えても「やっぱ違わないです」と変わったりしない。</p> <p> もしかすると、時間が経ってお互いが変われば「違わなく」なるのかもしれないが、少なくとも今この瞬間では無理な話だ。そのときの鈴木の反応から状況を理解したときの理人の描写もいい。</p> <p> </p> <p> 一方、現在の鈴木は谷くんと自分の関係を見直すにあたって、純愛という概念を言葉で考え直している。この場面では、自分の気持ちや進んでいる方向がおおよそ間違っているわけではないけど、イマイチ落ち着かないというか微調整が必要なタイミングならば、言葉がうまく機能することが描かれている。</p> <p> </p> <p> 「好きだけど恋人にはなれない」という生理的な感覚を言葉で変えることはできない。しかし、「この感情に間違いはないと思うが、少し手直しする必要がある」というときは言葉は役に立つ。</p> <p> </p> <p> 俺はものすごく貧しい恋愛経験しか持っていない。しかし、恋愛感情を持たない相手を理屈で好きにはなれない残酷さと、理屈の部分で自分の気持ちをクリアにすることで得られる勇気が、両方とも色恋で大きな意味を持つことはわかる。</p> <p> 言葉でどうにかなる・ならない、一方だけを一回の話で描くことは多いが、両方収まっているのはめずらしい。そして、すごい。だから14話が好きなのだ。</p> <p> 最後の校内放送もすごい演出ですね。いやはや。</p> <p> </p> <p> あと、全然関係ないが、鈴木の足が遅いというのはすばらしいキャラだと思う。うまく説明できないけど。</p> <p> </p> <p> もう一つ。前から匂わされていた平と東の関係にも、はっきりフラグが立ったように見える。</p> <p> ただ、フラグが先行しているというか、ここから<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%C9%A4%C3%A4%C1%A4%AC%A4%C9%A4%C3%A4%C1">どっちがどっち</a>をどういうかたちで意識するのか、まったくわからない。なにしろ、お互いに相手に引いている場面ばかり出てくる。</p> <p> このままずっと、「また平と東が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%DC%BF%A8">接触</a>しているぜ…。この二人はいつになったら…」と読者を思わせながら、何も起こらないのもいいのかもしれない。俺は、平と東がお互いに引いている光景を見ることでしか得られない栄養があると思っている。</p> <p> </p> <div class="freezed"> <div class="hatena-asin-detail"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0B28R7S31?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="hatena-asin-detail-image-link" target="_blank" rel="noopener"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/51anvBCVxtL._SL500_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="正反対な君と僕 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)" title="正反対な君と僕 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)" /></a> <div class="hatena-asin-detail-info"> <p class="hatena-asin-detail-title"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0B28R7S31?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" target="_blank" rel="noopener">正反対な君と僕 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)</a></p> <ul class="hatena-asin-detail-meta"> <li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span><a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%A4%B2%EC%C2%F4%B9%C8%C3%E3" class="keyword">阿賀沢紅茶</a></li> <li><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%B8%B1%D1%BC%D2">集英社</a></li> </ul> <a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B0B28R7S31?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="asin-detail-buy" target="_blank" rel="noopener">Amazon</a></div> </div> </div> kajika0 スプラトゥーン3・ヒーローモードの感想と「オルタナの、その先へ」の心構えについて hatenablog://entry/4207112889917626536 2022-09-14T21:32:26+09:00 2022-09-23T17:24:16+09:00 はじめに スプラトゥーン3のヒーローモードを隠しヤカン「オルタナの、その先へ」までクリアした。 