夢について2

  俺はいま小学生で、友人が携帯電話を買うというのでそれについてきていた。

  店は郊外のショッピングモールの一画にあった。俺は待合スペースの椅子に座りながら彼が契約を終えるのを待っていて、彼がこっちにやってくるのを見て立ち上がり一緒にモールを出た。

  俺とその友人・Aとは実は高校生の頃に本当に些細なことで喧嘩をして、それ以降一度も会っていないのだ。

  俺はそのことを知っているのだが、いまの俺たちが二人とも小学生であることは受け入れていて、もちろんいまの俺たちは友達だった。

  ショッピングモールの外は、田舎というよりも荒野といった方が近い、荒涼とした景色だった。丈の低い草がぼうぼうと生える中を、灰色の道がガードレールのないまま走っている。雪が降り始めていた。

  道を歩いていると後ろから声をかけられた。俺たちの友達のBだった。

  Bは中学校に入ってから俺やAではないいわゆる不良と付き合うようになり、疎遠になってしまう。Aのときと同じように、俺はそのことを知っていながら、いまはBも俺たちと同じように小学生の姿で、いまはまだ俺たちの友達なのだった。

  一緒に遊ぼうぜ、とBが言った。しかし、俺とAは少し顔を見合わせてから、今日はいいよ、とにやにやしながら言った。

  Bはからかうとムキになるところがあって、それが面白くて俺やAは彼のことをよくこうやっておちょくっていた。

 なんでだよ遊ぼうぜ、と案の定真剣になり始めたBを、また今度また今度、と俺たちはのらりくらりかわしながらからかった。

  しかし、今回は度を越しすぎてしまったらしい。じゃあもういいよ、とBは怒ってどこかに行ってしまった。

  俺とAの間に気まずい沈黙が生まれた。俺たちは来た道を黙ったまままた歩き始めた。

  俺とAは、なんとなくお互い近くにいることが嫌で、二人の距離がだんだん離れ始めた。Aは俺から遠く離れた先を行って、とうとう見えなくなってしまった。

  降り続けていた雪が深く積もって、あたりは一面の雪景色になった。ふと遠くを見るとそこに二つの人影があって、AとBが二人でそこで遊んでいた。

  俺はぼんやりした気持ちのまま、雪を踏んで二人の方に近づいていった。二人が俺に気がついて、俺は二人に、遊びにいれてくれよと言いたかったが、Bをあんな風にからかった後でそう口にするのがすごく恥ずかしくて、何も言えずにもじもじしていた。そうしたら二人が笑って、何してんだよ、早く一緒に遊ぼうぜ、と言った。うん、遊ぼう、と俺も笑って言った。

  Aがどこからかボールが山になって積まれたカゴとバットを見つけてきて、それはなぜか手品で使うための握ると分裂するボールだったが、俺たちはそれで遊ぶことにした。

  俺やAが投げたボールをBが打つだけの簡単な遊びだった。Bがバットでボールを打つとボールが色とりどりに増えながら雪景色を飾って、俺たちはそれがめちゃくちゃ楽しくて、みんなでげらげら笑いながら遊び続けた。

  俺はBが打ったボールを雪を踏みながら追いかけて、ふざけて雪の上に飛び込んだ。雪はまったく冷たくなくて、ただひたすらやわらかかった。俺は雪に顔をうずめながら、うくくうくくと笑い続けた。

  俺の頭に唐突に、ひどく暗い顔をした大人の男の顔が浮かんだ。俺はそれが未来の自分の顔だと知っていた。

  でもそんなものただの夢だ、と俺は思った。俺が見ている雪の中で友達と遊ぶ夢の中に、大人になった俺の姿という夢が混じっただけなのだ。

  目が覚めたら俺は小学生だと俺は思っていた。そして、夢で見たのと同じように、また友達と一緒に遊ぶんだ、と信じていた。