はじめに
100点。
まあ、どこを採点の基準に据えるか、観に行った動機は何か、というのももちろん関係あると思う。
だから言いなおす。「ほーん、『亜人』実写化すんのか。綾野剛が肉体改造して佐藤役で、『るろ剣』で評判良かった佐藤健が永井圭でドンパチか。じゃあいっちょ冷やかしてくるか」、が理由の人、その人なら100点。絶対満足します。
あらすじ
何やっても死なない。
登場人物紹介
・綾野剛 as 佐藤
何やっても死なない亜人の一人で本作のボスキャラ。この映画に100点をあげざるを得なくなった、今作最大の立役者。
以前から綾野剛についてはスピードワゴンの小沢が俳優をやるときの芸名が綾野剛と言ってはばからなかった私ですが、この映画で確信したので白状する。
俺はあなたのファンです。
自動小銃、アーミーナイフを武器に多人数相手に大立ち回り。撃って、走って、ぶった切って、また撃つ(ときどき自分自身も。なぜかというと、亜人にとっては死亡≒ベホマだから)。
この映画では戦闘シーンでアッパーな電子音楽がかかるんですが、その曲がガンガンかかってるなかでドンパチやって無双するその存在感はもう本来の主人公を食いかけてるというか、元々原作からして「敵」ではなくあくまで別の勢力という描き方をされている役どころだと思いますが、まさにこの実写版でももう一人の主人公と言ってよいと思います。
中盤で破れた服から鍛え上げられた二の腕がのぞく場面があって、すげー、と思ってたら、さらにすごい、上半身マッパで登場するシーンが後半に用意されていた。というか若干ケツも出ていた。
細マッチョよりいくらか厚めに盛った、欲張り筋肉。隣で観ていた女性が息を呑んでいた。こういうのが好きな女性と男性の方はこれだけでも観に行った方がよいと思います。
原作キャラクターのイメージどおり、かというと個人的にはそうでもなく、ちょっと若すぎる気もするし声が低すぎる気もするし、漫画版ではただの戦闘狂の遊び人なのが、映画では亜人として普通の人間に復讐するみたいな動機もあるのかな? とわからない部分もあったけど、とにかく綾野剛、最高にハマっていました。素晴らしい。
ちなみに、今作のエンドロールにはライザップのロゴがクレジットされてました。あの肉体は結果にコミットした結果だったのでしょうか?
・佐藤健 as 永井圭
何やっても死なない亜人で本作の主人公。原作とは違い、成人男性として設定されていますが、ムキムキの綾野剛と正面からの肉弾バトルが続くので、この翻案は成功でしょう。
年齢以外にも、亜人だと判明するまでの過程がごっそり省略されていきなり人体実験されてたり、原作の友人である海斗にいたっては存在さえしなかったりと色々相違点がありますし、ただの研修医のはずがいつの間にか頭がキレて格闘もできるステゴロ軍師になったりしてますが、そんなのカンケーねー、本作の綾野剛とがっぷり四つで組めてそれが観ていて面白ければ、この永井圭もこのストーリーも、全然ありです。
上では綾野剛に存在感で食われかけてると書きましたが、完全に食われなかったのはこれがむしろすごくて、まあ本当にスタントなしでこれやったんですか、というアクションを負けじと連発する(手すりの上走るやつとかすごかった)。
ちなみに彼も作品の最終盤で、「綾野さん、あんただけにケツを見せさせたりしませんよ!」と言わんばかりに半ケツを披露しているので、やっぱりそういうのが好きな女性と男性は行った方がいいと思いますよ。
・城田優 as 田中功次
俺は実は城田優のお芝居をちゃんと観たことがありませんでした。ただ、ここまで男前でガタイもよいと、かえって役者として何かの役にハマるのは難しいのではないか、などと大変失礼なことを勝手に思っていました。
結論から言うと、今作の田中役は非常によかったと思います。綾野剛の右腕として高い作戦遂行能力を持ちながら、どこか芯がぶれている(これは原作どおり)。しかし、完全無欠でなく適度にボロボロになっていく姿にものすごい色気がある(これはたぶん城田優本人の資質)。
大ボスに綾野剛、主人公に佐藤健をあてたのは配役として誰でも思いつくというか、まあ安全なところ行ってる感じがしますが、田中に城田優をキャスティングしたのは相当ファインプレイだと思いました。