ストーリー本体はめちゃくちゃ面白かった。一方、その後にひかえる裏ステージ(隠しヤカン)の鬼畜さたるや。 ストーリークリア後の「すごいスタッフだな〜」という余韻を残したままに隠しヤカンを体験したときは、「すごいスタッフだな〜」と思ってしまったよ。同じだけど同じじゃない感想。 この記事では、ヒーローモード全体を通して思ったことと、「オルタナの、その先へ」の心構えについて書いておく(攻略法ではない。ヘタクソだろうが、いつかはクリアできる、という話)。 ヒーローモード雑感 以下、ネタバレ。アーカイブ、オルタ… <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%D7%A5%E9%A5%C8%A5%A5%A1%BC%A5%F3">スプラトゥーン</a>3のヒーローモードを隠しヤカン「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A5%EB%A5%BF%A5%CA">オルタナ</a>の、その先へ」までクリアした。</p> <p> ストーリー本体はめちゃくちゃ面白かった。一方、その後にひかえる裏ステージ(隠しヤカン)の鬼畜さたるや。</p> <p> ストーリークリア後の「すごいスタッフだな〜」という余韻を残したままに隠しヤカンを体験したときは、「すごいスタッフだな〜」と思ってしまったよ。同じだけど同じじゃない感想。</p> <p> この記事では、ヒーローモード全体を通して思ったことと、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A5%EB%A5%BF%A5%CA">オルタナ</a>の、その先へ」の心構えについて書いておく(攻略法ではない。ヘタクソだろうが、いつかはクリアできる、という話)。</p> <p> </p> <h4 id="ヒーローモード雑感">ヒーローモード雑感</h4> <p>以下、ネタバレ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A1%BC%A5%AB%A5%A4%A5%D6">アーカイブ</a>、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A5%EB%A5%BF%A5%CA">オルタナ</a>ログのExtra Logに言及する。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p>・クマサン</p> <p> 首謀者だった。そして、クマサンは熊三号であり、本当の熊だった。</p> <p> 実は、俺はエンディングを見てもクマサンの正体がよくわかっておらず、最終ステージで戦う熊三号のことも生体スーツ的ななんかだと思っていたので、クリア後も「結局、あれは誰だったんだ?」とか思っていた。</p> <p> 色々考えたよ。おもわせぶりに出てくるイルカが本体なんじゃねーか、とか。人類に実は生き残りがいたとか(基本的に、人類が全滅しちゃってるのはLog001~006でわかる)。</p> <p> <a href="https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%82%B5%E3%83%B3">実際のところは、隠しヤカンをクリアして手に入るExtra Logで読めるとおり、実験の結果ものすごく賢くなった本物の熊なのだった(長いのでpixivにリンク)。</a></p> <p> クマサン、孤独だな。ジャッジくんとかと仲良くしてほしい。</p> <p> あと、今作の主人公がおともでコジャケを連れてるのはなんでかな? と思ってたけど、最後の熊対鮭をやりたかったんですね。その発想に感服しました。</p> <p> </p> <p>・すりみ連合</p> <p> 3のマスコットなのに敵なの? と思ってたら、事情があったようで。小者っぽいけど嫌いじゃないです。</p> <p> ボスとして見たらマンタローが一番弱かったな。ウツホのイエロー<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%C4%A5%DC">ウツボ</a>カモンは、元ネタわかるやついねえだろ(おれも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%B5%A5%EB%A4%B5%A4%F3">マサルさん</a>で間接的に知っただけだし)、と思ったけど、まあいいんでしょう。</p> <p> </p> <p>・<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%AA%A5%AB%A5%E9%A1%BC%A5%BA">シオカラーズ</a></p> <p> キャ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターとしては好きなんだけど、3も結局、彼女らの物語になっちゃってるよな~、というのは思う。</p> <p> オクトエキスパンション的な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/DLC">DLC</a>では、すりみ連合のエピソードが補強されるんだろうか。テンタクルズのときみたいに(ぜひ、して欲しい)。</p> <p> でも、道中の進行状況にあわせてアオリやホタルがコメント入れてくれるのはマジで楽しかった。けっこう厳しいアクションや制限時間内のクリアが求められる中で、ミスが続くと本当にイライラが溜まってしまうので、難所を超えるたびに褒めてもらえるとテンション上がる。</p> <p> </p> <p>・最<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%AA%C0%EF">終戦</a></p> <p> プレイヤーである人間が、種族としてどっちに近いかというと敵キャラであるクマサンなわけで、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>やタコの立場でそれと戦うのは不思議な感じもしたが。