2021-01-01から1年間の記事一覧

ブログのタイトルを変えたことについて

ずいぶん長く続けたもので、2015年から6年以上このブログをやっている。舞城王太郎の『淵の王』に揺さぶられて、受けた衝撃を自分自身のために言葉にしないと、という思いとともに、この凄さを人にも伝えたいと考えたのがきっかけだった。 タイトルは新約聖…

『怪談四十九夜 地獄蝶』の感想について

はじめに 評価は次のように行います。 まず、総評。S~Dまでの5段階です。 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース。 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。 B…購入してもよい。もしくはkindle unli…

『鏡の背面』の感想について

あらすじ DVや薬物依存など、様々な問題を抱えた女性たちが共同生活を営む山中の施設で、ある夜、落雷による火災が発生する。居住者たちは命からがら建物の外に逃げ出すが、入居者の一人が連れた乳幼児を救出するため、施設の精神的支柱であった「先生」と呼…

浜辺について

浜辺を歩いている。 何時間か前に頂点を過ぎた太陽が天をゆったりとくだっていて、輝く真円となって海上に明かりを走らせている。 コートなしではいられないほど大気は冷えているが、多くの人が陽光に誘われて砂浜を訪れていた。小さい子供連れ、犬を散歩さ…

境界に立つことについて

海べりの街で暮らしている。 ランニングをやるときのコースは決まっていて、家を出てからまっすぐ南に、海岸に向かって進んでいく。 10分弱ほど走っていると海に着く。コンクリート舗装された道を降りて浜に立ち、波打ち際に沿って走っていくと、やがて一つ…

『エターナルズ』の感想ではないものについて

はじめに ネタバレします。注意。 めちゃよかったぜ。 面白かった。 『アベンジャーズ』も含めて、MCUの作品をいくつか観ているが、たぶん一番面白かった。 正直、2時間30分を超える視聴はかなりの体力勝負だったが、(良い意味で)混沌と織り込まれた無数の…

2021年のブックマークについて ⑤

anond.hatelabo.jp 本題とはあまり関係がないが、フェミニズムでもエネルギー問題でも政治でも、議論が過熱しすぎていて(という認識自体、なじられるべき無関心なのかもしれないが)、論争の戦場に残っているのは体の縦横に向かい傷が無数に走った喧嘩上等…

2021年のブックマークについて ④

bunshun.jp 1900年(明治33年)、八丈島の豪商だった玉置半右衛門が組織した八丈島民23人の開拓団が60日あまりの難航海の末に南大東島の西側海岸に上陸し、断崖をしがみついて登り島内に侵入。淡水の池を発見し、翌々年から黒砂糖の製造を開始した。 『カイ…

浜辺を歩くことについて

3.11のとき、たまたま海外にいた。 宿泊先のホテルで、日本に何やらすさまじい災害が起きたことを知った。テレビをつけると、津波が濁った巨大な水塊となって、市街を押し流していく映像が流れていた。 これを書くとたぶん怒られるだろうということを書く。 …

2021年のブックマークについて ③

anond.hatelabo.jp 奇しくも(?)、イーロン・マスクの個人資産がハンパじゃねえ額面になってるぞ、というニュースと、ユヴァル・ノア・ハラリの「貨幣はフィクションだぞ。信じてる方が便利だからみんなそうしてるだけだぞ」という言説に触れたタイミング…

2021年のブックマークについて ②

www3.nhk.or.jp 自分がいつ死ぬか(「殺す」という行為を意図的に他の生命を停止させることだと定義すれば、実質的には、日本国の認識する正義によって殺されるか)、執行の当日に知るのと事前に知らされるのと、どちらがよいのだろうか。 本人たちが事前に…

2021年のブックマークについて ①

mainichi.jp 有料記事につき全文読めないが、14万人もtwitterのフォロワーがいたらしい。 単純にすごいと思う。 youtubeをやっていたようだが、著作があったりとか、某アカウントのように法人がバックにいるのでは、という背景があったりするわけでもないよ…

目を回すことについて

選挙に行ってきた。 この政党とその候補者だけには当選してほしくないという、積極的な否定の感情を持っているところがある。 一方で、比較的よい印象を抱いている党に対しても、投票期日が迫り情報が集まってくる中で「おや?」と感じる部分が出てきて(ネ…

わからないキリがないことについて

猫という生き物は毛柄によって鼻先が白かったり足の先が白かったりする。 白靴下ちゃんとかいう。 かわいい。 このような毛並みが生まれる理由について、あるとき次のような記事を読んだ。 nekochan.jp なんでも猫の色というのは、上から付いていくしくみに…

クモについて

出先の電車の中で、ふと気付いたら詰めの先ほどの大きさのクモが服の袖口をちょろちょろしていた。 えーっ、と思う。 車内で振り落としても乗客の誰かに踏まれてしまうだろうし、仮にそこで暮らしていくにしても、特別快適な空間ではないだろう。 とにもかく…

