はじめに
評価は次のように行います。
まず、総評。S~Dまでの5段階です。
S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース。
A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。
B…購入してもよい。もしくはkindle unlimitedにあれば勧める。
C…図書館で借りる、もしくはkindle unlimitedなら読んでもよい。
D…読むだけ時間のムダ。ゴミ。(少なくとも俺には)。
続けて、本の中で印象に残った作品を評価します。
☆…それ一品で本全体の価格を担保できてしまうような作品のレベル。
◎…一冊の中に三品以上あると、その本を買ってよかったと思えるレベル。
◯…一冊に七〜八品あるとその本を買ってよかったと思える作品。
最後に、あらためて本全体を総評します。
こういう書き方をするのは、初見の人に本を勧めつつ、できるだけ先入観を持たない状態で触れてほしいからで、評価が下に進むほど、ネタバレしてしまう部分も増える、というわけです。よければ、こちらもどうぞ。
総評
C。
ぁみ/いたこ28号/壱夜/神薫/夜馬裕作。2020年刊行。
実話怪談という本としての形式よりも、語りの方でよく名前を見かける面々(神薫除く)による作品。
各作品評
なし。
あらためて、総評
C。からく評価した。
その一方で、語りなら…「読ませる」ではなく「聴かせる」なら、もっと映える話なんだろうな、という感じがあったのも事実で、これは書き手が本業は怪談師、という面々だからか。ただ、あくまでこれは文章作品なので、文面としての印象から評価する。
全般的に、不安さも(良い意味での)不快さも、もう一つ残らない話が多い。原因としては、どの怪談も冗長な感が否めないところにある気がする。
長いは悪い。おそらく、とても高い文章力が求められはするが、余分な文言がなければないだけ、必要な言葉だけで書かれていればそれだけ、劇的な恐怖がなくても、怪談は怖くなるし不気味になる。
その辺はやっぱり、「語る」がメインの人と「書く」がメインの人のテンポの違いなのかな、と思うけど、邪推かも。唯一、神薫の怪談には文章としての実話怪談らしい言葉の「詰め方」を感じたが、それでもまだ長すぎたかな、という気はする。
一点、今回の本のある作家の怪談によく見られた傾向について意見を書いておく。
俺は、実話怪談において「夢」と「見える人」の二つは飛び道具だと思っている。
登場させるのが邪道とまでは言わないが、どちらかと言えば、出てくると冷めることが多い(個人的には)。
中にはよっぽど上手く扱って、かえってその話における素晴らしい雰囲気づくりにひと役買う場合もあるが、いずれにしても大切なポイントは、あくまで添え物であるということ、「夢」や「見える人」によって怪異の不可解さを解決してはいけないということである。
しかし、この本のある作家の怪談の多くは、話を展開させるうえで「夢」と「見える人」に頼りすぎている。あくまで個人的な好き好きなのを承知で言うが、そういうのは好かないので、ここに書いておく。
第31回はこれでおわり。次回は、『怪談社書記録 闇語り』を紹介します。以上、よろしくお願いいたします。