</p> <p> クマサンの、過去よりも今や未来を見つめる大変さ(意訳)というセリフはすごくよかった。クマサンは、これで死んでしまったのかな? </p> <p> 俺としては、”Return of the Mammalians”ならぬ、"Revenge of the Mammalians"で<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/DLC">DLC</a>とかで復活してほしいと思います。</p> <p> </p> <p>・コジャケ</p> <p> かわいい。隠しヤカンでは強化必須。</p> <p> </p> <h4 id="オルタナのその先へ">「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A5%EB%A5%BF%A5%CA">オルタナ</a>の、その先へ」</h4> <p> はじめに書いておくと、俺はアクションゲームが苦手だ。もう一つ書くなら、苦手でも「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A5%EB%A5%BF%A5%CA">オルタナ</a>の、その先へ」はクリアできる。</p> <p> これは、攻略法ではない。気合いは道を開く、ということだ。</p> <p> え、それって精神論じゃん、と言われそうだが、そうではない。失敗しても繰り返していれば、体がやがてルートを覚え、アクションの細かい感覚に適合する、という話だ。</p> <p> </p> <p> 俺がリトライした回数(赤<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AF%A5%E9">イクラ</a>を支払った回数)はたぶん二十数回、総トライ時間は4時間くらいだと思う。長い。</p> <p> しかし逆に言えば、とにかく、ヘタクソでもクリアはできるということだ。根気と時間さえあれば。</p> <p> おそらくステージ1が一番難しい。これはギミックの意地悪さもあるが、ジャンプできる幅の感覚や新アクションの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ノボリなどに、まだプレイヤーが慣れていないのも理由だと思う。</p> <p> ステージ1で一番嫌だったのは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ノボリと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ロールを使って三枚の垂直の壁を飛び移っていく場所。</p> <p>      <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kajika0/20220918/20220918140052.jpg" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" width="400" height="225" /></p> <p> コツ。</p> <p> ① <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ノボリのためにBボタンを押しっぱなしにし、体を壁に固定する。Lスティックはいったんはなしておく。</p> <p> ② Bを押しっぱなしのままLを下に入れる。</p> <p> ③ Bを一瞬だけはなす。これで、体が壁を<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ロールで蹴って反対側に行き、向かいの壁にセンプクでつかまれる(はず)。</p> <p> 言葉で書くと長いが、結局慣れのはず。</p> <p> あと、三枚の壁の順番に、右端・左端・右端でロールした方が次の壁をつかみやすい。これは単純に、この位置取りだと壁と壁の距離が縮まるからだが、最初のうちはこういうことにも気づきにくい。</p> <p> </p> <p> いずれにしても大事なことは、時間をかけて続けて入れば、それなりに感覚が合っていくということ。回転したり動いている足場にだって、いつかちゃんと、狙ったところにジャンプして着地できるようになる。</p> <p> それだけじゃなく、飛び石になったインクレールも乗り継げるようになるし、的を壊している途中でインクを回復させたり、連射中にRボタン軽くはじきながら視点を調整するタイミングも体が覚えていく(というか、ステージ2の中盤ではボタンを使って視点を調整しないと、ジャイロで追っていくと上半身がねじ切れることになる)。</p> <p> ステージ1を越せれば全体の半分…というか、ほぼ終わっていると言っていい。ステージ4のタコゾネスの難易度もどうかしているが、こちらは、とにかく待って誘導&各個撃破に徹すれば、いつか必ず終わる。</p> <p> そう、終わるのだ。各ステージの各ギミックで、やるべきこととタイミングを覚えて繰り返していけば、いつか必ずクリアできる。ここが、オンラインマッチングで人間を相手にするのとは違うところだ。</p> <p> トライする前の赤<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AF%A5%E9">イクラ</a>は10,000もあれば十分だと思う。俺の場合、挑戦当初の失敗しまくってたときは「赤<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AF%A5%E9">イクラ</a>、30,000くらい持ってるけど、これでも足りんのでは…」と思っていたが、足りる(隠しヤカンの道中でも手に入るので、ある程度はまかなえる)。</p> <p> </p> <p> ヒーローそうびの強化は可能な限りやっておきたい。強化機能は隠しヤカンのために用意されている説すらある。</p> <p> 要らない装備はほとんどない。なお、それぞれの強化でありがたさを体感したポイントは以下のとおり。