あわいについて

※ 虫をわかせた話が出てくるので、苦手な方(得意な人がいるのか?)はお止めください。 蝉の声と鈴虫の声が両方とも聴こえる。 8月末から9月のはじめ、朝起きると夏と秋の二つの虫の音が混じっていて、季節が変わっていくのだな、と思う。二つのものが重な…

結局、一番怖いのは「映画」ということですよ…『NOPE』の感想について 2/2

※ この記事に人種差別の意図はありませんし、私個人もあらゆる点で反対する立場ですが、以下の文章がそう読めてしまったら私の想像力や知識の不足です。すみません。 ここまでの話 sanjou.hatenablog.jp 以下、ネタバレあり。 『NOPE』の物語では、利用され…

結局、一番怖いのは「映画」ということですよ…『NOPE』の感想について 1/2

※ この記事に人種差別の意図はありませんし、私個人もあらゆる点で反対する立場ですが、以下の文章がそう読めてしまったら私の想像力や知識の不足です。すみません。 はじめに めちゃめちゃ面白かった。世の中的には、まあまあって評価みたいですが。 カテゴ…

『血界戦線 Back 2 Back』災蠱競売篇は、なぜつまらないのかについて 2/2

ここまでの話 sanjou.hatenablog.jp 長すぎる。 ② 登場人物たちが「いま何をしたいのか」、最後までわからない(続き) 災蠱競売篇は、人命を犠牲することで強力な兵士を製造できる道具であるカロプス人蠱をめぐって攻防が起きる。 攻め側であるライブラやグ…

『血界戦線 Back 2 Back』災蠱競売篇は、なぜつまらないのかについて 1/2

はじめに 色々と、長々と書くので、最初に要点だけ書いておく。 ① 話が長すぎる ② 登場人物たちが「いま何をしたいのか」、最後までわからない ③ 血界の眷属(ブラッドブリード)と各キャラクターの力関係がよくわからない はっきり言うが、こういう理由でつ…

セックスの同意について

※ この記事では暴力と性を題材にしています。 『ニュー・シネマ・パラダイス』の編集フィルムの過激なバージョン 映画を観ていると、ときどきセックスのシーンが出てくる。その中でも、個人的に印象に残っているものは次の作品で描かれている。 『ジョゼと虎…

色々と惜しいトンチキ映画だった『哭悲 THE SADNESS』の感想について

ゾンビがカンフーを使って何が悪い 同じ時期に公開されたアジアのホラー映画だと『女神の継承』の方が圧倒的に怖くて、完成度という点でも優っていたと思う。 sanjou.hatenablog.jp 『哭悲』も『女神の継承』も、どちらも全編にわたってすごく暴力的で救いが…

今日、脳から捨てたものについて ⑩

はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの ・お前の改名興味NAME 『ガキの使い』、「月亭方正がラップバトルに挑戦」。「即興 嘘つき旅館」もそうだが、うまくやろうとしてうまくいくと企画としては失敗で、うまくいかないことの方が…

ロックについて

はじめに サマソニで複数の日本人バンドのMCが問題に?音楽に対する姿勢やメッセージ性についてのいろいろな意見のまとめ 前の演者の印象的な場面にふわっと乗っかろ、ぐらいの意図で片言マネたんだろ、と軽く思ってたが、海外のイベントで日本人の次のアク…

人類は林檎の夢を見るか、について

ここまでのあらすじ sanjou.hatenablog.jp いま流行りの画像生成AIを使って◯◯(例:林檎)に関する注文を出すと、人間がこれまでネットにあげてきた林檎に関する膨大な情報を渉猟して一つのイメージにまとめることができる。 別に、林檎の画像が欲しければ画…

SONICMANIA(ソニックマニア)2022の参加をあきらめたことについて

ソニックマニアずっと好き ソニックマニアというのはサマーソニック前日の夜から日付をまたいで夜明けまで開催されている、文字通り前夜祭的なイベントだ。 会場は幕張メッセの中に屋内ステージを組む。コンクリートを打たれた、広くて暗い、無機的なスペー…

人工知能は異形の夢を見るか、について

AIすごくね? AIに絵(画像)を描いてもらうことが話題になっている。 どちらかと言うと冷ややかに見ていた。特に「◯◯(画家の名前)風」に描いた何か、という画像を見たときは、けっこう不愉快な感じがした。 「あくまで◯◯風の、だからな。楽しんでる連中は…

支配について

俺の布団 数日前、台風が来ているのに布団を干しっぱなしにして外出したところ、思いっきり風で飛ばされた結果、隣の部屋の軒先に引っかかってしまった。 たぐり寄せるために竿を伸ばしてみると、届くことは届くのだが、うまいこと引き寄せられない。表面だ…

天国について

天国に行きたいか? 死んだ後に行く天国というのは、どういう場所なんだろうな、と考えることがある(ちなみに、俺自身は無神論寄りで、特定の信仰を持たない)。 そもそも、天国に行ったとき、俺は何歳の姿になるのだろうか? 死んだときの年齢なのだろうか…

2022年8月11日について

風が強い日だった。海岸に椅子を持っていて本を読んでいた。波がいくつも重なって立って、天気はいいが、海が沸いているようだった。 犬が散歩しながら何匹も目の前を通っていく。あるとき、茶色が濃い柴犬が一匹、急に立ち止まったので首のリードが飼い主の…