わかめラーメンを食べたことについて

久しぶりにわかめラーメンを食った。インスタントのやつ。 なぜかというと、買ったのではなく実家から送られてきたからだ。 嫌いなわけではなく、むしろ好きな商品なのだ。 ただ、30代になるとインスタント麺の消費量がどうしても衰えてしまう。限られた機会…

『異界怪談 闇憑』の感想について

はじめに 評価は次のように行います。 まず、総評。S~Dまでの5段階です。 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース。 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。 B…購入してもよい。もしくはkindle unli…

2021年10月3日について

バナナマンのラジオ番組である、『バナナマンのバナナムーンGOLD』を聴いていたときのこと。 番組中で『部屋とYシャツと私』が紹介されていて、(MCの設楽も言っていたが)はじめて、ちゃんと歌詞を耳にする機会になった。 愛するあなたのため 毎日磨いてい…

『ガードレール』を発掘して、はてなインターネット文学賞「作品発掘部門」をいただいたことについて +α

はじめに。ーお礼ー はてなブックマーク主催による、インターネット上の文章を「作品発掘」として人目に付きやすくする・推薦する、というイベントがあり、『ガードレール』という第三者の作品を応募したところ、賞をいただきました。ありがとうございます。…

『宵口怪談 残夜』の感想について

はじめに 評価は次のように行います。 まず、総評。S~Dまでの5段階です。 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース。 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。 B…購入してもよい。もしくはkindle unli…

2021年9月26日について

午前、歩いて15分ぐらいの距離の浜まで散歩に行く。 天気はかすかに曇天。まだ海に入れる気温ということもあって、人出は割りと多い。 しばらく海を見ていたが、立ったままでいるのが疲れてきたので腰を下ろし、その後肘を枕にして横になった。日光で温めら…

twitterについて

今週のお題「眠れないときにすること」 twitterについて考えることが最近多くて、どうも人間として上手に利用できていないと言うか、要するに毒だな、と思う。 世の中、面白いものや刺激的なものを発信する人々で満ち溢れていて、それをあれもこれも、とフォ…

『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』の感想について ③

「デス・ゾーン」はどこから始まっていたのか? 「登山家」栗城史多氏の半生と死を追ったノンフィクション。 ①では登山界における異物としての栗城氏について、②では彼についてときどき語られる、SNSが及ぼした多大な影響という言説について反証した。 最後…

『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』の感想について ②

ソーシャル・ネットワークは栗城史多氏に何を及ぼしたか 「登山家」栗城史多氏の半生と死を追ったノンフィクション。 前回、登山という世界における異物としての栗城氏の存在に想像をたくましくしてみたが、その続き。 栗城氏とその死については、SNSの功罪…

『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』の感想について ①

はじめに かなり気持ちを揺さぶられた。 「登山家」であり、2018年にエベレストで滑落して亡くなった栗城史多氏についてのノンフィクションだ。なお、登山家にカッコがついているのは、本人の技量や手法が問題視されたことによる。 読み終えて、三つの感想を…

サスペンスのある部分を決着させたかもしれない、『OLD』の感想について

ランキング参加中はてなブログ映画部 面白かった。 上映時間120分未満。けっして長い映画ではないのだが、物語的なイベントが立て続けに起きるためにものすごく濃密だった。満足。 ただ、科学的な正確さや細かいツジツマを気にする人は相性悪いかもしれない…

ヤクザと呪術師について ①

www.yomiuri.co.jp ある人が呪術師を名乗る者から「いま、お前に呪いをかけた」と言われた。 その人は非科学的なことには興味がなかったが、そんなことを言われて、なんとなく嫌な気持ちになった。 一年後、その人は重い病気を患った。 はたして、呪いは本物…

中の人がんばれ、と思ってしまうことについて

www.moomin.co.jp 企業が何かやらかしたり、一つのプロジェクトがご破算になったときに、倫理や善悪とは別の回路で「おおう…」と嘆息してしまうことがあって、つまりは、事業に携わっている「中の人」への同情なのだった。 今回の場合でいえば、提携を解消さ…

生き物と人間について

早めに夕飯を食べたら、20時過ぎたばかりのおかしな時間に睡魔に襲われてしまい、しばらく横になっていた。 まどろみの中で出どころのよくわからない音をずっと聴いていた。何かが硬いものにぶつかるような、かつ、かつという音だ(怪談ではない。念のため)…

じいさんの墓を潰すかどうかで考えたことについて(後編)

sanjou.hatenablog.jp ちなみに、前出のサイトでは故人にバーチャルの花を手向けたり線香をあげたりすることもできる。 なんだかなあ、いちいちデジタルで安っぽいんだよなあ、と「死んだら自我は消滅」派にもかかわらずウェットな感想をもちつつ呆れてしま…