漫画

『血界戦線 Back 2 Back』災蠱競売篇は、なぜつまらないのかについて 2/2

ここまでの話 sanjou.hatenablog.jp 長すぎる。 ② 登場人物たちが「いま何をしたいのか」、最後までわからない(続き) 災蠱競売篇は、人命を犠牲することで強力な兵士を製造できる道具であるカロプス人蠱をめぐって攻防が起きる。 攻め側であるライブラやグ…

『血界戦線 Back 2 Back』災蠱競売篇は、なぜつまらないのかについて 1/2

はじめに 色々と、長々と書くので、最初に要点だけ書いておく。 ① 話が長すぎる ② 登場人物たちが「いま何をしたいのか」、最後までわからない ③ 血界の眷属(ブラッドブリード)と各キャラクターの力関係がよくわからない はっきり言うが、こういう理由でつ…

経済、思想、信仰。最後に言葉。『チ。―地球の運動について―』8巻(最終巻)の感想について

はじめに 超話題作、8巻で完結。 あらすじと結末について細かくは触れないが、59~62話(最終話)までの俺なりの解釈と、「あの言葉」について考えたことを書いておく。 59~62話(最終話) 色々と勘違いしている可能性もあるが(だったら恥ずかしいな)、58…

黒岩案件。『裏バイト:逃亡禁止』第93話の感想について

はじめに ※ 特定の職業を差別するつもりはないですが、ご覧になって蔑まれていると感じた方がいたらお詫びします。 感想 好きな漫画でも、あんまり一話ごとの感想は書かないのだが、ちょっとすごいので書いておく。 掲載先であるプラットフォームの裏サンデ…

『ゴールデンカムイ』30巻の感想について

30巻。次が最終巻とのことで。 ここまで、めちゃくちゃ重厚な物語を読ませてもらってきた。2014年連載開始だから、ものすごく長期連載ってわけじゃないんだよな。 でも、作者はもちろん、登場人物の一人一人にお疲れ様と言いたくなるこの感覚。 堪能した。見…

『ここは今から倫理です』7巻をふまえて、正しく生きることについて 2/2

ここまでの話 生活していると、いくつかの「正しさ」が自分の中でぶっつかることがある。 sanjou.hatenablog.jp 続き。 それぞれ基準の違う「正しさ」が自分の中で喧嘩したとき、どれが優先されるべきか。 哲学者のカントは、「殺人鬼から追われている友人を…

『ここは今から倫理です』7巻をふまえて、正しく生きることについて 1/2

はじめに 正しく生きることと、哲学と倫理の違いについて重要な巻だと思ったので書いておく。 内容としては、生徒個人に関するエピソードが三つと、今の学年の総括となる「なぜ人を殺してはいけないのか」のディスカッション、最後に高柳が学生だった頃の思…

それでも「彼女たち」の物語。『裏バイト:逃亡禁止』7巻の感想について 2/2

sanjou.hatenablog.jp 続き。 7巻で登場した強大な怪異によって世界がやり直されてしまったため、主人公である白浜和美(ハマちゃん)と黒嶺ユメ(ユメちゃん)の二人は一度消滅し、再生された。 7巻の最後に登場する二人はつくり直された二人ということにな…

それでも「彼女たち」の物語。『裏バイト:逃亡禁止』7巻の感想について 1/2

はじめに ネタバレありです。 高校生の頃に『GANTZ』で 「あれってミッションで死亡しなかったら致命傷でも復帰するだろ。 でも、ケガが回復するわけじゃなくて、ケガを負う前の自分が呼び出されて置き換わるだけで、ダメージ負った方は消されるわけじゃん。…

ヒーローの空虚と仮面がようやく裏返る。『劇光仮面』1巻の感想について 3/3

sanjou.hatenablog.jp sanjou.hatenablog.jp 続き。 そういうわけで、ようやく、強さとか衝動とか使命ではなく、もちろん善でも悪でもなく、「空虚さ」というヒーローの本質に焦点を合わせた作品が登場した。 『劇光仮面』、仮面の内側をさらけ出し、マスク…

