全人類よ、NETFLIX実写版『今際の国のアリス』を観たか、ということについて

はじめに

 原作の漫画が大好きで、いわゆるデスゲームものなんだけど、ときに荒唐無稽、ときにものすごく高度に論理的に設計された数多くのゲームの攻略に、他の漫画がまったくかすんでしまうぐらいウエットな人情の描写が掛け合わされていて、それが素晴らしかった。

 そこまで好きな作品が映像化されるとなれば、期待よりも不安、むしろ無視してやろうか、という感情の方がときに上回ってしまうんですが…。

 NETFLIXの実写版、最高だった。

 「かくれんぼ」も「まじょがり」も、あの原作に引けをとらない出来と約束すれば、俺と同じ原作ファンもきっと興味をひかれるでしょう。観てくれ。すごくいい。

 もちろん、原作未読の人にもおすすめです。流血耐性がある人でないとかなり厳しいけど、本当によくできていて、衝撃的な内容だと思う。

 

各キャスト評

 おおざっぱなストーリーは原作通りです。細かい翻案がいくつかあるのと、「らんなうぇい」が「でぃすたんす」となり、アリスとウサギが挑むことに。あと「あんけえと」はたぶんなくなったのかな(ドードー君はどうするのか)。

 

 以下は、各キャスト評です。

 マジでみんな、端役も含めてよかったんですが、特に印象に残った人たちに触れていきます。原作及び実写版のネタバレ上等なので、ストーリーを全然知らない人は、まずは本当にNETFLIXで作品を見てほしい。特に第3話の「かくれんぼ」は、観る人によっては人生観変わるので、ちゃんと作品で触れないと、しても遅い後悔をすることになります。マジで。

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山崎賢人 as アリス

 正直、全く興味のない俳優さんだったんですけど、よかったですね。
 原作通り、実写のアリスも平時の凡庸で芯がない面と、非常時の激情ほとばしり発想がバキバキにキレる面が共存するキャラクターです(高校生から大学中退のニートに変わった)。
 で、それを演じる山崎さんなんですが、日常では全然魅力ないんですよね。正直、ハンサムにもあまり感じられない(ように写されている?)、単に瞳や唇といったパーツの綺麗な男子、という感じ。ところが、それがそのまま振れ幅になっていて、緊急時のカッコよさ、生命力ったらものすごかったです。
 一つ、苦言というわけじゃないんだけど実写版固有の描き方として、かなり♢(知能ジャンル)に強いキャラクターになってますね。
 最初のげえむ(「おみくじ」の実写化はさすがに無理だったらしい)を攻略したのも閃きっていうよりは論理力の部分だし、「電球のスイッチ」もアリスが解くことになってます。
 まあ、原作のアリスの強みってちゃんと説明しにくいところがあって、見ようによってはただ運が良いだけだったりするので、この書き換えは仕方ないかもしれません。
 
・土屋太鳳 as ウサギ
 原作のウサギは身体の絞り上げられた筋肉質な美少女、という感じなので、そこから考えると、土屋太鳳の外見はややふっくらしてたかな。
 でも、ドライな部分と優しさが共存する演技は原作のイメージ通りで、すごく良かったです。
 
・町田啓太 as カルベ
 今作で目を見開かされた俳優その1。金の短髪に柄シャツ似合い過ぎ。めちゃくちゃ男前でした。
 原作でも体力・胆力・人間力◎で早期退場が惜しまれたカルベの魅力を、120%表現しきった役者さんだと思います。すごくよかった。
 
森永悠希 as チョータ
 原作から翻案されて、サラリーマンになりました。一芸に秀でたアリス、総合できわめて優秀なカルベに対して、明確な強みはないけど優しい人物、という点は同じです。
 漫画史に本気で残ると思う、あの「かくれんぼ」で実写版でも最期を迎えますが、その終わり方が原作と少し変えられています。これはシブキの項でも触れますが、映像化に際して、あの場面に新たな説得力を込められた理由の一端は、俳優さんの実力によるものだと思います。良い演技でした。
 
水崎綾女 as シブキ
 原作のシブキはスレンダーなシルエットなので、いくらか肉感的な俳優さんになりました。
 シブキは原作でも実写版でもすごく難しいキャラクターで、「かくれんぼ」においてカルベやチョータには親友であるアリスに生存を譲る動機があるんですが、彼女にはわかりやすい理由がないんですよね。この点について、原作ではアリスたちの友情にほだされて、という描き方になっていて、そこに説得力を込められる漫画版がまずすごいわけです。
 これが実写版ではだいぶ違っていて、まず、映像のシブキはチョータに邪魔されて動くことができず、アリスと接触することなくタイムアップを迎えるしかなかった。もちろん、そうすると問題が重なってくる。シブキの生きたいという希望はどうなるの? というか、チョータがアリスを生かすために間接的にシブキを殺したようなものでは?
 こうした問題が、残り時間の少なさを受け入れ、諦める俳優の演技と、さらに言うなら、これまでの荒廃していた心理が、自分を邪魔しているはずのチョータに対して最後のより所を見出して救済された、というかたちで回収されます。この反転を演じた芝居はすごかった。原作とは違うんだけど、本当に良かったです。
 
村上虹郎 as チシヤ
 目を見開かされた俳優その2。めちゃくちゃよかった。
 村上虹郎の演技はほとんど知らなかったんですが、マジでよかった。
 チシヤってある意味、実写化にあたって一番難しいキャラクターだったと思います。芝居がかったふるまいをするので、それが絵だとフィクションとしてうまく中和されるんですが、実写になると、ただ安っぽいだけの浮いた感じになる危険がものすごくある。
 でも、村上虹郎のチシヤはとんでもない完成度でした。あの人を食った感じ、好奇心と虚無感の併存、事態をひっかき回しながら、何もかもにどこか他人事な感じ、本当にすごかったと思う。
 
 他のキャストもみんな良くて、なんなら、役名のない人物までハマってたと思います。
 

シーズン2は?

 最終エピソードのあの終わり方なので、断然期待してしまう。というか、ミラに仲里依紗すえておいて続きはない、は許されないでしょう。

 別に出来がそんなに良くなければ言及しないんですが、ここまでよくできてると…。「すうとり」も「さばいばる」も見たいし、「かまゆで」も「どくぼう」もエピソードに余裕があれば是非…。そして、やっぱり何と言っても「びじんとうひょう」なんだよな。

 統計にもとづく成績に超絶シビアと聞くNETFLIXなので、視聴結果次第なんでしょうけど、マジで期待してます。みんな観ましょう。それは俺が続編を観たいから。

 

 以上、よろしくお願いいたします。

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