はじめに
評価は次のように行います。
まず、総評。S~Dまでの5段階です。
S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース。
A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。
B…購入してもよい。もしくはkindle unlimitedにあれば勧める。
C…図書館で借りる、もしくはkindle unlimitedなら読んでもよい。
D…読むだけ時間のムダ。ゴミ。(少なくとも俺には)。
続けて、本の中で印象に残った作品を評価します。
☆…それ一品で本全体の価格を担保できてしまうような作品のレベル。
◎…一冊の中に三品以上あると、その本を買ってよかったと思えるレベル。
〇…一冊に七〜八品あるとその本を買ってよかったと思える作品。
最後に、あらためて本全体を総評します。
こういう書き方をするのは、初見の人に本を勧めつつ、できるだけ先入観を持たない状態で触れてほしいからで、評価が下に進むほど、ネタバレしてしまう部分も増える、というわけです。よければ、こちらもどうぞ。
総評
B。
神沼三平太作。2020年刊行。
現代の話あり、昔話あり。業界っぽい裏話、少し変わった人情ものまで、さまざまな怪談が並ぶ。全26話、ということで、実話怪談の本としては一作一作が比較的長い。
各作品評
三千坪の土地…◯
夢で逢いましょう…◯
家具屋の鴉…◯
あらためて、総評
BかCかで悩んだ。Bを選んだのは、Cをつけたら個人的な好き嫌いの優先になるな、と思ったため。
どの作品も描写は丁寧だし、一部の書き手にあるような、「とにかく人を死なせて不幸にさせれば現実感なんてどうでもいいんだろ」みたいなところもない。誠実な作家だと思う。
ただ、全体的にいくらか冗長な気はする。感覚的に、10%強ぐらいは文章量を削っても話として成立すると思う。
以下は、個人的に相性が悪かった点について話す。
まず、『高いところに置け』『人形屋敷』『蛇わずらい』など、会話文の比重が高いうえに、オバケも派手に動くような作品は俺の嫌いな類の怪談なので、読んでいてつらかった。
これらは実話怪談というより、「ホラー映像の書き起こし」として紹介した方がしっくりくるような怪談であって、俺はそういうのを基本的に嫌っている。実話として真に迫るものを感じたかといわれれば、否定せざるを得ない。
もしも会話部分を丸ごと削り、怪異についても描写を抑えていたら、だいぶ(俺的には)良い方に印象が変わったと思う。
それでも安っぽい印象がなかったのは、上記したように描写を丁寧に詰めてくれる作家だからだろう。その一点で、ギリギリ実話怪談として「残っている」。
もう一点。これも趣味の話になるが、かなりベタな怪談が多いというか、読んでいて攻めている感じがしないというか、驚かせてくれるところがあんまりない。
何も、めちゃくちゃ災いを起こしてくれ、というわけではない。怖い怪談は誰も死ななくても狂わなくても怖い。
「ああ、そういう怖さがあるのか」という斬新さだったり、「なんだかわからないけど異様に気味が悪い」という不安感だったり、そういうのが欲しいと思った。あるいは、逃げ場を徹底的につぶされた絶望感か。
もっとこっぴどく手玉にとられたかったな。せっかくかっちりした文章書けるんだし、という感想。
第27回はこれでおわり。次回は、『蝦夷忌譚 北怪導』を紹介します。以上、よろしくお願いいたします。