</p> <p> </p> <p> ① コジャケ攻撃力アップ</p> <p> 雑魚の処理やギミックの起動(ヘビブロックやボム風船)がものすごく楽になる。特に、ギミックがすぐに起動できると、タイミングを調整する余計な手間が減るので、メンタルに優しい。</p> <p> ② 敵インク影響軽減、ヒーローシューター強化、インクタンク容量アップ、スーツ回復力アップ、センサー追加</p> <p> すべてはタコゾネス戦のために。WAVE1とWAVE2はともかく、これらを強化しないでWAVE3を越せたら人間じゃないと思う。</p> <p> シューター強化は道中の探索でも便利。また、インクタンク容量アップも、ステージ2の的当てで活躍する(ずっとインクを吐き続けるので)。</p> <p> ③ <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A1%BC%A5%EA%A5%F3%A5%B0">カーリング</a>ボム</p> <p> これも、タコゾネス戦のために。理由は後述。</p> <p> </p> <p>・上級者のクリア動画を観よう</p> <p> 申し訳ないが、こんな文章よりもクリア動画の方が10億倍参考になる。動画を見通すと、難易度が0.3倍ぐらいになると思う。</p> <p> アクションゲームの難しさというのは、「次のエリアで何が起こるかわからない」+「現れたトラップで消耗するうちにプレイングが雑になる」、これらが精神に及ぼすデバフのせいなので、クリアできるルートを目で確認しておくと、見違えるほど楽になる。</p> <p> </p> <p> 俺の場合はこちらの動画を参考にした。</p> <p><iframe src="https://www.youtube.com/embed/_zfPaAACvto?feature=oembed" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen="" title="【Splatoon3】ヒーローモード 隠しステージ「オルタナの、その先へ。」攻略・解説【ネタバレ注意】" id="widget2" width="560" height="315" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.youtube.com/watch?v=_zfPaAACvto">www.youtube.com</a></cite></p> <p> 最初にこれを観たときは、「こんな軽業(かるわざ)みたいなことを連続でやらされるのか」と思った。正直、引いた。また、俺にできるわけがないとも思った。</p> <p> でも、大丈夫だ。できるようになる。そして、何度も言うが、ステージ1さえ越してしまえば勝ったようなものなのだ。</p> <p> </p> <p> ステージ4のタコゾネスについて、もう少し書く。</p> <p> WAVE1,2,3で構成され、推測だが、WAVEが進むにつれて敵のAIが向上している(と思う)。また、WAVE2では敵がサブウェポンを、WAVE3では<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DA%A5%B7%A5%E3">スペシャ</a>ルウェポンを使うようになる。</p> <p> クリアしてから冷静に考えてみたが、ガンガンに<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DA%A5%B7%A5%E3">スペシャ</a>ルを切ってくる複数の敵を相手にして、普通の方法で勝てるわけがなく、まともに挑んでも時間の無駄なのだ。</p> <p> 俺の場合、参考動画で紹介されているとおり、WAVE3では高台のラインを拠点にし、センプクして待ちながら、近づいてくるやつを攻撃&リスキルを繰り返し、とにかく数を削った。積極的に索敵に回るのは、残り2~3体になってからでいい。</p> <p> こういう戦い方でさえ、タイミングによってはジェットパックを避けながらホップソナーをジャンプでかわし、マルチミサイルをくぐっていくことになる。センプク&誘導中心で行動することで、こういう地獄が生まれる頻度を少しでも下げて楽をしよう、ということだ。</p> <p> 体力が減ったら、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A1%BC%A5%EA%A5%F3%A5%B0">カーリング</a>ボムで退路を引いて回復をはかる。隠しヤカンに来るまでは「ボムとかいらなくねえ?」と思ってたが、こういう使い道だと思う。</p> <p> </p> <p> 頑張って、みんなで<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%DE%A5%CE%A5%DF">クマノミ</a>ミを手に入れよう。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%DE%A5%CE%A5%DF">クマノミ</a>ミのかわいさは常軌を逸している。</p> <p> そして、あらためて製作陣に感謝を。</p> <p> 本当に面白かったです。お疲れさまでした & ありがとうございます。</p> <p> </p> <p><img alt="画像" draggable="true" src="https://pbs.twimg.com/media/Fcdps59XkAEVYjz?format=jpg&amp;name=900x900" class="css-9pa8cd" /></p> <p> かわいすぎか?</p> <p> </p> <p> </p> <div class="freezed"> <div class="hatena-asin-detail"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B09Y1R9VG4?