『チェンソーマン』は面白いのか面白くないのかよくわからないけど面白かった話

 何ヶ月前のことか覚えていないが、俺は『チェンソーマン』の1巻を買った。
 そこまで面白くなかった。
 これは言い方が難しい。正確に表現できている自信がないし、たぶん正確に伝わっていないと思う。
 「そこまで面白くなかった」という言い方にどうしてもたどり着いてしまう。
 読んでいて笑えたし、他のマンガで味わえない感触が間違いなくあった。
 と言って、ものすごい充実した読後感があったり、絶対に他の人にお勧めしたいとは、確実に思わなかった。
 なんとなく、勢いばっかりでスカスカしている感じがした。
 Amazonでは絶賛されているけど、断言する、俺はそこまでじゃなかった。間違いなく。
 その証拠として、俺は2巻を買わずにいたのである。
 
 『チェンソーマン』は相当の程度アルコールに侵されないと面白くないのかもしれない。少なくとも俺には。
 要はそういう主旨の文章であって、これを書きながら俺はかなりの度合いでいま酔っぱらっている。
 
 そもそも、俺は『夢中さ、君に』を買おうとしていたのだ。
 しかし、話題が沸騰しているせいか『夢中さ、君に』は在庫がなかった。
 『チェンソーマン』2巻は心に空いたその隙間に、アルコールのバフを受けてダイレクトアタック。俺は単行本をロボットのような動きでレジに持っていき、帰りの電車の中でいまそれを読んでる。
 
 面白いなあー。
 
 くだらなすぎて、どうしようもなくて、といって、そういう底辺ぶりをうまく要素として持ち込んだ確信犯っぽい匂いもあまりない(あるいは本当にうまく消されている)、ただどこまでも空虚な感じ。
 心理描写とかあるにはあるけど、物語のフックとしてははてしなく弱くて平坦で疾走感だけある感じ。
 
 いいなあー。
 
 好きでもなんでもない相手の胸を、欲望のままに揉む。
 
 いいなあー。
 
 不純さとか好きな相手が他にいるとか完全にすっ飛んでる。
 あえて説明するなら、性欲以外なにもかも吹っ飛んでるから、本命がどうとかそういう比較なんかもう別世界の彼方で、これはこれで絶対の純粋なんだよ、ってことなんだけど、言わなくてもよかったわ。
 
 これが、シラフで読んだらどうだったかわからない。たぶん面白くなかったんじゃないかな? そんな気がする。
 酔ってるときだけすごくいい。そういうマンガがあってもいい。
 
 俺は『チェンソーマン』を人にすすめない。マンガを読む状況として酒に酔っぱらってグラグラになってる状態が普通だとは思えないから。
 あと絵が汚い。シラフじゃなくてもそう思ったくらいだから、本当に汚いんだろう。
 でもたぶん3巻も買う。
それはたぶん、またすごく酔っぱらったとき。そんとき読む『チェンソーマン』は、きっとまたどうしようもなくくだらなくて、たぶんすごく面白いだろう。ほめ言葉でもなんでもなく、素直にそう思うので、以上、よろしくお願いいたします。

 

チェンソーマン 1 (ジャンプコミックス)

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