正しくやり直すこと、『マンソンファミリー』の感想について

はじめに 村上春樹の『羊男のクリスマス』はおおざっぱに言うと呪いを解く話だった。 そこで描かれているのは、間違ったことをしてかかった呪いは、同じようなことを正しい方法でやり直さないと解けない、ということだ。 これはあらためて考えてみると、かな…

雑誌を読むのがヘタな人間について 2/2

sanjou.hatenablog.jp 続き。 雑誌を一冊、通しで読んだあと、面白かったんだかそうでもないんだかよくわからないことが多い。 で、文芸誌の場合、それはそもそも、全部通して読むからいけないんじゃないか、と。 仮説だが、あの手の雑誌で自分が面白いと思…

今日、脳から捨てたものについて ⑥

はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの ・尿もれ 同年代の知人(男性)と話しているときに聞いた話なのだが、小用を足したあとに毎回尿もれするのだという。 「2、3滴?」と聞いたら「目薬のキャップ一杯分くらい」とのことで、そ…

雑誌を読むのがヘタな人間について 1/2

はじめに 『ユリイカ』と『現代思想』は、当月号の全論考を総括、冊子内のマッピングをする担当を誰かつくるか、冊子を読み始める前に最低限の知識を解説するパートを置くべきだと思う。こっちの知識が足りないせいって言われればそれまでだけど、正直、寄稿…

それでも「彼女たち」の物語。『裏バイト:逃亡禁止』7巻の感想について 2/2

sanjou.hatenablog.jp 続き。 7巻で登場した強大な怪異によって世界がやり直されてしまったため、主人公である白浜和美(ハマちゃん)と黒嶺ユメ(ユメちゃん)の二人は一度消滅し、再生された。 7巻の最後に登場する二人はつくり直された二人ということにな…

それでも「彼女たち」の物語。『裏バイト:逃亡禁止』7巻の感想について 1/2

はじめに ネタバレありです。 高校生の頃に『GANTZ』で 「あれってミッションで死亡しなかったら致命傷でも復帰するだろ。 でも、ケガが回復するわけじゃなくて、ケガを負う前の自分が呼び出されて置き換わるだけで、ダメージ負った方は消されるわけじゃん。…

生命、街、組織と個人について 2/2

はじめに 瞑想はたぶん、ちゃんとやり方を学んでやった方がよい。 sanjou.hatenablog.jp 続き。 職場のベテランが数ヶ月前に退職した。 二十年以上も現場に勤めていた人で、社内からも顧客からも信用が篤かった。仕事ができるだけでなく優しい人でもあった。…

今日、脳から捨てたものについて ⑤

はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの ・ワシ、ぼられるの? 元ネタは『スナックバス江』。日本史の教科書に出てくる成金のような、いかにもな客がスナックに訪れた際、チーママの明美があいつから金をぼったくってやろう、と言っ…

生命、街、組織と個人について 1/2

生命の本質というか役目とは死ぬことなのだという、逆説的な考え方があるらしい。 これは命の一つ一つに注目しても見えてこない話で、一つの種族、あるいは種の境界さえも超えて、命の総体として見た場合にあらわれる視点だ。 まず、ここでは個体のことはい…

ヒーローの空虚と仮面がようやく裏返る。『劇光仮面』1巻の感想について 3/3

sanjou.hatenablog.jp sanjou.hatenablog.jp 続き。 そういうわけで、ようやく、強さとか衝動とか使命ではなく、もちろん善でも悪でもなく、「空虚さ」というヒーローの本質に焦点を合わせた作品が登場した。 『劇光仮面』、仮面の内側をさらけ出し、マスク…

ヒーローの空虚と仮面がようやく裏返る。『劇光仮面』1巻の感想について 2/3

sanjou.hatenablog.jp 続き。 前回は、ヒーローと呼ばれる存在の分類として、「継承」と「逆上」の二種類(もしくはその両方)があると書いた。 ここには道徳的な善悪は関係ない。銃撃事件の犯人もカルト宗教の教祖も、見る人によってはヒーローだ。 そして…

今日、脳から捨てたものについて ④

はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの ・俺より歌うなよ 元ネタは千鳥の漫才、『チケット予約』。 ・それに触手は漫画家の人が自分で楽しむために描くもののはず… 『秋津』。謎のロシア人が自分の技量を偽って漫画家アシスタント…

ヒーローの空虚と仮面がようやく裏返る。『劇光仮面』1巻の感想について 1/3

注 暴力や差別を肯定するつもりはなく、「良さ」ってあやふやだよな、という話。 ヒーローって 『劇光仮面』、ヒーローがテーマの作品なので、ヒーローという存在について最近考えることから書いておく。 ヒーローというのは基本的に善の存在で、この世界に…

物語はこのループから抜ける(べきな)のか? 『アオアシ』28巻の感想について 2/2

sanjou.hatenablog.jp 続き。 では、作品はこのループから抜け出るべきだろうか? どうだろう。別にそのままでもいいような気もする。 ストーリーが続けば、いつかアシトはプロになり、日本代表になって、やがて海外リーグに挑戦するのだろう。 そのたびに、…

