子どもについて

 仕事の帰り道で横断歩道をわたってるとき、向こうから3~4才ぐらいの子どもが走ってきた。ずいぶん小さいのがいるな、と思っていたらその向こうにお母さんがいたのだった。

 横断歩道を駆けていこうとするその子にお母さんが「止まって止まって」と声をかけて、母親の言葉どおり俺の目の前でぴたっと止まる。

 「右見て」の声で右、「左見て」の声で左。お母さんに言われるとおり、体ごと元気よく振り向くようにしながら左右を見て、また早足で歩き始める。

 大人に言われていることに従うのが気に入らねえ、という時期が子どもにはきっとあると思うのだが、世の中のルールが段々わかってきて、それに沿って行動してみせることが楽しい、なんというか、誇らしいという年齢もあるんだろう。母親は子どもの姿をほほ笑みながら眺めていた。

 宝物のようだろうな、と思う。もしくはこの言葉でも、まるで足りないぐらいの。俺は子どもがいないのでわからないが、きっとそうだろうと思う。

 

 先日、トラックが大きな事故を起こして小学生が亡くなった。親の心に何が起こったか、想像しようとしてもうまくいかない。想像しようとするべきでも、言葉にするべきでもないかもしれないが。

 

 子どもが死なない世界がいい。世界がそうなることはおそらく永遠にないが、子供が死なない世界がいいと思っている。