日記について

 海辺をランニングしていた。夕焼けがものすごい日で、西の空にのったりと広がった雲が夕陽をあますところなく受け止めていて、それが雲の隆起やうねりを複雑な色彩の反射によって照らし出していた。

 その夕焼けを浜で見ていたら、若い女の子二人に夕陽を背景に写真を撮ってくれと言われたので何枚か撮る。暗くなってきた周囲と、まさに残照という感じの激烈な落日との対比が、二人の顔もちゃんと写そうとカメラがフラッシュを焚くとなんだかボケてしまうのでなかなか難しい。

 「うーん」

 「もう一回撮りましょうか」

 「…お願いしてもいいですか?」

 「いいっすよ」

 とかってやり取りを何回か繰り返す。結局、「加工するからいいか!」と女の子の一方が言っててつい笑ってしまった。

 「撮影に何回か付き合わせた人の目の前で、俺だったら言わねーな、それ」と思ったが、同時に笑ってしまったら負けだと思う。かわいげは強い(っていう感想も少し気持ち悪いか)。見た目でなく、性格の話。

 

 落日の速さは本当にすごくて、再び走り出して市街に入ってからふと西方を眺めたら、夜間のただ暗い薄墨色にすでに突入していた。立ち位置が変わったからというだけの理由かもしれないが、たった数分のことだった。

 

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