物語はこのループから抜ける(べきな)のか? 『アオアシ』28巻の感想について 1/2

28巻まで進んだ『アオアシ』という漫画が、ストーリーとしてもフィクションのフォーマットとしてもあまりによくできているので、少し意地悪く見てみた、という文章です。 青森星蘭との激闘を終えた主人公・アシトに、所属しているユースの上位組織であるプロ…

今日、脳から捨てたものについて ③

はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの ・十勝甘味 とかち かんみ。サンドウィッチマンの音声コント『オールライトイッポン』に登場する和菓子屋(演:伊達)。和菓子屋になれと言われて和菓子屋を始める、サーファーになれと言わ…

今日、脳から捨てたものについて ②

はじめに 主旨はこちら。 sanjou.hatenablog.jp 以下、捨てたもの ・計り知れないね、お前の家族って 元ネタは『ガキの使い』、村上ショージの教室シリーズ。なぜか、山崎邦正の父親に昔いじめられていたという設定であり、山崎が村上に歯向かった際にその父…

俺たちは悼むのがたぶん下手なのだと思うことについて

故人の周囲を傷つける内容、自死という行為、死への言及を含む文章です。 先日、亡くなった芸能人について報道のあり方が色々批判されている。 おそらくは自死だと思われるその方の情報について、守られるべきガイドラインに沿っていないとか、事務所の近く…

不穏でいいんじゃないでしょうか。『ブルーピリオド』12巻の感想について

ネタバレありです。 冒頭で八虎の予備校時代の級友である桑名さんがカムバック。藝大に合格&以前の油絵ではなく彫刻科としての入学とのこと。 専攻変えて藝大通っちゃうのかよ。すげえ。 桑名さん、好きなんだよな。「配られたカードで勝負するしかない」と…

今日、脳から捨てたものについて ①

はじめに 集中した作業を継続するコツの一つとして、目の前の課題とは何の関係もなく頭の中に浮かんできた雑念、言葉をメモとして書き出し、ある意味で物理化して捨てる、というライフハックがある。 この時代、我々の手元にはほぼ確実にスマートフォンがあ…

倫理とマナーについて

エスカレーターの右側を、歩いて昇降する人のために空けておくというマナー?があまり好きではなく、というかマナーではないよな。鉄道の方は歩くな、と言っているのだから。 そう言いながら、実は急いでいるときは俺もそこを歩いてしまう。自分勝手だけど、…

「その日」は来た。剣と爆発はどうなるか? 『ヴィンランド・サガ』26巻の感想について

十年以上大好きで読んでいる漫画。一つの決着と新しい緊張を含む重要な巻だと思うので感想を書いておく。 奴隷と争いのない理想の地を求めた航路の末、主人公トルフィンたちは、ついに目的地であるヴィンランドに到達する(作中では現在のカナダ、プリンス・…

『ジャンケットバンク』は『嘘喰い』と違うルートに進んだか? ということについて

はじめに 平穏な日常を過ごしていた青年が、ある日、一人のギャンブラーに出会う。青年は、そのギャンブラーの持つたぐいまれな洞察力や人間性に魅せられていき、やがて、謎の組織が仕切る生死を賭けた勝負の世界に自らも身を投じていく…。 というと、これは…

マルハナバチが好きなことについて

マルハナバチが好き。 五月に入って街路のあちこちでピンク色のツツジの花が咲くようになって、日中に脇を通り過ぎるときに「もしかして」といくらか期待して耳を澄ませてみると、ぶんぶらぶんぶらマルハナバチが仕事をしている音が聴こえることがある。 暇…

まあまあなことについて

22時ぐらいに眠気に耐えられず横になったら、当然そのまま起きられず起きたら午前4時。寝なおす気にもならないで、そのまま起きている。 基本的に、ずっと寄る辺がないというか、この世界でずっと身の落ち着けどころがなく、あたふたしているうちに時間が過…

『実話怪談 蜃気楼』の感想について

はじめに 評価は次のように行います。 まず、総評。S~Dまでの5段階です。 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース。 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。 B…購入してもよい。もしくはkindle unli…

『怪談四十九夜 病蛍』の感想について

はじめに 評価は次のように行います。 まず、総評。S~Dまでの5段階です。 S…価格、提供される媒体に関係なく手に取るべき。恐怖のマスターピース。 A…購入推奨。もしくはkindle unlimitedにあればぜひ勧める。恐い。 B…購入してもよい。もしくはkindle unli…

2022年のブックマークについて ⑩

togetter.com あらためて考えるとみんなよくあんなもの乗っているな、と思う。無免許です。 www.afpbb.com 以前、こういう記事を書いたことがあって、スポーツ選手だとか伝統芸能の家に生まれた子とか、周囲からの期待や、勇気や感動をくれてありがとう、あ…

2022年のブックマークについて ⑨

www3.nhk.or.jp 先日、両親と会って食事をする機会があり、そのときにこの事故の話題が出た。 母と父は事故に対するとらえ方がそれぞれ異なっていて、俺はというと、父寄りだった。そのせいで、険悪というほどではないが、少し緊張感のある時間帯になってし…

叔母に似てきたことについて

三十代半ばの男なのだが、年齢で言えば二回り以上離れた叔母に、色々と似てきた気がする。見た目ではなく、立ち振る舞いが。 俺は声が低いうえにあまり滑舌がよくないので、店先で注文するときなど平時よりトーンを上げてゆっくり喋ることをこころがけている…