悪夢について4

  俺は政府の要職で、他の高官たちと一緒にある国との会議に参加していた。

  その国の会議室で、俺たちは相手から敵意のないことを示せと求められた。何があっても抵抗できない姿勢で地べたに体を預け、こちらを完全に信頼していることを表せ、という。

  不思議にも馬鹿げているとか屈辱だとか思わなかったし、俺以外の人間もそうであるらしかった。

  ためらいなく相手に無抵抗な姿を晒せるというのは、服従ではなくむしろ精神的に上に立つ行為だと思ったのかもしれない。それは俺たちのマッチョイズムと矛盾するものではなかった。

  そもそも、国同士の会合というのは映像に残されたり文字に書き起こされたりすることばかりだけではない。むしろそのやり取りの多くは闇の中で交わされるこうした馬鹿げた虚勢の張り合いによって占められている。

  俺たちはスーツ姿のままぞろぞろと身を床にかがめた。

指示された姿勢は奇妙なものだった。仰向けになり、両方の手のひらを空中で開いて何も握っていないことを示せ、という。それが敵意がないことを示すためのこの国における作法であるらしかった。 

  四つ足で立っている動物の人形、ちょうどあれをひっくり返したようなかたちで、俺は地面に寝転んだ。そのとき、ばすばすばす、という衝撃を腹に感じた。

  俺の横に女性が一人立っていて、手に小銃をさげている。撃たれたのだ。

  痛みはあまりなく、ただ自分の体がもう取り返しがつかないほど破壊されてしまったこと、もうすぐやってくる死に急いで備えないといけないことがはっきりと理解されて、悲しいような呆然とするような気持ちだった。

  俺はなんだこれは、と思いながら、これまで世界中で同じように死んできた人たちがいることを、ようやく身をもって知った。

  あまりに無意味だ。なにかを後悔する時間さえない。あまりに急すぎる。女性が俺の背中に銃を向けて、またばすばすばすと撃った。