もう織部と家康以外の武将の話はしないって約束したじゃないですか。したじゃないですか。してませんでしたっけ?
してない。
してないが、ともかく俺が『へうげもの』であまりピンときていない部分である多くのキャラクターの取り扱いが中心の巻になった。
なったが、数寄の頂点たる織部と、権力の頂点にして究極の無粋である家康という対決に向けて、色々と整理され収束していった巻でもあった。
大巨人・豊臣秀頼は徳川治世以降で登場したキャラクターの中では俺がぶっちぎりで好きな人物で、初登場の場面では変な笑いが出て止まらなかったし、その後もその体のみならず規格外の器の大きさを示して家康さえちょっとビビらすなど素晴らしく素敵だったが、今巻で退場。退場? あれ、巻きに入ってるはずなのに伏線が増えてるような…?
そして織部。家康暗殺を企てた息子をかばって、自ら最後の舞台へと近づいていく。息子の件がなくても家康は理屈をつけて腹を切らせようとするだろうけど、とにかくこれで織部は退路がなくなったわけで、おそらく死の足音をこころのどこか聞き始めている気持ちなのだと思う。
その他、いくつかのサイドストーリーがまとめられた。真田幸村、そして稀代のじゃじゃ馬の最期など。思えば幸村は若かりし織部が城に潜入するミッションのときにも接点があった、なかなか古い付き合いだった。今巻の真田の忍術には腹抱えて笑わさせてもらいました。
巻末の煽りを見ると次巻大団円とあるから、次が最終巻となるのだろうか?
前巻(23巻)の感想で「俺はいまの織部より昔の織部の方が好きだった」と書いたけど、ここにいたって軽薄にもそれは考え直す次第で、自分の死を予感しながらあくまでへらへらしつつ老獪な織部は、老いたいまの織部なりの魅力を持ちつつも、昔日からの続きを生きてきた織部だった。俺の中で、ようやく、茶杓をネコババしたり樹上の茶室から湯釜と一緒に崩落したりしていたおっさんと、いまのジイさんがつながった。そして、「ああ。こいつ死ぬんだな。こいつ自身もそのことがわかってるんだな」と思った。
待つ、次巻。