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="hatena-asin-detail-image-link" target="_blank" rel="noopener"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/61Qg5GwUp1L._SL500_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="スプラトゥーン3 |オンラインコード版" title="スプラトゥーン3 |オンラインコード版" /></a> <div class="hatena-asin-detail-info"> <p class="hatena-asin-detail-title"><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B09Y1R9VG4?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" target="_blank" rel="noopener">スプラトゥーン3 |オンラインコード版</a></p> <ul class="hatena-asin-detail-meta"> <li><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C7%A4%C5%B7%C6%B2">任天堂</a></li> </ul> <a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B09Y1R9VG4?tag=kajika0-22&amp;linkCode=osi&amp;th=1&amp;psc=1" class="asin-detail-buy" target="_blank" rel="noopener">Amazon</a></div> </div> </div> <p> </p> kajika0 沖田修一の会話とのんを観に行く。『さかなのこ』の感想について hatenablog://entry/4207112889916050813 2022-09-09T01:02:39+09:00 2022-09-09T01:20:45+09:00 ※ この記事に性差別の意図はありませんが、以下の文章がそう読めてしまったら私のジェンダーロールに関する想像力や知識の不足です。すみません。 はじめに 沖田修一監督作品という点は大事なのでタイトルに入れた。沖田修一なら内容やテーマに関わらず行こう、という人がいるからだ。俺のことだ。 いい映画だが 沖田修一のファンとしても、そうでなくても、文句なくいい映画。『南極料理人』が好きな人は行ったらいいし、のんと柳楽優弥が好きでも行ったらいい。井川遥もよかった。 沖田修一の作品はどれも、スローなコント作品のように会話が面白い。今回も、観ていてほぼずっと笑っていた。 中でも、学生時代ののん(役名はミー坊)が… <p>※ この記事に性差別の意図はありませんが、以下の文章がそう読めてしまったら私の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A5%A7%A5%F3%A5%C0%A1%BC">ジェンダー</a>ロールに関する想像力や知識の不足です。すみません。</p> <p> </p> <h4 id="はじめに">はじめに</h4> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%AD%C5%C4%BD%A4%B0%EC">沖田修一</a>監督作品という点は大事なのでタイトルに入れた。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%AD%C5%C4%BD%A4%B0%EC">沖田修一</a>なら内容やテーマに関わらず行こう、という人がいるからだ。俺のことだ。</p> <h4 id="いい映画だが">いい映画だが</h4> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%AD%C5%C4%BD%A4%B0%EC">沖田修一</a>のファンとしても、そうでなくても、文句なくいい映画。『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%EE%B6%CB%CE%C1%CD%FD%BF%CD">南極料理人</a>』が好きな人は行ったらいいし、のんと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%F8%B3%DA%CD%A5%CC%EF">柳楽優弥</a>が好きでも行ったらいい。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%E6%C0%EE%CD%DA">井川遥</a>もよかった。</p> <p> </p> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%AD%C5%C4%BD%A4%B0%EC">沖田修一</a>の作品はどれも、スローなコント作品のように会話が面白い。今回も、観ていてほぼずっと笑っていた。</p> <p> 中でも、学生時代ののん(役名はミー坊)がどれだけ変人か伝えるために不良の一人が放った、「机の中に乾かした魚をしまっている」というセリフが一番好き。そこなのかよ、でも確かにヤベえか、という。</p> <p> </p> <p> 一方で、気になった点。同じ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%AD%C5%C4%BD%A4%B0%EC">沖田修一</a>監督作品である『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%EE%B6%CB%CE%C1%CD%FD%BF%CD">南極料理人</a>』や『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AD%A5%C4%A5%C4%A5%AD%A4%C8%B1%AB">キツツキと雨</a>』と比べると、物語の中心がのんに集まりすぎている、とは思った。