ヒーローの空虚と仮面がようやく裏返る。『劇光仮面』1巻の感想について 2/3

sanjou.hatenablog.jp 続き。 前回は、ヒーローと呼ばれる存在の分類として、「継承」と「逆上」の二種類(もしくはその両方)があると書いた。 ここには道徳的な善悪は関係ない。銃撃事件の犯人もカルト宗教の教祖も、見る人によってはヒーローだ。 そして…

ヒーローの空虚と仮面がようやく裏返る。『劇光仮面』1巻の感想について 1/3

注 暴力や差別を肯定するつもりはなく、「良さ」ってあやふやだよな、という話。 ヒーローって 『劇光仮面』、ヒーローがテーマの作品なので、ヒーローという存在について最近考えることから書いておく。 ヒーローというのは基本的に善の存在で、この世界に…

物語はこのループから抜ける(べきな)のか? 『アオアシ』28巻の感想について 2/2

sanjou.hatenablog.jp 続き。 では、作品はこのループから抜け出るべきだろうか? どうだろう。別にそのままでもいいような気もする。 ストーリーが続けば、いつかアシトはプロになり、日本代表になって、やがて海外リーグに挑戦するのだろう。 そのたびに、…

物語はこのループから抜ける(べきな)のか? 『アオアシ』28巻の感想について 1/2

28巻まで進んだ『アオアシ』という漫画が、ストーリーとしてもフィクションのフォーマットとしてもあまりによくできているので、少し意地悪く見てみた、という文章です。 青森星蘭との激闘を終えた主人公・アシトに、所属しているユースの上位組織であるプロ…

不穏でいいんじゃないでしょうか。『ブルーピリオド』12巻の感想について

ネタバレありです。 冒頭で八虎の予備校時代の級友である桑名さんがカムバック。藝大に合格&以前の油絵ではなく彫刻科としての入学とのこと。 専攻変えて藝大通っちゃうのかよ。すげえ。 桑名さん、好きなんだよな。「配られたカードで勝負するしかない」と…

「その日」は来た。剣と爆発はどうなるか? 『ヴィンランド・サガ』26巻の感想について

十年以上大好きで読んでいる漫画。一つの決着と新しい緊張を含む重要な巻だと思うので感想を書いておく。 奴隷と争いのない理想の地を求めた航路の末、主人公トルフィンたちは、ついに目的地であるヴィンランドに到達する(作中では現在のカナダ、プリンス・…

腐ってるやつら、ライブで踊っててもどこか冷めてるやつら、『エバタのロック』を読もうぜということについて

はじめに 学生の頃からものを腐らさせることが得意だった。 惣菜とか弁当とか野菜とか、どこかに暗くて狭いところにしまい込んで忘れてしまう。 腐らせるのがものだけかと思ったら、自分のことも腐らせてしまった。 ものは動くための手足がないからなすすべ…

『呪術廻戦』をジャンプのHUNTER×HUNTER・BLEACH枠と呼んだ私が全裸で土下座してから腹を切ることについて

大変失礼いたしました、と謝罪から入るんですが。 1巻のときまで、表題のようなことを不遜にも考えていた。で、2巻を読んだ。 枠とか代わりとかそういう次元じゃない傑作であると、このときになってようやくわかった。まことに申し訳ありませんでした。 いや…

The bizarre is still here. 『岸辺露伴は動かない』2巻の感想について

はじめに 1年弱前のことなんですが、わたくし信者の方に刺される覚悟でジョジョシリーズの最新作『ジョジョリオン』をクソミソにけなす記事を書きまして。 要は戦闘が全然面白くないのも含めて読者が置いてきぼりになってないか、って内容だったんですけども…

『ゴールデンゴールド』4巻の感想と、「物語」の臨界を探ることについて

はじめに 『ゴールデンゴールド 』という異次元のように面白い漫画があって、3巻が出たときにこういう記事を書いた。 で、これを書いたとき、この3巻で作品としてのタメの時期は終わりかな、と思っていた。ここまでに十分に伏線が蓄積された感があったので、…

