惨状と説教

誰か山から降りてきてほたえてから山に帰っていく記事。ブログ

悪夢について

  何をしていたのかわからないが職場にいたら、隣で役員と話をしていた会計課の課長が突然、「はい!  はい!  少々お待ちください!」と叫ぶと、命令された、というより社会人としての義務感、といったような切迫さをあふれさせながらこちらに飛んできて、俺の頭を何か重いもので思いっきりぶっ叩いた。床に倒れながら、自分が何か重大なミスを犯したことを悟った。絨毯の柔らかなざらざらした感じの上に倒れながら、口の中が妙に気持ち悪いと思ったら、半端な量のゲロがあふれてきた。
  せめて盛大に吐ければよかったのに、と思う。これで少しは周りも同情してくれるだろうか、と考えたとき、そう思っている自分に気がついて、たまらなく悲しくなった。

   気がついたら社内の飲み会の席にいた。先ほどの失態の記憶は生々しく頭に残っている。
  隣には同じ課のいつも物静かで優しい先輩が座っていて、その表情がいつもとどこか違うので、この違和感の正体はなんだろうな、と思っていたら、その人が唐突に「君は私がいつも何を考えてるかわかるかな?」とたずねてきた。
  実は常日頃からちょっと真意をつかみかねるところがある人なので、なんだか安心したような気がして、「正直よくわからないこともあります」と照れ笑いしながら答えたところ、その人は「私も君が何を考えてるかまったくわからないんだよ!」と言って、狂ったように笑い始めた。そのとき、先ほどからあった違和感の正体は、普段あまり笑わないこの人が今日だけ笑みを浮かべていたせいだと気づいた。

  結局会社を辞めることになって、世話になった先輩二人とのんびりとした飲み会を開いた。
  「ちょうどいいから、何かこれまで言えなかったことがあったら教えてよ」
  そう言われたので、「言えなかったことっていうか…あのとき俺はなんで殴られたんですかね?」と尋ねたところ、二人は同時に無表情になって、片方が「それは君がこれから考えることだよ」と言った。それから二人一緒ににやにや笑い始めた。
  俺は少し考えてみたが、やはり答えはわからなかった。二人はいつまでもにやにや笑っていて、気がつくと俺も一緒になって笑っていた。