</p> <p> 好きなことを続けているうちにおかしなところにハマってしまった、という点では『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%EE%B6%CB%CE%C1%CD%FD%BF%CD">南極料理人</a>』、『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AD%A5%C4%A5%C4%A5%AD%A4%C8%B1%AB">キツツキと雨</a>』に似ているが、この二作が群像劇であるのに対し、『さかなのこ』の焦点はほぼ、のんにずっと当たっている。</p> <p> もちろん、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>という描くべき明確なモデルがあるのだ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>ょうがないとも言えるんだけど。とにかく、ひたすらのんを観に行くための映画だと思う(<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C7%BD%C7%AF%CE%E8%C6%E0">能年玲奈</a>と書いてもいいのだろうか)。</p> <p> </p> <p> 作品からのメッセージがあるとすると、「何かを好きであることを大事にしよう」ということだと思う。</p> <p> これはものすごく真っ当なメッセージなのだが、「なかなか、そうもいかないよな」ということを大人はわかっているわけで、そういう疑問やツラさも丁寧にフォローするのが『さかなのこ』のいいところだと思う。</p> <p> </p> <p> 何かのことが好き。すごく好き。</p> <p> もしも、俺たちがそれ一本で生きていこうと思ったら、こうした感情さえも何らかの方法で現金に変えなければ生活できない。物語ののんも同じく、「とにかく魚が好き」だけでは生活できず、それをお金に変えようとして、うまくいかなくて、苦労する。</p> <p> それを支えたり次の展開につなげたりするのは周囲の人間だ。親や昔の友人たち。</p> <p> </p> <p> 『さかなのこ』は、のんを友人たちが助ける理由を、彼らが親切だからとか、のんがラッキーだからとか、そういう理由で説明しない。それがいいところだと思う。</p> <p> 友人たちがのんを助けるのは、のんがただ魚を好きなことによって、結局、彼らの方が勇気づけられたからだ。だから、のんがこれからも魚を好きでいられるように、彼らはのんを助けるのだ。</p> <p> 友人たちの多くは、確実に、のんほど好きなものを持っていない。自分の「好き」の大きさがどの程度か、それを知ってしまうのも成長するつらさの一つと言えるだろう。</p> <p> のんの友人たちはとびきり好きなものを持たない代わりに、目的を果たすために、最適な方法を知っている。実際のところ、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%F8%B3%DA%CD%A5%CC%EF">柳楽優弥</a>も<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%C6%C8%C1">夏帆</a>も、あまり器用なタイプには見えないが、のんよりは生きていくための処世を知っている。</p> <p> 心の底から大好きなものを持たない彼女たちは、のんに「好き」を現金化するための仕事を与える。繰り返すが、それは単なる親切ではない。</p> <p> </p> <p> これは深読みかもしれないが、彼らはのんの生き方を見て、叱咤(しった)された気がしたのだと思う。</p> <p> つまり、生きていくための合理的・効率的な方法をまったく知らないのんが全力で世の中を渡っていこうとしているのと比べて、より生きやすいコツを知っているはずの自分は足踏みしている、そこに自分の本気は本当にあるのか、という気がしたのではないだろうか。だから、彼女たちはのんに恩を返すのだと思う。のんに欠けている発想や手段を手助けするかたちで。</p> <p> </p> <p> このように、のんは自分の「好き」を貫き、それによって周囲をも助ける。一方で、それが純度の完璧なきれいごとでないのは、のんの両親がおそらく、劇中で離婚してしまっていることに表れている。</p> <p> 離婚の原因がすべて、のんへの向き合い方の違いにあったとは限らないし、離婚=不幸でもないが、両親の違いが何よりも鮮明になったのは育児のあり方だったので、大きく関係はしているのだと思う。</p> <p> この点をどう評価するべきかはわからない。エンディングまで観ると、離婚があったことまで含めて、のんの「好き」でカバーしてしまっているし…。</p> <p> </p> <p> ところで、まったく話は変わるが、『さかなのこ』は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>の半生を再現したものではなさそうだ。映画に出てくる「ギョギョおじさん」(主人公の町に住んでいる魚付きの不審者で、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>自身が演じている)とかも、たぶん、映画オリジナルの存在なんだろうと思う。</p> <p> </p> <h4 id="のん過ぎる">のん過ぎる</h4> <p> 問題(?)はここからだ。ちなみに、映画のド頭に出てくる「男か女かはどっちでもいい」というメッセージに反した感想なので、この映画でそう考えるひねくれ者もいるんだな、と思ってくれればいい。</p> <p> </p> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>は男性だ。のんは女性である。