欲望、決壊前夜。『ゴールデンゴールド』3巻までの感想について

はじめに 「登場人物が全員全力で頑張ってるモノ」というジャンルがある。それは俺の中で。 意味はそのままで、出てくるキャラクターが敵も味方も、強いやつも弱いやつも、全員現況の打開のために知恵を絞って全力で頑張っていて、その苦闘が伝わってくる作…

Go レイリ Go! 『レイリ』4巻の感想について

はじめに 豚カツが好きで、カレーも言わずもがな好きで、果たしてこの二つを一緒に食ったらどれだけ美味くなるのかしらん、なってしまうのかしらん、と思ってカツカレーを頼んで食うと意外とそうでもない。 せいぜいが、まあカレーとカツ一緒に食ったらそれ…

『ジョジョリオン』の悪口を言うコーナーについて

ジャンルに限らず、とかく世間で名作とされているものの悪口を言うのはなかなか勇気のいることで、作品によっては信仰の域にまで高まった愛情を捧げる熱狂的なファンもいるくらいであるから、これはもう下手をすれば身に危険が及ぶ可能性さえあると言っても…

幸運を超えて従えて。『BLUE GIANT SUPREME』2巻の感想について

はじめに 『ライフ・イズ・ビューティフル』の前半部分が好きで、なんでかというと人と幸運というものとの交錯が、好もしく描かれているからだと思う。 観た方ならわかるとおり、この映画では主人公の恋に様々な偶然やラッキーが味方する。重要なのは、彼が…

アレクサンドロス、この圧倒的捕食者。『ヒストリエ』10巻の感想について

※以下、作品の内容について激しくネタバレしています。注意。 はじめに 表紙をめくって現れた絵を見て、思わずそのまま見入ってしまった。 顔と体に敵兵の血を浴びたアレクサンドロス。その表情が、もうなんか凄い。こいつとはもう話が通じないというか、こ…

『BLUE GIANT』10巻の感想と、破壊されるために生まれてくる者たちについて

※以下、作品の内容について激しくネタバレしています。注意。 追記:これはマンガの無印『BLUE GIANT』10巻の感想になります。 映画版『BLUE GIANT』の感想はこちら。 はじめに いきなり『BLUE GIANT』と関係ない話から入って恐縮なんですが、以前、鬼頭莫宏…

あの道の続きに。『伊豆漫玉日記』の感想

■目次 はじめに~桜玉吉と出会う今から11年前の話~ 『伊豆漫玉日記』の感想 おわりに~桜玉吉と出会ってから11年後の話~ はじめに~桜玉吉と出会う今から11年前の話~ 俺は現役での大学受験に失敗した。1年間の浪人生活を送ることになった。 家と予備校を…

『双亡亭壊すべし』3巻の感想について(?)

■目次 (太ももの)はじめに まとめ(太ももの) はじめに~3巻のあらすじ…?~ お化け屋敷破壊漫画『双亡亭壊すべし』第3巻。 建物に潜入した霊能力者に絵描き、役人の破壊者チームも館の魔の手によって順調に(?)無力化されていく。しかし、悪化し続ける…

死線に挑む、『LIMBO THE KING』の感想について

はじめに~俺が思う田中相について~ 田中相さんは「越境」を描く漫画家さんだと思っている。勝手に。 自分と他人。 人間と動物。 人と神。 自分の知らないどこか、自分とは違う何者かに向かって一歩踏み出すことを描く作家さんだと思う。 新作、『LIMBO THE…

貴重な「野蛮」漫画、『トリコ』43巻の感想と完結に寄せることについて

はじめに 少年ジャンプでやっていた『トリコ』が、先日最終巻となる43巻を発売し完結を迎えた。まあ週刊連載では数ヶ月前に終わっていたけど、単行本派なので、「あ、終わった」という気持ちを抱いたのは本屋で43巻の表紙を見たときだった。 『トリコ』には…