はじめに
評価は次のように行います。
まず、総評。S~Dまでの5段階です。
S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース。
A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。
B…購入してもよい。もしくはkindle unlimitedにあれば勧める。
C…図書館で借りる、もしくはkindle unlimitedなら読んでもよい。
D…読むだけ時間のムダ。ゴミ。(少なくとも俺には)。
続けて、本の中で印象に残った作品を評価します。
☆…それ一品で本全体の価格を担保できてしまうような作品のレベル。
◎…一冊の中に三品以上あると、その本を買ってよかったと思えるレベル。
◯…一冊に七〜八品あるとその本を買ってよかったと思える作品。
最後に、あらためて本全体を総評します。
こういう書き方をするのは、初見の人に本を勧めつつ、できるだけ先入観を持たない状態で触れてほしいからで、評価が下に進むほど、ネタバレしてしまう部分も増える、というわけです。よければ、こちらもどうぞ。
総評
B。
鈴木呂亜作。2018年刊行。
各作品評
幽霊戦は今日もさまよう…◯。幽霊船×UFOという、ウニいくら丼みたいな話。
シケイダ…◯。有名な、いわゆるネットロア。まだ知らない人はめっちゃ楽しいはず。
電車事件簿…◯
運命…◯
メッセージ…◯
あらためて、総評
エンタメ路線にふれていないところも好印象で、テレビ地上波とかユーチューブで観るのとも違う、ややアングラな空気感がいい。飲み会で披露してもたぶんウケない方の都市伝説。
一個批判しておくと、 この本のパターンとして、
① ちゃんとソースがある逸話の紹介+「では、こういう噂を知っているだろうか」
② 「皆さんは、こういう噂を知っているだろうか」+それもあながち嘘とは言いきれない、なぜならこういう逸話があるから(これはソース付き)
という形式が多くて、俺、あんまりこれ好きじゃないんだよな。
前回の記事でも書いたけど、こういう組立て方って、綿密に取材しているようでいて、けっこう疑わしいところがある。
しっかりソースがある都市伝説を下敷きにして、似たような話を自分でこしらえて、両方を抱き合わせにして提出してるように見えるんだよな。
これ、一方はちゃんと出典が提示されているため、ぱっと見では全体が信用できるように見えるのがズルい。実態は話をカサマシしている(かもしれない)わけだから。
そこんところ、本当は全てのエピソードの出所を開示してもらわないと、疑わしいのは消えないよ? と俺は思う。
そういう意味では、むしろまったく出典のない話の方が好もしくて、『夕立魚』はとてもよかった。俺がデカい水棲生物好きなのもあるけど。
あと、『メッセージ』は最後、日本語が出てこないことを思わせぶりに書いてるけど、俺は別に違和感なかった。
だって日本語の話者なんて世界に特別多いわけではなく、母語としてしゃべる人口でも世界9位、第二外国語として扱う人たちも含めて統計し直したら15位だ。
これが、もしも英語や中国語が出てきてなかったら不思議だし、なんなら現行でそこまで規模のないヘブライ語やスワヒリ語が登場していることも奇妙だが、日本語がそこにないことに、特に不思議はない。
単に、優先順位としてそこまで高くなかった、と考えるべきだろう。こういうこじつけがときどき見えるのは、少し自らの格を落としている気がする。
第33回はこれでおわり。次回は、『忌印恐怖譚 めくらまし』を紹介します。以上、よろしくお願いいたします。