玉山鉄二 as 戸崎優
老舗の名店が創業以来継ぎ足し続けた秘伝の無能のタレに骨の髄まで漬けられた無能の中の無能、映画版戸崎。
切った啖呵がことごとく裏切られ、張った策がことごとく綾野剛にブチ壊されていく様は圧巻であり、冷徹というより単に自分で直接手を汚せない見かけ倒しの人、という印象にしあがっています。途中、あまりにふがいないので政治家の先生方に説教される場面がありますが、期待されてる内容が映画版戸崎には荷が重いというか、原作では敵に翻弄されつつもスマートさが損なわれないキャラクターのに、映画、特に物語の前半は完全にポンコツです。
ただ、ストーリー後半で自分も直接戦闘に参加しだしてからはそれまでの汚点を挽回してかなりよかった。もっと初期から戦闘官僚として描かれていれば全然印象違ったのになあ。
演じる玉山鉄二、僕はファンなんですが、今作では可もなく不可もなく、です。原作ではもっと線が細いイメージなので。ちなみに病気の恋人についてはほんの少し焦点が当たったぐらいでした。
・川栄李奈 as 下村泉
原作どおりの髪形にして失敗したパターン。どうしても川栄ちゃんによるコスプレ感にとどまってしまったというか。
アクションはすごく頑張ってますが、かえってこの頑張ってる感が、少し興が冷めるところもありました。激しい動き見せるにはタッパも低すぎるかな。
ボロクソ言ったけど、後半になるにつれて観る側の目にもなじんできて、けっして悪くはありませんでした。むしろしり上がりによくなった感じ。普通に考えるとあの体格で城田優とドツキあうとかおかしいんですが、しっかり迫力ある格闘になってたのがその証拠です。まあ何が言いたいかというと、とりあえず俺にも腕ひしぎをかけてくれないか。
・浜辺美波 as 永井慧理子
原作どおりの髪形にして成功したパターン。はじめて観た女優さんですが、かわいかった。でも、病気で入院していたという設定なのに病室出てきた後もピンピンしてるのはどうなのか。
ちなみに彼女以外の圭の家族について、映画版でも母親の存在が言及されていますが、結局出てきませんでした。
・千葉雄大 as 奥山
元々フォージの社員という設定だったんでしょうか? 原作読んだけど忘れてしまった。
その他の感想
・IBMの戦闘シーン、カッコよすぎ。
亜人は、IBMと呼ばれるジョジョのスタンドのようなものを操作して、自分と一緒に戦闘に参加させることができるのですが、このシーンがすごいカッコよかった。
黒い粒子がぶわっとふきあがって人型に固まり、敵のIBMと殴り合う。人間同士が展開する銃撃戦と並行してこの格闘戦が行われ、双方入り乱れることで、戦闘全体にものすごくメリハリが出る。
基本的にこの映画における戦闘って、やってることは毎回そんなに変わらないのですが、まったく飽きが来なかったのは、IBMの描き方によって一切単調になることがなかったからなのは間違いないです。
・フォージ重工
何をやってる会社なんでしょうか。簡単にセキュリティ突破されてたのでまさか危険物を取り扱ってるってこともないでしょうけど、バファリンの優しさの方とかを作ってんですかね。
・続編は?
物語の最終盤、佐藤健との長い戦闘の末一時的に無力化された綾野剛が奇策で復帰したとき、「あれ、これもしかして綾野剛勝つんじゃねーの? これだけで完結しないんじゃねーの?」と思った。
付け加えると、このときの俺の気持ちは「まあそれならそれでいいけどよ…」というものだった。なぜか。それは、映画版『亜人』が面白かったから。
結局、ネタバレをしてしまうと最後は佐藤健が勝ち、作品も〆られるのだが、続けようと思えば続けられる終わり方でもあった。エンドロール直前の映像もちょっと気になるし…。
続編あるとしたら観に行きます。今作で亜人×実写版として思いつける描写はひととおりやってる感はあるし、二作目を撮ってまったく新しい要素を描くって相当難しいと思うけど、仮に焼き直しになっててもいいや。それくらいよかった、ってことで。次があったら中野くんの登場を希望します。
そういうわけで、長くなったけどあらためて100点。気になる人はぜひ行った方がよいです。おすすめ。以上。