アンチ・ジャンプスケア派こそ観るべき…なのか? 悪辣な傑作、『女神の継承』の感想について:後半戦

前半戦はこちら。色々と内容がエグいから観る前に気をつけような、でも俳優と演出はめちゃめちゃよかったよ、という話。 sanjou.hatenablog.jp 以下、ネタバレ再開。 ネタバレ解禁③ 「この車は赤い」の意味は? 無数の悪霊にとり憑かれた女性ミンを救うため…

アンチ・ジャンプスケア派こそ観るべき…なのか? 悪辣な傑作、『女神の継承』の感想について:前半戦

はじめに 『女神の継承』(公開中)、『NOPE』(8月26日公開)、『LAMB』(9月23日公開)と夏から秋にかけて観たいホラー映画が目白押しになっている。 俺は『哭村』という映画が好きで、監督を務めたナ・ホンジンが原案を手がけた『女神の継承』の公開をず…

100までについて

今週のお題「人生最大のピンチ」 三つ子の魂百まで、ということわざがある。三歳までに形成された人格は、百歳になっても変わらない、という意味だ。 三歳の頃に俺が今のこのようだったかというと、そうだったような気もする。 これから百歳まで生きるとは思…

2022年8月5・6日について

新宿。街頭演説を誰よりも長く聞いていた鳩。 人の家の花。 人の家の花。 電気が流れている線。 セミが強く鳴いている。夏だから。 生き物の生きている理由が燃え上がる夏。 夜、散歩していたら、一匹のセミが路面で頭を潰されて死んでいた。アリがその周り…

世界の終わりについて

今週のお題「人生最大のピンチ」 保育園児だったとき、園で縁日のようなものが開かれるので、親に小遣いを持たせてもらって一人で遊びに行った。 その場で使った金額が思ったよりも少なかったので、残ったお金でスーパーでお菓子を買ってしまった(「しまっ…

『度胸星』の感想、もしくは「神」を描くことについて 2/3

今週のお題「SFといえば」 sanjou.hatenablog.jp 一神教的な「神」を漫画で見つけるのは難しい 神様はよく出てくる。 多くの漫画作品に「神」は大勢登場する。 では、たくさんのそうした神々と、『度胸星』のテセラックや『BLAME!』の統治局、『鋼の錬金術…

ジェフ・ゴールドブラムとT-REXを観に行く。『ジュラシックワールド/新たなる支配者』の感想について

今週のお題「SFといえば」 はじめに 観たのでレビューする。ネタバレあり(細かいところはボカす)。 はっきり言ってトンチキな構成で、ストーリーとしてすごくよくできてるとは言えなかった。 それでも、シリーズ初期の三人がそろった「画」はかなり心震え…

『度胸星』の感想、もしくは「神」を描くことについて 1/2

今週のお題「SFといえば」 神に会ったことがあるか? 『へうげもの』を描いていて、いま『望郷太郎』を描いている山田芳裕のSF作品。よく、マンガ好きの間で「打ち切りになってしまったけど、いまでも再開を望んでいる作品」として挙げられる。 俺も待ってい…

なぜ疑うのか。『哭声』の感想について

今週のお題「SFといえば」 はじめに 2016年の韓国映画。日本の俳優として國村隼がきわめて重要な役どころで登場する。 韓国の田舎町で、殺人事件が連続する。犯人が幻覚性の植物を摂取したことが凶行の原因といわれているが、同時に、科学では説明のつかない…

SFについて

今週のお題「SFといえば」 アホなので、 高校生の途中ぐらいまで、SFのことをSpace Fantasyの略だと思っていた。 宇宙に戦艦とかが進出して宇宙空間で戦争したり、よその星に旅行に行ったりするイメージだ。「でも、宇宙に行かない『SF』もあるのに、同じSF…

『Dr.STONE』の完結に寄せること、もしくは『Dr.STONE』の主人公は誰であったのか、ということについて 2/2

今週のお題「SFといえば」 sanjou.hatenablog.jp 呪いが明らかになる 『Dr.STONE』では、多かれ少なかれすべてのキャラクターが脚光を浴びる。すべてのキャラクターが、彼女/彼なしではミッションを達成できなかった、という役目を負う。 では、そういう物…

『Dr.STONE』の完結に寄せること、もしくは『Dr.STONE』の主人公は誰であったのか、ということについて 1/2

今週のお題「SFといえば」 一人欠けてもかぶは抜けない いきなりだが、みなさんは『おおきなかぶ』を知っているだろうか。 地面に植わった巨大なかぶを抜くために、じいさんがまず挑戦し、無理なのでばあさんを呼び、二人がかりでも無理なのでばあさんが孫娘…

『AIの遺電子 Blue Age』の感想について

今週のお題「SFといえば」 薬で楽にはなるけれど 心とはなんだろうか、という質問はよくあるわりに、実際は問いかけとして漠然としすぎているので、少し角度を変えてみる。 心というものに、どうやって向き合えばいいか、ということだ。 世の中、心というも…

『黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ』の感想、もしくは単にメアリーかわいいぜ、の話にについて

今週のお題「SFといえば」 はじめに 二十年近く前、志望校の過去問を解いているとき、英国の女流作家メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を題材にした論説が出てきた。 俺はそこで二つのことを学んだ。 あのガタイのでっかい角ばって頭にネジが刺…

『ビバリウムで朝食を』1巻の感想について

今週のお題「SFといえば」 三十年近く前、俺が小学生だった頃、『ドラえもん』はまだ漫画として現役だった。 もちろん、作品そのものとしては今だって普通に現役なのだが、コミックスが進行形で発刊されているという点で、『呪術廻戦』とか『HUNTER×HUNTER』…