</p> <p> 仮に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>を演じる俳優を女性に限定するなら、のんで正解だな、と俺は思った。他にも「正解」はいるかもしれないが、その一人がのんなのは間違いないと思う。</p> <p> ただ、そう感じた理由が、のんという俳優の男性性(男っぽい雰囲気、ぐらいの意味)にあるのか、性別関係なく、かすかに狂気を帯びたあの目にあるのか、俺にもよくわからない。</p> <p> のんの学ラン姿はコスプレっぽかったが、バイトの一つで寿司屋でうつむいて作業をしているときの雰囲気は、一瞬男性に見えた。これまで、他の女優の演技を観ていて、そういう印象を抱いたことがない。</p> <p> では、そういう男っぽさで、のんが<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>なのか。</p> <p> 一方で、魚にエサをやったり壁に絵を描いたりしているときの、のんの目の怖さも気になる。これは危険なぐらいの集中力が放つ怖さであり、性別とは関係ない。</p> <p> それでのんが<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>なのか。それとも、両方か。俺も観ていてわからない。</p> <p> </p> <p> 話は、もう少し入り組んでいる。そもそも、別に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>を演じる俳優を女性に限定しなくてもいいのだ。男性含めて検討したらどうなるだろうか。</p> <p> 俺はそれでも、のんが「正解」だと思う。</p> <p> ただ、その理由はのんが女性だからこそ、なのだ。どういうことかというと、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>という人物の異質さを描くときに、実物に近い印象を観客に与えられるのは、男性が異質さを演じた場合ではなく、女性が演じた場合だと思ったからだ。</p> <p> 例えば、二枚目の男性が異質さを演じたとき、現代ではどこまでいっても、それは単に、愛すべき長所になってしまうと思うのだ。そういう世の中になってしまっていると思う。</p> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>の異質さに、別の人物がもっとも近づけるとすれば、女性、それも、のんのような強烈な美人がなぜかわけのわからない言動をしているという、そこだと思う。だから、のんで正解なのだ。</p> <p> これを「美人なのに残念」とか「もったいない」という言葉で表すのはあまりに薄っぺらい。まあ、残念という感想自体が実際に薄っぺらいのだろう。</p> <p> </p> <p> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%BF%B0%C2%BB%FE%C2%E5">平安時代</a>の物語に『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%EE%A4%E1%A4%C5%A4%EB%C9%B1%B7%AF">虫めづる姫君</a>』というのがあって、大昔からずっと、「女のくせに、しかも美人なのに◯◯が好き」は異質な印象を人々に与えてきた。</p> <p> その「残念さ」ゆえに愛嬌がある、というメッセージも読み取れるのが『<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%EE%A4%E1%A4%C5%A4%EB%C9%B1%B7%AF">虫めづる姫君</a>』の油断ならないところだが、それだって、大きなお世話ではある。別に、女性が虫が好きだろうが魚が好きだろうが、その変なところに愛嬌が存在しようが、ほっといてくれって感じだろう。</p> <p> 話を戻すと、ただ、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>の異質さはのんという美人の異質さによって、もっともうまく置き換えられているのでは、というのが俺の立てた仮説だ。</p> <p> つまり、製作側としては性別は関係なく人柄でのんをキャスティングしており、実際にのんの演技はハマってるんだけど、それは人柄の影響ではなく、のんという美人がキテレツなことをしているからこそ、実物の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%AB%A4%CA%A5%AF%A5%F3">さかなクン</a>の印象に近づいたのでは、と思う。</p> <p> そう思うが、それが正しいのか俺も自分でよくわからない。別に、男性の俳優だってよかったのかもしれないし、のんの芝居がハマっているのだって、のんが男っぽいからかもしれないし、のんの目がガチだからかもしれない。わからんな~と思いながら俺は観ていた。</p> <p> </p> <p> なんにせよ、面白いのでお勧めします。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%AD%C5%C4%BD%A4%B0%EC">沖田修一</a>の映画は悪人がまったく出てこないのすごいよな。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsakananoko.jp%2F" title="映画『さかなのこ』公式サイト" class="embed-card embed-webcard" scrolling="no" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy" frameborder="0"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sakananoko.jp/">sakananoko.jp</a></cite></p> kajika0